現場改善ラボ 記事一覧 お役立ち情報 製造原価とは?計算方法、削減方法について解説!

製造原価とは、製品を製造するときに発生した原価の全てを合算した値です。製造原価は、企業の利益を大きく左右するため、製造業において重要な値といえるでしょう。

この記事を読んでいる方は
「情報分析や判断を行う際に製造原価を計算したい!」
「製造原価の概念や計算方法の理解したい!」
「価格設定や戦略を策定する際に製造原価を考慮したい!」
といった悩みを抱えているのではないでしょうか。

そこでこの記事では、製造原価とは何か、そして製造原価と売上原価がどのように違うのかを解説します。多くの方が製造原価と売上原価を混同しているため、正確な定義と違いを理解することが非常に重要です。さらに、製造原価の計算方法や、原価や仕入先、製造工程の見直し等による製造原価の削減方法についても紹介します。

この記事を読めば、製造原価に関する全体像がつかめるでしょう。製造原価を知り、企業経営を良い方向に進めるために、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

製造原価の定義と売上原価との違い

製造原価の言葉は聞いたことはあるけど、定義がイマイチわからないという方のために、ここでは製造原価の定義、そして売上原価との違いについて詳しく解説します。

製造原価とは?

製造原価とは、製品を製造するときに発生する費用のすべてを足し合わせた値のことです。製造原価には材料費、人件費、設備費用などの諸費用が含まれます。特に材料費や人件費、設備費用などの諸費用は製品の価格設定や利益に直接影響を与えるため、製品を製造するときに発生する費用として合算します。

たとえば部品Aの材料費が高くなれば、部品Aを使う製品の製造原価も上がり、結果的に売値も高く設定する必要が出てくるでしょう。また人件費が上がれば製造原価も上がるため、部品の材料費や人件費の高騰は、製造原価自体のインフレーションに直接結びつくと言えるでしょう。

売上原価との違いとは?

売上原価と製造原価は似ているようで異なる概念です。

製造原価とは端的に言えば、製品を作るためにかかる費用のことで、売上原価とは製品が実際に売れたときにかかる費用を指します。製造原価は製品が完成するまでのプロセスで発生する費用であり、売上原価は製品を製造した先となる市場に出てから発生する費用と解釈すれば良いでしょう。

たとえば製造原価は、自動車製造業であれば、エンジンやフレーム、内装に使われる材料費、加えて工場で働く労働者の人件費、さらには製造ラインの設備費やエネルギー費などが含まれているため、製品が工場で生産される過程で発生する費用と言えます。

一方で売上原価には、スーパーマーケットが野菜を販売する場合、売上原価には仕入れた野菜のコスト、店舗での陳列や保管にかかる費用、さらには販売員の人件費などが計上されます。

現場改善ラボでは、原価管理に便利な原価管理システムについて解説した記事があります。製造業で原価管理についてさらに詳しく知りたい方は次の記事を参考にしてみてください。

製造原価の分類方法

製品を作る際にかかる製造原価は次の2つに分類することができます。それぞれについて詳しく解説しましょう。

  • 形態別の分類
  • 直接費と間接費

形態別の分類

1つ目の方法として、形態別に分類することができます。、形態別に製造原価を分類するには主に次の3つが挙げられます。

  • 材料費
  • 労務費
  • 経費

これらに分類して計算することで、製造原価で費用がかかっている項目がわかるため、費用を削減したい場合にも役立つでしょう。

材料費

製品の品質はコストによって左右される場合があるため、材料費は製造原価において重要な要素です。

たとえば高品質の材料を使用すると、製品の品質は向上しますが、原価も高くなります。低品質の材料を使用すると原価は下がりますが、製品の品質も低下する可能性があります。そのため、材料選びは製造原価を効率的に管理するために重要です。

製造業の材料には、受注管理、在庫管理、出荷管理、売上管理、顧客管理など多くの管理が存在し、担当者の頭を悩ませているのが実態です。そんな管理を簡単にする購買管理システムの概要は以下の記事を参考にしてみてください。

労務費

人件費などの労務費は製造業において避けられないコストであり、労務費の管理が製品の品質と生産効率に直接影響を与えるため、労務費も製造原価において大きなウェイトを占めます。

たとえば熟練工が多い場合、製品の品質は高くなる分、人件費も高くなります。労務費を適切に管理することで、製造原価を最適化することが可能です。

経費

経費とは、材料費や労務費以外の製造原価に含まれる費用のことです。設備の減価償却費や電気代などが含まれます。

たとえばエネルギー効率の良い機械を使用することで、電気代を削減することが可能です。経費を効率的に管理することで、製造原価を下げることができます。

直接費と間接費

次に、直接費と間接費で分類する方法を紹介します。

直接費とは、製品に直接関わる費用のことで、間接費とは、製品を作るために間接的にかかった費用のことです。

直接費は主に材料費、労務費、外注加工費などから構成され、製品ごとに明確に計算できるため、管理が容易です。

たとえばアルミニウムを多く使用する製品の場合、アルミニウム価格の変動によって直接費が大きく変わる可能性があります。例のような場合、価格交渉や代替材料の検討などでコストを抑制する戦略が有効です。

一方で、間接費は一般的に管理が難しく、工場の電気代や設備の減価償却費などが含まれます。電気代や設備の減価償却費などの費用は製品ごとに明確に分けることが難しく、全体での管理が必要です。

たとえば電気代は全製品に影響を与えますが、どの製品がどれだけの電気を使用したかは一概には言えません。例のような場合、デジタル化を進めることで、間接費の詳細な分析と削減が可能になります。

製造原価の計算方法

製造原価率を正確に計算するためには、製造原価を正確に算出する必要があります。製造原価は、材料費、労務費、経費などを合計したもので、具体的な計算式は以下のようになります。

製造原価=総製造費用+期首の材料費+仕掛品の棚卸高-(期末の仕掛品+未使用材料費)

製造原価の計算を行うことで、どの部分でコストを削減できるか、または効率化できるかが明確になります。製造原価が分かれば、次は製造原価率を計算します。計算式は以下の通りです。

製造原価率=製造原価÷販売価格×100

製造原価と製造原価率の計算は製造業の企業経営に影響するため、数値を把握し、定期的に見直すことが大切です。

製造原価の計算でExcelを使うことも考えられますが、フリーソフトや有料ソフトはExcelよりもさらに便利な機能があります。現場改善ラボでは製造原価の計算におすすめな帳票ツールに関する記事を用意してありますので、ぜひ参考にしてみてください。

製造原価の削減方法

原価を削減することで利益率が向上し、企業の競争力が高まるため、製造原価の削減は製造業において重要な課題です。ここでは製造原価の削減方法として、次の5つを紹介します。

  • 原価の見直し
  • 仕入先の見直し
  • 仕入れ量の見直し
  • 売値の見直し
  • 製造工程の見直し

原価の見直し

原価が高いと製品の価格も高くなり、競争力が低下する可能性があるため、原価の見直しは製造業におけるコスト削減の最も基本的な手法です。

中小企業実態基本調査によると、法人企業の原価の内、材料費が占める割合が71.3%、労務費が占める割合が9.8%、不動産賃借料などの経費を占める割合が18.9%となり、材料費が原価の7割以上もの比率を占めることがデータで裏付けられています。材料原価が製品価格の大部分を占めるため、原価の見直しが直接的な利益向上につながります。

参照元:【中小企業実態基本調査 / 令和4年確報(令和3年度決算実績) 確報

現場改善ラボでは、コストの最適化について中村 茂弘 氏をお招きしたセミナーの動画を視聴可能です。ぜひこの機会に動画に申し込んでみませんか?



利益を生み出す製造現場のQCD

仕入先の見直し

同じ品質の材料をより低価格で仕入れることができれば、製品の原価も下がるため、仕入先の見直しも原価削減に有効な手段です。仕入先との取引条件や価格交渉により、コスト削減が期待でき、企業の利益をさらに高めることが期待できます。

たとえば複数の仕入先から見積もりを取り、最もコストパフォーマンスの高い仕入先を選ぶ方法があります。さらに、長期的な取引を前提とした契約を結ぶことで、特別な割引を受けることも考えられるでしょう。

仕入れ量の見直し

過剰な在庫は保管費用や資本コストを増加させるため、仕入れ量の見直しは在庫コストを削減するために重要です。仕入れ量の見直しで適切な在庫量を維持することで、キャッシュフローの改善や資本の有効活用が可能になります。

たとえば需要予測を正確に行い、必要な量だけ仕入れることで在庫コストを削減できます。また、JIT(ジャストインタイム)方式を取り入れることで、必要な時に必要な分だけ生産・仕入れを行うことが可能です。

売値の見直し

原材料費が上昇した場合など、原価が上がると利益が減少する可能性があるため、売値の見直しは利益率を保つために必要な場合があります。売値を見直して市場の価格変動に柔軟に対応することで、企業の収益性を維持・向上させるとが可能です。

たとえば価格弾性の低い製品では、少しの価格上昇でも顧客が離れない可能性が高いため、売値を上げることが考えられます。さらに価格の差別化戦略を取り入れることで、異なる顧客層に対して最適な価格を提供することできます。

製造工程の見直し

無駄な工程や手間が削減できれば、製品一つあたりの原価も下がるため、製造工程の見直しは、生産効率を高めるために不可欠です。製造工程を見直せば、生産工程を効率化し、製品の品質向上や納期の短縮にもつながります。

製造原価を理解して企業の経営を見直そう!【まとめ】

この記事では、製造原価の基本的な定義や計算方法、削減策を解説しました。

まず、製造原価とは製品を作るためにかかる費用のことであり、売上原価とは製品が実際に売れたときにかかる費用であるという基本的な違いを理解することが重要です。基本的な違いを理解することは、企業がどのようなコスト構造になっているのか、どこに無駄があるのかを把握する助けになるでしょう。

次に、製造原価の分類方法は、形態別と直接費と間接費に分けることができることを紹介しました。形態別の分類では、材料費、労務費、経費といった要素があります。いずれかの分類をして製造原価を把握することで、どの部分にコスト削減の余地があるのかを明確にすることが可能です。

特に、製造原価率の計算方法は、製品の価格設定や利益率を評価する上で欠かせない情報なので、エクセルや購買管理システム、帳票ツールを用いて管理するといいでしょう。

製造原価を削減する場合は、原価の見直しや仕入先の見直し、仕入れ量の見直し、売値の見直し、製造工程の見直しを実施することで、より大きな効果が期待できます。

製造原価を理解し、適切な管理と削減策を講じて企業全体の競争力を高め、より良い企業経営を目指すことが可能です。

現場改善ラボでは、企業経営と品質管理を結びつけた「儲かるメーカー改善の急所101」の動画が視聴可能です。改善コンサルタントの柿内 幸夫氏をお招きしたセミナーの動画になっており、手軽に視聴可能ですのでぜひこの機会に動画に申し込んでみませんか?



『儲かるメーカー改善の急所101』から解説する品質管理

関連記事

現場改善に役立つ!無料で見れる専門家による解説セミナー

新着記事

目次に戻る