現場改善ラボ 記事一覧 お役立ち情報 フォークリフトのオイル交換時期とは?やり方や怠るリスク

物流や倉庫に特化した動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」を展開する、現場改善ラボ編集部です。

自社で管理するフォークリフトのメンテナンス担当者の方の中には、「フォークリフトのオイル交換は、いつ、どのくらいの頻度でやるべき?」「オイル交換を怠ると、どんな不具合やリスクがある?」などの疑問を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

フォークリフトのオイル交換は、適切な時期に正しい方法で行うことで、寿命を延ばし、予期せぬトラブルや事故のリスクを減らすことができます。

本記事では、フォークリフト作業に15年以上携わり、定期的に点検を行っている筆者が、フォークリフトのオイル交換の基本(目的、リスク、時期、方法)を解説します。

フォークリフトのオイル交換を行う目的

フォークリフトのオイル交換を行う目的として、オイルに以下3つの役割があるためです。

作用効果
潤滑作用エンジン内部やトランスミッション、油圧装置など、金属部品同士の摩擦を低減部品の寿命を延ばし、スムーズな動作を確保
冷却作用エンジンや油圧システムの熱を吸収し、外部に放出部品の過熱を防ぐ
清浄作用金属粉やスラッジをオイル内部に取り込み・分散エンジン内部や油圧系統をクリーンに保ち、性能低下や詰まりの防止

これらの作用を得るため、フォークリフトの定期的なオイル交換は欠かせない作業と言えます。一方でオイル交換を怠るリスクについては次の見出しで紹介します。

どんな危険がある?フォークリフトのオイル交換を怠るリスク

ここでは、以下の各項目ごとに、オイル交換を怠った場合にどのような危険性があり、どんな故障のリスクがあるのか、表にまとめました。

オイル種類主な危険性・不具合具体的な故障・症状
エンジンオイル燃費悪化、エンジン性能低下、オーバーヒート、エンジン焼き付きスラッジ蓄積、部品摩耗、ピストン焼き付き、白煙、異音、オイル上がり・下がり、オイル漏れ
ハイドロリックオイル(作動油)荷役能力低下、動作不良、油圧部品の損傷、自然降下油圧ポンプの異音・故障、シリンダーからのオイル漏れ、操作レスポンス悪化、フォークの自然降下
ATF・ミッションオイル変速不良、走行性能低下、トランスミッション内部部品の摩耗・損傷変速ショック増大、ギア滑り(ATF)、ギアの入り不良(MT)、異音、走行不能
デフオイル旋回性能悪化、異音、ディファレンシャルギアの損傷走行中の唸り音・ゴリゴリ音、カーブでの曲がりにくさ
ブレーキオイルブレーキ性能著しく低下、ブレーキ効かずベーパーロック現象、ブレーキペダルの沈み込み(スポンジーな感触)、ブレーキ鳴き、オイル漏れ

オイル交換を怠った場合、フォークリフトを構成するあらゆるオイルに不具合が発生するリスクがあり、故障につながる可能性も高まります。

仮にフォークリフトの走行中に不具合が発生し、ブレーキやハンドル操作が正常に動作しなくなってしまうと、事故や労働災害に発展することもあるでしょう。フォークリフトの事故は、大きな労働災害につながる可能性が高いため、正しい方法で定期的にオイル交換が行われる体制を構築することが重要です。

フォークリフト事故の実態や事例、具体的な対策を盛り込んだ関連記事も用意しているので、以下もあわせてご覧ください。

関連記事:【最新】フォークリフト事故の実態!事例や発生件数・原因について

フォークリフトのオイル交換の適切な時期

一般的に、フォークリフト各オイルの交換時期は、稼働時間(アワーメーターの数値)または経過期間のどちらか早い方を基準に判断します。

ただし、これはあくまで目安であり、フォークリフトの使用状況(稼働頻度、負荷の大きさ、作業環境など)や、使用しているオイルの種類・グレードによって調整が必要です。

ここでは、主要なオイルごとの一般的な交換時期の目安を表でご紹介します。

オイル種類交換時期目安
(期間)
交換時期目安
(稼働時間)
備考
エンジンオイル1~3ヶ月100~300時間メーカー指定オイルで延長される場合あり。期間での交換も重要。
ハイドロリックオイル6ヶ月~1年1200~2400時間メーカーやオイルグレードにより異なる。フィルター同時交換推奨。
ATF
(オートマフルード)
6ヶ月~1200時間~ 車両や使用状況による。変速ショック等で判断も。専門業者への相談推奨。
MTオイル
(ミッションオイル)
6ヶ月~1200時間~車両や使用状況による。ギアの入り等で判断も。
デフオイル6ヶ月~2,3年
(自動車参考)
1200時間~
(自動車参考)
メーカー推奨6ヶ月/1200時間情報あり。漏れにも注意。
ブレーキオイル12~24か月2400時間車検ごとの交換が一般的(自動車)。吸湿性があるため期間での管理が重要。

出典元:トヨタL&F宮崎部品交換はお早めに!

上記の表はあくまで一般的な目安です。メーカーや車種により異なるので、必ずご使用のフォークリフトの取扱説明書を確認し、指定された交換時期やオイルの種類・グレードを守ってください。

また、過酷な条件下や長時間連続で使用される場合は、上記の目安よりも早めの交換を心がけましょう。

フォークリフトのエンジンオイル交換のやり方

最も頻度が高く、自社で行う場合も多々あるエンジンオイル交換の基本的な手順は以下の通りです。

  1. 必要な道具の準備
  2. 安全の確保
  3. 古いオイルを排出
  4. フィルター交換
  5. 新しいオイルを注入
  6. 最終確認

それぞれ詳しく見ていきましょう。

手順1:必要な道具の準備

まずは、エンジンオイル交換に必要なものを準備しましょう。

必要な道具概要
新しいエンジンオイルフォークリフトの機種やエンジンの種類(ガソリン/ディーゼル)に適合した、メーカー推奨のグレード・粘度のオイル。
※必要量は事前に取扱説明書で確認してください。
オイルフィルターエンジンオイル交換と同時に交換するのが一般的。適合する品番のものを用意。
ドレンプラグ用ガスケット
(ドレンワッシャー)
オイルパンのドレンプラグに取り付けるパッキン。オイル漏れを防ぐため、基本的に毎回新品に交換。
メガネレンチ
またはソケットレンチ
ドレンプラグ用、オイルフィルターレンチに適合するもの。
オイルフィルターレンチフィルターの形状やスペースに合わせて選択
オイルジョッキ新しいオイルを注ぐための容器
パーツクリーナー部品の清掃用
ウエス拭き取り用。布やペーパータオル
オイル受け皿
(廃油処理箱)
作業用排出する古いオイルを受けるための容器。廃油の量に見合った容量のものを用意し、自治体のルールに従って適切に処理できるものを選択。
保護具作業用手袋(耐油性)、保護メガネ等

手順2:安全の確保

作業を始める前に、安全を確保するための準備を徹底しましょう。

項目概要
平坦な場所で作業するフォークリフトが傾かない、安定した平坦な場所を選択する
輪止めをする車両が不意に動き出さないように、必ずタイヤに輪止めをする
エンジンを適度に暖機し
冷ます
オイルが温まっている方が抜けやすくなるので1分程度暖機運転する。しかし、エンジン停止直後はオイルやエンジン部品が高温になっており火傷の危険があるため、エンジンを停止して数分程度待ち冷ます
保護具を着用する手袋、保護メガネを着用し、肌の露出の少ない服装で作業する
火気厳禁を徹底するオイルは引火性があるため、作業場所の周囲は火気厳禁を徹底する

手順3:古いオイルを排出

準備が整ったら、以下の手順で古いオイルを排出します。

手順詳細
オイルフィラーキャップを緩めるエンジン上部のオイルフィラーキャップを少し緩める/取り外す
オイルパンの位置を
確認する
エンジン下部にあるオイルパンと、その底部にあるドレンプラグの位置を確認する
オイル受け皿をセットするドレンプラグの真下にオイル受け皿をセットする
ドレンプラグを外すプラグが完全に外れるとオイルが一気に流れ出てくるので、火傷・オイルが周囲に飛び散らないように気をつけながらプラグを取り外す
オイルを完全に排出するオイルが出てこなくなれば完了

手順4:オイルフィルター交換

オイルを抜いている間に、以下の手順でオイルフィルターを交換しましょう。

  1. フィルターレンチを使い、反時計回りで古いフィルターを取り外す
  2. エンジン側の接合面を、ウエスなどで綺麗に拭き取る
  3. ゴムパッキン部分に、新しいエンジンオイルを薄く塗布する
  4. 新しいフィルターを取り付ける

なお、再度の新しいフィルターを取り付ける工程では、最初は手で時計回りに、最後はフィルターレンチを使って規定のトルクで締め付けるのがポイントです。

締めすぎはパッキンを傷め、逆にオイル漏れの原因になるので十分に注意しましょう

手順5:新しいオイルを入れる

古いオイルを排出し、フィルター交換が終わったら、新しいオイルを以下の手順で注入します。

手順詳細
ドレンプラグを取り付ける交換した上で、ドレンプラグをオイルパンのドレンホールに取り付ける
規定量のオイルを注入するオイルジョッキを使って規定量の新しいエンジンオイルをゆっくりと注入する。
※オイルレベルゲージで確認しながら、アッパーレベル、ロワーレベルの間に収まるように調整
オイルフィラーキャップを閉めるオイルフィラーキャップを確実に閉める

手順6:最終確認

最後に、以下の手順で確認作業を行い、問題がなければ作業終了です。

手順詳細
エンジンを始動するエンジンを始動し、2~3分程度アイドリングさせる
オイル漏れの確認アイドリング中/エンジン停止後、ドレンプラグ周辺やオイルフィルターの取り付け部分からオイルが漏れていないかを確認
オイル量の再確認エンジンを停止し、再度オイルレベルゲージでオイル量を確認
後片付けと廃油処理排出された古いオイル(廃油)は、法令や自治体のルールに従って適切に処理

フォークリフトのオイル交換に関する課題

フォークリフトのオイル交換は、安全稼働のために欠かせないメンテナンス作業ですが、実際の現場では以下のような課題を抱えているケースも少なくありません。

それぞれの課題について詳しく紹介していきます。

作業者によってオイル交換のやり方が異なる

オイル交換の手順や注意点が標準化されずに作業者ごとにやり方が異なると、手順の省略や間違ったオイルの使用などの問題が生じがちです。例えば、古いオイルを排出する作業が正しいやり方で行われていなかったり、オイル交換の最終確認が不十分であったりなど、わずかでもやり方に違いがあると、不具合や故障の原因になります。

オイル交換のやり方を標準化する上で、マニュアルの作成や整備に取り組んでいる現場も多いかもしれませんが、交換する手順や部品などの詳細が伝わりにくいなどの悩みもあるでしょう。

どれだけマニュアルを整備しても、「現場で使われなければ、意味がないマニュアル」になってしまうことも…。以下の資料では、現場で使われる作業手順書を作成するポイントについて解説しています。下の画像をクリックして資料をご覧ください。


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オイル交換の作業が属人化している

オイル交換は慣れていない人にとっては比較的難しい作業なので、特定の従業員しか対応できずに「属人化」している傾向があります。

例えば、ドレンボルトの締め具合やオイル量の調整など、慣れやカンコツが求められる作業であるため、若手の従業員が担当するケースはあまりありません。教育するにも時間が作れず、それなら「いつもの担当者に任せておこう」となってしまうものです。

オイル交換のようなカンコツの要素が強く、数ヶ月に1度の頻度で発生する業務は属人化しがちな傾向があるので、標準化できるような仕組みを整備するのが大切です。以下の資料では、属人化しているカンコツ作業を標準化するための方法などを簡潔にまとめていますので、あわせてご覧ください。

>>「“伝わらない”“属人化している”カンコツ作業を標準化する最適解」を見てみる

フォークリフトのオイル交換作業を誰でも正しく実施する方法

オイル交換の作業手順やルールなどをテキストや画像などでまとめたとしても、受け取り手によって認識にばらつきが発生したり、アップデートされずに形骸化したりなどのリスクがあるので最適とは言えません。

オイル交換作業の標準化を進める上で大切なのは、「熟練者の作業風景をいつでも確認できる環境の整備」です。実作業の映像を視聴できることで、不明点が発生したときに正しい手順を見返すことができたり、逐一ベテラン社員に質問したりする手間もなくなります。

例えば、物流企業「ソニテック株式会社」では、作業の標準化に取り組む上でマンツーマン教育から、動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」で作成した動画マニュアルを社内に展開。動画を見るだけで教育が行えるため、教育の工数削減や教育品質の均一化などの効果を実感しています。

同事例のように、オイル交換の様子を動画に撮影し、補足説明の字幕や音声による解説を入れることによって、熟練者の作業風景をいつでも確認できる環境を整備できます。事例の詳細を詳しく知りたい方は、こちらの記事「3ヶ月間の直接指導を動画マニュアルで完全に置き換え、業務の効率化を実現」をご覧ください。

また、動画マニュアルによる標準化はオイル交換だけではなく、フォークリフトの基本操作や安全教育にも活用できます。物流業界での動画マニュアルの活用事例については、以下の資料でも解説しているのであわせてご覧ください。


製造業・物流業における安全教育の取組み事例をみる

まとめ

フォークリフトの安定稼働と長寿命化、そして何よりも作業現場の安全を守るためには、適切なオイル管理が不可欠です。

エンジンオイル、ハイドロリックオイル、トランスミッションオイルなどの各種オイルの役割を理解し、交換を怠った場合のリスクを認識した上で、メーカー推奨時期と使用状況に応じた計画的な交換を徹底するのが大切です。

なお、属人化しがちなオイル交換作業を標準化するうえでは、動画マニュアルを活用した「熟練者の作業風景をいつでも確認できる環境の整備」です。動画マニュアルの活用を検討している方は、以下の動画マニュアル活用ガイドもあわせてご覧ください。

>>「はじめての動画マニュアル作成ガイド」を見てみる

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