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現場改善ラボ ものづくり戦略フォーラム 講演レポート 「100年以上の大変革」の時代に日本のものづくりはどう戦うか。元日産副会長・志賀 俊之氏が語る、産業変革のリアル
講演レポート

「100年以上の大変革」の時代に日本のものづくりはどう戦うか。元日産副会長・志賀 俊之氏が語る、産業変革のリアル

「100年以上の大変革」の時代に日本のものづくりはどう戦うか。元日産副会長・志賀 俊之氏が語る、産業変革のリアル

2026年2月13日(金)、現場改善ラボ(運営元:Tebiki株式会社)が「ものづくり戦略フォーラム in 名古屋」を開催しました。

製造業に携わるリーダーや経営層が集うこのフォーラムでは、各業界の先端を走るゲストスピーカーによる講演が行われました。本記事では、日産自動車 元代表取締役副会長、そして官民ファンドINCJ(イノベーション・ネットワーク・コーポレーション・ジャパン)元代表取締役会長の志賀 俊之氏による講演ダイジェストをお届けします。

「100年に一度どころか、100年以上の大変革が始まっている」と語る志賀氏が、ものづくりの現在と未来を力強く解説しました。

志賀 俊之氏

志賀 俊之氏

元日産自動車 代表取締役副会長
元株式会社INCJ 代表取締役会長
和歌山市生まれ、大阪府立大学卒業後、1976年日産自動車に入社。主にアジア営業を担当し、1991年から約6年インドネシアに駐在。1999年ルノーとのアライアンス締結に関わり、企画室長及びアライアンス推進室長を兼務。現場とのパイプ役として、日産リバイバルプランの立案・実行に参画し、2000年46歳で常務執行役員に抜擢された。新興市場、特に中国進出で成果を上げ、2005年4月から2013年11月代表取締役副会長に就任するまで、最高執行責任者(COO)を務めた。2015年6月官民ファンド株式会社産業革新機構(現INCJ)代表取締役会長に就任し、2025年6月、INCJの業務がほぼ完了したことに伴い退任した。INCJでは、産業再編や海外投資に積極的に取り組む一方、新しい技術やビジネスモデルを提案するスタートアップ企業を幅広く支援し、オープンイノベーションを通じて、新しい産業の創出・育成を目指した。
和歌山市生まれ、大阪府立大学卒業後、1976年日産自動車に入社。主にアジア営業を担当し、1991年から約6年インドネシアに駐在。1999年ルノーとのアライアンス締結に関わり、企画室長及びアライアンス推進室長を兼務。現場とのパイプ役として、日産リバイバルプランの立案・実行に参画し、2000年46歳で常務執行役員に抜擢された。新興市場、特に中国進出で成果を上げ、2005年4月から2013年11月代表取締役副会長に就任するまで、最高執行責任者(COO)を務めた。2015年6月官民ファンド株式会社産業革新機構(現INCJ)代表取締役会長に就任し、2025年6月、INCJの業務がほぼ完了したことに伴い退任した。INCJでは、産業再編や海外投資に積極的に取り組む一方、新しい技術やビジネスモデルを提案するスタートアップ企業を幅広く支援し、オープンイノベーションを通じて、新しい産業の創出・育成を目指した。

「CASEを超えたAI時代」へ。自動車産業に迫る100年以上の変革

140年前、馬から車への転換がわずか十数年で起きたように、今の自動車産業も急速な変革の渦中にあります。志賀氏はこれを「CASEで留まらない変革」と表現しました。

Connected(コネクテッド)・Autonomous(自動化)・Shared(シェアリング)・Electric(電動化)というCASEの概念に加え、OTA(無線通信によるソフトウェア更新)やSDV(ソフトウェア定義車両)が普及し、さらにそこへAIが加わることで100年以上の大変革が進行しているというのです。「ソフトウェアとハードウェアの主従関係が逆転しています。かつてはハードウェアが主で、ソフトウェアはそれを制御するものでした。ところが今は、AIがハードウェアを動かす時代になっています」と志賀氏は解説します。

この流れの中で台頭しているのが、テスラやBYDをはじめとする新興EVメーカーです。EVランキングの上位に日本メーカーは一社も入っていない現実を志賀氏は指摘します。

「テスラがFull Self-Drivingという自動運転ソフトウェアへの課金(サブスクリプション)で新たな収益源を確立しているように、自動車産業のビジネスモデル自体が『売り切り型』から『継続課金型』へと大きく変わりつつあります。EVトレンドは変わりません。時間の長さは関係なく、これが世界の方向性です」

日本のものづくりの課題と可能性――イノベーションのジレンマを超えて

なぜ日本の伝統的メーカーは変革に出遅れてしまうのか。

志賀氏はその根本原因を組織の構造に求めます。「機械工学のエンジニアの集団、縦割り開発、上司への忖度、重厚な意思決定プロセス、下請け型サプライチェーン。ソフトウェアやAIが使えないのではなく、こういう組織の構造が変革を阻んでいるのです」。これはまさにイノベーションのジレンマであり、過去の成功体験が大きければ大きいほど、新しいアプローチへの転換が難しくなります。

一方で、志賀氏は日本のものづくりの強みにも光を当てます。特に注目したのが「フィジカルAI」の潮流です。今年のCESで最大の話題となったロボティクスの世界では、AIが「脳」として機能する一方、ロボットを動かすギア・モーター・アクチュエーターといった「体」の部分には、精度・堅牢性・耐久性が求められます。「脳の部分では日本は遅れをとっているかもしれませんが、体の部分は日本の出番です。彼らが作りたいロボットの体は、まさに皆さんのものづくりの世界です」と志賀氏は力強く語りました。

また、これまでオーバークオリティと見られてきた日本の部品品質が、SDV時代において冗長性(マージン)として再評価されるという視点も紹介しました。テスラがワイパーモーターを一種類に統一しつつ、ソフトウェアで電圧を調整して性能を最適化するように、5年先のソフトウェア進化を見越したハードウェア設計が重要になっています。

「そういう変化に対応できる要素技術を徹底的に磨き直すことが、今日本に求められています」と志賀氏は述べました。

変革のカギは多様性、両利きの経営、リーダーシップ

講演の後半、志賀氏は経営・組織変革の視点から日本企業への提言を行いました。

かつて国際競争力ランキング世界1位を誇った日本が、現在30位(2026年6月現在)まで後退した理由として挙げたのが「多様性の欠如」と「自前主義」です。「同質の人たちが集まり、同調圧力が強く、上を見て忖度する組織ではイノベーションは生まれません」と志賀氏は指摘します。ハーバードの研究を引用し、多様性が高まるほど一時的に失敗は増えるものの、それがイノベーションの源泉になると説明しました。

そして志賀氏が日本流の両利きの経営として提唱するのが、「トップダウンの変革とボトムアップの現場改善の融合」です。日本の強みである現場の知恵や改善文化を維持しながら、トップが時代を先読みして変革を引っ張る。この組み合わせこそが、今の時代に求められる経営スタイルだといいます。

また、オープンイノベーションの重要性についても言及し、「自社だけで全工程を抱える自前主義から脱却し、新たなプレーヤーと対等に協業することが日本の競争力を取り戻す道につながります」と語りました。

最後に志賀氏はリーダーシップの4要素を提示しました。「時代を読む力、時代に先回りする力、時代に適応する力、時代を作る力」。

日産リーフで時代を読んだ先人の例や、バッテリーメーカーから段階的にEVへ転換したBYDの王伝福CEOの軌跡を紹介しながら、「世界のトレンドを把握し、大義を持ち、最新テクノロジーに精通して、チームと資金を整えて実行する。それが時代を作ることにつながります」と締めくくりました。日本のものづくりの底力を信じながらも変革への危機感を率直に語った志賀氏の講演は、製造業に関わるすべてのリーダーにとって力強いメッセージとなりました。

本講演が行われた、第6回 ものづくり戦略フォーラム in 名古屋のイベントページは以下のリンクからご覧いただけます。

https://landingpage.tebiki.jp/conference20260213

執筆:市川貴啓 (Tebiki株式会社)

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