「帳票は必要。けれど作成や管理に多くの工数がかかるからどうにかしたい」と頭を悩ませている担当者も多くいるのではないでしょうか。
帳票は、企業活動を行う上で欠かせないものです。企業では担当者が日々さまざまな帳票を作り、そして業務に活用しています。「そろそろウチも業務効率化のために帳票ツールを導入しようと考えている」という企業も多いでしょう。本記事では、そんな企業経営に必要不可欠な帳票と帳票に関わるツールについて解説します。
目次
そもそも帳票とは?
帳票の意味
帳票(ちょうひょう)とは、一般的に経理業務で使用する帳簿や伝票のことを指し、ビジネスで使用される情報を整理した書類やフォームのことを帳票と呼ぶことがあります。具体的には、売り上げ・販売数量・在庫状況・経費・収入などの情報を記録するために使用されます。帳票は、Excelや専用フォーマットを用いて作成され、企業や団体によって異なるフォーマットで使用されることが一般的です。
製造業(とくに製造現場)における帳票は、製造プロセスに関する情報をまとめた書類やフォームのことを指します。製品の製造過程で必要な各種データ・作業指示書・検査記録・在庫管理・品質管理などを帳票にします。製造業では、生産ライン全体のスケジュールや生産工程を管理するための帳票が多数存在し、製造管理システムなどと連携して使用されることが一般的です。
帳票を作成する目的
経理業務で帳票を作成する目的は、日々の取引を記録して証拠として残すことです。ビジネス全般で使用される帳票は、ビジネスや組織内で発生するさまざまなデータを集計し、可視化するために作成されます。特定の時間軸や領域での業務の成果や状況を把握するために使用されることが一般的です。具体的には、以下のような目的で帳票が作成されます。
経理業務
仕訳帳や現金出納帳などの国税関係の帳簿や書類の作成
業績の把握
売上高・利益率・販売数・在庫状況などの業績データを集計し、ビジネスの現状を把握
予算の管理
収支の状況や予算状況執行を確認し、予算の達成度の把握
業務状況の管理
プロジェクトの進捗(しんちょく)状況・タスク完了率などのデータを可視化して、プロジェクト管理者がプロジェクトの管理
顧客情報管理
顧客の注文履歴・購入履歴・アクティビティなどの情報を収集し、顧客の行動パターンやニーズの把握
人事労務の管理
従業員の出勤状況・給与などの情報の管理
帳票と伝票の違い
帳票と伝票は、どちらもビジネスで使用される文書であり、それぞれ異なる目的で使用されます。帳票は、複数の取引に関するビジネスの取引データを集計して、ビジネス全体の状況を報告する文書です。経理部門やマネジャーなどの上級管理職が使用することが多く、ビジネス全体を把握するために使用されます。
伝票には、発注書・納品書・請求書・受領書などがあります。現場の従業員や店員が使用することが多く、単一の取引に関する情報を記録する文書として使用されます。
電子帳簿保存法の改正で電子化に集まる注目
電子帳簿保存法とは、「紙」で保存することが義務付けられていた国税関係の帳簿や書類を電子化して保存する際のルールを決めた法律です。この電子帳簿保存法が2021年度税制改正により抜本的に見直され、2022年1月に施行されました。帳簿に関しては以下の2つの改正が注目されています。
スキャナー保存の要件緩和
スキャナー保存の要件が大幅に緩和され、スキャンした画像を原本として保管し紙を破棄するという運用が現実的になりました。経理業務で使う帳簿類(仕訳帳や固定資産台帳など)は、紙と電子データどちらの保存も認められているため、運用しやすい方を選択することが可能です。取引先とやり取りする書類(注文書や契約書など)は、自社で作成したものは紙と電子データどちらも選択可能です。
一方で受け取ったものは、原則紙での保存になります。ただし、スキャナー保存の要件を満たせば、紙を破棄するということが可能です。
電子データで受け取った書面、または交付した取引情報が記載されている書面の保存を廃止
(引用元:国税庁)
これまでは、メールで受け取った見積書や契約書は印刷して紙で保存することが可能でした。しかし、今回の改正で紙での保存は禁止となり、法律の要件に沿った形式でデータを保管する必要があります。電子メールで受け取った書類・Webからダウンロードした書類・EDIでやり取りする情報など、紙で受け取る以外のものが対象です。
2022年1月の施行で帳票の電子化が促進される流れとなります。とくにに、受け取った電子データは電子保存が必須のため、帳票ツールを利用して対応する企業が増えています。
帳票ツールとは?
帳票ツールは、帳票の作成・管理・出力などが行えるシステムやソフトのことです。経理帳票に特化した専門ツールもあり、煩雑な経理業務の効率化を行えます。専門ツール導入以前の帳票(Excel、Word、PDFなど)も取り込みできるため、ツールでの一元管理が可能です。
とくに従来の原本書類やExcelでの管理と比べ、帳票検索の簡易化や帳票の自動仕分けなど管理面の大幅な効率化が見込めるのが、専門ツールのメリットです。原本書類やExcelで行うことも可能ですが、膨大な量の帳票を扱う企業では多くの工数を割く必要があります。そのため、帳票ツールを導入して業務の効率化を進める企業が多くなっています。
帳票ツールの主な機能
帳票ツールの主な機能は以下の6つです。
帳票設計/作成
帳票の項目レイアウトなど出力された時のフォーマットを設計する機能です。設計したフォーマットをもとに帳票作成を行えます。
帳票のインポート
別形式のデータなどを取り込む機能です。原本書類をPDF化した帳票や既存の帳票(Excelデータなど)を取り込み、一元管理が可能になります。
帳票のエクスポート(プリンター、PDF、Excelなど)
作成した帳票を出力する機能です。ツールによって出力できるデータ形式に違いがあるため、注意が必要です。
帳票検索
ツール内にある帳票を検索する機能です。顧客・帳票の種類・日付などで検索を行えます。
帳票の表示・閲覧機能
設計した帳票を表示端末に合わせて生成する機能です。パソコン・スマホ・タブレットなど、各自の用途に合わせた表示が可能です。
帳票管理
ツール内の帳票を管理する機能です。帳票の作成や編集の権限設定や保存されている帳票の自動仕分けなど、帳票が管理しやすくなります。
帳票ツールの種類
帳票ツールは、主に3つの種類があります。企業の状況によってマッチするツールは変わってきます。どのツールが自社にマッチするのか、気になるところでしょう。ここからはそれぞれの特色について解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
フリーソフト
フリーソフトは無料で手に入るため、比較的導入のハードルが低いソフトです。導入コストがかからないことがメリットになります。一方、デメリットとしては、使いこなすのに時間がかかる・サポートが弱いなどがあります。デメリットはありますが、まずフリーソフトを導入してどんな機能が必要かを見極められるため、一度導入を検討してもよいでしょう。また、コストをかけることができない場合もフリーソフトなら導入可能です。ここからは、おすすめのフリーソフトを2種類ご紹介します。
・JasperReports
JasperReportsは、プログラマーの人気が高いJava帳票作成ツールです。特徴として、Javaアプリケーションを組み込んで使用できる点が挙げられます。また、Windows/Macどちらでも実行できます。デメリットとしては、帳票の生成にプログラミングが必要なことです。そのため、使いこなすまでに時間がかかる傾向にあります。
・Seal Report
Seal Reportは、C#で開発したツールです。最大の特徴は、データの読み込みやバックアップなどのスケジュールを設定でき、データの管理を自動化することが可能です。デメリットは、バージョンアップがほぼないため、追加機能やバグ修正の期待ができないことです。また、マニュアルやチュートリアルが少ないため、JasperReports同様使いこなすまでに時間がかかります。
Excel(エクセル)
さまざまな業務に使うことが多いExcelも帳票ツールとして使用可能です。とくに、製造現場の帳票はExcelを使う場面が非常に多いです。「ウチの帳票はExcelで作っている」という企業も見受けられます。
Excelは、経理業務のツールとしても使うことも可能です。Excelを経理業務の帳票ツールとして使うにあたって、考えられるメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット
- 汎用(はんよう)ソフトのため、使用するハードルが低い。
デメリット
- 複雑な処理は、マクロの知識が必要があるため高度なExcelスキルが求められる
- 容量が大きいため、膨大な量の管理には不向き
- Excelを印刷/配布/保管するコストが膨大
- 管理者側がリアルタイムに確認することができない
誰でも使うことができるのは、大きなメリットです。Excelであれば、管理者も作業者も、慣れ親しんだ項目レイアウトで特別な教育が必要なことはありません。帳票の内容を説明すれば、ほとんどの人が対応できます。デメリットとしては、複雑な処理になるとマクロを組める人材が必要なこととデータの容量が大きいことです。帳票は簡単な入力のみで量も少ないという企業であれば、Excelでも十分対応可能です。
クラウドサービス
クラウドサービスの帳票ツールとは、ツール提供元のサーバーを使って帳票を管理します。そのため、帳票のために自社で管理・保存の環境を整える必要はありません。また、クラウド上に保存するため、使用端末の制限がなく利用可能になります。
メリット
- ツール導入以外は、自社で環境整備が不要。
- 端末制限がなく使用可能
- 大量の帳票の扱いが可能。
- アフターサポートが充実
- データの共有が簡単にできる
- 時間や場所を問わず利用ができる
デメリット
- 費用が高額
- 導入時の業務が高負荷
クラウドサービスの帳票ツールは、基本的に有料になります。その分アフターサポートが充実しているため、コストがかかってもいいから確実に導入したいという場合は、クラウドサービスの帳票ツールがおすすめです。
無料トライアルがあるツールも多くあるため、まずはトライアルで使用感を確認してから本格導入に移行するのが確実です。参考に無料トライアルを実施しているツールを2種類ご紹介します。
Create!formは、豊富な機能と大量高速印刷が特徴の帳票ツールです。取引が頻繁にあり、帳票の量が多い企業におすすめのツールです。PDF・Excel・Word形式のデータ取り込みに対応しているため、既存帳票の移行も問題なく行えます。
有料オプションの「帳票移行サービス」を利用すれば、導入時の業務負荷の軽減も可能です。無料トライアルの期間は30日間あるため、Create!formが自社にマッチするのかを見極めてから導入することが可能です。
oproartsは、各種クラウドサービスと連携可能で機能を拡張できる帳票ツールです。Kintoneや電子契約サービスなどと連携できるため、自社の状況に合わせて柔軟に機能を設定できます。大量出力(月間最大850万ページ)にも対応しています。また、バーコードや画像の印刷を多用する帳票出力にも対応しているため、製造業の指示書や検査基準書などの作成も可能です。
図面の一括出力やプリンターへの直接印刷も可能で、製造現場の負担を軽減できるツールになります。無料トライアル期間は1か月間です。
帳票ツールを選定する6つのポイント
帳票ツールを選定するポイントは6つあります。
データの取り込み方法(データインポート)
自社に必要な取り込み方法が提供されているかを確認しましょう。ファイルを選択してアップロードするのが基本になるため、アップロードしたいファイル形式に対応していることが必須になります。また、Googleドライブとの連携やメール転送などアップロード以外での取り込み方法を想定している場合は、併せて確認してください。
入力項目の確認
「運用に必要な項目は全て入力可能か?」「オペレーターに入力依頼することが可能か?」など運用方法に合った入力ができるかを確認してください。
入力時や変更時の履歴
履歴が自動で残せない場合、履歴管理を別で行う必要が出てきます。履歴管理も一括で行いたい場合は、自動管理できるツールを選びましょう。
検索機能
想定している検索の要件を満たしているかを確認しましょう。(日付・取引先・金額・帳票の種類など)
複合的な検索を行う可能性がある場合は、特に注意してください。
データの出力
経理業務で使用する場合、保存する書類が国税関係書類となるため7~10年の保存期間が必要になります。データの出力ができないとデータの移行ができないため、同じツールを使い続けることになります。
費用
基本的に帳票ツールは、買い切りではなく月もしくは年単位での契約となります。導入後は固定費になるため、予算の上限は十分検討しておきましょう。
まとめ
帳票ツールは、業務効率化を行う上で欠かせないアイテムです。とはいえ、全ての企業にマッチした帳票ツールは存在しません。自社の状況を正確に把握して、最適なツールを見極めることが非常に重要です。自社にあった帳票ツールを導入して、帳票業務を効率的に進めていきましょう。