物流現場のかんたん動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」を展開する、現場改善ラボ編集部です。
倉庫や物流の現場では、ピッキング作業の精度がそのまま出荷品質に直結します。ミスを防ぎ、スムーズな作業を行うためには、正確で視認性の高い「ピッキングリスト」が欠かせません。
本記事では、ピッキングリストに必要な項目や作成方法、作業を効率化するポイントを解説しますのでピッキング作業の効率化にお役立てください。
目次
ピッキングリストとは?
ピッキングリストとは、倉庫や物流の現場で商品の出荷作業を行うときに用いる指示書のことです。顧客からの受注内容に基づく出荷指示が記載されており、作業員はリストに従ってピッキング(出荷する商品を集める作業)を行います。
正確かつ効率的なピッキング作業を行ううえで欠かせないものであり、精度の高いピッキングリストはヒューマンエラーの防止や作業時間の短縮に大きく寄与します。
ピッキング作業のミスや誤出荷への対策、改善事例などについては以下の記事でも紹介していますので、あわせてご覧ください。
▼関連記事▼
・ピッキング改善事例5選:生産性向上や効率化を実現するポイントとは?
・誤出荷ゼロを目指す!出荷ミスの原因と6つの対策例
納品書との違い
納品書は「商品の納入時に取引先へ提出する書類」であり、出荷された商品の品目や数量、金額などが記載されています。一方、ピッキングリストは「倉庫内でのピッキング作業で使用する指示書」として、受注に基づく出荷指示を現場作業員に伝える役割を担います。
納品書は取引内容の確認や受領証明として使われる外部向けの書類であるのに対し、ピッキングリストは倉庫内の作業効率や正確性を高めるための内部資料です。様式は似ているものの、用途や役割はまったく異なります。
ピッキングリストの種類
ピッキングリストには、出荷量や作業形態に応じていくつかの種類があります。代表的なのが「シングルピッキングリスト」と「トータルピッキングリスト」です。
シングルピッキングリスト
シングルピッキングリストとは、出荷対象の商品を注文ごとにまとめたリストです。出荷する商品とその数量が個別に記載されており、作業員はリストに従って1件ずつ商品をピッキングしていきます。
この形式のメリットは、ピッキング後の仕分けが不要ですぐに次の工程に移れることや、ピッキングに慣れていない新人作業員でも扱いやすく、ヒューマンエラーが起こりにくいなどです。一方で、注文数が多い場合には作業効率が低下するため、出荷量や人員構成に応じて使い分ける必要があります。
トータルピッキングリスト
トータルピッキングリストとは、複数の注文に含まれる商品を集計し、商品ごとの総数量をまとめたリストです。同一商品を一括で取り出すことで、倉庫内を移動する回数が減り、ピッキング作業の効率が大きく向上します。
トータルピッキングリストに基づく作業は、同一商品の注文が多い場合や、大量出荷が求められる現場で特に効果を発揮します。一方で、ピッキング後には注文ごと(または出荷先ごと)に商品を分ける「仕分け工程」が必須となります。シングルピッキングに比べると、仕分けの精度が求められる分、作業ミスが起こりやすい側面があります。
ピッキングのミスや数量の間違いが発生する原因やミスをゼロに近づける方法について知りたい方は、以下の関連資料もご覧ください。
関連記事:ピッキングミスや数量間違いが多い人の特徴と9つの対策!改善事例もあわせて紹介
ピッキングリストに必要な項目
ピッキングリストに記載する項目は、一般的に必須とされる項目と、場合によっては必要な項目があります。それぞれの項目名と詳細を下表にまとめましたので、ピッキングリストを作成するときの参考にしてください。
【必須の項目】
項目名 | 詳細 |
---|---|
商品コード | 商品を特定する管理コード(SKU※やJANコードなど) |
商品名 | 商品の正式な名称 |
数量 | 出荷する商品の数量 |
ロケーション | 倉庫内で商品を保管している場所(棚番号/エリア番号) |
発行日 | ピッキングリストが発行された日付 |
※SKU:Stock Keeping Unit(ストック・キーピング・ユニット)の略称。商品を識別するための最小単位であり、受注業務や在庫管理などで使用されるコードのこと。
【場合によっては必要な項目】
項目名 | 詳細 |
---|---|
注文番号 | どの注文に基づく出荷指示かを識別するための番号 (シングルピッキングリストの場合は必須項目) |
ロット番号 | 製造ロットを特定・管理するための識別番号ロット管理が 必要な商品(例:食品、医薬品、電子部品など)がある場合に記載 |
出荷先情報 | 出荷先の住所や名前など必要に応じて記載 |
梱包指示 | 特定の包装方法や緩衝材の使用指示がある場合に記載 |
バーコード | バーコードスキャンによる照合を行う場合に記載 |
備考欄 | 特記事項や注意点がある場合に記載 |
ピッキングリストの作成方法
ここではピッキングリストの作成方法を紹介します。ピッキングリストは、エクセルやGoogleスプレッドシート、WMS(倉庫管理システム)を活用して作成するのが一般的です。
エクセル/Googleスプレッドシートを活用する
エクセルやGoogleスプレッドシートは、導入コストをかけずにピッキングリストを作成できる手軽なツールです。ここでは「シングルピッキングリスト」と「トータルピッキングリスト」の作り方を紹介します。
なお、ピッキングリストの作成や整備のみでは、効率化や本質的な業務改善の実現は困難です。詳しい理由やピッキングの効率化・業務改善する方法は、『リスト作成だけでは不十分!ピッキング作業を効率化する方法』の見出しで紹介しています。
シングルピッキングリスト
シングルピッキングリストは、注文ごとに出荷する商品を記載したリストです。1件の注文につき1部発行するのが基本ですが、複数の注文を1つのリストにまとめ、注文番号ごとに区分けして記載する運用もあります。いずれの場合も「どの商品を・どこから・いくつ取り出すのか」をひと目でわかるように構成することが重要です。
ピッキングリストを作成する際は、商品コードを入力するだけで商品名やロケーションが自動表示されるように設定しておくと、入力ミスの防止や作業効率の向上につながります。
作成者が手入力するのは商品コードと数量、注文番号のみで済むため、リスト作成や運用の手間を軽減できます。さらに、発行日を自動表示する関数を組み込むことで、日付の記載漏れを防ぎ、記録管理の正確性を高められます。
トータルピッキングリスト
トータルピッキングリストは、商品ごとの出荷総数量を一覧化したリストです。作成時は複数の受注データを統合し、同一商品の合計数量を算出する必要があります。
シングルピッキングリストと同様に、商品コードを入力すれば商品名やロケーションが自動表示される設定をしておくと、あとは集計した数量のみを手入力すればよく、作業の手間を軽減できます。注文番号の記載は基本的に不要ですが、必要に応じて入力できるよう備考欄を設けておくとよいでしょう。
WMS(倉庫管理システム)を活用する
WMS(倉庫管理システム)は、倉庫・物流現場における入出荷業務の効率化を目的としたシステムです。WMSには出荷管理機能が備わっており、出荷する商品の情報をリスト形式で出力できます。
従来の紙ベースのピッキングリストに加え、近年はハンディターミナルなどのデジタル端末に出荷指示を直接表示する機能を持つWMSも増えており、紙の紛失や入力ミスの防止、ペーパーレス化の促進に役立ちます。また、作業員が商品コードや数量を手入力する必要がなく、リアルタイムで正確な情報が共有されるため、作業スピードの向上とともに全体の物流効率アップにも貢献することが期待されます。
ピッキングリストを導入することで得られるメリット
ピッキングリストを導入するメリットとして以下の点が挙げられます。
- 商品の取り間違いや数量ミス、出荷漏れなどのヒューマンエラーを防止できる
- 作業内容が明確になり、誰でもスムーズにピッキングを行える
- 作業効率が上がり、出荷までのリードタイムを短縮できる
- 情報の抜け漏れを防ぎ、安定した作業品質を維持できる
- 在庫の動きが可視化され、在庫管理の精度が高まる
このように、ピッキングリストの導入は出荷精度や作業効率の向上に大きく寄与します。しかし、単にピッキングリストを取り入れるだけでは十分とはいえません。実効性のある業務改善を行うには、形式的な対策にとどまらず、現場の作業手順や運用体制そのものを見直すことが重要です。
リスト作成だけでは不十分!ピッキング作業を効率化する方法
ピッキングリストは正確かつ効率的な出荷作業を支える重要なツールですが、それだけで本質的な業務改善を行うことはできません。ピッキングの精度を高め、作業を効率化するためには、以下のような方法を取り入れる必要があります。
作業手順を見直し標準化を促進する
ピッキング作業の効率を高めるには、まず現行の作業手順を見直すことが不可欠です。実際の現場で行われている作業を細かく分析し、無駄な動作や非効率な工程といったボトルネックを洗い出して排除する必要があります。そのうえで、作業手順を標準化し、誰が作業しても一定の品質とスピードを確保できる体制を構築します。
ピッキング作業におけるマニュアルや手順書を整備すると、作業員が迷うことなくスムーズに作業を進められ、結果的にミスの減少や作業スピードの向上につながります。作業の標準化は効率向上と品質維持の基盤となり、業務改善の第一歩といえるでしょう。
なお、作業手順書の通りにピッキング作業が行われるようにするためにも、「“手順書通りにできない”から卒業 作業ルールを守らせる効果的な方法」もあわせてご覧ください。
新人・経験が浅い従業員への技術伝承を積極的に行う
倉庫全体のピッキング効率を高めるには、新人や経験の浅い作業員への技術伝承が欠かせません。しかし、技術伝承の重要性を理解しているものの、思うように進んでいない現場も多い傾向です。
なぜ技術伝承が進まないのか、スムーズに進めるにはどうすべきなのかなどを詳しく知りたい方は、技術継承が進まない現場の構造的な課題を踏まて効率的に教育体制を整備するためのポイントを解説している、「技術伝承を成功させるポイント」をご覧ください。
また、技術伝承を効率的に進めている物流企業の株式会社近鉄コスモスでは、以下のように「動画マニュアル(tebiki現場教育)」を活用した教育が行われています。
▼技術継承に使われている動画マニュアルサンプル例▼
※「tebiki現場教育」で作成されています
同社のように動画で作成したマニュアルを社内教育に活用し、技術伝承に役立てている企業は数多くあります。以下の資料では、様々な業界/企業で実際に活用されている動画マニュアルのサンプル集を紹介しています。技術伝承に向けた動画マニュアル活用のイメージを膨らませたい方はぜひご覧ください。
>>「実際に業務で使われている動画マニュアルのサンプル集」を見てみる
倉庫レイアウト・ロケーション管理を最適化する
倉庫内のレイアウトやロケーションは、ピッキング作業の効率を大きく左右する要素です。これを最適化しなければ、いくら精度の高いピッキングリストがあっても、作業員の移動距離が長くなったり、目的の商品を探すのに時間がかかったりして、全体の作業効率が低下してしまいます。
効率的かつ正確なピッキング作業を行うには、出荷頻度の高い商品を取り出しやすい場所に配置し、類似商品が混在しないようロケーションを分けることが効果的です。出荷頻度や数量は変化するため、定期的に出荷データを分析し、レイアウトやロケーションを継続的に見直しましょう。
出荷作業の改善や効率化については、以下の関連記事でも詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
システムを導入する
ピッキング作業の効率化には、WMS(倉庫管理システム)などのシステム導入も有効です。WMSを活用すると、在庫管理や出荷指示のプロセスを自動化でき、正確な情報がリアルタイムで作業員に提供されます。
加えて、ハンディターミナルを活用したバーコード管理を導入することで、商品の取り間違いや数量ミスといったヒューマンエラーが大幅に減少します。目視によるピッキングはミスが起こりやすく、商品の確認や数量チェックに時間がかかりますが、バーコードスキャンであればミスを防ぎながら作業スピードを向上させることができます。
さらに、データが即時反映されることで在庫管理の精度が高まり、出荷ミスや在庫不足といったトラブルの未然防止にもつなげられます。
ピッキング作業の効率化を実現している企業の好事例
ピッキング作業の効率化を実現している企業ではどのような取り組みが行われているのか、ここでは「ソニテック株式会社」の事例を紹介します。
新築戸建て住宅に使用される建築副資材を提供する事業を展開している同社では、荷主や便ごとに異なるピッキング作業を行っており、作業内容の正確な伝達や指示の不明瞭さが課題となっていました。
この課題に対し、同社が導入したのが物流現場向けの動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」です。動画を活用した教育に切り替えたことで、従来はマンツーマンで3ヶ月かかっていた新人教育が”実質ゼロ”になったといいます。また、tebiki現場教育はQRコードに対応しており、スキャンするだけで必要な情報を簡単に参照できるため、経験の浅いスタッフも安心して作業を始められるようになったそうです。
同社の事例を詳しく知りたい方は、以下のインタビュー記事をご覧ください。
まとめ
ピッキング作業の効率化には、正確なピッキングリストの運用に加え、作業手順の標準化やシステムの活用が欠かせません。特に動画マニュアルを活用すれば、作業に慣れていない新人も視覚的に作業内容を理解しやすく、教育の効率が大きく向上します。
「動画制作は難しい」と感じるかもしれませんが、動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」は必要な編集機能のみを厳選しており、映像編集未経験者でも簡単に動画マニュアルを作成できる仕様となっています。「ピッキング作業に時間がかかりすぎている」「ミスが多発し出荷品質に影響が出ている」などの課題を抱えている場合は、動画マニュアルの導入を検討してみてはいかがでしょうか。