現場改善ラボ 記事一覧 お役立ち情報 DX白書2023から読み解く、日本のDXの現状と課題【IMPROVE開催レポート】

2023年9月21日(木)に現場改善ラボは、オンラインイベント『DXの新潮流』を開催し、さまざまな専門家/企業講演をお届けしました。

お申込みが2,000名を超えた本イベントでは、独立行政法人情報処理推進機構の古明地 正俊氏より「DX白書2023から読み解く、日本のDXの現状と課題」についてご講演いただきました。

古明地氏による自己紹介と講演内容

独立行政法人情報処理推進機構の古明地 正俊と申します。本日は「DX白書2023から読み解く日本のDXの現状と課題」というタイトルでお話をさせていただければと思います。

まず最初に、私が所属しておりますIPA情報処理推進機構について簡単にご紹介するとともに、DX白書についても、概要をご説明させていただければと思います。

DX白書についてでございますけれども、私が所属している部署ではこれまでIT人材白書であるとか、AI人材白書といったような白書の事業を執り行っておりました。今まで人材や技術といったそれぞれバラバラな視点で調査を行っていたんですけれども、DXを推進するということになりますと、やはりその経営がきちんと参画するということが重要になってまいります。

そういう観点で技術や人材をバラバラに扱うだけではなく、戦略的な側面を加えて一つのものにまとめ上げるという形をとった方が好ましいのではと思いました。そこで、人材技術に加えて戦略の視点を入れることによって、新しいDX白書というものを、2021年の10月のデジタルの日に、書籍を発行させていただきました。

 本日ご紹介させていただきますDX白書2023はそれの第2弾にあたるものになります。第1部の総論、それから第2部の全体俯瞰に加えまして、戦略・人材・技術、この3つの視点でまとめております。

また最後に、制度政策動向ということで、日本と米国欧州中国のデジタル関連の制度政策の方もご紹介させていただいております。人材技術のところのアンケート結果を中心に中身についてご紹介させていただければと思います。

本ページでは、40分の講演内容を要約して皆様にお届けします。講演では、製造分野における戦略についても、詳細に解説していただきました。

本レポートでは、全ての内容をお伝えしきれないため、詳細は本講演の見逃し配信をご覧くださいませ。(2024年3月までの期間限定配信)

DX白書2023から読み解く、日本のDXの現状と課題

DXの取り組みに関する日米企業の違い

図表では日本と米国、それぞれ業種としては上から製造業、流通小売りサービス業、情報通信それから金融保険というような形で業種ごとに分けた結果を示しています。

 図表の一番左端(濃い青)のところが「全社戦略に基づいて全社的にDX取り組んでいる」企業様の割合ということになりますけれども、これ見ていただくと、米国も日本も情報通信業ってのはかなり取り組みされてる企業さんが多いです。それから金融保険のところもかなり多いというのは同じような傾向として出ております。

一方で、製造業のところでございますけれども、やはり全社的に取り組んでるっていうところを見ると、米国とかなり差があると読み取れます。米国では製造業さんの方は42.2%なのに対して日本ではですね、27.6%ということで、そういう点では製造業はかなり伸びしろがあるのではないかなというふうに見てとれます。

今までのところは単に取り組みをしているかどうかということだったんですけれども、その取り組みをした結果としてきちんと成果が出ているかどうかというのを聞いたのが次の図表になります。

成果が出ているというふうにお答えになった企業が青色のところでございますけれども、日本で成果が出ている企業の割合というのは2021年度で49.5%だったのがですが、22年度の調査では58%に増加してございます。そういう意味では、取り組みも増えていますし成果が出ている企業さんが着実に増えてきているというのが見てとれます。

ただ、成果が出ている割合の増加と取り組みをしている企業の割合の増加にはかなり差が出ています。まだ日本の企業さんは成果が出ていない企業さんが多いというところがこちらの図から読み取れると見てとれるかと思います。

海外でのDX化事例については見逃し配信をご覧ください。(2024年3月までの期間限定配信)

DX白書2023から読み解く、日本のDXの現状と課題

日本企業におけるDX推進に向けた課題

こちらはDXの進め方、推進プロセスについてご紹介したものになります。横軸の方が重要度、それから縦軸の方が達成度でそれぞれ何の重要度と達成度かというと、DXを推進するプロセス、こういうプロセスが重要ですか、それからそれが達成されてますかというのを聞いたものになります。

具体的なものとしては、例えば赤字で書かれている丸のところですけれども、「全社員による危機意識の共有」であるとか「自律性と柔軟性を許容するアジャイルな変革」、こういったようなものが、プロセスを進めていく上で大切にしてるかどうかをとったものです。当然、右上にある方が感度も高くて実施もちゃんとされていると。いうことになるわけですけれども、米国の方が右上の方に来ていて残念ながらですね、日本企業さんは全体的にまず下の方に来てるっていうのと、物によってはですね意識自体が低いということで、アジャイルな変革であるとか目に見える成果の短いサイクルでの計測と評価ガバナンスとかですね、そういうところは重要度自体もあんまり高いと思っていない。という結果が見て取れます。

特にDXに必須と思われるスピードとかアジリティに関するプロセスの重要度っていうところが低いというところが日本企業の特徴だというふうに考えております。

同じようなところできちんと成果をモニタリングされてるかどうかというところを見たところでございますけれども、顧客への価値提供などの成果評価の頻度を表した図になっています。具体的には例えば、アプリのアクティブユーザー数のモニタリングであるとか、ダウンロード数であるとか、CXへの影響の測定であるとか、こういったようなものがですね、横軸にありますように、左側が毎週見ている、右に行くほど期間が長くなります。

円の中に書かれているのがそれぞれ日本と米国の回答数の割合になっております。見ていただくとですね、米国の黄色い丸のところは四半期より左側、毎週とか毎月とか四半期に一度ぐらいでモニタリングして見直しをしているという結果を得ています。

それに対して日本は大体小さい数字が出ていて、残念なことに一番大きいところがですね評価対象外ということで、そもそもこういうKPIのようなものを取っていないという企業さんが非常に多くなっているという結果が得られています。

これは顧客視点できちんとサービスをブラッシュアップし続けるというプロセスを回し続けなくちゃいけないというDXにおいて、かなり致命的なものではないかというふうに私どもは考えてども考えております。

最後に役員層でITに対する知見がある人が企業のリソースとしてきちんとあるかどうかというのを見たのがこちらの結果になります。

こちらもですね日米でかなり大きな差が出ておりまして、IT分野に見識がある役員の割合を見た場合、IT分野に見識がある役員が3割以上の割合は、日本企業の場合で27.8%。一方、米国企業の場合では60.9%という結果を示しています。日本企業は21年度調査結果と比べると増えてきてはいるものの、米国企業と比べるとダブルスコアということで、ITに見識がある役員の方ってのはまだ日本企業の場合にはかなり少ないと考えられます。

DXというのは基本的にその企業の戦略そのものやビジネスモデルを変えていくということになりますので、企業のDXを推進する際には、経営陣が戦略をきちんと練って、イニシアチブを取って進めなくてはいけないというふうに考えております。なのでそういう観点ではですね、経営層のITに対する理解が不十分であるというのはかなり大きな課題になってくるのではないかというふうに考えております。

DX化に向けた人材育成における欠陥

DXを推進する人材像の設定ですが、これはかなり厳しい状況でございまして、きちんと設定して社内に周知してるというのは日本では18.4%しかないのに対し、米国は約5割ということで大きな差がついています。

さらに日本は人材像の設定をしていないというところが40%もあり、きちんとした人材像が日本企業の場合にはそもそも設定できていないというのが見てとれます。このような状況下のため、人材がきちんと確保されているのかというのを見ると、米国の方は実はもうやや過剰であるというふうにお答えになってる企業がいるような状況でかなり充足してる状態です。

日本の場合にはDXが進むにつれて人材が不足しているというふうにお答えになった企業さんが非常に増えてきてるという状況になっております。そういう状況で人材獲得をするためにどういう方法をとっているかというところですけれども、米国の場合はマーケットがあってそこから引っ張ってくるということができるので外部から取ってくるということができるわけですけれども、日本の場合には人材の流動性が低いということもありますので、どちらかというと、社内の人材育成頼みというのがちょっと日本側の方で目立っています。 

日本も米国も比較的社内で育成するっていうとこを重視しているわけなんですけれども、重視するために一体何をしているのかというのが次のアンケートの結果になります。日本はきちんと育成用のプログラムを構築して実施してるっていう企業さんは実はかなり低いです。

中でも、米国ではDX案件というのは企業内でたくさん並行して走っていますので、OJTプログラムというのを重視しておりますし実際にプロジェクト自体も結構潤沢にあるのでですね、それを通して人材育成していくということが多分うまくいってるんだと思います。一方で、日本の場合は残念ながらOJTっていうふうにお答えしてるところは多いんですけれども、なかなかちょっと自主的にうまく機能していないんではないかというふうに見られるところもございます。

【まとめ】DX白書2023から読み解く、日本のDXの現状と課題

冒頭のところ戦略でご紹介したように、日本においてDXに対する取り組み自体は進んでいるんですけれども、まだ比較的変革と呼べるところまではきちんとできていないところが一つ大きな課題として出てきています。

それから戦略面、人材面、技術面で見てまいりますと、それぞれ経営のリーダーシップがまだちょっと不十分であったり、スピードアジリティというところが意識されていないとか、人材に関しては不足しているんだけれども具体的な策がきちんととられていない点が課題ですね。

技術面ではその戦略の問題を引きずってる形ですけれども特にスピードアジリティみたいなものっていうのに対する意識がまだ低いです。それからデータ利活用のところに関しても取り組みが不十分でありますけれども具体的な策に繋げられていないといったようなところが日本の課題として見てとれたと思っております。以上でございます。ご清聴ありがとうございました。

本講演の内容は、見逃し配信にてフルバージョンが視聴可能です。ぜひご覧ください。(2024年3月までの期間限定配信)

DX白書2023から読み解く、日本のDXの現状と課題

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