現場改善ラボ 記事一覧 お役立ち情報 ヒューマンエラーが起きる場面は?日常/業界別での事例を解説!

日々の業務の中でヒヤリハットが発生すると、いつか労働災害に繋がるかもと不安に感じる現場の方も多いはずです。ヒヤリハットが生じる原因は、ヒューマンエラーであるケースがほとんどです。このヒューマンエラーは、一体どのような場面で発生するのでしょうか。

今回はヒューマンエラーの基本から、発生しやすい場面事例を、日常と業界に分類した上でご紹介します。事例は現場で参考になる内容も多く含みますので、ぜひご覧ください。

ヒューマンエラーの削減や再発防止には、「人は必ずミスをする」という前提で、ヒューマンエラーの発生メカニズムを知り、原因の除去が必要です。

現場改善ラボでは、ヒューマンエラーがなぜ発生するのか?その発生要因を知ったうえで、問題を明らかにする分析方法から再発防止の仕組みづくりまで、ヒューマンエラー対策を網羅的に解説している動画を無料でご覧いただけますので、本記事と併せてご覧ください。

ヒューマンエラーとは?

ヒューマンエラーとは、人が原因となり発生するミスのことをいいます。例えば、ある目的を目指し作業を行う中で生じるミスなどが該当します。ヒューマンエラーはどのような現場でも起こり得るものであり、多くの企業が頭を抱える課題でもあります。

このヒューマンエラーを出来る限り起こさないようにするためには、どのような場面で起こりやすいのかということについて知る必要があるのです。

ヒューマンエラーが起きる場面は?

ヒューマンエラーが起こりやすい場面として代表的なものに、以下の4つが該当します。それぞれ順に、詳しく説明していきます。

1.不注意

不注意は、ヒューマンエラーの代表的なミスのうちの1つです。この不注意が引き起こされる背景として、単調な業務などの繰り返し同じ作業を行う中で発生する傾向にあります。こうした単純作業を繰り返す中で、注意力の欠如や思い込みからミスにつながる結果となります。

2.情報伝達不足

情報伝達不足も、ヒューマンエラーを引き起こしやすい状況を生み出します。情報伝達不足はコミュニケーションエラーともいわれるものであり、本来であればすぐにでも伝えるべき情報を、日常的なコミュニケーション不足からきちんと伝達しない場合や、あるいは伝達情報ミスなどもこれに該当します

情報伝達不足は、大企業であればあるほど後に大きな影響を与える恐れがあるため、特に注意する必要があります。

3.慣れによる自己判断

慣れによる自己判断も、ヒューマンエラーを起こしやすくなります。このヒューマンエラーは作業に慣れ、自身の業務効率化のために、自己流のやり方で作業してしまう事から発生します。

自己流のやり方で作業を行ってしまう背景には、マニュアル通りよりも自分のやり方で作業をしたほうが早いという作業者の慣れによる自己判断があります。しかし、マニュアルに突然の変更点があった際に、該当の作業者はどうなるでしょうか。作業者がマニュアルの変更をすぐに把握していれば問題ありませんが、もし把握していない場合、遅かれ早かれヒューマンエラーにつながってしまうでしょう。

この慣れによる自己判断は、ベテランの作業者に多い傾向にあります。

4.訓練や教育不足(OJTの課題)

訓練や教育不足は、ベテラン作業者が新人作業者への現場での訓練や、教育(OJT)が不十分であった結果発生するヒューマンエラーです。特に新人作業者が起こしやすいエラーでもあり、この背景には知識不足や経験不足が該当します。

発生しやすい場面として、ベテラン作業者自身が多忙で新人作業者に要するべき適切な時間を確保できなかった場合に起こりやすい傾向にあります。ベテラン作業者が多忙であれば、新人作業者はマニュアルを見て分からないところも自分1人で処理しなければならないため、結果としてヒューマンエラーにつながる結果となります。

特に製造業の場合、1~4のような要因から製品の品質低下や不良品率の上昇、労働災害の発生などにつながるケースが多いです。

日常のビジネスシーンでのヒューマンエラー事例

日常のビジネスシーンで発生しやすいヒューマンエラー事例として、代表的なものを3つご紹介します。以下順に、詳しく説明していきます。

1.作業中のケガ

単純作業を行う現場では、時に注意力が散漫になることから、ケガをする恐れがあります。

ある化学工場では、メタノールの加熱中に作業者が間違えて蒸留釜のバルブを全開にしたことから、圧力の上昇による装置の破裂と爆発火災を起こしています。なぜこの事故が発生したのかというと、作業者の思い込みというヒューマンエラーが原因となりました

本来であれば開放すべきバルブを、作業者が既に開放してあると思いこんでしまったのです。この事故では2人がケガをし、その他にも機器の破損など、化学工場にとって大きな損害となりました。

このケースでは思い込みをどのように対策するかという視点以外にも、現場の安全管理をどのように行うべきかという視点も求められます。現場改善ラボでは、さまざまな事故の現場を見てきた元労基署長が、安全管理について解説する動画も公開していますのでご覧ください。

3.発注ミス

発注ミスは、多くの現場で一度は経験しているかもしれません。発注ミスが起こる原因には、転記間違いや確認不足から生じる入力ミスや書類不備・メールやファックスの送信ミスなどが該当します。この発注ミスの背景にあるのは、そもそも複数人で確認を行わず、担当者1人のみで確認をして処理してしまう状況が挙げられます

慣れによる自己判断はベテラン作業者に多いため、意識して注意する必要があるでしょう。

業界別のヒューマンエラー事例

発生しやすいヒヤリハットやヒューマンエラーを、実際の事例から業界別にご紹介します。事例には、ヒヤリハットも数多く含んでおり、自社の参考になる情報もあるはずです。

今回取り上げる業界は、製造業・建築業・医療/介護業の3業界です。

製造業界

製造業界でのヒヤリハットやヒューマンエラー事例には、作業者の不注意や慣れから来る自己判断などが該当しています。以下事例ごとに、触れていきます。

床面が滑りやすい状況で転倒

ある食料品製造会社では、調理センターの冷蔵庫内での冷凍食品の運搬中に、冷蔵庫内の床に霜が堆積していたことから足が滑り、転倒しそうになるというヒヤリハットが発生しました。

この原因には、冷蔵庫の床に霜が堆積して滑りやすくなっていたことが挙げられます。この原因が生じた背景には、こうした状況そのものへの不注意や5S活動の不足、訓練・教育不足なども該当します。

この企業ではその後、冷凍庫作業時の具体的な対策を公表しています。

  • 防滑性のある靴を履く
  • 床が濡れや霜、凍結していないか等、床の状況に十分注意を払う
  • 作業時は、膝の曲げ伸ばしでバランスを修正しながら、慌てず、余裕をもった行動を心がける

構内の出会い頭で衝突

ある製造会社では、運搬の際に構内の出会い頭で作業者と衝突するというヒューマンエラーが発生しています。この経緯には会議の予定があったところ、現場から事故の連絡が入り、急行して対応する事態が発生しました。

それにより会議の予定を忘れるという不注意につながり、急いで会議室に直行した際、階段で作業者と衝突しています。この衝突により相手作業員は後ろ向きに倒れ、腰を打つ事態となりました。

機械への巻き込み事故

ある製造会社の作業者は、色合わせの作業中に、押えゴムロールに異物を発見しました。その異物をゴムロールが上がりきる前に取ろうと試みたところ、機械フレーム部分と押えゴムロールの移動フレームに腕を挟まれそうになるという巻き込み事故のヒヤリハットを起こしました。

この事例では、作業者の慣れによる自己判断がヒヤリハットにつながった背景があります。押えゴムロールは、ある程度扱いに慣れている作業者でなければ、異物があっても自分で取る前に、他の作業者に伝えるなどの行動を起こすはずです。そうではなく作業者単独で異物を取ろうとしたことは、慣れから来る自己判断が生み出した結果であると言えるでしょう

建築業界

建設業界では、不注意や慣れによる自己判断や、知識不足から発生するヒヤリハットなどのヒューマンエラーが多く発生しています。以下事例ごとに、紹介します。

建築機械の転倒

ある建設会社では、建屋の屋上で吹付け作業を行っていた際に、作業停止のタイミングで残圧から吹付けホースが跳ねた反動で転倒しそうになるというヒヤリハットが発生しました。

この原因には、吹付け作業を停止したときに、塗装ノズルや吹付けホース内に残る空気圧に十分気を付けなかった不注意が該当します。

建築資材や作業員の墜落

ある建設会社では、足場上での移動の際に、作業床に布板を結束してあった番線につまずき、とっさに枠組み足場の筋交いにつかまり墜落せずに済んだというヒヤリハットが発生しています。

この番線につまずいた背景には、不注意や慣れから来る自己判断があります。

有害物質の使用

ある工事業者では、風呂場の塗装作業の際に、作業開始から30分ほどで体調不良を起こしています。この作業者は、防毒マスクや換気ダクトなどを現場に持ち込んでいましたが、換気ダクトの取り付けを省いて作業を始めていました。

このヒューマンエラーが発生した原因には、作業者が防毒マスクをしなかった上に換気ダクトも使用しなかったという、訓練不足や教育不足が該当します。これには作業マニュアルはあったけれども、作業者自身がそれをきちんと把握していなかった可能性の高い事例です。

医療/介護業界

医療/介護業界では、思い込みや慣れによる自己判断、マニュアルなどのルール問題がヒューマンエラーに該当しています。以下事例ごとに、触れていきます。

投与する点滴を誤る

ある病院では、術後の患者に対し、打つべき10ccの点滴を持ってくるよう医師が看護師に口頭で伝えました。その後看護師はすぐに10ccの点滴を医師に渡しましたが、医師は本来、1A+生食8mlの予定で指示を出していました。しかし看護師は10ccを渡してしまったため、ヒューマンエラーが発生しました。

このヒューマンエラーが起こった原因には、看護師がはじめに指示を聞いた際に、本当にその単味で良いのか不安に思い医師に確認をしたところ、同じ返答だったため10ccの単味で良いと思い込んでしまったことが該当します。そしてこの思い込みの背景には、医師と看護師双方の認識不足がありました。

【参考:厚生労働省『重要事例情報ー分析集』】

介助者の転倒

ある福祉会社では、訪問介護の際に利用者の電動車いすを運ぶため、介助者が単独で電動車椅子を持ち上げて階段を上がっていました。そのとき電動車椅子が介助者の足の上に乗ってしまったことにより、バランスを崩し転倒しそうになったヒヤリハットを起こしました。

この原因には、介助者が電動車椅子を運ぶ方法として階段を使用したことや、その際電動車椅子が介助者の足の上に乗ったことが挙げられます。この原因の背景には、介助者の不注意や、慣れによる自己判断が関係しています。

【参考:厚生労働省『職場のあんぜんサイト:ヒヤリ・ハット事例』】

薬剤間違い・取り違え

ある病院では、患者に渡す予定の薬剤を入れ間違えてしまったというヒューマンエラーを起こしています。このヒューマンエラーは処方された患者自身が自宅で気づいたため、判明した事例です。

このミスが引き起こされた原因には、マニュアルなどのルールに関する問題が該当します。

薬剤の間違いや取り違えと同様に多い事例に、薬剤量の間違いがあります。ある病院では、入院患者に対して休薬期間4週間のはずが誤って3週間と入力し、3週間の休薬期間後患者に投与してしまったというヒューマンエラーが発生しました。

この原因には、医師の思い込みや慣れによる自己判断が該当します。またこの他に、処方箋を渡す際に確認のみで監査チェックできるシステムがなかったことも挙げられます。

ヒューマンエラーを防ぐための対策とは?

本記事で既に取り上げたように、ヒヤリハットやヒューマンエラーは実にさまざまな場面で発生します。ヒューマンエラーを未然に防ぐためには、自社の環境で想定されるヒューマンエラー/ヒヤリハットを想定し、全従業員に浸透をさせることで、安全への意識を醸成させることが必要です。

現場に安全への意識を浸透/醸成させる手段としては、動画マニュアルが効果的な手法の1つです。動画の情報量は文字の5,000倍ともいわれ、想定されるあらゆる危険性を動画に落とし込むことで、視覚的に誰でも理解でき、大切なポイントを短時間で伝達できるというメリットがあります。

例えば、危険な業務や単純作業で繰り返しエラーが出る業務へのマニュアルは、よりストレートに伝えられる動画の力を利用することが最も有益です。

現場改善ラボを運営するTebiki株式会社では、誰でもかんたんに動画マニュアルを作成でき、現場に共有することができるクラウドサービス「tebiki」をご提供しています。

普段のOJTや紙ベースのマニュアルを動画に置き換えることで、字幕も翻訳も自動生成される仕組みとなっています。翻訳言語は、100カ国以上の言語に対応しているため、外国人スタッフが多い現場でも安全の意識を浸透させることが可能です。「tebiki」の概要はこちらからご覧ください。

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tebiki WP 用-1

まとめ

今回は、ヒューマンエラーの基本から起こりやすい場面事例まで、日常と業界に分けて解説を行いました。どのような場面でも起こり得るヒヤリハットやヒューマンエラーを効率的にそして確実に減少させるには、もはや人を活用するだけでは解決不能な時代です。

そこで動画マニュアルといった対策を導入することで、効果的かつ効率的に現場教育を行っていくことがヒューマンエラーの未然防止には重要です。



人に起因する品質不良の未然防止と具体的な対策 (1)

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