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フードセーフティーとは、食品の安全を確保するための取り組みを指します。用語自体はよく耳にするものの、具体的な意味や実践方法を理解していない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、フードセーフティーの基本概念から基準、具体的な実践方法まで詳しく解説します。さらに、実際に導入している企業の事例もご紹介します。
食品の安全を脅かす要因の1つに、「異物混入」があります。たった一度の異物混入でも、長期にわたる信頼の損失や法的リスクを引き起こすことも少なくありません。異物混入を防ぎ、フードセーフティを担保する具体的な対策について以下の動画でも詳しく解説しています。本記事と併せてご覧ください。
目次
フードセーフティーとは?わかりやすく解説!
フードセーフティ―とは、簡単に説明すると「食べ物を安全にするための仕組みやルール」のことです。厚生労働省によると、以下のように規定されています。
食品が安全であってこそ、私達はその栄養の恩恵を十分に受けることができ、また安全な食事を分かち合うことの精神的なそして社会的な恩恵を受けることができます。安全な食品は、健康を保証する重要なものの1つです。
安全な食品は、健康を維持するうえで欠かせない要素です。
世界保健機関(WHO)によると、細菌やウイルス、寄生虫などを含む安全でない食品は、下痢、食中毒、寄生虫感染、成長障害、がんを含む200以上の疾患を引き起こすとされています。
そのため、生産から消費者の手に届くまでの各段階で病気や健康被害を防ぐための対策を講じる必要があります。
次に、フードセーフティ―の概要についてさらに深堀りしていきましょう。
世界的スタンダードとしての役目
フードセーフティ―は、食品の国際基準を作る政府間組織であるコーデックス委員会によって提案された用語で、世界中で食品を安全に消費するための基盤となる概念です。世界保健機関(WHO)によると、毎年、汚染された食品を摂取したことが原因で6億人以上が病気になり、42万人以上が命を落としていると推定されています。
このような悲劇を減らすために、フードセーフティーは世界中の食品の安全と公衆衛生を守る役割を果たしています。
オーストラリア、アメリカのフードセーフティー事例
フードセーフティーへのアプローチには、各国特有の取り組みがあります。
たとえば、オーストラリアでは、レストランやカフェの運営に「Food Safety Supervisor(フードセーフティースーパーバイザー)」という資格が必要です。この資格は、食品安全に関する基準を理解し、適切な衛生管理を行う能力を証明します。
また、アメリカでは「米国食品強化法(FSMA)」に基づく厳しい安全基準が導入されています。海外市場への進出を検討している場合は、事前に対象国のフードセーフティー関連の規制や基準を確認することが重要です。
「フードセーフティー」と「フードディフェンス」の違い
フードセーフティーとフードディフェンスはいずれも食品に関する安全を守るための概念ですが、目的や方法が異なります。
フードセーフティー | フードディフェンス | |
---|---|---|
目的 | 食品そのものの安全を守る | 悪意ある行為から食品を守る |
対象 | 食品 | 意図する行為 |
方法 | 生産から消費までの各段階での衛生管理 | セキュリティ強化や従業員への教育 |
つまり、フードセーフティーは意図しない要因によって生じるリスクから食品を守ることを指し、フードディフェンスは故意による食品汚染や異物混入から食品を守ることを指しています。
フードディフェンスに関する詳細を知りたい方は、以下の記事で原因や対策をまとめていますので、是非ご覧ください。
関連記事:【対策事例あり】フードディフェンスとは?事件から学ぶ「食品防御」の重要性
フードセーフティーに当てはまる規格とは?
フードセーフティーの国際基準として、HACCPやISO22000があります。これらの基準は多くの国や国際機関において共通の言語として機能し、食品の安全を証明する役割を果たしています。
ここからは、フードセーフティーに関連する2つの国際基準について解説します。
1.HACCP
HACCPとは、生産から出荷までの製造工程の中から食品の安全性を脅かすリスクを見つけ出し、重点的に管理・監視するシステムです。2021年6月からは全ての食品関連事業にHACCPに沿った取り組みが義務化されました。
HACCPの概要や要件を満たす衛生管理の方法について詳しく知りたい方は、以下のセミナーをご覧ください。食品安全技術センター代表の専門家による実践的な内容となっております。
2.ISO22000
ISO22000は、生産から消費者に届くまでの全過程で、安全性を確保するための仕組みです。HACCPのリスク管理の考え方を基礎とし、問題が発生した場合の対応や品質向上の取り組みを加えた包括的なマネジメントシステムとして設計されています。
ここまで、フードセーフティの概要や関連する規格について解説しました。次章からは、具体的なフードセーフティ活動について詳しくご紹介します。
フードセーフティー実践の第1歩!基本行動を押さえよう
フードセーフティーを実践する基本となる行動や考え方について解説します。食品の安全を守るため、日々の生活や業務に積極的に取り入れましょう。
食品トレーサビリティの徹底
食品トレーサビリティとは、食品がどのように生産され、加工、流通してきたのかを追跡できる仕組みのことです。食品トレーサビリティを整備することで、問題が発生した場合でも原因を迅速に特定し、適切な対応を行えます。
▼食品トレーサビリティの例▼
引用元:農林水産省「食品トレーサビリティ『実践的なマニュアル』総論」
食品がどこでどのように生産・加工されたのかを明確にすることは、フードセーフティーの重要な要素です。この透明性によって食品の信頼性が向上し、フードセーフティーの基盤が強化されます。
食品トレーサビリティは、以下6つのステップで進められます。
- 入荷先・出荷先の特定
- 食品の識別
- 生産・製造した製品のロットを定める
- ロットと出荷先の紐づけ
- 出荷先への伝達
- 内部監査
具体的な進め方や運用方法、導入事例については以下の記事で解説しています。おさらいしたい方はこちらをご確認ください。
関連記事:食品トレーサビリティとは?メリットやデメリット、事例も解説
フードセーフティーへの呼びかけ
フードセーフティーは、食品事業者だけでなく、教育機関や職場、さらには消費者一人ひとりが取り組むべき重要な課題です。フードセーフティーの輪を広げ、より多くの人に関心を持ってもらう必要があります。
具体的なアクションとしては、以下の活動が挙げられます。
- イベントやキャンペーンへの積極的な参加
- #foodsafety のハッシュタグを活用した情報拡散
- SNSを通じたフードセーフティーに関する情報のシェア
例として、日本では毎年「フードセーフティジャパン」と呼ばれる大規模イベントが開催されています。食品の安全・安心をテーマに多くの企業が情報を共有し、2024年には1万人以上の来場者を記録しました。
リスクの予防・管理
国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)は国際連合が定める「世界食品安全の日」に際し、「A guide to World Food Safety Day 2023」にて以下のメッセージを掲げています。
Everyone is a risk manager
(誰もがリスクマネージャー)
つまり、食品の生産や加工、流通に関わる事業者だけでなく、消費者も適切な食品の取り扱いや保存を心がけることで、リスクから身を守れるでしょう。
具体的な管理例として、食品事業者は製造過程での衛生管理の徹底や、食品のトレーサビリティ(追跡可能性)を確保する仕組みを導入することが求められます。
一方、消費者は購入時に食品のラベルを確認し、賞味期限や保存方法を守ることが重要です。また、調理の際に食材を十分に加熱することや、調理器具を適切に洗浄することで、食中毒のリスクを軽減できます。
フードセーフティーを始めるには?参加方法を解説!
フードセーフティーはどのような立場の人にも役割があり、多くの人々が実践することで持続可能な社会の実現に貢献できます。
各々の役割を詳しく見ていきましょう。
食品事業者にできるフードセーフティー
実際に食品の製造や加工に関わる食品事業者には、以下の項目を実践することが求められます。
- HACCPに沿った衛生管理
- 正確かつ適切な情報提供
- 国や地方自治体の基準に従うこと
また、従業員にフードセーフティーの重要性を理解させ、企業文化としてフードセーフティーを育んでいくことは、食品事業者の重要な責任の1つです。
特に食品製造業で注力すべきものに、「異物混入対策」があります。厳格な安全基準が求められる食品業界では、たった一度の異物混入が、長期にわたる信頼の損失や法的リスクを引き起こすことも少なくありません。
そこで、食品衛生のプロフェッショナルである『月刊HACCP』発行人をお招きし、「食品安全ハザードとしての異物混入対策」について解説した動画をご用意いたしました。フードセーフティを担保したい方にとって参考となる内容のため、本記事と併せてご覧ください。
教育機関にできるフードセーフティー
教育機関で実施できるフードセーフティーの取り組みとして、以下の項目が考えられます。
- フードセーフティーに関する授業の実施
- フードセーフティーの啓蒙活動
- 給食室や食堂の衛生管理の徹底
- 生徒のアレルギー情報の適切な把握
教育機関でのフードセーフティーには、生徒への働きかけだけでなく、教職員や食堂スタッフへの指導も重要です。これらの取り組みによって、食品安全の意識を根付かせられるでしょう。
家庭でできるフードセーフティー
家庭でできるフードセーフティーの取り組みとしては、以下のような項目が良いでしょう。
- 食品の安全な取り扱いを実践する
- 常に最新の情報を入手する
- フードセーフティのイベントに参加する
フードセーフティーは普段の生活の中で手軽に取り組める活動です。一人ひとりの小さな行動が積み重なることで、持続可能な社会の実現につながるでしょう。
ここまで、フードセーフティの具体的な活動内容について解説しました。では、実際の企業ではどのようにフードセーフティを推進しているのでしょうか。次章では、フードセーフティの好事例である企業の取り組みについてご紹介します。
フードセーフティーを推進するマクドナルドの取り組みとは?
マクドナルドは、フードセーフティーの模範的な事例として注目されている企業です。マクドナルドでは、日本国内の関連法規以上の厳格な自主基準を設け、常に最適な管理の運用を行っています。
取り組み内容について、以下3つのポイントから解説します。
サプライチェーンとの連携
マクドナルドでは、国内外のサプライヤーと連携し徹底した品質管理に努めています。サプライヤーに対しては、関連法令の遵守、人権、労働環境、環境保全、事業運営の完全性など各行動規範を定めた上で、実際に検証・監査を行っています。
引用元:マクドナルド公式サイト
トレーサビリティシステムの構築
マクドナルドのトレーサビリティシステムは、世界基準に基づき定められています。使用している牛の飼育環境や牧草まで厳しく管理され、店舗に届くまでの全過程を追跡できます。
引用元:マクドナルド公式サイト
従業員への教育
マクドナルドでは、全従業員に対して食の安全・安心に対する教育と訓練を行っています。調理時の温度管理、衛生管理、アレルギー対応など、店舗運営における安全性を高める取り組みを日常的に行っています。
食品製造には、複雑で多岐にわたる作業がつきものです。このような作業でも手順を守らせ、業務品質を維持させるには適切な従業員教育が欠かせないでしょう。
このとき、おすすめなのが「マニュアルの動画化」です。動画マニュアルであれば複雑な手順や動作もわかりやすく教えられ、動画という同一の教材を使うことで教育の標準化も期待できます。
日々の業務で動画マニュアルを活用することによる効果や、高品質な動画マニュアルが簡単に作れるツールについて、以下のマンガでわかりやすく解説しています。「従業員教育に時間がかかる…」「手順の徹底が難しい…」とお悩みの方は、是非ご覧ください。
フードセーフティーに関するよくある質問
最後に、フードセーフティーにまつわる疑問にお答えします。取り組みを実践する前にぜひ1度ご確認ください。
Q.フードセキュリティーとは?フードセーフティーとの違いはある?
フードセーフティーとフードセキュリティーはいずれも食品に関する安全を守るための概念ですが、目的や方法が異なります。
フードセーフティー | フードセキュリティー | |
---|---|---|
目的 | 食品そのものの安全を守る | 誰もが必要な量の食料を十分に確保できる |
対象 | 食品 | 十分な量の食料確保 |
方法 | 生産から消費までの各段階での衛生管理 | 食料不足や貧困がもたらす飢餓や栄養不足への対策 |
つまり、フードセーフティーとは食品そのものの安全性に、フードセキュリティーは食料の供給や確保に焦点を当てています。
この2つは密接に関連しています。たとえば、どれだけ食料が豊富にあっても、安全でなければ健康被害を引き起こします。一方、安全な食料を確保しても、十分に行き渡らなければ飢餓の問題は解決しません。
どちらも持続可能な食文化を築く上で欠かせない概念のため、食品の安全を守るうえで併せて考えるとよいでしょう。
Q.フードセーフティーには資格が必要?
フードセーフティーに資格が必要かどうかは、関わる立場や地域の法律・規制によって異なります。
たとえば、フードセーフティーに関する啓発活動に参加するだけであれば資格は必要ありませんが、飲食店を営業するには「食品衛生責任者」の資格が必要です。また、オーストラリアやカナダなどでも、フードセーフティーに関する専門的な資格があります。
Q.フードセーフティジャパンとは?
「フードセーフティジャパン」とは、食品の安全・安心をテーマに多くの企業が情報を共有する大規模展示会です。各企業の衛生・品質管理部門の責任者や経営者層が参加します。2024年には1万人以上の来場者を記録しました。
まとめ
フードセーフティーとは「食べ物を安全にするための仕組みやルール」を指します。生産から消費者の手に届くまでの各段階で、病気や健康被害を防ぐ対策を講じることが必要です。
これには、食品の生産、加工、流通に関わる事業者の取り組みだけでなく、消費者自身が食品の取り扱いや保存を適切に行うことも含まれます。
一人ひとりの行動が自分や家族の健康を守り、社会全体の安全を支える力になります。まずは身近なことから始めてみましょう。
フードセーフティーの実施には、従業員教育の整備も欠かせません。本記事でご紹介した動画マニュアル「tebiki」であれば、わかりやすい動画マニュアルが簡単に作成でき、手順の遵守や安全意識の向上が期待できます。
「tebiki」の各機能や充実したサポート体制について詳しく知りたい方は、ぜひ以下の資料をダウンロードしてご確認ください。