現場改善ラボ 記事一覧 お役立ち情報 フォークリフト点検は義務?点検の種類や項目、やり方について

かんたん動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」を展開する、現場改善ラボ編集部です。

倉庫内作業に欠かせないフォークリフトは、不具合による事故や労働災害を防止するためにも、定期的な点検が義務付けられています。しかし、「点検はいつ実施するべきか」「点検を抜けもれなくスムーズに実施するにはどうすべきか」などの疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか?

そこで本記事では、物流現場で15年以上フォークリフト作業に従事し、自ら点検を行ってきた筆者の視点で、労働安全衛生法規に基づいたフォークリフト点検の具体的な方法や点検を効率化し、確実に実施するためのポイントを詳しく解説します。

フォークリフトの点検の種類・法的な義務について

フォークリフトの点検は、その実施頻度や内容によって大きく以下の3種類に分けられます。

1.始業点検
(作業開始前点検)
2.月次点検
(定期自主検査)
3.年次点検
(特定自主検査)
頻度毎日の作業を開始する前1ヶ月を超えない期間ごと1年を超えない期間ごと
実施者主にフォークリフトの運転者(特定の資格要件なし)事業者が指名した者(特定の資格要件なし)資格を持つ検査者(登録検査業者など)
法的根拠
(安全衛生規則)
第151条の25第151条の22第151条の21
第151条の24
記録保管義務義務なし義務あり
(3年間)
義務あり
(3年間)

これらは、労働安全衛生規則によって事業者(会社)に義務付けられており、安全確保とコンプライアンス遵守のために必ず実施しなければなりません

【種類別】フォークリフトの点検の項目とやり方

ここでは、フォークリフトの点検の種類別に、それぞれの点検項目と具体的な点検方法について詳しく解説します。

「始業点検(作業開始前点検)」のチェック項目とやり方

始業点検は、当日の作業を安全に行うために運転者自身がフォークリフトの状態を確認する検査であり、労働安全衛生規則 第151条の25で以下の通り定められています。

事業者は、フォークリフトを⽤いて作業を行うときは、その日の作業を開始する前に、次の事項について点検を行わなければならない。

一 制動装置及び操縦装置の機能
二 荷役装置及び油圧装置の機能
三 車輪の異常の有無
四 前照燈、後照燈、方向指示器及び警報装置の機能

出典元:e-GOV法令検索「労働安全衛生規則 第百五十一条の二十五

始業点検時にチェックすべき項目、点検方法は以下の通りです。

チェック項目点検方法
制動装置(ブレーキ)及び操縦装置(ハンドル等)の機能・ブレーキペダルの踏みしろ、効き具合は適切か
・駐車ブレーキ(サイドブレーキ)は確実に効くか
・ハンドルを操作した際に、異音やガタつきはないか。スムーズに操作できるか
荷役装置(フォーク、マスト等)及び油圧装置(リフト・ティルトシリンダー等)の機能・フォークの上げ下げ、マストの傾き(ティルト)はスムーズに行えるか
・作動時に異音や異常な振動はないか
・油圧ホースやシリンダーから油漏れはないか
車輪(タイヤ)の異常の有無・タイヤに亀裂や著しい摩耗、損傷はないか
・ホイールナットに緩みはないか
タイヤに異物が挟まったり、刺さったりしていないか
前照灯(ヘッドライト)、後照灯(テールランプ)、方向指示器(ウインカー)及び警報装置(ホーン)の機能・各ランプ類は正しく点灯・点滅するか。レンズに汚れや破損はないか
・ホーンは正常に鳴るか

始業点検(作業開始前点検)を実施する際のポイント

始業点検(作業開始前点検)は、以下のポイントを押さえておくことをおすすめします。

  • 各車両ごとに担当者を決め、毎日決まった方が点検する
  • 「始業後10分間は点検」など、点検のために時間を設ける
  • 始業時点検に活用するチェックリストの活用

始業点検は重要で、例えば筆者は「バックレストのボルトの緩み」に気付き、締めなおしてから作業に取り掛かった経験があります。もし始業点検を怠っていれば、バックレストが落下し大事故につながっていたかもしれません。

「月次点検(定期自主検査)」のチェック項目とやり方

月次点検(定期自主検査)は、1ヶ月に1回、始業点検よりも詳細な項目について検査を行うものです。労働安全衛生規則 第151条の22に基づき、以下の項目などを点検します。

事業者は、フオークリフトについては、一月を超えない期間ごとに一回、定期に、次の事項について自主検査を行わなければならない。ただし、一月を超える期間使用しないフオークリフトの当該使用しない期間においては、この限りでない。

一  制動装置、クラツチ及び操縦装置の異常の有無
二  荷役装置及び油圧装置の異常の有無
三  ヘツドガード及びバツクレストの異常の有無

出典元:e-GOV法令検索「労働安全衛生規則 第百五十一条の二十二

月次点検時にチェックすべき項目、点検方法は以下の通りです。

チェック項目点検方法
始業点検の項目・始業点検で確認する全項目を、より詳細に確認
制動装置、操縦装置の異常の有無・ブレーキフルードの量は最適か
・パワーステアリング装置は正常に動作するか
荷役装置、油圧装置の異常の有無・リフトチェーンの張り具合や損傷はないか
・フォークの摩耗や変形はないか
・油圧ポンプやシリンダーの機能は正常か
・作動油の量は適切か
車体、付属品の異常の有無・ヘッドガード(屋根)に、フレーム損傷や歪みなどの異常はないか
・バックレスト(荷崩れ防止装置)にフレーム損傷や歪みなどの異常はないか
電気系統(バッテリー、配線等)の異常の有無・バッテリー液の量は適切か
・ターミナルに緩みや腐食はないか
・配線に被覆の損傷など異常はないか

月次点検(定期自主検査)を実施する際のポイント

月次点検も始業点検と同様に特定の資格が不要であるため、実務に従事する作業員が行うことがほとんどです。

実際に月次点検(定期自主検査)を行ってきた筆者が、特に重要と感じるポイントは以下の通りです。

  • 夏場はバッテリー液が減っていることが多い
  • ボルト類は始業点検(作業開始前点検)時よりも入念にチェックする
  • 必要に応じてグリスアップを行う

毎日実施する始業点検の項目にない点は、特に注意してチェックするようにしましょう。

「年次点検(特定自主検査)」のチェック項目とやり方

年次点検(特定自主検査)は、1年に1回実施が義務付けられている最も詳細な法定点検です。労働安全衛生規則 第151条の21に基づき、車両の構造や機能全般にわたって専門的な検査が行われます。

事業者は、フオークリフトについては一年を超えない期間ごとに一回、定期に、次の事項について自主検査を行わなければならない。ただし、一年を超える期間使用しないフオークリフトの当該使用しない期間においては、この限りでない。

一  圧縮圧力、弁すき間その他原動機の異常の有無
二  デフアレンシヤル、プロペラシヤフトその他動力伝達装置の異常の有無
三  タイヤ、ホイールベアリングその他走行装置の異常の有無
四  かじ取り車輪の左右の回転角度、ナツクル、ロッド、アームその他操縦装置の異常の有無
五  制動能力、ブレーキドラム、ブレーキシユーその他制動装置の異常の有無
六  フオーク、マスト、チエーン、チエーンホイールその他荷役装置の異常の有無
七  油圧ポンプ、油圧モーター、シリンダー、安全弁その他油圧装置の異常の有無
八  電圧、電流その他電気系統の異常の有無
九  車体、ヘツドガード、バツクレスト、警報装置、方向指示器、燈火装置及び計器の異常の有無

出典:e-GOV法令検索「労働安全衛生規則 第百五十一条の二十一

始業点検・月次点検との大きな違いは、原則として厚生労働大臣または都道府県労働局長に登録された検査業者、あるいは一定の要件を満たし、資格を持つ検査者が実施する必要があることです

そのため、自社に整備部門を持たないほとんどの企業が外部の検査業者に委託しています。

具体的な検査方法や判定基準について知りたい方は、「フォークリフトの定期自主検査指針|厚生労働省」をご覧ください。

年次点検(特定自主検査)を依頼する業者を選ぶ際のポイント

年次点検は外部の専門業者に依頼するケースが多いため、業者選びは非常に重要です。選定する際には、以下の点に考慮してつつ比較して選定してみてください。

資格の有無特定自主検査を実施できる正式な資格を保有しているか
実績と信頼性同業種での検査実績や長年の経験、顧客からの評判が良いか
技術力と設備最新の技術情報に対応でき、必要な検査設備が整っているか
対応の迅速さ点検後のフォローアップや、万が一不具合が見つかった際の修理対応が迅速か
費用の妥当性費用をはじめ、接客態度やアフターフォローが充実しているか

年次点検(特定自主検査)は、フォークリフトの安全性を総合的に評価する重要な機会です。信頼できる業者を選び、指摘された事項には適切に対応しましょう。

フォークリフト点検を効率的に行う方法

法定点検である始業点検・月次点検・年次点検を確実に実施することは不可欠ですが、日々の業務の中で効率的に行う工夫も求められます。

ここでは、その方法として以下の3つをご紹介します。

点検手順をマニュアル化する

フォークリフト点検を誰でも確実に行えるようにするためには、点検手順のマニュアル化がおすすめです。具体的な手順や判断基準が明確になることで、作業者によるバラツキや見落としを防げます。

実際に物流企業「株式会社近鉄コスモス」では、フォークリフトの始業時点検を以下のような動画マニュアルを作成し、点検作業を効率的に実施しています。

▼フォークリフトの始業前点検を解説した動画マニュアル▼

※「tebiki現場教育」で作成しています

紙のマニュアルではなく、点検の様子を撮影した動画でマニュアルを作成することで、文字だけでは伝わりにくい「異音の確認」「ボルトの適切な締付具合」などが、経験の浅い従業員でも正確に理解できます

なお、上記のマニュアル動画は、物流現場に特化した動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」を使い、現場作業員がスマホ1つで作成しています。tebiki現場教育の詳細機能や活用事例については、以下のリンクからご覧いただけるのであわせてご覧ください。


物流業に特化した動画マニュアル作成ツール「tebiki現場きゅ

項目をまとめた点検表を活用する

点検作業の抜け漏れを防ぎ、実施結果を確実に記録するためには、項目を網羅した点検表の活用が不可欠です。

点検表によって実施すべき項目がリスト化され、体系的かつ漏れなく確認作業を進められるようになります

始業点検については厚生労働省が点検表を提供しているので、そのまま利用するか、もしくはアレンジして活用してみてください。

参照元:フォークリフト作業開始前点検表|厚生労働省

点検を怠った際のリスクを伝える

フォークリフト点検の実施を促すためには、点検を怠った場合に生じる重大なリスクを作業員一人ひとりが深く理解することも効果的です。

リスクを正しく認識することで、点検作業に対する当事者意識を高め、単なる義務ではなく「自らの安全を守るための重要な行動」として捉える動機付けになります

具体的には、過去の事故事例や法的な罰則、生産停止に伴う経済的損失などを安全教育の場で伝え、ヒヤリハット事例を共有することで、リスクを「自分事」として認識させるのがよいでしょう。

フォークリフト作業のヒヤリハットについては、以下の記事で具体的な事例を含めて解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

関連記事:フォークリフトのヒヤリハット事例集と対策まとめ!危険予知の事例もあわせて解説

フォークリフト点検を実施するうえで理解しておくべきポイント

フォークリフト点検に関して、管理者として必ず押さえておくべき重要なポイントとして、以下の3つをご紹介します。

点検種別によっては資格が必要

年次点検(特定自主検査) は、専門的な知識・技術が求められるため、資格を持つ検査者が実施する必要があります。自社に整備部門を持っているような大手企業でなければ、外部業者に委託することが一般的です。

月次点検(定期自主検査)は、資格保有者による実施の法的な義務こそないものの、内容によっては専門知識が必要なため、事業者が適切と判断した者(資格保有者や十分な知識・経験を持つ者)を指名するか、外部に委託する必要があります。

なお、始業点検(作業開始前点検)は基本的に運転者が行いますが、正しい点検方法の教育は必須です。

点検した記録は保管する必要がある

年次点検・月次点検については、点検の結果を記録し、3年間保管することが労働安全衛生規則によって義務付けられています。

事業者は、前二条(※)の自主検査を行つたときは、次の事項を記録し、これを三年間保存しなければならない。

一  検査年月日
二  検査方法
三  検査箇所
四  検査の結果
五  検査を実施した者の氏名
六  検査の結果に基づいて補修等の措置を講じたときは、その内容

出典元:e-GOV法令検索「労働安全衛生規則 第百五十一条の二十三

始業点検(作業開始前点検)については、記録の保管義務は法律上明記されていないものの、万が一事故が発生した場合、点検が適切に行われていたかどうかが問われるため、実施した証拠として点検表にチェックし、一定期間保管することをおすすめします。

点検を怠ると罰則が課される

労働安全衛生法で定められた点検(始業点検・月次点検・年次点検)を実施しなかったり、虚偽の記録を作成したりした場合、以下の労働安全衛生法で定められている通り、罰則が科される可能性があります。

次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。

出典元:e-GOV法令検索「労働安全衛生法 第百二十条

事業者は、ボイラーその他の機械等で、政令で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、定期に自主検査を行ない、及びその結果を記録しておかなければならない。

出典元:e-GOV法令検索「労働安全衛生法 第四十五条

なお、点検不備が原因で重大な労働災害が発生した場合、企業の安全管理体制が厳しく問われ、社会的信用の失墜や、場合によっては業務停止命令などの行政処分に繋がる可能性もあります。法令に則った形で点検が行われるような体制の構築し、従業員の安全意識の向上に努める必要があるでしょう。

まとめ

本記事では、フォークリフトの安全運用に不可欠な始業点検・月次点検・年次点検について、労働安全衛生法規に基づいたフォークリフト点検の種類と具体的な方法、点検を効率化して確実に実施するためのポイントを紹介しました。

点検は欠かせない作業ですが、点検手順の徹底や教育、記録の管理には手間がかかることも事実です。特に、作業員の入れ替わりが多い現場や多忙な業務の中では、点検の形骸化が懸念されます。

そこでおすすめしたいのが、正しい点検手順・点検ごとの判断基準を動画で伝えられる物流現場に特化した動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」 の活用です。

特徴や他社での導入事例、導入後のサポートなどは以下の資料で詳しく紹介しています。下の画像をクリックしてサービス資料をご覧ください。


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