シックスシグマを社内に取り入れたいけど、どうやっていいか迷っていませんか?
シックスシグマは、製品の品質だけではなく、業務全体にも活用できる優秀な手法です。しかし、シックスシグマは多くの人を巻き込む必要があるため、参加者全員が正しく理解している必要があります。
参加者の中には、品質管理の専門家以外の人もいるので、理解してもらうのが難しいかもしれません。
そこで今回は、シックスシグマの基本についてわかりやすく解説していきます。これから業務改善を考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
シックスシグマ(6σ)とは?
シックスシグマとは、製品のバラツキを極めて小さくするために、統計学を用いて行われる改善手法です。
シックスシグマの名前の由来
シックスシグマの語源となったシグマ(σ)とは、データの散らばり具合、つまり標準偏差を指す単位のことを言います。簡単に言うと、製品の完成度が平均値に対して、どの程度バラツキがあるかを表しています。
シックスシグマとは「6σ」のことであり、100万回のうち不具合が3~4回を超えないことを目標としています。実は6σ以外にも、1σ~5σまで存在し、100万回あたりの不具合の回数は以下のようになっています。
バラツキ |
100万回あたりの不具合の回数 |
1σ |
690,000 |
2σ |
308,537 |
3σ |
66,807 |
4σ |
6210 |
5σ |
233 |
6σ |
3.4 |
シックスシグマの歴史
シックスシグマは、1980年代にアメリカの通信機器メーカーであるモトローラ社が、日本のQCサークル活動を参考にして開発されました。
現在では、シックスシグマにもいろいろな種類があり、長い歴史の中で様々な人が発展させてきました。代表的なものは以下の3種類です。
- シックスシグマ
- リーンシックスシグマ
- デザインフォーシックスシグマ
これらは取り組むプロセスやプロジェクトによって使い分けます。
シックスシグマは、元々製造業の品質管理で用いられてきた手法です。しかし、現在では物理的な製品だけでなく、営業部門や企画部門などあらゆる企業活動にも取り入れられています。
シックスシグマとQCサークル活動の違い
シックスシグマは、QCサークル活動と似ている項目も多く、勘違いされることもありますが本質的には異なります。
QCサークル活動は完成品の品質を重視する活動です。一方のシックスシグマは結果だけでなくプロセスも重視する改善活動という違いがあります。また、シックスシグマでは、他の手法と比べてデータや統計を用いて評価することが、大きな特徴です。
QCサークルについては以下の記事でも詳細に解説しています。併せてご覧いただくことで、より違いが明確に分かるようになります。
関連記事:【事例付】QCサークル(小集団改善)活動の進め方とは?メリットやデメリットなども解説
シックスシグマの原則
シックスシグマは、既存プロセスの業務改善や、製品の品質改善など幅広く使用されております。そして、シックスシグマを活用する上では、以下の4つの原則が重要となります。
- VOC(顧客の声)を最重要視する
- 改善するものはプロセスであること
- データを用いて分析する
- 組織的に取り組む
VOC(顧客の声)を最重要視する
シックスシグマでは顧客に対して、可能な限りの価値を提供することを目標とします。
そのため、顧客がどのような不満をもっているか、どういったニーズがあるのかなど、多くの声(VOC)を集める必要があります。また、多くの時間を費やしてVOCを理解しなければなりません。
VOCの具体的な意味は、本記事内で後ほど解説しています。併せてご覧ください。
改善するものはプロセスであること
シックスシグマでは業務のプロセスを対象として、さまざまなバラツキの低減を目標とします。
そして、たとえ人が行うプロセスであっても、シックスシグマでは「人」ではなく「やり方」に注目して改善を進めることが重要です。
データを用いて分析する
シックスシグマでは、改善したいプロセスに関するデータを収集、分析します。
データ分析のポイントとしては、PDCAサイクルの中でデータ分析を考えることです。PDCAサイクルを念頭においた分析結果は非常に実用的で、結果に直結することが多くあります。
組織的に取り組む
シックスシグマは、さまざまな部門が参加することで、特に効果を発揮します。
ただし、多くの人が参加することで、さらに課題を増やしてしまうリスクもあります。そのため、参加メンバー全員にシックスシグマのプロセスを教育しておくことが重要です。
シックスシグマの5ステップ
シックスシグマを導入するということは、DMAIC(ディーマイク)やDMADV(ドマドブ)といった5つのステップを行うことです。5つのステップで、最終的にシックスシグマの基準を満たすことを目指します。
DMAICとDMADVには以下のような違いがあります。
- DMAIC:既存のプロセスを改善する
- DMADV:新規のプロセスを構築する
以下でDMAICとDMADVの具体的なステップをそれぞれ解説します。
DMAIC(ディーマイク)
DMAICとは定義(Define)、測定(Measure)、分析(Analyze)、改善(Improve)、管理(Control)といったステップで改善を行います。この5ステップの頭文字をとってDMAICと呼んでいます。
DMAICは、すでにあるプロセスを改善するのに活用されます。そのため、製品や設計、業務プロセスを段階的に改善し、最適化するのに効果的です。
各ステップの詳細は以下の通りです。
定義(Define)
定義(Define)では、改善するプロセスの課題を抽出します。シックスシグマではVOC(顧客の声)を起点とすることを最重要としています。
この顧客の声を起点として、不具合や顧客が不満に感じている製品やサービスを課題と定義します。その課題に対して、具体的な数値を目標とすることが重要です。
測定(Measure)
測定(Measure)では、現状把握を行います。
現状について正しく理解するには、生産量や配達時間など具体的に数値で把握する必要があります。特に、改善するプロセスに対して「見える化」することが重要です。
分析(Analyze)
分析(Analyze)では、測定で判明した問題の根本的な要因を特定していきます。
測定したデータのメカニズムを深堀りしていくため、ロジックツリーや特性要因図などのQC7つ道具を活用するとよいでしょう。シックスシグマでは特に客観的データに重点を置くため、測定から分析までに多く時間を費やす傾向にあります。
現場改善ラボでは、現場改善ラボでは、株式会社エイシン・エスティー・ラボの代表取締役である山本 諭氏実務による実践できるQC7つ道具の使い方について解説した動画を無料で視聴できます。ぜひ、併せてご覧ください。
改善(Improve)
課題に対して問題点が明確となったら、改善案を検討していきます。
改善案が複数ある場合は、コストパフォーマンスなどを考慮して最も優れたものを選ぶのがポイントです。複数の改善案を同時進行する場合や、改善案を組み合わせる場合は、1つ1つの計画を小規模にしたり、実験計画法を使用したりすると良いでしょう。
改善が完了したら、既存のプロセスに試験的に組み込み、本当に効果があるかを確認します。
管理(Control)
最後に、改善したプロセスが継続できるように管理(Control)します。
管理とは、対象となる全社員へ教育を行うことや、誰でも実行できるように標準化することなどが挙げられます。管理する人は、改善が継続できているかを定期的に確認することが重要です。
DMADV(ドマドブ)
DMADVとは定義(Define)、測定(Measure)、分析(Analyze)、設計(Design)、実証(Verify)の頭文字をとったものです。DMAICとの違いは、新規プロセスを作っていく際に行うステップという点です。
各ステップの詳細は以下の通りです。
定義(Define)
この時点ではまだプロセスが存在しないため、まずは企業戦略や顧客のニーズに沿ったプロセスを目標として定義(Define)します。
事業の目標や顧客の理想像なども考慮した目標にするのがポイントです。ガントチャートなどを使用して、予定表を作っておくと分かりやすいでしょう。
測定(Measure)
次に、新規プロセスやサービスに対して欠かせない要素「CTQ」を測定(Measure)していきます。CTQの意味が分からない方は、先にCTQの用語解説をご覧ください。
新規プロセスがどのようにCTQの達成に役立つかを特定し、品質に影響することが懸念される要因がある場合は、それを付け加えます。
分析(Analyze)
分析(Analyze)では、CTQを達成するための具体的な機能やサービスを選定します。
DMADVでもDMAIC同様に、ロジックツリーや特性要因図などのQC7つ道具で整理できます。
設計(Design)
設計(Design)では、ここまでの情報を駆使して、さらに詳細なプロセスに落とし込み、運用が可能であるか、評価やシミュレーションを行います。
プロセスを明確にすることで検証方法を考え、ニーズに一番合ったものを導入するのが目的です。
実証(Verify)
実証(Verify)では、設計した結果が、しっかり顧客を満足させられるかを検証していきます。
プロセスが開始したら先ほどのDMAIC手法にて、さらにプロセスを改善していくこともおすすめです。
シックスシグマを用いる3つのメリット
シックスシグマを用いることにより、主に以下の3つのメリットがあります。
長期的な改善効果
シックスシグマを活用した改善は、DMAICやDMADVといったステップにより行われます。そのため、個人の発想力などの要素に左右されません。
そのため、シックスシグマを活用した改善は、社内の誰もが利用できるノウハウとして共有化・蓄積されます。その結果、改善が蓄積されやすく、継続的な効果が期待できます。
汎用性が高い
シックスシグマは、製造業の品質改善のために生み出されましたが、現在では業種を問わずに活用できる手法となっています。そのため、多業種を取り扱う企業では横展開がしやすいのが特徴です。
また、シックスシグマに、規模の大きさは関係ありません。そのため、大企業から中小企業まで、多くの企業で同じように取り組めるのもメリットです。
人材育成に役立つ
シックスシグマのメリットは改善効果だけではなく、人材育成や組織能力の向上においても有効です。
シックスシグマのプロジェクトリーダーとなった人は、各部門や利害関係者を巻き込み議論する必要があります。たくさんの人と議論をすることで、全体を統括する進行能力や組織マネジメント力が身に付きます。
さらに、活動を通じて人脈が広がることもメリットです。人脈が広がると、座学ではなかなか学べないスキルに関しても自然と身に付くでしょう。
また、プロジェクトに参加したスタッフに関しても、能動的に業務を改善しようとする改善意識が身に付きます。スタッフ間での対話も必要とされるため、コミュニケーション能力の向上も期待できるでしょう。
リーンシックスシグマとの違い
冒頭で紹介したように、シックスシグマから派生したリーンシックスシグマも活用されています。
リーンとは「ムダの改善」のことを意味します。そして、リーンシックスシグマは、シックスシグマにムダやムラを取り除くリーン生産方式の考え方を追加した手法です。
シックスシグマはサービスの品質向上などの改善に使用されます。それに対して、リーンシックスシグマではリードタイムの短縮などの改善に使用される違いがあります。
シックスシグマに関連する用語について
シックスシグマを活用する際に、特に知っておきたい用語としては「VOC」と「CTQ」が挙げられます。
シックスシグマではVOCを起点としてスタートするため、いかに価値あるVOCを収集できるかがポイントです。ただしVOCを集めるだけでは業務改善に繋がらないため、これをCTQに変換する必要があります。
この2つの用語の理解度によって、シックスシグマの質が決まると言っても過言ではありません。しっかり理解しておきましょう。
VOC(Voice Of the Customer)
VOCは「Voice Of the Custimoer」の略で、文字通り顧客の声のことです。
顧客の声とはアンケートやメールなど、企業に直接寄せられた意見だけではありません。現代ではSNSやECサイトのレビューなども取り入れると良いでしょう。
しかし、本当のVOCを集めるのは容易なことではありません。集められるVOCのほとんどはクレームで、要望や改善策はほとんどないでしょう。
VOCを間違えると全く共感が得られない製品やサービスになるので、十分注意する必要があります。
CTQ(Critical To Quality)
CTQは「Critical To Quality」の略で、経営品質が決まる重要品質のことです。VOCがサービスを受ける側の言葉に対して、CTQは企業側の言葉とも言えます。
例えばVOCが「配達が遅れないこと」であれば、CTQは「週平均遅配数」です。
実践的な改善を行うには、VOCを自社が取り組むべき課題へと変換する必要があります。そのため、VOCからCTQに変換することがとても重要です。
まとめ
今回は、シックスシグマの基本について解説してきました。
シックスシグマは、製品のバラツキを極めて小さい状態にするために、統計学を用いて行われる改善手法です。当初は製造業の品質管理で用いられてきましたが、現在では他の業務改善でも取り入れられています。
シックスシグマを導入する際は、DMAICやDMADVといった5つのステップを行います。既存プロセスか、新規プロセスかで使い分けましょう。
シックスシグマを用いることで、長期的な改善が期待できたり、人材育成に役立ったりします。シックスシグマを活用して、よりよい製品やサービスが提供できるようになりましょう。