インダストリー4.0とは？世界各国の動向と日本の現状をわかりやすく解説！

公開日：2023年5月19日
更新日：2023年5月19日

「インダストリー4.0とは何か？」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。

インダストリー4.0とは、現代の製造業において、IoTやAIなどを用いた技術革新、第四次産業革命のことです。日本では、国内の労働力不足や生産性の向上が課題となっており、インダストリー4.0が具体的な解決策となると考えられ、注目を集めています。

そこで、この記事ではインダストリー4.0と日本との関わりや技術的な話や歴史、そして導入事例を解説します。

現代社会においてますます重要性が増しているインダストリー4.0について、ぜひこの記事を通じて理解を深めてください。

インダストリー4.0とは？

インダストリー4.0とは、現代の製造業において、IoTやAIなどの先端技術を活用したデジタル化・ネットワーキングが進む第四次産業革命を指します。

インダストリー4.0は従来の生産プロセスを大きく変革し、効率性や柔軟性の向上を実現している概念です。ドイツ政府が2011年に提唱し、世界各国で取り組まれている重要なトピックとなっています。

読み方

インダストリー4.0は日本語では「インダストリーヨンテンゼロ」と読み、英語で「Industry 4.0」とも表記されます。英語では「インダストリーフォーポイントゼロ」と読みます。

第一次産業革命から第三次産業革命までを振り返る

過去の歴史が現代の技術進歩に大きな影響を与えているため、インダストリー4.0の理解には、これまでの産業革命を振り返ることが重要です。

第一次産業革命：18世紀後半に蒸気機関の発明により始まり、工場生産や鉄道網が発展
第二次産業革命：19世紀後半から20世紀初頭にかけて電力や内燃機関が登場し自動車や飛行機が普及
第三次産業革命：20世紀後半の情報技術の発展で、コンピューターやインターネットが生活に浸透

第三次産業革命からから情報化社会が到来し、IoTやAIなどの先端技術を活用した第四次産業革命へとつながります。

IoTとの関わり

インダストリー4.0は、IoT(Internet of Things)と密接に関連しています。IoTによって、機器やセンサーがインターネットに接続され、リアルタイムでデータを収集・分析・共有することが可能になるため、デジタルな産業革命とも言えるインダストリー4.0にIoTは欠かせません。

IoTにより、生産ラインの効率化や製品の品質向上、省エネルギー化などが実現されます。例えば、製造工程においてIoTを利用することで、機械の故障予測やメンテナンスの最適化が可能となり、ダウンタイムの削減やコスト削減につながります。

インダストリー4.0に必要なテクノロジー

インダストリー4.0を実現するためには、以下の技術が連携し合うことで、デジタル化・ネットワーキングの効果を最大限に引き出すことが可能です。

IoT(Internet of Things)

先にも述べた通り、IoTはインダストリー4.0には欠かせません。センサーや機器をインターネットに接続し、リアルタイムでデータを収集・分析・共有する技術などが該当します。

AI(人工知能)

機械が人間の知能を模倣し、学習・推論・判断などを行う技術です。今日では、openAIのChatGPTやGoogleのBardなど、生活になじみのある技術が台頭してきました。製造現場では、生産プロセスの最適化や品質管理に活用されます。

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Big Data（ビッグデータ）

IoTやAIを活用して収集された膨大なデータを高速で処理・分析する技術です。効率的な意思決定や新たなビジネスモデルの発見に役立ちます。

クラウドコンピューティング

インターネットを通じて、データやアプリケーションを遠隔地のサーバーで実行・管理する技術です。コスト削減やリソースの柔軟な運用が可能となります。

サイバーセキュリティー

インダストリー4.0の環境下で、データやシステムを守るための技術です。情報漏洩やサイバー攻撃から企業を保護し、事業の持続性を確保します。

インダストリー4.0の影響

インダストリー4.0は製造業だけでなく、社会全体にも大きな影響を及ぼしています。デジタル技術の活用により、従来の産業構造や働き方が変化し、新たなビジネスチャンスや価値創造が生まれるからです。

ここでは、インダストリー4.0の前後の変化とインダストリー4.0によって実現することついて解説します。

インダストリー4.0の前後の変化

インダストリー4.0の導入によって生産効率の向上、個別化・柔軟性の向上、データ活用の拡大が起こったため、製造業における生産プロセスや経営戦略が大きく変化しました。IoTやAIを活用した最適化により、従来の生産プロセスが高速化・効率化され、生産コストの削減やリードタイムの短縮、結果的に生産効率が向上しています。

さらに、個別化・柔軟性の向上では、カスタマイズされた製品やサービスの提供が容易になり、顧客のニーズに応じた多様な価値創造が可能になりました。

また、データ活用の拡大では、IoTやBig Dataによって収集・分析されたデータを活用し、製品やサービスの品質向上が見込まれることで新たなビジネスモデルの開発が促進されています。例えば、自動車業界では、インダストリー4.0の技術を利用して、自動運転やコネクテッドカーの開発が進められており、従来の製造業にとどまらない新たな価値が創出され続けています。

インダストリー4.0によって実現すること

インダストリー4.0によって、主に次の6つの実現が可能です。

スマートファクトリー
サプライチェーン最適化
サービタイゼーション
ワークスタイル変革
サステナビリティの向上

それぞれ解説します。

スマートファクトリー

生産プロセス全体がデジタル化・自動化され、リアルタイムでデータを収集・分析することで、効率的で柔軟な生産が可能となります。

サプライチェーン最適化

IoTやAIを活用して、在庫管理や物流プロセスが最適化され、コスト削減やリードタイム短縮が実現され、企業はより競争力のあるビジネスを展開することが可能となります。

サービタイゼーション

製品だけでなく、付加価値のあるサービスを提供することで、顧客満足度の向上や収益の拡大が期待できます。例えば、産業機械メーカーが遠隔監視や予防保守のサービスを提供することで、顧客との継続的な関係を築くことが可能です。

ワークスタイル変革

インダストリー4.0の技術を活用することで、働き方が柔軟化され、生産性の向上や労働環境の改善が図られます。例えば、遠隔操作や協働ロボットの導入により、作業者の負担が軽減され、よりクリエイティブな仕事に注力できるようになります。

サステナビリティの向上

エネルギーや資源の効率的な利用が可能となり、環境負荷の低減や持続可能な社会の実現が可能です。例えば、エネルギー消費の最適化や廃棄物削減により、企業は環境に配慮したビジネスを展開できるようになります。

世界各国の動向

インダストリー4.0は、インダストリー4.0の技術を活用することで、経済成長や産業競争力の向上が期待できるため、世界各国が独自の取り組みや政策を展開しています。

ここでは次の4つについて解説しましょう。

生まれた背景
ドイツの事例
アメリカの事例
中国の事例

生まれた背景

インダストリー4.0は、2011年にドイツで提唱され、その後世界各国で広まりました。従来の製造業の限界を打破し、新たな競争力を持つ産業構造を構築するためには、デジタル技術の活用が不可欠だと認識された背景があります。

また、グローバル化の進展や環境問題への対応が求められる中で、インダストリー4.0は持続可能な発展のためのひとつの最適解と言えるでしょう。

ドイツの事例

ドイツはインダストリー4.0の発祥の地であり、その先駆者として世界に影響を与えてきました。ドイツ政府は「プラットフォーム・インダストリー4.0」を設立し、産官学が連携して技術開発や人材育成、規制緩和などの取り組みを推進しています。

例えば、ドイツの自動車メーカーBMWは、インダストリー4.0技術を活用したスマートファクトリーを構築し、効率的な生産システムを実現した企業です。

アメリカの事例

アメリカでは、インダストリー4.0に関連する技術開発やスタートアップ支援が盛んに行われています。特にシリコンバレーを中心としたIT企業が、AIやIoTなどの最先端技術を活用した製造業向けソリューションを開発し、世界市場にも展開しているのが特徴です。

例えば、アメリカの産業用IoTプラットフォーム企業であるPTC社は、工場の効率化や品質管理を支援するソフトウェアを提供しています。アメリカを起点に、世界各国の製造業がインダストリー4.0の導入を促進しています。

中国の事例

中国は、中国は、インダストリー4.0の取り組みを国家戦略として位置づけており、「中国製造2025」などの政策を通じて、製造業の近代化を目指しています。

理由は、中国は世界最大の製造業大国であり、競争力維持のためにインダストリー4.0の技術革新が必要だと認識しているからです。

また、環境負荷の低減や労働力不足への対応も、インダストリー4.0の取り組みを加速させる要因となっています。

例えば、中国の電子機器メーカーであるフォックスコンは、インダストリー4.0技術を活用して自動化や省人化を進めており、生産性の向上や労働環境の改善を実現しています。

さらに、中国の政府は、産業クラスターを形成することで、企業間の連携や技術革新を促進。さらなる国内外の競争力を高めることを目指しています。

日本におけるインダストリー4.0

日本もインダストリー4.0の波に取り組んでおり、独自の戦略を展開しています。日本の製造業は世界的に高い競争力を持っているものの、国内の労働力不足や生産性の向上が課題となっており、インダストリー4.0の技術革新がその解決策となると考えられているからです。

ここでは日本におけるインダストリー4.0について次の3つの観点から解説しましょう。

Connected Industries
society5.0
日本でのインダストリー4.0実現に向けた課題

Connected Industries

日本政府は、インダストリー4.0に対応するために「Connected Industries」という政策を策定しています。「Connected Industries」は2017年に提唱され、産業分野や企業間の連携を強化し、データや知識を共有することでイノベーションを促進しようとするものです。

例えば、自動車産業や製造業がデータを共有し、生産性向上や新たなビジネスモデルの創出を目指しています。

「Connected Industries」は、日本の製造業がグローバル市場で競争力を維持・向上させるための重要な取り組みと言えるでしょう。

society5.0

日本では「Society5.0」というビジョンが提唱されています。「Society5.0」はインダストリー4.0のコンセプトを含む、より広範な社会変革を目指すものです。

Society5.0では、ICT技術を活用して人々のQOL(Quality of Life)を向上させ、持続可能な社会の実現を目指しています。例えば、スマートシティやe-ヘルス、自動運転車などがSociety5.0の取り組みとして進められています。

日本でのインダストリー4.0実現に向けた課題

日本がインダストリー4.0を実現するためには、いくつかの課題が存在します。まず、データ利活用に関する制度や法整備が十分でないことが挙げられます。データはインダストリー4.0の中核をなすものであり、その利活用を円滑に進めるためには、プライバシーやセキュリティに配慮した制度が必要だからです。

また、人材育成や教育の充実が求められています。インダストリー4.0の技術革新に適応できる人材が不足しており、今後の競争力維持に向けては、IoTやAIなどの分野での専門知識を持つ人材が不可欠だからです。

さらに、中小企業の取り組みの遅れも課題となっています。大企業と比較して中小企業は、インダストリー4.0への投資や技術開発が難しい状況にあります。資金や人材が限られており、技術導入のリスクが高いため、取り組みが進まないケースが多いからです。

政府や関連団体が中小企業に対する支援策を充実させることで、日本全体のインダストリー4.0の進展を促せるでしょう。

導入事例

インダストリー4.0の実現は、多くの企業において生産性向上やイノベーションの促進につながっています。

ここでは、シーメンス株式会社、SAP SE、BMW、アディダス、株式会社小松製作所の導入事例を紹介し、インダストリー4.0が企業にどのような影響を与えているか解説しましょう。

シーメンス株式会社

シーメンス株式会社は、ドイツを代表する産業機器メーカーです。技術やソリューションを提供することで、顧客企業に価値をもたらすだけでなく、自社の生産性向上にもつなげるため、インダストリー4.0を積極的に取り入れています。

例えば、シーメンスは自社の工場で、インダストリー4.0の技術を活用して生産ラインの効率化を図っています。工場内に設置されたセンサーやIoT機器が、リアルタイムでデータを収集しています。収集したデータを元に生産工程や設備の最適化が行われています。

SAP SE

SAPは、ドイツを代表するソフトウェア企業であり、インダストリー4.0を推進する上で重要なERP（Enterprise Resource Planning）ソフトウェアを提供し、企業の生産管理や資源管理を効率化しています。結果として、インダストリー4.0の実現をサポートしている企業です。

SAPは、自社の製品「SAP HANA」を活用してインダストリー4.0の導入を支援しています。「SAP HANA」は、リアルタイムでのデータ分析やビッグデータの活用が可能であり、企業が自社の製造現場で発生するデータを効率的に利用できるようになります。

例えば、生産ラインの状況や在庫管理、品質管理などの情報を一元化し、適切な意思決定を迅速に行うことが可能です。

BMW

自動車業界もインダストリー4.0の波に乗り、先進的な取り組みが行われています。BMWは2030年に向けて、社内や工場のシステムをクラウド化・エッジ化させることを目標にしている企業です。

生産現場でIoTやAI、ロボティクスなどの技術を積極的に導入し、生産プロセスの最適化を図っています。例えば、BMWは自動車の組み立てラインにロボットを導入し、従来の手作業で行われていた作業を効率化しています。

結果として、作業の精度が向上し、生産性の向上やコスト削減が実現されています。

アディダス

アパレル業界でもインダストリー4.0の取り組みが進んでおり、その代表例としてアディダスが挙げられます。アディダスは、独自のスピードファクトリーを構築し、生産ラインにロボティクスや3Dプリンター、AIなどの最先端技術を導入しています。

結果として、製造プロセスが効率化され、より迅速かつ柔軟な生産が可能となりました。また、従来の手作業による生産プロセスと比較して、品質の向上や在庫コストの削減が実現しています。

株式会社小松製作所

建設機械業界においてもインダストリー4.0の取り組みが活発化しており、株式会社小松製作所はその先駆者となっています。株式会社小松製作所はインダストリー4.0がもたらすデジタル化や自動化によって、コスト削減や環境負荷の軽減をしています。インダストリー4.0の技術を積極的に取り入れることで、建設機械の生産や運用における効率化や品質向上を実現し、業界の競争力を高めています。

さらに、IoT技術による世界中の自社車両の位置や稼働状況などをリアルタイムで把握する技術を導入することを検討しており、さらなる躍進に期待がかかる企業と言えるでしょう。

インダストリー5.0とは？

インダストリー5.0とは、従来のインダストリー4.0が目指したデジタル技術を活用した自動化・効率化に加え、人間の創造力や感性を最大限にいかした新たな価値創造を追求する第五次産業革命の概念です。

インダストリー5.0は、人間と機械が協働し、持続可能で人間中心の社会を実現することを目指しています。

理由として、インダストリー4.0によってもたらされた効率化や自動化だけでは、人間の持つ創造力や感性を十分に活用できないという課題が残っているからです。

インダストリー5.0は、人間と機械／AIが共同で働くことによって、より高度な付加価値を生み出すことが可能になります。例えば、工場での作業では、機械が単純作業や危険な作業を担当し、人間は品質管理やデザイン改善などの高度な判断を行えるようになります。

人間と機械の協働、地球環境に配慮した取り組みなど、今後発展が期待されている概念と言えるでしょう。

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インダストリー4.0を理解し、自社の発展にいかそう！【まとめ】

インダストリー4.0は、製造業界をはじめとする産業などの分野に革新をもたらし、効率化や自動化を通じてビジネスの競争力を高める重要な概念です。しかし、単に技術を導入するだけでは十分ではなく、その背景にある目的や価値観を理解し、自社のビジネス戦略にいかすことが求められます。

そのためにまずは、インダストリー4.0の基本的な概念や歴史、関連技術を把握しましょう。自社がどのように取り組むべきか、またどのような技術やサービスを活用することが適切かを見極められます。次に、インダストリー4.0がもたらす影響や各国の取り組み、導入事例を参考にして、自社の事業戦略を見直しましょう。他企業や国の成功事例や課題を学ぶことで、自社に適した取り組みや改善点を見つけることが可能です。

そして、インダストリー5.0という新たな概念にも目を向け、将来の社会変化や技術動向に対応できるように柔軟に対応することも必要になります。

インダストリー5.0は、人間の創造力や感性を最大限にいかした新たな価値創造を追求する概念であり、持続可能で人間中心の社会を実現することを目指しています。自社に必要なのはインダストリー4.0なのかインダストリー5.0なのか判断するといいでしょう。

自社のビジネスや組織にインダストリー4.0を適用する際には、従業員の理解やスキルの向上も重要です。インダストリー4.0を成功させるためには、全従業員が共通の目標に向かって努力し、協力して取り組むことが必要になります。

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