4Sとは、整理・整頓・清掃・清潔という4つの言葉を指し、それぞれをローマ字にしたときの頭文字を合わせて「4S」と表現されます。製造業などさまざまな業界で活動が行われており、職場環境の整備や作業効率の上昇、転倒や転落などの労働災害の予防にもつながり、安全な職場作りをすることができます。
この記事では4Sのそれぞれの意味、活動の目的や効果、4S活動の進め方を解説していきます。
現場改善ラボでは安全な職場作りについて、さまざまな事故の現場を見てきた元労働基準監督署署長より、現場の安全管理を解説する動画を公開していますのでご覧ください。
目次
4Sとは?
4S(よんえす)は、整理・整頓・清掃・清潔で構成されており、安全で快適な職場作りをするための活動です。そのため4S活動は、職場を綺麗にするだけでは無く、職場の安全と作業者の健康そして生産性を向上させる事であり、活動を維持していくことで企業の発展に繋がります。
主に、製造業やサービス業で4S活動が頻繁にされていますが、近年では業種を問わず、さまざまな分野で取り組まれています。4S活動により、職場環境が清潔な状態を維持でき、効率的な作業環境を生み出すことができます。
例えば製造業では、4S活動をすることできれいな職場確保による、生産性の向上や製品加工精度の向上など製品を提供するために欠かせません。
4Sの意識を持つことで、仕事の効率だけではなく、外部のお客様にとっての良い会社への判断の材料になります。4Sは会社や製品への評価と業績アップにつながっていくでしょう。4Sの意識を組織全体に浸透させることできれいな職場が生まれ、より良い仕事と会社の発展に繋がっていきます。
4Sのそれぞれの意味
ここからは、4Sの整理・整頓・清掃・清潔をそれぞれ見ていきます。整理・整頓を怠ると無駄な作業や非効率な作業が増え、利益を生まない作業が生じ、無駄なコストが多くかかることもあります。
また、清掃は整理・整頓がされた状態を清掃をして維持する作業であり、清潔とは整理・整頓・清掃の行動が定期的に実行されている状態を維持して保つことを指します。
整理
「整理」とは、必要なものと不要なものを分別し、不要・不急なものを取り除くことです。不要なものを整理することで、周りの環境をいつでもすっきりとした状態を維持し、作業に不要なものを減らしていく活動です。
例えば、製造業の工場などで作業スペースが整理されておらず、探し物が中々見つけられない、危険を予知できない環境は、安全な環境とはいえません。整理をしなければ、作業効率が落ちるだけでなく、安全に作業できるスペースがなくなるなど、安全の面でも作業を行う上で問題が発生する恐れがあります。
安全面を確保するためにも、整理をする作業は大事な要素となります。作業で本当に要るもの、要らないものに分けるために整理できる余地はないかを検討し、最小限の物や情報だけに留めるように整理を行っていきます。
整頓
「整頓」とは、作業に必要なものを、あらかじめ決めた場所に置き、いつでも使える状態にすることで、容易に取り出せるようにしておくことです。効率的に業務を進めていくためにも、必要なときに必要な物がすぐに取り出せるように整頓を実践していきます。
また、整理するものにそれぞれ名前を割り振るだけでなく、使い終わったら物は必ずその場所に保管するなど、整理した物の管理方法も意識します。管理方法が標準化されることで、数が足りないことがすぐにわかったり、物が壊れているなどの異常が発生した際にもすぐに判別でき、作業中の非常事態にも迅速に対応できるようになります。
例えば製造業では整頓を行うことで、工具・在庫・材料を探す無駄を無くすことができます。効率の良い整頓のためには、現場で使う物がどれだけ個数と種類があるかをしっかりと把握し、どの場所に整頓しておくことが効率的か議論を重ねることが大切です。
清掃
「清掃」とは、作業スペースなどの清掃を繰り返し行うことで、整理・整頓を習慣化させすぐに作業できる状態を維持することです。清掃をせずに作業を続け、整理・整頓ができていないと、職場や作業スペースはどんどん散らかっていきます。
職場環境にゴミやかすなどの不要物、使用していない工具が多くあると、作業効率が落ちるだけでなく、安全面での不注意やケガなどの災害につながる恐れがあります。清掃は安全性を確保するためにも必要なことです。清掃の時間を確保するだけでなく、その手順を示したマニュアルなども作成することで、清掃を定期的に行う意識を醸成していきます。
製造現場の工場でも、清掃は大切な安全対策となります。作業をした後に床面が濡れていたり、汚れていると、転倒などの労働災害の要因にもなってしまいます。ゴミや汚れが多い職場環境では、従業員の労働意欲などにもつながりますので、清掃は日々欠かさず行っていきましょう。
清潔
「清潔」とは、整理・整頓・清掃が継続的に行われた状態を維持することを指します。作業環境のゴミや汚れをきれいに清掃した状態を保ち続けること、そして作業者も身体・服装・身の回りの物を汚れの無い綺麗な状態にしておくことで清潔な状態を維持していることにつながります。
そのためには、清潔な作業環境の状態を職場でイメージして、共有しておくことも重要なことです。そのために清潔を維持するための職場のルールを作るなどして、物が整理整頓された状態を保つようにしていきます。また、清潔な状態を保つために最初は見回りや点検なども行うと効果的です。
点検の方法として、それぞれの現場で点検表を作成し、整理・整頓・清掃が維持できているかを確認できるようにチェックする方法が挙げられます。その中で不足している部分が改善するように、必要に応じて、柔軟に取り組んでいきましょう。
3Sや5Sとの違い
3Sとの違い
3Sとは、整理・整頓・清掃からなる活動で職場環境の安全性を意識した活動のことです。3Sに、清潔を加えた4つの用語の頭文字をとったのが4Sとなります。4Sをしっかり行っていくためには、まずは3S活動を各職場で実践していくことがおすすめです。
3Sを実践していくことで、職場の環境改善・チームワークの強化・生産性の向上が期待できます。3Sは職場全体で共通の環境改善の意識を持ち進めていき、職場環境を改善するための最初のステップとして進めていきます。
3Sが職場環境のなかで滞りなく定着した後、4Sの清潔な職場環境を維持することを取り入れていきましょう。4Sは職場環境を良くするための次のステップとしてとらえて、順番に取り入れていくことで職場環境を良くすることにつながります。
5Sとの違い
5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)の頭文字の「S」を取ったものです。躾とは、職場でルールや規律を作り習慣化していくことを指し、ルールを作ることで活動を定着させる意味合いもあります。4Sは5Sの「躾」を除いた活動を言い、職場の作業環境を維持するための活動です。
関連記事:5Sとは?意味や活動の目的と効果、ケース別の事例を解説!
5Sでは、ルールを決めて実行していく中で、自立心が育っていくので自ら自発的に動ける人材が育っていきます。自発的に整理・整頓・清掃を行って、清潔な状態にしようと行動するようになり、その意識が職場の改善活動にもつながり職場全体が良い傾向になっていきます。
4S活動がしっかりできてきた後に5Sを進めることがおすすめとなります。いきなり5Sをするのはルールを決めたり、実行を習慣化することになるので、ルール作りで職場内の議論が必要になってきます。まずは4Sが浸透してから次の5Sのステップにいき、少しずつ意識づけを行い良い職場環境にしていきましょう。
5Sを徹底することによって、現場作業でのムダをなくし生産性を向上させることができます。現場改善ラボでは、現場改善における急所と5Sを活用した解決策について、経済産業省先端技術マイスターが解説した動画が視聴できます。ぜひご参照ください。
4S活動の目的と効果
ここまでは4Sの意味を要素ごとに解説していきました。では、なぜこれら4Sの活動を現場で行う必要があるのでしょうか?
ここからは4S活動の目的と効果を解説していきます。
4S活動の目的
作業しやすい職場環境を構築する
4S活動を進めていくうえで、一人では全体で活動をしていくことが必要です。その結果、組織力やチーム力を高めることにもつながります。単なる清掃にとどまらず、作業しやすい職場環境をすべての従業員で作り上げていく意識が重要です。
作業しやすい環境とは、整理、整頓、清掃が行われ、ムダなものがない効率よく作業できる環境のことです。そのため4S活動の全ての項目をおこなうことで、集中して作業に取り組める環境が作られていきます。
無駄な作業をなくし効率化する
仕事を進めていく中で、小さな間違いやムダは常に起こり得ることです。間違いによって業務が遅くなったり、作り直しが生じることもあります。このようにミスが続くと業務にも多くの影響が出てしまうため、4S活動によってムダな作業をなくすことは重要な課題のひとつです。
4S活動によって職場環境が整っていくため、ミスやムダな作業を減らすことに繋がるため、作業の効率もアップしていきます。作業の時間の改善のためにも4S活動はとても重要となってきます。
関連記事:【トヨタ式】7つのムダとは?具体例を交えてムダを解説
効率化することで生産性を高める
4S活動を行うことで、作業しやすい職場環境を構築し、ムダな作業もなくなるため自然と全体の生産性も高まっていきます。
生産性を上げることで、社員のモチベーションも上がっていくためやりがいのある職場にも繋がり、4S活動を継続的に行っていくことで生産性の向上と品質向上、そして企業の発展にもつながっていきます。
4S活動の効果
4Sの効果としては安全面や品質面にも多くの効果があります。安全な職場で効率よく作業して高品質な製品を作るには、4S活動は欠かせません。4Sの効果について詳しくみていきます。
労働災害を予防につながる
4S活動では、作業をしている時の労働災害の低減に効果があります。整理整頓ができていないと、注意散漫となり作業中に怪我をする危険性があります。そのためにも4S活動を通して作業環境を改善することは大事となってきます。
作業中に怪我など労働災害が起こると、労働基準監督署への報告はもちろん、治療費や休業中の人員補充などさまざまな手配や時間が必要となります。その場合、余計なコストがかかったり、生産性も落ちていきます。
4S活動をすることで、このようなことを未然に防止し、職場の安全管理を徹底して労働災害を減らしていく効果があるでしょう。
作業の効率化することで業績アップにつながる
4S活動を行うことで、作業スペースに無駄なものが置かれなくなり、作業工程の改善を図ることができます。業務に必要な道具を探し回る時間を減らすことにつながるため、作業の時間短縮につながります。
また、必要な物をすぐに見つけて取り出せるため、スムーズに作業ができるようになります。製造業では4S活動よって作業環境が改善され、製品を組み立てる時間を減らし、作業効率がアップされ、多くの製品を制作できるため業績のアップにつながっていくでしょう。
労働環境の向上でモチベーションのアップにつながる
4S活動を繰り返し維持することで、快適な環境を実現できるため、作業者も気持ちよく働くことができるようになります。労働環境の向上で、集中して仕事ができるためやりがいにもつながっていきます。
4S活動により安全な職場づくりを行うことは、バラバラに備品が置かれた汚い職場を整理整頓がなされた綺麗な職場に変化させることになるため、作業する方のモチベーションアップにも繋がっていくでしょう。
4S活動の進め方
ここまでは4S活動によって得られる効果を解説してきました。ここからは、4S活動の具体的な進め方を解説していきます。
4S活動を維持するための体制づくりをする
4S活動を始めるにあたっては、4Sを推進するための体制づくりを行います。そのための方法は大きく3つ挙げられます。
活動の目的を共有する時間を作る
4S活動の目的や方針などを全体に周知し、共有する時間を作っていきます。4S活動の進め方や効果などどうありたいかを共有しましょう。
ポスターなどを貼る
4S活動を職場に定着させるためには、職場にポスターなどを掲示して活動を強調するといいです。4Sの内容がパッと見て分かるようなイラストや写真をいれたポスターを作成し、従業員の目につきやすい場所に掲示すると意識向上に役立ちます。
目標管理シートなどに記載する
目標管理シートに4S活動を記載することで重要度と進捗を確認できるため活動が前に進んでいくことにつながり、活動事態が定着していきます。
4S活動を維持するための目標を設定する
4S活動を維持する体制が整った後は、目標設定を行います。
期間を定めて目標をきめる
目標管理シートに目標と期間を設定して取り組みます。目標はある程度の期間をつくり、4S活動の意識定着をはかります。最初から高い目標を設定するのではなく、段階に分けて目標を設定していきましょう。
整理、整頓、清掃、清潔の順番で目標設定する
最初は4S活動を始めた時点では整理整頓を行うことを目標にして、その次に整理整頓をしながら清掃が行き届いた状態にするといった目標を掲げていきましょう。
目標が達成できたかを振り返りをする
目標はシートにまとめて3か月や6ヵ月毎に見て振り返りましょう。定期的にチェックをすることも行うようにすることで、4S活動の定着や職場の安全に関する意識も高まります。
4S活動を維持するための具体的行動を設定する
目標が定まった後は、目標を達成するために必要な行動を考えていきます。具体的な行動例は以下の通りです。
机の上や机の下は何もない状態にするようにする。
机の上と下は綺麗に整理・整頓することで 見栄えもきれいな机となり、作業性も高まっていきます。
書類はデータなどにして管理し共有する
部署で共通して使える書類やデータなどはみんなで管理して使いましょう。
業務の後は時間を決めて清掃を行う
作業前後は清掃する時間を決めて清潔な環境を維持します。
まとめ
整理・整頓・清掃・清潔と聞くと当たり前のように行っているようにも思えますが、意外とできていない項目も多いです。4S活動に取り組むことで快適で健康的な職場づくりにつながり、生産性の向上や労災防止にもつながります。これを機に4S活動を始めてみてはいかがでしょうか。