『現場改善探求』では、さまざまな企業の現場においてどのような改善に取り組んでいるのか?その内容や背景、考え方についてインタビューで掘り下げることで、あらゆる現場で改善を実現するヒントを見つけていきます。
初回となる今回は、工作機械や遠心力鋳造管、産業機械の製造/販売をグローバルに展開する新日本工機株式会社 製造部 部長の原 潤平氏に、人材育成の重要性と新人の早期戦力化を目的とした取り組みについてお話を伺いました。
目次
新日本工機について
『本日はお時間を頂きありがとうございます!まずは御社について教えてください。』
原さん 弊社は1898年に「若山鐵工所」という名称で旋盤の開発から事業を始めた後に、1949年から今の新日本工機(SNK)というブランドで設立しました。グローバルに展開しており、現在従業員は全世界で820名いる会社です。
事業としては工作機械、遠心力鋳造管、産業機械の製造販売を行っています。メインの事業となる工作機械では、国内向けは勿論、海外向けの比率も多く、欧米向けでは航空機関連、アジア向けでは自動車関連向けの出荷が多いことが特徴です。素材関係では、身近なところで言えば、東京スカイツリーの柱部分にも弊社の素材が使われていたりします。
お取引先は各業界のリーディングカンパニーも多く、製品のカタログ販売だけでなく、お客様向けにカスタマイズされた機械の開発が多い事も特徴です。その中で我々の製品は『品質』が非常に重要になるので、製造現場では品質管理を徹底しています。我々が取り扱うものは温度変化によって品質に影響が出るため、製造現場の恒温恒湿化を行っています。
新日本工機における人材育成の重要性
『御社は「人が成長し続ける会社」と掲げ、全社的に人材育成に取り組まれています。なぜそこまで力を入れているのでしょうか?』
原さん 我々の製品はカタログ販売だけではなく、お客様の困りごとを解決するために、お客様のニーズに合ったものをお客様の現場に入り込んで提案していくということをやっています。何に困っているのか?何を実現したいか?そういったことをしっかり把握しなければ、我々の製品は作れません。そういったところはやはり『人の力』というのが必要になります。
また、世界で1台しかないカスタマイズされた機械を作るということで、現場作業においても経験からもたらされる応用力や判断力など高い人材スキルが求められます。そういった意味で人材育成は我々の会社にとって、とても重要になっています。
『人材育成に取り組まれている製造現場は多い一方で、新人/若手の教育に悩まれているお声をよく聞きます。新人/若手育成におけるポイントはどのようにお考えですか?』
原さん これは確かに難しいところが色々ありましたね…一方的な教育になったらダメなので、やはりトップダウンとボトムアップを融合していくことが必要ですね。もちろん教育担当としても、新人の「できない」という目線に合わせてコミュニケーションを変えていかなくてはなりません。
若手からもいろいろ意見を出してほしいという想いもあるのですが、どうしても年齢の関係もあり、一方的になりがちですよね。とはいっても、守らなくてはいけないルールや、やらないといけないこともあるので、しっかりと伝えるべき言葉で教育をしていくということが必要だと思いますね。
そのために、若手とベテラン世代のギャップを埋めるため『日頃から現場に出る』ことは欠かせません。毎日、若手が何をしているのかきちんと把握しつつ、モチベーションを高めるためにはどうすればよいかを考えるようにしています。最近では『QC報告会』を立ち上げて、現場で改善したことを発表/評価することも行っています。
人材育成の改善策「教育道場」について
『御社では他にも、人材育成の取り組みとして「教育道場」を行われています。こちらの概要を教えていただけますか?』
原さん 教育道場は若年者、新入社員向けに対する教育を早く確実にするために行っています。また現場作業者だけではなく、設計技術者にも現場作業を体験してもらうことをこの道場で行っています。
設計技術者も体験することで、その人が将来的設計を行う際に、作業を経験したことが設計品質の向上などに役立ってきます。今後は、基礎の再確認という目的で、中堅者への教育道場もやっていきたいと考えています。
作業を一通り覚えている中堅者でも、時間の経過と共に正しいと思っているものが誤っていたり、自己流になってしまうなどがよくあります。そこをもう1回見直すといった意味でも、中堅者への教育も目的の1つとして掲げています。
『教育道場はどのようなきっかけで生まれたのでしょうか?』
原さん 新人/若手の戦力化までに時間がかかっていた課題に対して、早く確実に一人前にするという目的で、2020年からこの取り組みを始めました。
その前までは『先輩の横で見て覚える』の現場でした。もちろん、見て覚えるというのも重要なスキルではありますが、やはりそれだけでは教育の限界があり、より早くより確実にというところで立ち上げました。
『教育道場を始めてみて、その効果はどうでしょうか?』
原さん 新人の戦力化が早くなりましたね。以前は基礎作業を覚えるにあたって、この人にはこれは教えた/教えていないなどバラつきがありましたし、実際にその業務を経験するまで時間がかかるので教育として確実ではありませんでした。
道場教育を始めてからは、一気に全ての基本作業をマイスターの役職を持ったベテラン社員が全て教えているので教え漏れもなく、教育内容の標準化が実現できています。体感ですが、1年ほどあれば戦力化できるように教育ができています。
現場改善を進めるポイントは?
『現場の課題を認識しても、教育道場のように実際に改善に向けて取り組むことは簡単ではないと思います。「やりたいけどできない」を乗り越えるポイントはなんでしょうか?』
原さん そうですね…やろうと思ってもできない、なかなか割く時間や人の確保ができない課題があると思います。『教えられる人=作業ができる人』なので、生産が忙しくてマンパワーが足りない状況であれば、現場作業で生産に使いたいとなります。私ももちろんありますし、多分どこの会社にも同じようなことがあると思います。
これを乗り切るためには、トップダウンによる全社方針/経営方針として掲げてやっていく必要がありますね。我々でいくと「人」が大きな軸なので、教育道場をはじめとするさまざまなプロジェクトを進められるように仕組み化することが重要だと思います。
現場任せにしてしまうとなかなか進められませんし、10年、20年先と将来を見据えて今何をすべきなのか?何が必要なのか?を経営方針から考えると「やりたいけどできない」から「やらなくてはいけない」に視点を変えられるのではないでしょうか。
『現場改善には未来を見据えた視点がカギになりそうですね。お忙しい中お時間をいただきありがとうございました!』
新日本工機の教育改善で活用されている現場教育システム『tebiki』
新日本工機株式会社では教育改善の取り組みの一環で、動画マニュアルを軸とした現場教育システム『tebiki』を活用しています。導入前に抱えていた課題から、導入後に改善したこともインタビューでお話いただきましたので、併せてこちらもご覧ください。
インタビュー動画:tebiki導入事例(新日本工機株式会社様)
皆さんの現場改善を教えてください!
『現場改善探求』は、皆さんの現場でどのような改善に取り組んでいるのか?その内容や背景、考え方をインタビューで掘り下げ、あらゆる現場で改善を実現するヒントを見つけることを目的としています。
この目的のために、多くの改善事例を集めたいと我々は考えています。そこで現場改善ラボでは、インタビューを受けていただける方を募集中です!
インタビュー記事は、4万人以上の会員を抱える現場改善ラボでの公開に加え、会員向けのメールマガジン等でも配信を行うため、皆さんの企業PRの場としてもお使いいただけます。もしもご興味がございましたら、以下の宛先までご連絡くださいませ!
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