現場改善ラボ 記事一覧 お役立ち情報 トヨタ式カイゼンとは?時代遅れ?目的や事例、ChatGPTの活用例を解説

「カイゼンとは?具体的には何をすればいい」
「実はカイゼンって時代遅れではないの?」
「カイゼンの成功事例を教えてほしい!」
という疑問や悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

カイゼンとは、製造業の現場で作業効率や安全性を見直す活動で、現場の従業員が主体となって、ムダや問題点を洗い出し、現場を改善していく一連の活動のことです。

この記事では、製造業で現場改善に迫られている方に向けて、カイゼンの基本から具体的な実施方法、成功事例、そして現在注目を集めているChatGPTとの融合まで、幅広く解説します。

現場改善ラボでは、カイゼンを見つけるための視点について、各国のトヨタ関連会社の経営/社長を歴任された小森治氏によるトヨタ生産方式に基づいた改善の着眼点を解説する動画を無料でご覧いただけます。カイゼンについて、より実践的な理解を深めたい方は併せてご覧ください。

トヨタ式の「カイゼン」とは?

カイゼンは、日本の製造業で用いられている経営哲学のことです。カイゼンの目的は「継続的な改善」を通じ、製品の品質向上や生産効率を高めて、顧客満足度を最大化することです。

ここではカイゼンについて以下の3項目を解説します。

  • カイゼンとは?漢字の「改善」との違い
  • トヨタ式「カイゼン」とは?
  • トヨタ生産方式について

カイゼンとは?漢字の「改善」との違い

漢字の「改善」は一般的には問題を解決するための一時的な対策を指すのに対し、カタカナの「カイゼン」は組織全体の文化としての継続的な改善を指します。

カイゼンは単なる問題解決以上のもので、組織の成長と進化を促すための哲学です。

たとえば、製造現場での安全性を高めるために、従業員全員が安全に関するアイデアを提案し実行に移すとしましょう。従業員全員が施策にかかわることで、一人一人の安全に対する問題意識を醸成することができます。したがって、カイゼンは一時的な改善活動ではなく、組織全体が安全性を向上させるための継続的な取り組みになります。

カイゼンについて詳しい用語解説をしている記事がありますので、ぜひ参考にしてみてください。

トヨタ式「カイゼン」とは?

トヨタ式の「カイゼン」は、絶えず改善活動をする経営哲学の一つです。

トヨタ生産方式では、以下の7つのムダとして定義しており、徹底的にムダを排除することに注力しています。

  1. 加工
  2. 在庫
  3. 造りすぎ
  4. 手待ち
  5. 動作
  6. 運搬
  7. 不良・手直し

さらに、トヨタは「現状維持は後退である」という考えを持っており、常に進歩と革新を目指しています。

たとえば、製造ラインで小さな問題が発生したとき、問題をただ解決するだけでなく、原因を追求し、同じ問題が再発しないようにすることが「カイゼン」の精神です。「カイゼン」の精神により、製造業におけるムダや非効率性を排除し、品質と生産性を向上させることが可能となります。

トヨタ式の7つのムダについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

トヨタ生産方式について

トヨタ生産方式とは、ムダを排除し効率的な生産を実現するためのシステムのことです。

たとえば、製造ラインでは必要な部品が必要なときに必要な量だけ供給され、過剰な在庫を持つことなく生産が進行します。結果として、資源の無駄遣いを防ぐことでコストを削減し、環境にも配慮した生産活動を実現することが可能となります。

また、トヨタ生産方式は「異常が発生した場合に機械がただちに停止して、不良品をつくらない」という考え方と、各工程が必要なものだけを流れるように停滞なく生産するジャスト・イン・タイムと呼ばれる考え方を確立しました。

その結果、1台ずつ要望通りの自動車を「確かな品質」で手際よく「タイムリー」につくれる体制を整えています。


トヨタ生産方式と現場改善~産業の垣根を超えた改善の着眼点~ (1)

カイゼンの目的

カイゼンの目的には以下の2つが挙げられます。

  • ムダの排除
  • 社員の意識改革

ムダの排除

ムダの排除は、カイゼンの基本的な目的の一つで、ムダを排除することで作業効率が上がり、生産性が向上します。ムダとなる作業の排除を徹底すれば、作業効率が上がり、一人一人の負担が軽減されます。

たとえば整理整頓されていない作業場では書類やデータを探す際に時間がかかり、ムダが生じます。

整理整頓は誰でも真似でき、すぐにできるカイゼン案です。すぐにできることに着手し、さらなるカイゼンを求めていくことが重要です。結果的に、カイゼンのサイクルを回すことができ、従業員の意識改革にもつながります。

社員の意識改革

社員一人一人が問題意識を持ち、自ら改善策を考えて行動に移すことで、組織全体の改善が進むため、社員の意識改革は、カイゼンの重要な目的の一つです。

たとえば、現場担当者が整理整頓などを徹底することで、作業効率が上がることを担当者自身が実感できることもあるほか、作業効率が上がることで社員の負担が軽減され、社員の意識改革につながる効果もあります。

しかし、現場を改善させるような意見を出してもらうには、どうすれば良いでしょうか。社員から良い改善案を出してもらうには、現場リーダーのチームマネジメントが重要です。現場改善ラボでは、カイゼンを推進するためのチームマネジメントについて詳しく解説しています。ぜひ、ご活用ください。

カイゼンを推進するためのポイント

カイゼンを推進するためのポイントとして、ここでは2つの項目に焦点を絞って解説します。

  • 5Sの促進
  • 3Mの削減

5Sの促進

5Sとは、整理、整頓、清掃、清潔、しつけの頭文字を取った言葉です。5Sの活動を行うことで、業務の効率化や製品の品質向上が図れます。5Sを徹底することで、無駄な動きや時間のロスを削減し、作業の流れをスムーズにできます。

たとえば、工場の現場で整理や整頓が不足していると、欲しい部品を探す時間が長くなる可能性があります。5sがおろそかになると、こうした時間ロスが発生し、作業が非効率になります。こうした問題を事前に防ぐためには、5sの徹底が重要です。部品の配置場所を明確にし、従業員全員で共有することで、部品を探す時間を大幅に削減が可能になります。また、清掃や清潔を徹底することで、機械の故障や不具合発生の予防もできます。

現場改善ラボでは、5Sを活用した改善の急所について「儲かるメーカー改善の急所101項」の著者である、柿内幸夫氏が解説する動画を無料で公開していますので、こちらもカイゼンのためにご活用ください。


改善の急所を読み解く、5Sを活用したこれからのものづくり  (4)

3Mの削減

3Mとは、ムリ(無理)、ムダ(無駄)、ムラ(不均衡)の頭文字のMを取った言葉です。3Mを削減することで、業務の効率化やコスト削減を実現できます。なぜなら、3Mを削減することで、無駄な作業や過度な負荷、業務の偏りをなくし、均等な作業の流れを作れるからです。

たとえば、工程Aでの作業時間が他の工程と比べて長い場合、ムラが生じている可能性があります。工程Aのムラを解消するために、作業の手順を見直し、必要な部分のみを効率的に行うように改善すれば、全体の作業時間を短縮することが可能です。また、ムダな作業を削減すれば、コストの削減や品質の向上も期待できます。

カイゼンの効果的な実施方法

カイゼンの効果的な実施方法として、以下の4項目を解説します。

  1. 現状の課題を把握する
  2. アイデアを出しあう
  3. アイデアを実践する
  4. 実践結果の評価・修正を行う

現状の課題を把握する

課題を明確にすることで、具体的な改善策を考えやすくなるため、現場の課題を正確に把握することは重要です。

たとえば、製造ラインでのボトルネックを特定することで、その部分の効率化を図れます。日常の業務中に発生する小さなトラブルや遅延も、細かく記録し分析することで、大きな課題への手がかりとなるでしょう。

ボトルネックを解消することで、業務の促進や生産性の効率化が図れます。ボトルネックの解消方法や事例については次の記事を参考にしてください。

アイデアを出しあう

多くの視点からの意見や提案が集まることで、最も効果的な解決策を見つけることができます。そのため、課題が明確になったら、次はアイデアを出し合いましょう。

たとえば、チームメンバーとのブレインストーミングセッションを設け、自由に意見を交換することで、新しい視点や方法が生まれることがあります。

改善点はわかっているけれど、アイデアの提案の仕方がわからない方のために、下記の記事では「改善提案」について詳しく解説しています。ぜひご活用ください。

アイデアを実践する

アイデアが固まったら、アイデアを実践する段階に移ります。アイデアは実践しなければその価値を確認できません

たとえば、新しい工程の導入や、新しいツールの使用など、小さな変更から始めて、その効果を確認しながらステップアップしていく方法が考えられます。

実践結果の評価・修正を行う

実践した結果を評価し、必要に応じて修正を加えることが大切です。結果の評価を行わないと、なぜ施策が成功・失敗したのかがわかりません。施策ごとに評価をし、適宜修正を加えることで、目標に近づくことができます。

たとえば、新しい工程が導入された後も効果や問題点を定期的にチェックし、必要に応じて改善の方向性を再設定することが重要です。

カイゼンの成功事例

カイゼンの成功事例として、以下の2社を紹介します。

  • 新立電機株式会社
  • スターバックス

新立電機株式会社

新立電機株式会社は、カイゼン活動を日々の業務に取り入れており、取り組みが注目されている企業です。新立電機では、お客様や一緒に働く仲間に喜んでいただくことを目的として、業務で発生する「ムリ、ムダ、ムラ」を「かえる、やめる、へらす」ためのアイデアの提案の実施をしています。

具体的な成功事例として、新立電機では毎年1人あたり4件以上の改善を提案していることがあげられます。提案例として、「本社車両門から出門する際、右側方向に死角があるため、視野をふさいでいる植木を伐採して見通しを良くし、安全性を改善する」というカイゼン提案があります。

新立電機の事例から、カイゼン活動は大きな変革だけでなく、日常の小さな改善からも成果をあげられることがわかります。

参考元:新立電機株式会社

スターバックス

スターバックスは、2008年に上場以来、初めての赤字決算を記録。赤字の要因は、来店客の減少や原材料価格の高騰でした。そこで、スターバックスはカイゼン活動を導入し、業績は急回復しました。

具体的には、コーヒー豆の収納場所やミルクの見分け方など、日常の業務を効率化するためのさまざまな改善が行われました。たとえば、コーヒー豆はカウンターの上の棚に収納され、色分けされた容器に入れられることで、バリスタが瞬時に必要な豆を取り出せるようになりました。また、ミルクの容器にはカラーテープが張られ、豆乳や低脂肪ミルクなどを簡単に見分けられるようになりました。

カイゼンの取り組みにより、スターバックスは業績を回復し、再び黒字を記録。スターバックスの事例から、カイゼンの取り組みは、日常の業務の中での小さな改善から大きな成果をあげられることがわかります。

参考元:スターバックスに見るカイゼンとイノベーション

カイゼンは時代遅れ?意味はないのか?

日本的経営の三種の神器とよばれる「終身雇用」「年功序列」「企業別労働組合」が時代遅れと言われている中で、カイゼンの重要性は変わっていません。なぜなら、カイゼンは経営技術や経営手法の核心であり、日本の企業の強みとしての位置づけが変わっていないからです。

たとえば、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏は、日本のカイゼンを学び、物流の効率化やサイトの修正など、多岐にわたる業務改善を実施しています。カイゼンは日本の製造業だけでなく、グローバルなビジネスの現場でも有効に機能しています。

カイゼンは業界や業態を問わず、組織の効率化や品質向上を目指す普遍的な手法であるため、カイゼンは製造業だけでなくサービス業や建設業など、多様な業界での取り組みとして広がっています。

たとえば、日本のサービス業は、高いオペレーションレベルを持ち、外国人からも高く評価されています。サービス業の質を支えているのは、カイゼンの精神と手法です。

ChatGPTとカイゼンの融合

現在注目を集めている生成AIにChatGPTがあります。ここでは、ChatGPTとカイゼンの融合として、以下の2項目について事例を踏まえながら解説します。

  • ChatGPTで製造現場をカイゼン
  • 生成AIをあなたの職場にも

ChatGPTで製造現場をカイゼン

ChatGPTに代表される生成AIは、自然言語処理技術を活用して人間のように質問に答えたり、情報を提供する便利なツールです。生成AIは、技術や大量のデータを学習し、答えを生成します。製造現場ではChatGPTを活用して、過去のカイゼンの事例やノウハウを瞬時に引き出す取組があります。

例として、旭鉄工やi Smart Technologiesなどの企業があげられるでしょう。ChatGPTに、カイゼンの事例やノウハウを学習させ、製造現場のスタッフが質問すると、適切な改善策や事例を提供するなど製造現場の改善活動をサポートするように活用しています。結果として、製造現場のスタッフは、自分たちの課題に合わせた最適な改善策を迅速に取得することが可能になりました。

生成AIあなたの職場にも(NHK名古屋)

NHK名古屋の取材によれば、東海地方の企業もChatGPTの活用を開始しています。愛知県碧南市にある自動車部品メーカーの旭鉄工の木村哲也社長は、ChatGPTを利用して「カイゼンGAI」というシステムを構築しました。「カイゼンGAI」は、これまでのカイゼンの事例をChatGPTに読み取らせ、対話形式で改善策を提案するものです。

「カイゼンGAI」の導入により、具体的な改善策や事例を迅速に取得することが可能になりました。たとえば、「節電の事例を教えてほしい」という質問に対して、ChatGPTは複数の事例を即座に提示し、さらに詳細な説明も提供してくれます「カイゼンGAI」などの生成AIの導入により、企業は大幅な経費削減を実現できるとともに、カイゼンの取り組みをより効果的に進められるでしょう。

一方で、ChatGPTの利用には注意点もあります。AIが提供する情報の真偽を確認する必要があり、また、入力する情報の管理やセキュリティ対策も重要です。特に、企業の機密情報や個人情報を不用意に入力することは避けるべきです。ChatGPTを利用する際には、こうした問題に気を付ける必要があります。

参考元:生成AI あなたの職場にも?

カイゼンで現場改善に取り組もう!【まとめ】

この記事では、カイゼンの本質とその実践方法について解説してきました。

カイゼンは、日常的な小さな改善を繰り返すことで、大きな成果を生むアプローチです。トヨタ式のカイゼンでは、カイゼンの考え方をシステム化し、全社員が参加する文化を構築しています。特に、トヨタ生産方式は、ムダを排除し、効率的な生産を実現するための手法として有名です。

カイゼンを成功させるためには、5Sの促進や3Mの削減など、具体的な手法を取り入れることが重要です。こうしたポイントを抑えることで、現場の効率化と品質向上を同時に実現できるでしょう。

新立電機株式会社やスターバックスなど、多くの企業がカイゼンで成功をおさめており、カイゼンは時代遅れではありません。むしろ、現代の製造業やサービス業でも、カイゼンの価値は高まっています。

この記事では、最新の技術であるChatGPTを利用したカイゼンの取り組みを紹介しました。まさにDX時代の到来と言えるでしょう。

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