かんたん動画マニュアル作成ツール「tebiki」を展開する現場改善ラボ編集部です。物流や製造の現場において欠かせないフォークリフトですが、人と機械が行き交う場所においては、常に衝突や挟まれなど労働災害のリスクが伴います。こうした危険を防ぐため、労働安全衛生法(安衛法)に基づき、事業者は厳格な安全基準を満たす必要があります。
本記事では、倉庫現場の安全に責任を持つ安全衛生部門の責任者の方に向けて、フォークリフト作業指揮者の法的な定義や具体的な役割について解説します。
現場の安全を保つためには、マニュアルの整備が欠かせません。特に、伝えられる情報量や理解のしやすさからテキストベースのマニュアルより、動画のマニュアルがおすすめです。動画マニュアルを活用した事例は、「 動画マニュアルを活用した安全教育・対策事例(pdf)」をご覧ください。
目次
フォークリフト作業指揮者とは?安衛法に基づく選任義務と定義
フォークリフト作業指揮者の基礎知識について紹介します。
- 作業指揮者の定義と労働安全衛生法における位置づけ
- 選任が義務付けられるフォークリフトの対象作業
- 作業主任者や職長と作業指揮者の違い
- 作業指揮者を選任・配置しなかった場合のリスク
作業指揮者の法的定義や選任条件、配置しなかった際のリスクについて見ていきましょう。
作業指揮者の定義と労働安全衛生法における位置づけ
フォークリフト作業指揮者は、「車両系荷役運搬機械等」を使用する際、危険を防止するために重要です。労働安全衛生規則第151条の4においてこれらの機械を用いて作業をする場合、あらかじめ作業指揮者を定め、作業計画に基づいた指揮を行わせなければならないと規定されています。
フォークリフト作業指揮者は、作業手順を決定し、的確な指示を出す現場の安全統括責任者です。事故が発生しないように、現場全体をコントロールする役割を担っています。
関連資料:【製造業向け】労働安全衛生法とは?義務一覧や罰則・安全対策の具体例
選任が義務付けられるフォークリフトの対象作業
フォークリフトの作業指揮者の選任義務は、大きく2つの根拠条文に基づきます。
まず、労働安全衛生規則第151条の4では、フォークリフトを含む「車両系荷役運搬機械等」を用いて作業を行う場合、荷物の重量にかかわらず作業指揮者を定め、作業計画に基づいた指揮を行わせなければならないと規定されています。複数人で作業をする場合はもちろん、原則としてフォークリフトの運転手以外にピッキング作業員やトラック運転手などが同じ空間に混在する環境では、指揮者の配置が必要です。
さらに、同規則第151条の70では、100キログラム以上の荷を貨車や自動車等に積み込む・積み卸す作業(荷役作業)を行う際にも、作業指揮者を選任して直接指揮させることが定められています。こちらはフォークリフトに限定された規定ではありませんが、実務上フォークリフトを用いた荷役作業で該当するケースが多いため、あわせて押さえておきましょう。
このように、フォークリフトを使う現場では、周囲に人がいる環境での指揮者配置はほぼ必須と考えておく必要があります。
作業主任者や職長と作業指揮者の違い
現場の安全管理を担う役職として、作業主任者や職長がありますが、これらは作業指揮者とは異なります。
作業主任者は、都道府県労働局長の技能講習を修了し資格を取得した者で、特定の危険有害業務を取り扱います。一方、作業指揮者は特定の資格を必要とせず、事業者が実務経験等を踏まえて選任します。
また、職長は現場全体を統括する監督者ですが、作業指揮者はフォークリフトを用いた特定作業の指揮を執る役職です。
作業指揮者を選任・配置しなかった場合のリスク
フォークリフト作業指揮者を配置しなかった場合は、労働災害のリスクが高まります。労働災害が発生した場合、企業は安全配慮義務違反を問われ、被害者やその家族から高額な損害賠償を請求されるリスクがあります。
また、労働基準監督署からの是正勧告による操業停止や企業のブランドイメージの致命的な毀損など、経営を揺るがす2次的被害につながる恐れもあります。適切な選任は、コンプライアンスの観点からも絶対に欠かせません。
フォークリフト作業指揮者の具体的な役割・実務内容
フォークリフト作業指揮者の具体的な役割や業務は、下記のとおりです。
- 安全な作業計画の策定
- 作業開始前の現場環境点検
- 立入禁止区域の設定
- 接触・はさまれ・転倒などの労働災害を防ぐための安全確認
- ヒヤリハット事例の収集・分析
作業指揮者が日々行うべき業務内容や、現場で発生しやすい労災を防ぐための物理的・運用的なチェックポイントについて解説します。
安全な作業計画の策定
作業指揮者の重要な業務のひとつが、作業計画書の作成と運用です。作業計画書には、フォークリフトの運行経路や荷物の積載方法など、安全作業の基本となるルールが定められます。
作成した計画は、関係するすべての作業員に確実に周知・徹底しなければなりません。また、天候不良による路面の変化やイレギュラーな重量物の搬入など、現場の状況は日々変化します。状況に合わせて計画を柔軟に見直し、常に実態に即した安全対策を講じ続ける必要があります。
作業開始前の現場環境点検
事故を防ぐため、作業着手前には現場環境の入念な点検が必要です。路面の凹凸や水濡れ・油汚れによるスリップの危険性、倉庫内の照度不足など、事故を誘発する環境要因を一つひとつ確認します。
特に、死角となりやすい交差点や置かれた資材などは、接触事故の原因となります。5Sの観点からもチェックが欠かせません。専用のチェックリストを用いて点検項目を可視化し、抜け漏れを防ぐ仕組みの構築が有効です。
立入禁止区域の設定
接触による重大事故のリスクが高いエリアには、立ち入りを原則禁止とするルールを徹底する必要があります。口頭で注意するだけでなく、カラーコーンやトラテープなどを用いて、視覚的に立入禁止区域を明確化することが重要です。
また、どうしても人が接近しなければならない場合は、死角外に誘導者を配置しましょう。運転手との間で手信号やホイッスル、指差呼称などの明確な合図の出し方を事前に取り決めておくことが重要です。
接触・はさまれ・転倒などの労働災害を防ぐための安全確認
作業中のリアルタイムな安全確認も、作業指揮者の重要な実務です。フォークリフト特有の事故パターンとして、旋回時の振れによる接触やマストとヘッドガードの間への挟まれ事故などがあります。これらを防ぐため、運転手の操作を厳しく監督します。
また、積荷の重心ズレや視界を遮るほどの高積みは、転倒につながりかねません。適正な積載ルールが守られているかを常に確認しましょう。
ヒヤリハット事例の収集・分析
事故には至らなかったものの大惨事になりかけたヒヤリハットを収集することが、将来の労働災害を防ぐために重要です。そのために、現場の作業員がすぐに報告できる、風通しの良いフローを作りましょう。
集まった事例に対しては、「なぜその事象が起きたのか」を分析し、具体的な改善策へと落とし込みます。分析結果は定期的に共有し、現場全体の危険に対するアンテナを高く保ち続けるために活用します。
関連記事:ヒヤリハットとは?報告書の例文・書き方や対策方法、語源について
フォークリフト作業指揮者に必要な資格・講習
フォークリフト作業指揮者に必要な資格・講習について解説します。
- 作業指揮者に求められるスキルセット
- 特別な資格は必ずしも必要ではない
- 実務上受講が推奨される講習とは
- フォークリフトの運転者と作業指揮者は兼任しないのが一般的
作業指揮者に選任される人物が備えるべきスキルや、安全管理能力を向上させるために推奨される教育体系について見ていきましょう。
作業指揮者に求められるスキルセット
作業指揮者には、フォークリフトの死角や扱う荷物の特性を熟知しなければなりません。そのため、現場で十分な運転実務経験を持っていることが望ましいとされています。
また、技術的な知識だけでなく、マネジメントに関するスキルも必要です。万が一の異常発生時にはパニックに陥ることなく、機械の緊急停止や救護活動など冷静な対応力も重要です。
特別な資格は必ずしも必要ではない
安衛法上、作業指揮者という役職に就くための国家資格や専用の免許証は義務付けられていません。しかし、だからといって誰でも無条件で指揮者になれるわけではありません。
フォークリフトの専門知識を持たない者が的確な指揮を執ることは不可能です。実務を深く理解している証明として、最低限「フォークリフト運転技能講習修了者」から選任することが、現場の安全を守るための大前提となります。
実務上受講が推奨される講習とは
法的な義務がなくても、作業指揮者の能力を向上させるためには相応の教育が欠かせません。たとえば、職長・安全衛生責任者教育を受講させることで、現場の安全管理に必要な知識を体系的に学べます。
また、各都道府県の労働災害防止協会や労働基準協会などが、作業指揮者向けに特化した社外講習やセミナーを実施しています。積極的に受講させるのがおすすめです。
継続的な教育が指揮者のマネジメントスキルを高め、結果的に労災を防ぐ有効な手段となります。
フォークリフトの運転者と作業指揮者は兼任しないのが一般的
フォークリフトの運転手が作業指揮者を兼任するケースが見られます。法令上、明確に禁止する規定はありませんが、実務上はおすすめできません。
運転中は、荷物のバランスやレバー操作に集中する必要があり、どうしても視野が狭くなります。そのような環境で、運転手が周囲の状況を客観的に把握して的確な指揮を出すことは困難です。
そのため、運転者と作業指揮者は兼任しないのが一般的です。
フォークリフト作業指揮者が徹底すべき現場の安全基準
フォークリフト作業指揮者は、安全第一に業務を遂行しなければなりません。どのような基準があるのか紹介します。
- フォークリフト作業における禁止事項
- 単独作業時における安全確保のルール
- 現場の安全を守るために必要な掲示義務
ひとつずつ見ていきましょう。
フォークリフト作業における禁止事項
フォークリフトの運用において、パレットの上に人を乗せて昇降させる高所作業や運転席以外の場所へ人が乗る定員外乗車は、転落すると死亡事故にもつながるため、厳しく禁じられています。
また、日常業務では、
- 制限速度の超過
- 急発進・急旋回
- フォークを高く上げたままの走行
- エンジンキーを付けたままの離席
などが挙げられます。違反を発見した場合、フォークリフト作業指揮者は直ちに作業を停止させ、厳しく是正指導を行わなければなりません。
単独作業時における安全確保のルール
夜間や休日など、人員の都合で作業指揮者を配置できない単独作業時にも、注意が必要です。単独作業中に事故が発生した場合、発見が遅れ、致命傷になる恐れがあります。
そのため、単独作業を許可する場合には、特別なルールを策定するのがおすすめです。作業の開始時間と終了時間を管理者に申告することやスマートウォッチ等のデバイスを活用して一定時間ごとに安否連絡を入れる仕組みなどが有効です。
現場の安全を守るために必要な掲示義務
フォークリフトの作業指揮者の「選任」と「指揮の実施」は義務ですが、「指名の提示」までは法律上の義務とはされていません。というのもフォークリフトは「作業主任者」という国家資格・役職自体が存在しないためです。
したがって、作業主任者がいないフォークリフトだからこそ作業指揮者が安全の要になります。
立入禁止区域や制限速度といった重要なルールは、文字だけではなくイラストを使ったポスターで視覚化しましょう。多言語対応を含めて、作業員全員の意識に深く定着させることが重要です。
フォークリフト作業指揮者による安全ルールの標準化
安全に関するルールを定めたら、それを標準化しましょう。具体的な内容は、下記のとおりです。
- 勘やコツに依存した属人化からの脱却
- 正しい安全ルール・作業手順の可視化とマニュアル整備
- 新人にも伝わる仕組み作り
- 安全教育の形骸化を防ぐ仕組みと動画マニュアルの活用
- 定期的なKYTと5S活動
現場の安全教育において、ベテランの勘に頼る属人化は大きな課題です。安全な現場を作るための教育体制の構築とルールの標準化手法について解説します。
勘やコツに依存した属人化からの脱却
ベテラン作業員独自の勘やコツに頼った安全管理は、重大な事故の原因となりかねません。作業者のスキルによって理解度が異なるため、特に経験の浅い新人は事故の確率が高まります。
個人のスキルや経験に依存した属人化から脱却し、組織全体として一貫した安全管理を徹底するためには、業務手順の標準化が最重要項目です。属人化を排除し、誰もが同じ基準で動ける現場環境を作ることが、根本的な安全対策となります。
正しい安全ルール・作業手順の可視化とマニュアル整備
属人化を解消するためには、手順を「誰がやっても同じで安全な結果になる」レベルにまで言語化し、標準化しましょう。
マニュアルを作成するポイントは、現場の写真や図解を多用し、直感的に理解・確認できる内容にすることです。また、マニュアルは一度作って終わりではありません。新たなヒヤリハット事例が発生した際や倉庫のレイアウト変更があった場合には、その都度内容を見直し、常に最新の安全基準が反映された状態にアップデートし続ける運用が重要です。
新人にも伝わる仕組み作り
現場の安全教育において指導内容が指導者によって異なると、教えられる新人は混乱し、誤った手順を定着させてしまう恐れがあります。
教え方のばらつきを防ぐためには、指導する項目を統一した教育プログラムや、習熟度を可視化するスキルマップの作成が有効です。現場での実地訓練だけに任せるのではなく、事前に座学でしっかりとしたルール理解を促し、その後に実技指導を組み合わせるという体系的で均一な教育プログラムを構築しましょう。
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安全教育の形骸化を防ぐ仕組みと動画マニュアルの活用
分厚い紙のマニュアルや座学講習だけでは、なかなか安全意識が定着しません。せっかくの教育が形骸化してしまうという悩みを抱えるケースは多いです。
そこで有効な解決策となるのが、動画マニュアルの活用です。実際の現場の映像を用いて、正しい操作手順や危険な行動のポイントを説明することで、紙以上の高い効果を発揮します。また、多言語に対応した動画マニュアルであれば外国人労働者に対しても直感的に「何が危険か」を伝えられるため、外国人労働者が多い場合におすすめです。
関連資料:動画マニュアルを活用したフォークリフトの安全教育・対策事例
定期的なKYTと5S活動
安全ルールの標準化を現場の文化として根付かせるためには、日々の継続的な活動が必要です。イラストや現場写真を見ながら「どこに危険が潜んでいるか」を作業員同士で話し合うKYT(危険予知訓練)は、安全への意識を高めてくれます。
関連記事:KY活動(危険予知活動)の進め方は?記入例文やネタ切れ対策を紹介【エクセルシート付】
また、徹底した5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)は、フォークリフトの安全走行に影響を与えます。床のゴミがスリップや転倒の引き金になることを理解し、現場をクリーンな状態に保ちましょう。
関連資料:生産性を高める5S活動 正しい運用に欠かせない「重要なS」とは
まとめ:フォークリフト作業指揮者の適切な選任で安全な現場環境の構築を
フォークリフト作業指揮者の選任は、労働安全衛生法で定められた事業者の義務であると同時に、重大な労働災害から従業員を守る施策です。現場の状況に合わせて適切な作業計画を運用し、安全を管理するフォークリフト作業指揮者の存在は欠かせません。
また、勘に頼らない安全教育の標準化やマニュアル整備による仕組み化を推進することが、根本的な現場改善へとつながります。社内の安全教育体制を改めて見直し、フォークリフト作業指揮者を適切に選ぶことで安全な環境づくりを心がけましょう。











