2023年9月21日(木)に現場改善ラボは、オンラインイベント『DXの新潮流』を開催し、さまざまな専門家/企業講演をお届けしました。
お申込みが2,000名を超えた本イベントでは、株式会社FAプロダクツ 会長の天野 眞也氏より「デジタル化の先にあるトランスフォーメーションとは?事例から紐解く製造業DX」についてご講演いただきました。
本ページでは、40分の講演内容を要約して皆様にお届けします。講演では、GXに向けたDXの取り組み方やデジタルツイン技術についても、詳細に解説していただきました。
本レポートでは、全ての内容をお伝えしきれないため、詳細は本講演の見逃し配信をご覧くださいませ。(2024年3月までの期間限定配信)
目次
天野氏による自己紹介
「デジタル化の先にあるトランスフォーメーションとは」というお題で、事例から紐解く製造業DXについてお話をさせていただきたいと思います。天野慎也と申します。本日はどうかよろしくお願いいたします。
私の製造業のキャリアのスタートというのは1992年にキーエンスという会社がスタートでございます。キーエンス時代は、製造業全般いわゆる自動車食品、半導体などのあらゆる業界の生産現場を見てまいりました。おそらく数千は超えているんじゃないかなと思います。そういった工場を回りながら、私はセンサー(IoT)という商材サービスを扱ってきました。このセンサーの基になるのは何かというと、これは全てデータなんですね。
こういったデータがどう扱われてどう必要になるのかといったところを通じながら、今日は製造業のDXについてお話をさせていただきたいと思います。
今日は皆様にできる限りわかりやすく、この製造業DXについて実例を交えながらお話したいと思いますので、どうかお付き合いよろしくお願いいたします。
DX化に向けた日本の製造業の現状と課題
日本のGDPの成長率、というのはずっと横ばいで失われた30年みたいなことを言われています。一方で、日本全体のGDPと製造業のGDPの成長率は綺麗に一致しています。こういったところからもわかる通り、日本はかつて製造技術と真面目な気質によって高いコストパフォーマンス、そして世界中の物作りをリードしてきたと言っていいと思います。
日本は高いコストパフォーマンスを実現しシェアを獲得していましたが、今の韓国や中国に代表されるような格安というふうに言われてたんですけれども、決して今は安かろう悪かろうということではないということで、どんどん日本のシェアは韓国や中国に取られています。
では、ドイツやアメリカが誇るプレミアムゾーンではどうかというと、日本は食い込めていないといったところで苦戦しています。
格安ゾーンとプレミアムゾーンに挟まれて日本は苦戦しているというのが皆さんご理解の内容かと思います。
さらに日本の製造業を取り巻く環境は厳しさを増していて、労働生産性の低迷、中国の台頭、競争激化によって売り上げが低下しちゃったとか、最近だと原価が上がっちゃったとかが多いですね。あと人材不足、これはわが国においては非常に深刻な問題です。
また、地方の製造現場はどうなってるかというと、先ほどお話した人手不足に加え、設備の旧式化、変種変量が課題となっています。以前は大量生産で同じものを作るだけで売れました。だから同じものをたくさん作れたのですが今はどうでしょうか。皆さんもう新たに欲しいものなんてなかなかないでしょう。
さらには半導体不足や原価高騰などこういったことが起きているわけなんですね。さらに言うと地方ではもっと深刻な問題も起きてます。
それは何かというと、ノウハウの喪失というものなんですね。これは日本のもの作りのノウハウというのはものすごいものがあると思うんですけれども、こういうものは各企業さんに所属していると、会社のノウハウとして語られることが多いんですけれども、本当にそうでしょうかっていう話なんですね。この場合、会社にノウハウと言っているんですけれども、熟練の従業員さんのカン・コツに基づくノウハウであることが多いです。
そうなるとその熟練のスペシャリストが退職しちゃうと、そもそもこのノウハウがなくなってしまうと、こういうことが今非常に僕は課題になっているというふうに思っています。
さらに言うと、日本中のサプライチェーン、これ日本に限らずともなんですけれども、メーカーの親会社の方はある程度こういった課題を解決するために「DX化しましょう」「スマートファクトリーを新しく建設しましょう」、こういう投資が可能なんですけれども、Tier1、Tier2企業というそれを支えるサプライヤーさんたちこういったサプライヤーさんは本当にそういう人材だったり投資できる金額があるのかっていうここがまた課題になってくるわけですね。
このサプライヤーさんは100%子会社さんのケースであればまだね、親会社さんからの投資ということもできるかもしれませんが、資本が全くないTier2、Tier3企業になるとそういった親会社さんからの支援っていうのを受けづらくなってくる。こうなったときに、どういうふうにこのサプライチェーン全体を強化していくのか、維持していくのか、こういったところも課題になってくるというふうに思っています。
ここまで日本の製造業の現状と課題についてお話ししましたが、今日は皆さんを脅かしたいわけではありません。日本は世界屈指の「課題先進国」であることを理解していただいたと思いますが、この課題を解決できれば国外においても大きなチャンスになりえると考えておりますので、今日はこんな話しを実例と共にさせていただければと思います。
製造業が抱えている課題についてより詳細に知りたい方は見逃し配信をご覧ください。(2024年3月までの期間限定配信)
やらなきゃいけないDX、でも未着手の原因は?
製造業におけるDXは8割が未着手です。これは総務省さんのデータにも出ています。いち早くDXに取り込むことが差別化に繋がります。やらなきゃいけないDX、しかしはからずも未着手となっている。
これはどういうことかというと、日本がここ25年間1位を維持し続けている経済指標があることをご存じでしょうか。
これは日本の強さでもあり、DXの着手が進まない一つの原因だということにもなるんですけど、何かというと経済複雑性指数というものになります。経済複雑性指数とは、いわゆる知識移転が難しい複雑性の高いもの作りが強いってことなんですよ。これはもう日本のお家芸と言っても過言ではないです。それってどういうものかというと、自動車やバイク、A3レーザー複写機などの部品点数が多くて組み合わせ技術が必要な産業に強みを持つということなんですよ。
つまり、こうした複雑な作業を言語化してマニュアル化できますかって話になってくるんですよ。言語化できないとマニュアル化ができないし、デジタル化もできないわけで、いきなりノウハウとかっていうね、ふんわりしたものをデジタル化することはできませんから、ここがポイントなんです。
日本は組み合わせやすり合わせ、多くの部品を人の感覚、コツあるいはその経験、こういったもので組み合わせていくものに対してはものすごい強みを持っています。しかし、デジタル化するにはハードルが高いんですよ。
いわゆる言語化するにはハードルが高い、だからなかなか着手が進まないという、こういう表裏一体のところでもあるんですね。でも皆さんここはプラスに受け取ってください。どんなにデジタル化の言語化がハードルが高かったとしても、原作が面白くない漫画をアニメーション映画にしたからといってヒットすることはないです。
原作が面白くない小説をただただ映画にしたからヒットする。こんなことはありえないわけです。日本は莫大なもの作りに対するノウハウ知識の集積があるわけですから、これを何としても言語化してデジタル化した未来を想像したらわくわくしてきませんか?
DXによって享受できるメリットやビジョンを明確にすべき
DXについて現場で抵抗感あるんだよという声をよく聞くんですけど、実はですね、プライベートでは皆さんデジタルツールなんてめちゃくちゃ使ってるんですよ。でも、ビジネスだとなかなかこういったデジタルツールに拒絶反応がある。なぜかというと、享受できるメリットとか未来の姿がイメージできないから、DXって本当に自分にメリットあるのかって思ってしまう。ここがポイントなんですよね。
それさえわかれば、DXに対する抵抗感といったものはなくなると思います。例えば、Googleマップでも食べログでも何でもね全部皆さん頼まれて使ってるわけじゃないですか。やっぱり自分にメリットがあるから使ってるわけですから、ここをしっかりと現場の皆さんにもご理解いただくことが大事です。
製造業DXを実現している実例、次世代工場については、見逃し配信からご覧ください。(2024年3月までの期間限定配信)
【まとめ】JAPAN as No.1を目指したDX
僕はサプライチェーン全体のDX構想ってのは非常に大事だと持っていて、単純に効率よく生産するっていうだけではなくて、やっぱり投資対効果、売れないものをたくさん作っても単なる不良在庫になっちゃいますし、あるいは二酸化炭素排出量がわからないとメーカーさんから選ばれないとかこの先はいろいろなことがあります。
こういったときに適切なDXの推進投資というのは必ず重要になってまいります。なので各サプライヤーの生産能力が拡大して不測の事態・変種変量にも対応できる、こういう国内外問わず「勝てるサプライチェーン」、「選ばれるサプライチェーン」というところにもこのDXは絶対に必要だと思います。なぜこういうことを言いたいかというと、僕はコスト勝負からもう一度日本が製造業で世界ナンバーワンになれるチャンスがあると思っているからなんですね。
かつてコストで勝った日本の製造業がもう一度コストで負け始めていると、今後はこのコストじゃないもう一つの軸で勝負しなきゃいけません。そのためには、日本のサプライチェーン全体がDXを通じてカーボンニュートラルなど世界の潮流に対応することが必要です。
日本はこの製造業に長年イニシアチブをとることで実はある一つのブランドを築き上げています。それは何かというと、「安心・安全」のブランドイメージということなんです。
これは車でも化粧品でも我々のサービスでも全部日本ってのは世界中から信頼できる国だというこのブランドイメージを持っていただいてます。そこでもう一度世界で活躍するためには、このカーボンニュートラルであるとかデジタルの透明性であるとか、こういったことを武器に再びJAPAN as No.1ここをね、目指していきたいというふうに思っております。
皆様とともに製造業DXを通じて、日本の製造業を盛り上げていきたいと思っております。本日は長時間ご視聴ありがとうございました。
本講演の内容は、見逃し配信にてフルバージョンが視聴可能です。ぜひご覧ください。(2024年3月までの期間限定配信)