※本記事は、物流現場で18年のキャリアを持ち、物流現場の作業から安全責任者まで歴任した筆者が実務経験に基づいて執筆しています。
フォークリフトを運用する現場でよくあるトラブルのひとつに、”フォークリフトのバッテリー上がり”が挙げられます。
バッテリーには高圧電流が流れており、取り扱い方法を誤ると、ケガや機器の故障につながる恐れがあります。フォークリフトが止まってしまえば、付随する作業の稼働にも悪影響を与えかねません。
また、バッテリーを正しく使用しないと寿命を縮めてしまい、交換費用などコスト面の負担が増加してしまいます。
本記事では、フォークリフトのバッテリー上がりが起こる原因や、いざという時の正しい対処法を解説します。さらに、バッテリーの寿命を延ばす日々のメンテナンス方法から、作業員へ正しく安全な取り扱いを定着させるための効果的な教育方法をご紹介します。
是非最後までお読みいただき、教育の行き届いたトラブルのない現場づくりの参考にしてください。
目次
フォークリフトにおけるバッテリー上がりの原因
本章では、エンジンフォークリフトにおけるバッテリー上がりの代表的な原因について、以下の4つの観点から解説します。
- ライトの消し忘れなどの人為的ミス
- 長期間の放置による自然放電
- 寿命や経年劣化による蓄電能力の低下
- 不適切な使用やメンテナンス不足
ライトの消し忘れなどの人為的ミス
エンジンフォークリフトにおけるバッテリー上がりの原因として、最もよくあるのがライトの消し忘れなどの人為的ミスです。
乗用車と同様に、作業終了時にヘッドライトや作業灯を消し忘れたり、キーを”ON”にしたまま放置したりすることで、バッテリーの電力が消費され続け、過放電を引き起こしてしまいます。
特に、複数人で1台のフォークリフトを共有している現場では、「次の人が使うだろう」と思い込んでキーを抜き忘れるケースも少なくありません。
長期間の放置による自然放電
長期間フォークリフトを使用せずに放置していることも、バッテリー上がりの原因になります。
バッテリーは、機器を使用していなくても内部で少しずつ放電しているからです。
そのため、長期休暇明けや、特定の繁忙期にしか稼働しない車両などを長期間保管していた場合は、いざ使おうとした時にエンジンを始動するだけの電力がないことがあります。
寿命や経年劣化による蓄電能力の低下
バッテリー自体の寿命や経年劣化による蓄電能力の低下も、頻繁にバッテリーが上がる要因のひとつです。
一般的に、エンジンフォークリフトの補機バッテリーは2〜3年、電動フォークリフト用バッテリーは4〜5年程度といわれています。長く使用していると、バッテリー内部の極板が劣化したり、端子部分が腐食したりして、十分な電力を蓄えられなくなります。
不適切な使用やメンテナンス不足
不適切な使用方法やメンテナンス不足も、バッテリーの寿命を縮め、バッテリー上がりを引き起こす大きな原因です。
特にバッテリーフォークリフトでは、残量ゼロまで使い切る過放電や、バッテリー液の補充を怠るなどの行為がバッテリーに多大な負荷をかけます。
実際に、筆者がいた現場では、忙しさから日常的なメンテナンスをおろそかにした結果、新車からわずか1年ほどで充電がすぐになくなってしまう車両が出た経験があります。
トラブルを防ぎ、無駄なコストを抑えるためにも、日々の正しい点検とメンテナンスが不可欠です。
次の章では、エンジン車のバッテリーが上がってしまった際の具体的な対処法を解説します。
【エンジンフォークリフト】バッテリーが上がりの対処方法
本章では、エンジン車のバッテリーが上がってしまった際の具体的な復旧手順について、以下の2つのステップで解説します。
- 事前準備と安全確認の徹底
- ブースターケーブルを使用したジャンピングスタートの正しい手順
事前準備と安全確認の徹底
安全に対処するため、まずは以下の3つのポイントを必ず確認しましょう。
適切な保護具の着用
バッテリー液(希硫酸)の飛散による失明や皮膚の火傷、高圧電流による感電事故を防ぐため、作業前には絶縁手袋や保護メガネなどの適切な保護具を必ず着用してください。
周囲の安全確保
ジャンピングスタート中は火花が散る可能性があるため、引火の恐れがある可燃物が近くにないか確認します。
また、作業に無関係な人が近づいて思わぬ事故に巻き込まれないよう、周囲の安全をしっかりと確保してから作業に取り掛かることが重要です。
【重要】救援車(バッテリー)と自車の電圧(12V/24V)の一致確認
救援車(バッテリー)と、バッテリーが上がった自車の電圧が同じであるか(12V/24V)を必ず確認してください。電圧の異なる車両をケーブルでつなぐと、ショートによる機器の破損や、最悪の場合はバッテリーが使用できなくなるリスクがあり非常に危険です。
見分け方としては、搭載されているバッテリーの”数”を確認するのが確実です。
| 電圧 | バッテリーの数 | 対象のフォークリフト(目安) |
|---|---|---|
| 12V | 1個 | 3.5t未満 |
| 24V | 2個 | 4t以上 |
2個直列でつながっていれば24Vと思って間違いありません。
ブースターケーブルを使用したジャンピングスタートの正しい手順
他車両や救援バッテリーから電力を分けてもらう『ジャンピングスタート』を行う際は、ブースターケーブルをつなぐ順番を絶対に間違えてはいけません。誤った順番で接続すると、ショートして火花が散り、ケガや機器損傷のおそれがあります。
12V/24Vそれぞれの、ジャンピングスタートの正しい手順は以下の通りです。
12Vのジャンピングスタート正しい手順
- 赤いケーブルを、バッテリーが上がった車両の”プラス端子”につなぐ
- 赤いケーブルのもう一方を、救援車(バッテリー)の”プラス端子”につなぐ
- 黒いケーブルを、救援車(バッテリー)の”マイナス端子”につなぐ
- 黒いケーブルのもう一方を、バッテリーが上がった車両の”マイナス端子(または車両の金属部分)”につなぐ
- バッテリーが上がった車両のセルをまわす
24Vのジャンピングスタート正しい手順
※注意点:バッテリー同士をつなぐケーブルが設置された端子には、絶対にブースターケーブルをつながない。
- 赤いケーブルを、バッテリーが上がった車両の”車両とつながったケーブルが設置されているプラス端子”につなぐ
- 赤いケーブルのもう一方を、救援車(バッテリー)の”車両とつながったケーブルが設置されているプラス端子”につなぐ
- 黒いケーブルを、救援車(バッテリー)の”車両とつながったケーブルが設置されているマイナス端子”につなぐ
- 黒いケーブルのもう一方を、バッテリーが上がった車両の”車両とつながったケーブルが設置されているマイナス端子(または車両の金属部分)”につなぐ
- バッテリーが上がった車両のセルをまわす
無事にエンジンがかかったら、つないだ時と”逆の順番(4→3→2→1)”でケーブルを外していきます。
ショートなどの重大事故を防ぐためにも、この手順を現場の全員が正確に理解し、確実に実践できる状態にしておくことが不可欠です。
次に、バッテリーフォークリフトのバッテリー上がりが疑われる場合の対処法を見てみましょう。
【バッテリーフォークリフト】バッテリー上がりの対処方法
本章では、バッテリーフォークリフトの電源が入らないなどのトラブル時に、適切に対処するための手順を以下の3つのポイントで解説します。
- 【まずチェック】バッテリー上がりを疑った時に確認すべきこと
- 充電ケーブルをつなぎ充電
- バッテリーを交換
【まずチェック】バッテリー上がりを疑った時に確認すべき点
バッテリーフォークリフトの電源が入らない時、すぐに「バッテリー上がりだ」と決めつけるのは早計です。別の原因で動かなくなっているだけのケースも少なくありません。
まずは以下のポイントを確認してみてください。
| チェックポイント | チェック方法 |
|---|---|
| バッテリープラグ | 座席を上げ、プラグが抜けていないか確認する |
| 着座センサー | しっかりと着座してからキーをONにする |
| 緊急停止ボタン | 押し込まれたままになっていないか確認する |
これらの簡単な確認を行うだけで、トラブルがあっさり解決することもよくあります。まずは落ち着いて車両の状態をチェックしましょう。
充電ケーブルをつなぎ充電
上記のチェックを行っても電源が入らない、または全く動かない場合は、過放電(バッテリー残量が完全にゼロの状態)が原因である可能性が高いです。その場合は、充電ケーブルをつないで充電を行ってください。
なお、バッテリーフォークリフトにおいて、残量がゼロになるまで使い切ってしまう過放電は、バッテリーへのダメージが非常に大きくなります。
バッテリーを交換
正しい手順でフル充電を行っても症状が改善しない場合や、充電してもすぐに残量がなくなって作業に支障が出る場合は、バッテリー自体が寿命を迎えていると考えられます。
バッテリーフォークリフトのバッテリー交換作業には専門的な知識と専用の設備が必要です。現場の作業員が無理に交換しようとすると、落下事故や感電など重大な労災につながる危険があるため、必ず専門の業者やメーカーのメンテナンス担当者に依頼するようにしてください。
なお、ここまでに紹介したエンジン車のジャンピングスタートや、バッテリーフォークリフトの充電方法は、手順を間違えるとケガや機器損傷の原因になります。そのため、正しい手順を作業員へ正確に伝えることが重要です。
その方法として、実際の作業風景や注意点を視覚的に分かりやすく見せられる『動画マニュアル』がおすすめです。例として、ある物流企業では、以下のようにリーチフォークリフトのバッテリー液補充方法を教える動画を作成し、効果的に周知しています。
▼フォークリフト保全業務を標準化する動画マニュアルの例▼
※「tebiki現場教育」で作成
なお、この動画は、誰でもかんたんに動画マニュアルが作れる動画マニュアル作成ツール『tebiki現場教育』で作成されました。詳細が気になる方は、以下のリンクから資料をダウンロードしご覧ください。
>>動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」を詳しく見てみる
次の章では、「バッテリー上がりを未然に防ぐ方法は?」という疑問にお答えします。
トラブルを未然に防ぐ!バッテリーの充電・メンテナンス方法
本章では、バッテリー上がりなどの厄介なトラブルを未然に防ぎ、寿命を長持ちさせるための具体的な充電・メンテナンス方法について、以下の3つのポイントから解説します。
- 過放電と寿命低下を防ぐ正しい充電
- バッテリー液(精製水)の適切な補充
- 冬場の温度低下を見据えた保管場所の管理
過放電と寿命低下を防ぐ正しい充電
バッテリーの寿命を長持ちさせるためには、正しい充電ルールを守ることが欠かせません。
最も避けるべきは、残量がゼロになるまで使い切る”過放電”と、少し使ってはこまめに充電を繰り返す”継ぎ足し充電”です。これらはバッテリーに大きな負担をかけ、蓄電能力を低下させてしまいます。
理想的なのは、バッテリー残量計が残り1〜2メモリ(あるいは20〜30%程度)になったタイミングで、フル充電を行うことです。
現場内で「残量が〇メモリになったら充電スペースに戻してフル充電する」といった明確なルールを設け、全員に徹底させることで、バッテリーを長持ちさせることができます。
バッテリー液(精製水)の適切な補充
鉛バッテリーは充電時の熱などでバッテリー液が蒸発するため、定期的な精製水の補充が不可欠です。
液面が規定ラインを下回ると極板が露出して劣化や発火の原因になり、逆に補充しすぎると液漏れによる車体の腐食や漏電を招きます。週に1回など頻度を決めて点検し、必ず適正な液面レベルを維持しましょう。
冬場の温度低下を見据えた保管場所の管理
バッテリーは寒さに弱く、外気温が低下する環境では蓄電性能が落ちてしまいます。そのため、冬場は特にバッテリー上がりが起きやすい季節といえるでしょう。
筆者がいた現場でも、特に冬場は頻繁にバッテリーが上がっていました。休み明けは必ずといっていいほど、ジャンピングスタートから1日が始まるような状況だったのです。
こうしたトラブルを防ぐためには、可能な限り屋内などの温度変化が少ない場所で保管する温度管理が重要です。
しかし、現場の環境によっては温度低下を防ぐことが難しいケースもあるでしょう。だからこそ、いざという時に慌てないよう、前章で解説したジャンピングスタートの正しいやり方を事前に教育しておくべきです。
なお、バッテリーに限らずフォークリフトの点検全般について詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
関連記事: フォークリフト点検は義務?点検の種類や項目、やり方について
次章では、正しい対処やメンテナンスの方法を標準化するコツをご紹介します。
フォークリフトの使用方法やメンテナンスを標準化するコツ
本章では、現場が抱えがちな”作業の属人化”や”手順のバラつき”といった課題を解消し、正しい使用方法やメンテナンスを標準化するコツについて、以下の2つで解説します。
- ベテランの勘や経験に依存しない作業手順の明確化
- 定期的な振り返りと再教育による形骸化防止
ベテランの勘や経験に依存しない作業手順の明確化
筆者の過去の経験として、標準化された教育の仕組みがなく、若手作業員がベテランの見よう見まねでバッテリーのジャンピングスタートを行っていた時期がありました。結果として、ブースターケーブルをつなぐ順番が人によってバラバラになり、ショートして火花が散り、端子を痛めてしまうなど危険なシーンがしばしばあったのです。
そのような危険を取り除き、現場の安全と安定した生産性を守るために、まずはこれまでベテラン作業員の頭の中にしかなかった”暗黙知”を洗い出しましょう。それを基に、誰もが同じ基準で判断・行動できるようにルールを明確にすることが重要です。
例えば株式会社近鉄コスモスでは、熟練工に依存しない・全員が正しい手順で作業を進行できるよう、「動画マニュアルを用いた標準化」を推進しています。動画マニュアルの例として、同社が実際に作成した「リーチフォークリフトのバッテリー液補充方法」を以下に掲載します。
▼リーチフォークリフトのバッテリー液補充に関する動画マニュアル▼
※「tebiki現場教育」で作成
なお、この動画は、誰でもかんたんに動画マニュアルが作れる動画マニュアル作成ツール『tebiki現場教育』で作成されました。詳細が気になる方は、以下のリンクから資料をダウンロードしご覧ください。
>>動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」を詳しく見てみる
定期的な振り返りと再教育による形骸化防止
どれほど素晴らしい作業手順やマニュアルを作成しても、現場で実際に守られなければ意味がありません。ルールが形骸化するのを防ぐためには、定期的な振り返りと再教育を仕組み化する必要があります。
たとえば、毎朝の朝礼やKYT(危険予知訓練)の場で、メンテナンス手順や安全ルールが正しく実践されているかを定期的に確認し合うのが効果的です。
作業員1人ひとりの納得感と安全意識が高まり、結果としてバッテリー上がりなどのトラブルを未然に防ぐ風土が醸成されていきます。
ちなみに、形骸化したKYTや安全教育を見直し、現場の安全意識を底上げしたいとお考えの方には、以下の資料がおすすめです。気になる方はリンクをクリックし、ダウンロードしてご覧ください。
>>資料「【4ラウンド法テンプレ付き】労災ゼロ!形骸化したKYTから脱却する動画KYTとは」をダウンロードする
まとめ
バッテリー上がりは、ライトの消し忘れやメンテナンス不足といった日々の不注意から発生することが多く、いざ起きてしまうと現場の作業をストップさせるトラブルです。
バッテリー上がりが発生した際は、本記事で紹介したジャンピングスタートや充電の正しい手順を厳守し、ショートや火災などの重大な二次災害を防ぎましょう。
トラブルを根本からなくすためには、単にルールを決めるだけでは不十分です。ベテランの頭の中にしかない正しい手順を誰もが同じように実践できる形で標準化し、現場全体に定着させる教育の仕組みづくりが欠かせません。
手順のバラつきや教育の属人化を防ぐためには、視覚的に分かりやすく正しい作業を伝えられる『動画マニュアル』の活用が有効です。
本記事を参考に、教育が行き届いた安全で生産性の高い現場づくりに取り組んでみてください。











