原価管理に課題を感じ、システム導入に向けて選び方の基本を知っておきたいという方もいるのではないでしょうか。原価管理システムとは、原価低減やリスク管理としても有効なシステムで、原価管理業務の効率化を行うことが可能です。
原価管理システムは導入することによって業務効率化、企業利益の最大化など、あらゆる方面から高い効果を発揮します。
この記事では原価管理システムの基本から比較、選び方までを解説し、最適な導入に向けた方法を紹介します。
目次
原価管理システムとは?
原価管理システムとは、原価に関わるデータ収集や管理、複雑な計算を効率的に行うことで、原価を正確に把握し管理するシステムです。
従来は原価管理を人によって行われてきましたが、業務改善や利益向上を図るべくシステムによって管理する原価管理システムが開発されました。
また、あらゆる業種で原価管理の重要性は高く、多くの企業で取り組まれている課題のひとつでもあります。
原価管理システムの主な機能
主な機能 | 原価管理に必要な収集データ |
原価計算原価差異分析損益計算配賦計算原価シミュレーションシステム連携 | 材料費労務費製造経費直接費間接費変動費固定費 |
原価管理システムは原価管理に必要な複数の機能が搭載されています。
システムによって収集されたデータをもとに計算や分析、シミュレーションを行い、計算されたデータを活用し原価を管理するのが主な機能です。
システムには主に原価計算や原価差異分析、損益計算、配賦計算、原価シミュレーション、システム連携があり、材料費や労務費などのデータを収集しています。
収集したデータに基づき必要な計算をシステムが行うため、業務の効率化を図ることができるでしょう。他に業務効率化が図れるシステムとしては、販売管理システムやMESなどが挙げられます。
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原価管理の方法と仕組みについて
原価管理は、設定した原価と実際にかかった原価の比較から分析し、改善することで差異を小さくする狙いがあります。
原価管理で行う改善では基本的に、原価を設定する原価企画に原価を目標調整する原価維持、原価低減を目指した原価改善の3つの必須アクションがあります。どれも現状の原価を正しく把握する必要があります。
原価管理システムとERPの違いとは
原価管理システムは原価管理に必要な機能やデータ収集のための連携機能が搭載されていることに対し、ERPは基幹システムとしてあらゆる機能や情報が集約し一元化されています。
ERPの中には原価管理システムが基幹システムのひとつとして搭載されているものがあり、ERPにはデータがすでに集約されているため、データ収集に必要であった連携が不要です。集約された基幹システムから原価管理システムに必要な情報を与えることができるので正確かつ明瞭な原価管理を行うことができます。
ERPに存在するデメリットをクリアできれば、原価管理システム搭載のERPを導入できると一定のコストはかかるもののさらに高い効果が期待できるでしょう。
原価管理システムの目的
原価管理の目的は原価を正確に把握し価格設定を行うことであり、人ではなくシステム上で行うことで原価やリスクを低減することで利益最大化させる狙いがあるほか、業務改善の効果も期待できるでしょう。
ではどのように利益の最大化ができるのか見ていきましょう。
原価管理システムと利益管理
利益管理は、利益を生み出す具体的な計画を立てる上で必要です。原価管理から導き出されたデータをもとに利益管理を行うことで利益の最大化が期待できるため原価管理と利益管理には、密接な関係があります。
原価管理システムでリスク管理
原価管理における最大のリスクは、発生する課題が急を要さないことが多いため、先延ばしにできてしまうことだといえます。本来、原価管理を確実に行うことで損失を減らし利益を高めることができますが、先延ばしにすることでこれらの損失は積み上がっていくでしょう。
また、リスクを放置することで新たなリスクの発生源になる場合もあります。しかし、原価管理の全体像を把握している人材は少なく、課題が潜在化してしまう場合もあります。そういった課題への対策として、潜在的リスクも可視化しやすい原価管理システムの導入が効果的だと言えるでしょう。
原価管理システムの種類とタイプ
原価管理システムには複数の種類やタイプが存在します。汎用性も大切ですが確実に運用可能であり効果の高いシステムを選ぶことが重要です。
まずは原価管理システムの種類やタイプについて紹介していきます。
原価管理システムの種類
原価管理システムを導入するにあたって、主にWebサーバーを利用するクラウド型と、ローカルサーバーを利用するオンプレミス型から選択する必要があります。中にはクラウド型とオンプレミス型のソリューションを組み合わせたハイブリッド型も存在します。
それぞれ選択するうえで、知っておきたいメリットとデメリット、特徴を紹介します。
クラウド型
クラウド型はWebサーバーを利用するため、費用が月額料金であり初期費用を考える必要がありません。しかし、クラウドの性質上データの形式が決まっており、既存のデータとの連携が取れない可能性もあります。
さらに、サーバー提供事業者の情報漏洩のリスクに自社内で手を打つことが難しい点はリスクといえますが、迅速に原価管理を自動化していきたい場合や、生産性向上に注力している企業には選択するメリットがあります。
オンプレミス型
オンプレミス型はローカルサーバーを利用するため、導入に必要なソフトウェアに機器を全て用意する必要があります。初期費用がかかる上に、月額費用がかかることやメンテナンスの手間やリソースにも考慮が必要です。
オンプレミス型は導入にコストや時間、手間がかかることはデメリットといえますが、カスタマイズ性が非常に高く、的確に幅広く課題を解決できることは最大のメリットです。
ハイブリッド型
ハイブリッド型は迅速に導入アップデートが可能でありながら一部機能でオンプレミスを使用することが可能です。クラウド型とオンプレミス型の中で、ニーズに合わせ優位なものを選択できるメリットがあります。
原価管理システムのタイプ
原価管理システムの主なタイプには特定の業界特化型、プロジェクト型、汎用型の3種類があります。
特定の業界特化型
特定の業界特化型では、工程や業態に最適なシステムが導入できることが大きなメリットです。
特定の業界特化型でマッチするものがあれば、こちらを選ぶと良いでしょう。特に有名なものとしては製造業特化型や建築業特化型が挙げられます。業態の特性上、特化型システムであればカスタマイズの手間を減らしつつ導入が可能でしょう。
業界を熟知した担当者が導入サポートをするため、導入をスムーズに進められるでしょう。製造業特化型では生産性や収益性を計算できる特徴があります。建築業特化型では案件ごとに原価や予算の計算が可能な場合が多く、プロジェクト型に近い要素も持ち合わせています。
プロジェクト型
プロジェクト型では、プロジェクトごとに必要項目を分析できるメリットがあります。プロジェクト単位で原価を管理していきたい場合はこちらがおすすめです。IT業界で多く使われている原価管理システムです。
汎用型
汎用型は汎用性が高く、オールマイティに対応できる原価管理システムです。既存のシステムで対応しきれない場合や、自社に合う最適な運用を進めたい場合はこちらから選ぶと良いでしょう。
原価管理システムのメリット/デメリット
原価管理システムを導入するにあたってシステムのメリット、デメリットは気になるポイントです。
主なメリット、デメリットを見ていきましょう。
原価管理システムのメリット
原価管理システムのメリットは多数存在しますが最も大きなメリットは、導入していない期間に起こりえたリスクや損失を回避できることがメリットといえるでしょう。
他にも業務効率が上がることや、業務改善につながることは特に見えやすいメリットです。
原価管理システムでは原価が正確かつ可視性が高いため、導入されていない企業と導入されている企業では、原価管理に対する意識水準にも差があるといえます。
また、経営判断をする立場にある場合には正確な経営指標や原価を出せることで、迅速な判断ができるメリットもあります。
原価管理システムのデメリット
原価管理システムのデメリットは導入費用が高いことが挙げられます。システム導入をしたことによって適切に運用し、低減されたコストや増加する利益を考えると許容していきたいデメリットです。
それ以上にシステムが自社の業務に合わない場合、デメリットは大きいといえます。原価管理システムの選び方を把握した上で、慎重に導入できればこのデメリットも限りなく抑えることができるでしょう。
原価管理システムの選び方
原価管理システムの選び方にはいくつかのおさえておきたいポイントがあります。まずは自社で運用可能なシステムであることが挙げられます。
次に、他のシステムと連携が可能かということも効率化には欠かせない要素です。まだシステム導入が進んでいない場合は、ERPで一元管理したシステムを相互利用すると、集計も早くデータの正確性が保証できるでしょう。
理想のシステムを導入するには、自社にあったカスタマイズや開発を行う必要があります。カスタマイズ性が高いほどより最適なシステムが構築できるため、システムの拡張性もポイントのひとつです。全てを自社でカスタマイズすることは手間がかかるため、自社の原価配賦に合わせられる自動配賦機能を搭載しているかどうかも確認しておくと良いでしょう。
システムを扱う環境面では、自社のどのような課題を解決していきたいかを意識してサーバーを選択しなければなりません。
原価管理システムを導入する場合
原価管理システムを導入する場合、幾つかの選択肢があります。開発コストを抑えるために、自作や無料ソフトから考える企業も多数存在し選択肢の一つだといえます。
またコストはかかるものの、導入実績豊富なベンダー(サプライヤー)と契約すると手間を抑えることができ、迅速な導入になるでしょう。
自作やエクセル
プログラミングで1から自作する方法やエクセルのVBAやガントチャート、バーコード機能を使用し自作する方法もあります。
エクセルで自作
エクセルの場合は低コストでの運用が可能なメリットがあります。デメリットはデータ保存容量が上限100万行であることや同時に編集ができないため複数人で同時開発をすることができません。
大規模なシステムへの導入はデメリットが大きいといえます。しかし小規模な管理システムであればデメリットはとくに影響が少ないためエクセルでの自作が最善の場合もあります。
プログラミングで自作
プログラミングで自作する場合、最大のメリットは利用環境に合わせた柔軟なシステム構築ができることでしょう。
しかし自社にプログラミングスキルのある人材がいなければ開発を行うことができないため、そもそも自作できない場合もあります。
無料ソフトを使う
汎用的かつシンプルな機能のみであれば無料ソフトを使用することも可能です。高額システムの導入予算を用意できない場合はこちらも選択肢として考えられるでしょう。
ベンダーと契約
ベンダー(サプライヤー)と契約する場合は費用こそかかりますが、最大限の効果を発揮できる可能性が高いといえます。
ベンダーと契約する場合は、そのベンダーのツールが自社の課題解決につながるのか?導入後の理想像をイメージしたうえで慎重に進める必要があります。
まとめ
今回は原価管理システムの基本から機能や選び方について解説しました。原価管理システムは適切な運用によって原価の低減や利益を上げるだけでなく、原材料高騰のリスクにも備えられるでしょう。
まずは自社で原価管理の方向性を議論し、システムをピックアップしてみてはいかがでしょうか。この記事から原価管理システムを様々な選択肢から検討してみてください。