現場を管理する職長と安全衛生責任者には、それぞれ受講すべき講習があります。本記事では、各教育についてそれぞれの違いなどに触れつつ解説していきます。
また、それぞれの教育の実施目的や再教育の期限についても解説していきますので、今後、職長教育や安全衛生責任者教育の受講を控えている方や検討している方は、ぜひ参考としてください。
目次
職長教育とは?
職長教育とは、職長が職場において効果的かつ効率的なリーダーとなるための基本的な管理能力や指導力の育成に重点を置いた教育のことです。
職長として、職務を円滑に効果的に行うための知識やスキル、能力を身につけることが目的です。具体的にはコミュニケーション能力や問題解決能力、意思決定、計画、安全、労使関係などが教育内容となります。
また、講座を受講することで資格の取得となるので、合否の試験がおこなわれる他の資格に比べれば難易度は低いといえるでしょう。
職長の定義
職長とは、組織内の業務を円滑に運営するための責任者です。一般的に、現場で何人かの部下を直接指揮、監督し、与えられた仕事を完成させる責任と権限を持つ立場にある「現場第一戦の監督者」を指します。そのため、どのような組織においても、職長という役割は重要なポジションを担っているといえるでしょう。
また、組織のスタッフと管理部門の橋渡し役として、互いに良好な関係を維持し、組織メンバーのトップアドバイザーとして、スタッフへの指導、助言、サポートをおこなうといった役割もあります。
さらに、組織の内外のコミュニケーションを監督し、他リーダーと協力しながら組織が効果的かつ効率的に運営されるように尽力するといった裏方的な一面もあるため、コミュニケーション能力と対人スキルも必要だといえるでしょう。
まとめると、職長は組織力やコミュニケーション力、戦略性、問題解決力に優れた人材が求められる、非常に重要な役職であると言えます。
職長教育の概要
製造管理者のための職長教育は、講習参加者が今後職長として業務をおこなうために必要な知識と情報を提供するため、包括的なトピックをカバーしています。
教育概要には、生産計画と管理、予測、在庫管理、品質管理、リーン生産、サプライチェーン・マネジメント、オペレーションズ・マネジメントに関する内容が含まれます。スタッフの管理やトレーニング、育成の重要性を強調し、参加者が業務における目標設定と、達成に必要な要素を講習を通じて学ぶこととなります。
また、無駄の排除、プロセスの標準化など、リーン生産の原則を適用することについて知り、さらに、オペレーションズ・マネジメントの基礎と、それが製造業の現場でどのように適用されているかについても学びます。
最後に、この職長教育では、スタッフの管理やトレーニングと開発、そして業務における目標を設定し達成するために必要な事は何かに焦点を当てます。これには、採用・選考、パフォーマンス管理、職務設計、トレーニングプログラム・方針、育成活動などのトピックなどが含まれ、職長教育終了時には、参加者は製造業のマネージャーとして効果的な役割を果たすために必要な知識とスキルを身につけていることでしょう。
職長教育のカリキュラムは以下のようなものになっています。
- 職長等として行うべき労働災害防止に関すること(90分)
- 労働者に対する指導又は監督の方法に関すること(60分)
- 危険性又は有害性等の調査等に関すること(30分)
- グループ演習(130分)
- 安全衛生責任者教育(120分)
安全衛生責任者との違い
安全衛生責任者とは?
安全衛生責任者は、従業員、請負業者、訪問者が施設内で安全に過ごせるようにする責任を負う、組織内の高度な技術と知識を持った役職です。
主な役割として、ポリシーや手順の策定・実施、定期的なリスクアセスメント、トレーニングやアドバイスの提供、事故や事件の調査など、安全衛生のあらゆる側面に対して責任を負います。
そのため、安全衛生責任者には革新的な思考力、リーダーシップ、あらゆるレベルの人材と協働できる能力が求められ、その専門知識を通じて、会社が職場の安全に関するすべての関連する法律、規制、規範を遵守していることを確認します。
職長と安全衛生者の違い
職長と安全衛生責任者の役割は多くの点で異なっています。
職長は通常、特定の領域で他の人の仕事を監督する責任を負っています。これには、従業員の管理や、従業員と経営陣の間の連絡役としての役割も含まれる場合があります。
一方、安全衛生責任者は、職場が労働者と公衆の両方にとって安全であることを保証する責任を負っています。
職場の安全基準を満たすための評価や、安全プロトコルに関する従業員のトレーニングなどが含まれます。
2つの役割が重なることもよくありますが、主な違いは責任の範囲です。 職長は、通常行われている作業を担当するのに対し、安全衛生責任者は職場の安全規定全般を担当します。
職長教育/安全衛生責任者教育を行なう目的
安全・安心で生産性の高い職場環境を実現するためには、職長や安全衛生責任者に対する教育の実施が欠かせません。そのため、職長教育/安全衛生責任者教育をおこなうこととなります。
このような教育を行うことにより、職長は組織を効果的に管理し、安全衛生規則を確実に遵守するために必要なスキルと知識を得ることができます。
それぞれの講習を通して適切な教育を受けることで、監督者となる職長は職場の潜在的なリスクを特定し、事故や病気を防ぐための戦略を練るだけでなく、緊急事態時にうまく対処し、予測不可能な状況でも従業員の安全を確保するのに役立ちます。
この教育では安全への配慮に加え、組織の協力と生産性を促進する環境づくりに必要な知見を、職長となる参加者に提供し、職場スタッフの上司として効果的なコミュニケーションと問題解決策で、職場の問題に対処する必要性を学ぶことができます。
その結果、チームダイナミクスをより深く理解し組織メンバーを効果的に管理することで、職長は現場の上司として従業員の潜在能力とモチベーションを引き出し、可能な限り最高の成果をあげることに繋がるといえるでしょう。
結論として、監督者となる職長と安全衛生管理者に教育を行うことは、職場を成功に導くために不可欠な要素です。 適切な教育は、安全性、効率性、協調性の向上につながり、結果的に職場の全員が恩恵を受けることができます。
職長教育/安全衛生責任者教育を受講する方法
職長や安全衛生管理者のための教育を受講することは、今後の業務を行う中で非常に重要な部分といえ、職場全体の安全性向上につながる、貴重な情報を学ぶことに繋がっていきます。
教育コースに参加するには、一定の基準を満たす必要があります。まず第一に、教育コースへの参加を希望する職長または安全衛生管理者は、会社から正式な招待状を受け取っている必要があります。招待状には、コースの内容や開催日時、コース終了後に期待される成果などが記載されています。招待状を受け取った職長または管理者は、招待状を受け入れるか、または辞退することが可能です。
職長教育対象者は、職長教育未受講者もしくは職長業務従事後5年以上経過した方と指定され、平成13年(2001年)2月以前に職長教育を修了した方で、安全衛生責任者教育を修了していない方も対象者として指定されています。
職長教育/安全衛生責任者教育の受講の流れは以下の通りです。
- 招待を受けた職長は受講コースに登録する必要があり、オンラインで行うか、登録フォームを会社にファックスまたは郵送で送付します。
- 会社から受講コースの詳細、日時、終了予定時刻が記載された確認書が送付されます。
- 登録が完了したら、監督者または職長は、時間通りに到着し、講習を受講します。
- 受講コース終了後、監督者または職長は修了証書を受け取ることとなります。
職長や安全衛生管理者のための教育コースに参加することは、職場のレベルアップを目指すために必須事項といえ、現場の監督者としての監督能力の向上や監督技法を身につけるための最良の方法と言えます。
法改正で職長の安全衛生教育が義務になる業種が拡大
2023年4月1日施行の労働安全衛生法の改正により、以下の業種では新任の職長に対して、安全衛生教育を行うことが義務付けられました。
・食品製造業
・新聞業
・出版業
・製本業及び印刷加工業
この新しい規則は、労働災害の予防や従業員のヘルスケアに関する管理を強化し、組織の水準を向上させることを目的として導入されました。監督者は組織の要求に応え、チームを効果的に率いるための適切なスキルを身につけることができるようになります。
繰り返しになりますが、この変更により組織とその従業員に豊かな利益をもたらし、効果的かつ効率的な方法でチームを導くことができるようになることが期待されます。
まとめ
職長向け教育と安全衛生責任者向け教育の主な違いは、教育の目的です。
職長向け教育では、チームワーク、リーダーシップ、問題解決、コミュニケーションなど、効率的なマネジメントに必要な戦略やスキルに主眼が置かれています。一方、安全衛生責任者は、職場の安全を確保するために必要な、技術的な知識とスキルを身につけるための講習を受けます。
安全衛生管理者の教育では具体的に、法的規制、検査手順、危険の特定、リスク評価と管理、安全機器の適切な使用法、安全プロトコルなどを学びます。安全な労働環境の詳細な側面や、さまざまな種類の危険な事故への対応方法に関する情報も網羅されています。
さらに、安全ポリシーや手順の策定、職場の安全意識向上プログラムの構築方法なども学びます。
一方で職長は、チームを効果的に管理するためのトレーニングが必要です。これには、リーダーシップ、コミュニケーション、タイムマネジメント、問題解決、その他類似の分野についての指導が含まれます。
また、職場の人間関係を管理し、モチベーションを高め、対立を解決する能力も必要です。職長は組織的かつ効果的なチームビルダーでなければならず、チームを成功に導くためにチームの力学を理解することができなければなりません。
結論として、職長向けの研修と安全衛生責任者向けの研修には類似点がある一方で、明確な相違点もあります。
職長にはリーダーシップとチームビルディングに関するトレーニングが必要ですが、安全衛生責任者には危険の特定とリスクアセスメントに関するトレーニングが必要で、どちらも重要な要素です。