物流現場のかんたん動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」を展開する、現場改善ラボ編集部です。
物流業における検品作業は在庫差異や誤出荷を防ぐ重要な工程ですが、手作業によるミスの増加や作業効率の低下が課題となっている現場も少なくありません。検品の精度を保ちつつ、作業のスピードアップを図るためにはどのような改善が必要となるのでしょうか。
本記事では、非効率な運用が招く問題点とともに、検品作業を効率化するためのコツを紹介しています。「検品ミスが頻発している」「作業に時間がかかりすぎている」などの課題を抱えている方はぜひ参考にしてください。
物流業における検品作業について
物流業における検品作業には「入荷検品」と「出荷検品」の2種類があります。
検品の種類 | 詳細 |
---|---|
入荷検品 | 商品を受け入れる際に実施する検品作業納品書や発注書と照合し、 品目や数量に相違がないかを確認する |
出荷検品 | 商品を積み出す前に実施する検品作業出荷指示書と照合し、 品目や数量、宛先などを確認する |
入荷検品
入荷検品は、倉庫に商品が到着した際に、自社の発注内容と受け取った商品が一致しているかを確認する作業です。現場では「納品書と現物との照合」を行うのが一般的ですが、納品書自体が間違っている(発注していない商品が記載・納品されている)ケースもあり、最終的には自社の発注データとの突き合わせも必要となります。
この点、バーコードスキャンによる照合システムを取り入れている場合は、発注データに存在しない商品を読み込むとアラートが鳴るため、誤納品の早期発見につながります。
【入荷検品のチェック項目】
- 品目(納品書・発注書と一致しているか)
- 数量(納品書・発注書との過不足がないか)
- 商品の外観(破損や汚損がないか)
- 使用期限(期限に余裕があるか)
出荷検品
出荷検品は、商品が顧客に届く直前の最終チェックとして、ピッキングした商品と出荷指示書(ピッキングリスト)との内容が一致しているかを確認する作業です。ピッキング時に商品の取り間違いが発生した場合でも、適切な出荷検品を行っていれば出荷前にミスが発覚するため、誤出荷を未然に防ぐことができます。
【出荷検品のチェック項目】
- 品目(出荷指示書と一致しているか)
- 数量(出荷指示書との過不足がないか)
- 発送先(正しい送り先になっているか)
- 梱包状態(破損や汚損がないか/箱の強度は十分か)
- 同梱書類(納品書や説明書などの書類を同梱しているか)
誤出荷は物流業における代表的なミスの1つであり、対策している場合でも発生を防止するのは非常に困難です。誤出荷をゼロに近づけるための対策をより詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧頂くか、物流の専門家によるセミナー動画をご視聴ください。
セミナー動画では、誤出荷の根本的な原因から、誤出荷防止を実現する具体的な方法までわかりやすく解説しているため、改善に向けたヒントを得られるはずです。
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非効率な検品作業で発生する課題
非効率な検品作業は、業務の精度や効率を低下させ、ミスの増加や作業負荷の偏りを引き起こします。ここでは、作業体制や仕組みなどを変えずに非効率な検品作業を続けることで発生する課題について紹介していきます。
数え間違いや転記ミスなどのヒューマンエラー
小規模な倉庫では手作業による検品が行われているケースも多く、数量の数え間違いや類似商品の取り間違い、検品結果の転記ミスといったヒューマンエラーが起こりやすくなります。
こうしたミスが頻発すると、在庫数のズレや納期遅延、誤出荷といったトラブルに発展し、顧客からのクレーム対応や再発送などで現場の負担が増大します。手作業中心の検品は時間がかかるため、特に作業負荷が増す繁忙期には、作業員の疲労やストレスが蓄積されやすい点も問題となるでしょう。
関連記事:ピッキングミス・数量間違いが多い人の特徴と対策!改善事例もあわせて紹介
ダブルチェックによる作業工数の増加
正確な検品作業を行うために、1つの作業に対して二重に確認する「ダブルチェック」を取り入れている現場も少なくありません。確かにヒューマンエラーを防ぐ点では有効な取り組みですが、作業工程が追加されることで、検品にかかる時間や人手が倍増するという課題も発生します。
さらに、「ダブルチェックを行うから」という理由で作業員が慢心し、最初の検品をおろそかにするケースも見られます。非効率な運用によってヒューマンエラーが増えている場合は、ダブルチェックを行っても根本的な解決とはならないため、最初からミスが起きにくい体制をつくることが重要です。
一部の検品作業の属人化
倉庫内で共通の検品手順が明示されていない場合、作業員によって異なるやり方で検品を進めてしまい、作業の効率や品質にばらつきが生じやすくなります。手作業中心の運用では、経験豊富な作業員の判断に依存する場面が増え、特定の作業を特定の担当者しか対応できない「属人化」が進行しやすいという課題があります。
属人化が進むと、担当者が急に不在となったときに他の作業員が代行できず、作業が停滞してしまう恐れがあります。特に出荷検品は出荷前の最終チェックとなる工程であり、ここでのミスは誤出荷やクレームに直結します。誰が担当しても一定の品質を保てるよう、標準的な作業手順を明文化し、現場全体で共有しておくことが大切です。
検品作業の効率化につながる業務改善のコツ
ここからは検品作業を効率化するための具体的なアイデアを紹介します。
非効率な運用による作業ミスや属人化を解消するには、日々の業務のなかで継続的な見直しと改善が欠かせません。以下に挙げる方法を取り入れることで、検品作業の品質と生産性を同時に高めることができます。
- 手順書やマニュアルを利用し、検品作業の標準化に取り組む
- 作業スペースの5S活動に取り組む
- ハンディターミナルを活用する
- 改善活動に取り組む
- ロボットやIoTを導入し、検品作業の自動化を進める
- 検品作業のアウトソーシングを検討する
手順書やマニュアルを利用し、検品作業の標準化に取り組む
検品の精度を保ちながら効率化を図るには、検品作業に関するルールを明確化し、手順書やマニュアルに落とし込むことが大切です。標準化された手順があれば誰が担当しても一定の品質が担保され、経験の少ない作業員も迷わずに業務に取り掛かることができます。
実際に、作業のバラつきによる品質低下を課題に感じていたASKUL LOGIST株式会社では、手順書を再整備することによって倉庫内作業の標準化を実現しています。なお、同社の取り組みで特徴的なのは、従来から使用していた紙のマニュアルを整備したわけではなく、動画マニュアルに移行して標準化を推進した点。実際に動画マニュアルを活用した作業の標準化について以下のように語っています。
実際に動画マニュアルで教育を行ってみると、従来の教育だけでは受け手側の解釈で理解がバラついてしまう中でも、うまく作業の標準化を進められることが効果として大きいです。文字ベースの紙マニュアルだけで見てもらうよりも絵や写真などビジュアルも使うことで分かりやすいですし、それが動画になるとより分かりやすくなりますよね。
同社の標準化に向けた取り組みについて詳しく知りたい方は、こちらの「ASKULLOGIST株式会社のインタビュー記事」をクリックしてご覧ください。なお、同社のように、動画マニュアルを活用して作業を標準化する動きは、物流業界全体で多くなっています。動画マニュアルの有効性や活用事例は以下の資料で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
>>物流業界の生産性向上を助ける動画マニュアルのチカラ(PDF資料)を見てみる
作業スペースの5S活動に取り組む
業務改善の基本となるのが「作業環境の整備」です。物が煩雑に置かれ、換気や清掃が行き届いていないような環境では、作業効率が落ちるだけでなく、事故や災害の要因にもなりかねません。倉庫や物流センターのように、限られたスペースに大量の商品を保管し、常に作業員が動き回る現場では、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の取り組みを習慣化させることが重要です。
検品作業においては、検品に必要な備品や帳票類を所定の位置に配置することで、作業中の迷いや探し物の時間を削減できます。また、清潔な環境が維持されていれば商品の汚損・破損リスクが低減し、検品の品質と顧客満足度の向上にも寄与します。
5S活動の具体的な実践方法、定着させるポイントなどについては、数々の企業で5S改革を行ってきた専門家の前田 康秀氏による「正しい5S活動」について解説している無料視聴可能なセミナー動画をご覧ください。以下の画像をクリックすると動画をご覧頂けます。
ハンディターミナルを活用する
バーコードやQRコードを読み取るハンディターミナルは、検品ミスの防止と作業の効率化に大きな効果を発揮します。目視による検品や紙ベースでの管理を行っている現場では、ハンディターミナルの導入によって数量の数え間違いや転記ミスなどのヒューマンエラーを大幅に削減できるでしょう。
ただし、当然ながら商品の外観や破損の有無までは確認できないため、入出荷する商品の外観チェックは人間の目で行う必要があります。また、現場や作業員によっては同じ商品を1点ずつスキャンせずに、合計数量を手入力で登録してしまうケースも見られます。ハンディターミナルを効果的に活用するには、事前に運用ルールの整備と作業員への指導を行っておくことが大切です。
改善活動に取り組む
改善活動とは、日々の業務やプロセスをより良くするための取り組みです。日常業務における「この作業は効率が悪い」「この手順だとやりづらい」などの課題は、実際に現場で働く作業員でなければ気づきにくいものです。このような課題を積極的に吸い上げ、改善提案として取り入れることで、現場の実情に即した効果的な改善が実現します。
また、現場の声が反映されるボトムアップの仕組みは、作業員のモチベーション向上につながり、継続的な改善サイクルが生まれやすくなります。これにより、検品作業の効率化や品質向上への意識が高まり、現場全体で課題解決に取り組む風土が醸成されることも期待できます。
なお、改善活動に取り組む上では、トヨタの改善哲学を取り入れたトヨタ生産方式(TPS)の考え方が参考になります。自動車製造業に向けた考えではあるものの、物流業でも改善につながるヒントが得られるはずです。以下の解説動画では、トヨタ自動車出身の講師による、トヨタ生産方式(TPS)の着眼点について詳しく解説されています。改善活動のヒントを得たい方はぜひ動画を視聴してみてください。
>>【視聴無料】「トヨタ生産方式と現場改善~産業の垣根を超えた改善の着眼点~」を見てみる
ロボットやIoTを導入し、検品作業の自動化を進める
近年は、物流ロボットやIoT(Internet of Things)を活用し、検品作業の一部を自動化する取り組みも進んでいます。例えば、AIの画像認識技術を利用したロボットを導入することで、商品の形状やラベルに基づいた自動検品が行えます。
検品作業の効率が向上するのはもちろん、一定の基準に従って常に同じ精度で検品が行われることで、作業品質が安定するメリットもあります。特に、大量の商品を扱う物流センターや、高精度の検品が求められる現場では、ロボットやIoTによる自動化が大きな効果を発揮するでしょう。
検品作業のアウトソーシングを検討する
現時点で作業員の業務負担が大きく、検品ミスや納期遅延が頻発している場合には、検品作業のアウトソーシングも有効な手段です。外部の専門業者に委託することで、自社作業員の負担が軽減するだけでなく、検品の精度やスピードの面でも高い品質が期待できます。
一方で、委託先とのコミュニケーションが不十分な場合、情報の伝達ミスや認識のズレが発生する可能性があります。特に、取り扱う商品数が多く、品目の入れ替えが頻繁に発生するような現場では、委託先との連携ミスがトラブルにつながるリスクが高いため、より慎重な対応が求められます。
検品作業の効率化につながるシステム/ツール
従来の手作業による検品では作業品質やスピードに課題がありましたが、近年はシステムやツールの導入によって着実に改善されつつあります。ここでは、検品作業の効率化に貢献するシステム・ツールを紹介します。
動画マニュアル作成ツール
倉庫や物流などの現場作業は「動き」が中心となるため、文章や画像だけのマニュアルでは伝わりづらく、作業員の理解度にもばらつきが生じることも。
このような課題を解消するには、検品作業の手順や注意事項を視覚的に伝える「動画マニュアル」の活用が有効です。
標準作業が実現する
動画マニュアルを活用することで検品作業における「動作」が映像で共有され、作業者ごとの認識のズレを防止できます。標準的な作業手順を現場全体で徹底することにもつながるでしょう。
実際に、動画マニュアル(tebiki現場教育)を導入している「アスクル株式会社」でも、動画によって作業の正しい手順を都度確認しながら作業ができるため、ベテラン従業員の技術伝承が促進され、倉庫内作業の標準作業が実現しています。
同社の取り組み内容は、インタビュー記事でより詳細に紹介をしているので、以下のリンクをクリックしてご覧ください。
インタビュー記事:高度に自動化された倉庫の安定稼働を支えるために動画マニュアルtebikiを導入!
教育時間を短縮でき、コスト削減につながる
OJTをメインで新人教育を実施している場合、一から全ての作業に対する説明が必要であり、仮に紙のマニュアルが用意されていたとしても新人従業員が全てを理解するのは困難です。
一方で動画マニュアルであれば、検品作業の基本的な内容や作業手順を実際の作業風景や従業員の動きを視聴しながら学べるので、実際の現場では補足の説明のみで済みます。そのため、動画マニュアル導入によって、OJT担当者をはじめ教育時間を大幅に短縮できるのがメリットです。
実際に、物流企業「ソニテック株式会社」では、マンツーマン教育によって膨大な教育コストが発生していましたが、動画マニュアルの活用によって、3か月かかっていた教育時間が実質ゼロになったと語っています。
教育時間の大幅な削減を実現している同社の事例は以下のインタビュー記事からご覧ください。
インタビュー記事:3ヶ月間の直接指導を動画マニュアルで完全に置き換え、業務の効率化を実現
物流現場で導入されている「tebiki現場教育」
動画と聞くと「編集経験が無いと難しいのでは…?」と感じる方も多いかもしれませんが、動画編集未経験でもかんたんに利用できるのが、物流現場に特化した動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」です。

動画マニュアルの作成はもちろん、物流現場の教育をサポートする様々な機能が搭載されています。
- 字幕は100カ国超の言語に瞬時に自働翻訳:作業者が母国語で学べる
- レポート機能で閲覧状況を可視化:未閲覧者へのフォローが可能
- 教育計画や教育予定の策定:標準作業の教育を計画的に実行
- 教育記録やスキルマップの整備:標準作業に関するスキル習得状況を可視化
tebiki現場教育の具体的な機能やプラン、活用事例などを知りたい方は、以下のリンクをクリックしてサービス概要資料をご覧ください。
>>かんたん動画マニュアル「tebiki現場教育」の概要を詳しく見てみる
入出荷検品システム
入出荷検品システムは、入荷検品・出荷検品の作業を効率化するシステムです。ハンディターミナルなどの機器を使って商品のバーコードを読み取るだけで、発注書や出荷指示書の内容と一致しているかを瞬時に確認できます。
また、作業ログが自動で記録されるため、業務の透明性やトレーサビリティ(追跡可能性)の確保にもつながります。蓄積されたデータは、問題発生時の原因究明や改善策の立案などに活用でき、品質管理の向上にも大きく寄与します。
まとめ
物流業における検品作業には「入荷検品」と「出荷検品」があり、どちらも物流品質の向上に直結する重要なプロセスです。しかし、検品作業は現在も多くの現場で手作業によって行われており、ヒューマンエラーや属人化が発生しやすい点が課題となっています。
検品作業を効率化するには、ハンディターミナルや検品システムの導入、アウトソーシングの活用など、さまざまな方法が考えられます。しかし、どの手法を採用する場合でも基盤となるのは「標準作業」の徹底です。どんなに優れたサービスを導入しても、標準作業を無視した運用では現場の混乱を招き、根本的な業務改善にはつながりません。
検品工程の標準作業を実現するには「動画マニュアル」の活用が有効です。物流現場向けの動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」なら、現場作業をスマートフォンやタブレットで簡単に撮影・編集し、誰でも理解しやすい形で標準作業を可視化できます。検品作業の品質や効率に課題を感じている場合は、動画マニュアルの導入を検討してみてはいかがでしょうか。