生産のトラブルなく正常に製造ラインを稼働させるためには、定期的に機械の管理を行うことが大切です。特に、製造に欠かせない設備や機器をチェックする保守点検は、生産効率や製品の品質を担保するうえで非常に重要です。
しかし、保守点検のメリットがわからず、目的を持たずに点検を行っている現場もあるでしょう。そこで、この記事では保守点検を行うメリットを解説します。保守点検の実施方法や作業漏れをなくすコツも紹介するので、業務効率や製品の品質を向上させたい方は最後までご覧ください。
保守点検を適切に行うことで、機械/設備の異音や軽微な故障といった変化を捉えることができます。機械/設備は製造現場における4Mの要素の1つで、4Mの変化点を捉えることで、品質不良などの異常を未然に防ぐことが可能です。
現場改善ラボでは、変化点管理の手法や注目すべき変化点について専門家が解説した動画をご用意しておりますので、併せてご覧ください。
目次
保守点検とは?
保守点検とは、機械や設備、システムなどが常に最適な状態で動作するように定期的に行うチェック・メンテナンスのことです。製造業では、機械の動作確認や部品の摩耗状態のチェック、必要に応じた部品の交換や修理などが、保守点検に含まれます。
保守点検では日常点検と定期点検が行われます。日常点検とは、機械や設備を作動させる前や作動後に毎回行う点検などを指し、定期点検は半年に1回や1ヵ月に1回など、定期的な期間で行われるより規模間の大きい点検を指します。
保守点検を行うことで予期せぬ故障を防ぎ、長期的に安定した業務を行えるようになります。たとえば、自動車製造ラインで動作する塗装ロボットの保守点検を行うことで、ノズル詰まりによる生産ライン停止を防止することが可能です。
予知保全との違い
保守点検と予知保全では、対応するタイミングが異なります。保守点検は、定期的に機械や設備をチェックし、故障や不具合が発生する前にメンテナンスを行うことでトラブルを防ぎます。たとえば、部品の摩耗や損傷の確認、緩んだボルトの締め直しなどを行うことで機械の予期せぬ不具合を防止します。
一方で予知保全は、機械や設備から得られるデータを分析し、故障が発生する前に必要なメンテナンスを行う取り組みのことです。センサーや製造データをもとに、異常な振動や温度上昇などの故障の兆候がないかを検知し、必要なメンテナンスを行うことで製造ラインの停止時間を最小限に抑えます。
そのため、保守点検は定期的に行うチェックで、予知保全はデータを活用して故障を予測し、対処する取り組みという違いがあります。
予知保全のメリットやその他の保全活動との違いについて、以下の記事でも解説しているため併せてご覧ください。
関連記事:予防保全と予知保全の違いは?メリットや種類を分かりやすく解説!
保守点検を実施する3つのメリット
保守点検を実施するメリットは、以下の3つです。
- 製品品質が安定する
- 設備・機器の状態が把握できる
- 設備・機器の知見が広がる
製品品質が安定する
保守点検を実施すると、安定して高品質な製品を製造することが可能です。機械が故障すると、製品の寸法に誤差が生じたり、不良品が発生する可能性が高まります。そのため、保守点検で日頃から設備や機器の小さな異常を発見し早期に対処することで、製品の品質を向上させられます。
製品の品質を改善したいとお考えの方は、以下の記事も併せてご覧ください。
関連記事:製造業における品質改善/向上5つの手法は?品質バラつき防止の取組事例を解説
設備・機器の状態が把握できる
保守点検を定期的に実施することで、設備・機器の状態を把握できます。部品の摩耗度合いや破損の有無など、設備や機器の状態を詳細にチェックして交換時期を把握することで、整備トラブルを防止することが可能です。
たとえば、定期的な点検によって異常な振動や異音を把握できれば、その原因を特定し、大きな問題に発展する前に修理・調整といった設備保全活動を実施できます。そのため、保守点検を行うことで設備や機器の状態を把握でき、安定した生産を行えるようになります。
設備保全の種類やよく起きる『業務の属人化』の課題を解決する方法については、別記事「設備保全とは?種類と考え方、取り組む重要性や事例を解説!」か、以下の専門家による解説動画をご覧ください。
設備・機器の知見が広がる
保守点検を行うことで、設備や機器の知見が広がります。修理や調整を行うことで、機器の動作原理や一つひとつの部品の役割、故障の兆候などの製造ラインに関するノウハウが蓄積されます。たとえば、特定の部品が摩耗しやすいことを知っていれば、予備部品を常備しておくなどの対策を行い製造トラブルを防ぐことが可能です。
また、設備や機械の知見を持っていることで、新しい設備の選定や既存の機器の改善にも活かせます。そのため、設備や機器を維持するだけでなく、運用改善や将来的な設備投資を行うためにも保守点検を行うことが重要です。
保守点検の種類
保守点検には、代表的なものとして以下のような種類があります。
- 目視検査
- 触診検査
- 打音検査
- 音響検査
- 超音波測定
目視検査
目視検査とは、設備や機器を直接目で見て、異常がないかを確認する検査方法です。製造業で実施されることの多い目視検査のメリットは、特別な道具や機械が不要で即座に検査を実施できる点です。機械の表面に亀裂が入っていないかや部品が正しく固定されているのかなどを確認することで、大きなトラブルに発展する前に対処できるようになります。
目視検査の詳細な種類やメリット/デメリット、効率化に向けた対策は以下の記事でも詳しく解説しています。是非ご覧ください。
関連記事:目視検査の課題はどう解決する?原因や4つの対策を紹介
触診検査
触診検査とは、機械や設備を直接手で触って異常や不具合を感じ取る検査方法です。触診検査を行うメリットは、目で見えない内部の問題や小さな変化を感じ取れるところです。たとえば、機械を触ることで振動や発熱がないかや、部品が正しく固定されているかどうかを簡単に発見できます。
打音検査
打音検査とは、機械や設備の部品を軽く叩き、その音を聞くことで異常がないかを確認する検査方法です。打音検査を行うメリットは、亀裂や欠陥が内部にあるかどうかを非破壊で確認できる点です。たとえば、金属部品の内部に小さな亀裂がある場合、正常な部品と異なる音が鳴るため、見た目ではわからない小さい異常を検出できます。
しかし、正しく音の違いを識別するためには、さまざまな種類の部品や材質の音の違いを知っておく必要があり、高度なスキルや長年のカンコツが要求されます。
音響検査
音響検査とは、機械や設備から発生する音を分析することで異常がないかを確認する検査方法です。音響検査を行うメリットは、機械や設備が正常に動作しているかどうかを非接触で判断できる点です。たとえば、ベアリングの摩耗やギアの損傷などの内部部品に問題がある場合は通常とは異なる音が発生するため、音の違いを分析することで内部の問題を検出できます。
超音波測定
超音場検査とは、超音波を利用して機械や設備の内部状態を調べる検査手法です。超音波測定を行うメリットは、非破壊で内部の異常や摩耗を検出できる点です。たとえば、配管の内部の腐食や機械部品の亀裂など、目で見えない部分の問題を早期に検出し、機械が故障する前に修理や部品交換を行うことができます。
保守点検の作業手順
保守点検を行う際は、以下の流れで作業を行いましょう。
- 保守点検の実施場所を関係者と話し合う
- 保守点検の作業頻度と点検担当者を決める
- 保守点検作業をマニュアルに落とし込む
- マニュアルを用いて保守点検を実施する
保守点検の実施場所を関係者と話し合う
保守点検を行う場合は、まず保守点検の実施場所を関係者と話し合うことが重要です。事前に保守点検を行う場所や業務との兼ね合い、必要な安全措置などについて話し合うことでスムーズに保守点検を進められます。
突然保守点検を行うと、他の作業の邪魔になるほか、機械が動作していて安全に点検できないといったリスクがあります。そのため必ず関係者と話し合い、保守点検の詳細をあらかじめ確認しておきましょう。
保守点検の作業頻度と点検担当者を決める
保守点検の実施場所が決定したら、保守点検の作業頻度と点検担当者を決めましょう。事前に作業の頻度と担当者を決めておくことで、保守点検のし忘れを防止できます。
また、頻度を決めておかないと点検が不定期になり、設備が故障するリスクが高まります。そのため、設備が故障する前に部品の交換や修理が行えるように、作業頻度や点検担当者を決めておくことが重要です。
保守点検作業をマニュアルに落とし込む
作業頻度と点検担当者が決まったら、保守点検の作業をマニュアルに落とし込みましょう。マニュアルを作成することで保守点検の手順が明確になり、誰が作業を実施しても一貫性のある作業ができるようになります。
作業者によって点検作業のやり方が異なると、作業の省略や勘違いによるミスが発生してしまうため、具体的な作業内容を記載したマニュアルを作成しておくことが重要です。マニュアルには、点検の頻度・具体的な点検項目・点検方法・異常が見つかった場合の対応手順などを記載しましょう。
マニュアルを用いて保守点検を実施する
マニュアルを作成したら、マニュアルを活用しながら保守点検を実施しましょう。マニュアルを用いずに保守点検を行うと、作業手順や作業の粒度が作業者の経験や判断に依存するため、作業の品質にばらつきが生じてしまいます。また、新しいスタッフが作業する場合、必要な情報が伝わらずに適切な点検が行えない可能性もあります。そのため、高精度な作業を行えるようにマニュアルを活用することが重要です。
マニュアルを作成したとしても、現場で活用されず「伝わらない」マニュアルになっていては意味がありません。現場改善ラボでは伝わるマニュアルを作成するコツや、マニュアル整備の効果的なプロセスについて専門家が詳細に解説した動画をご用意しておりますので、是非ご参考ください。
保守点検で作業漏れが発生する理由
保守点検では、以下のような理由で作業漏れが発生します。
- 手順の属人化
- ヒューマンエラーによるミス
- 紙による記録や報告
手順の属人化
保守点検では、作業手順の属人化によって作業漏れが発生することが多いです。毎回同じ担当者が保守点検をしていると、作業手順やノウハウを特定の社員しか把握しておらず、休暇や退職の際にスムーズに保守点検ができないことがあります。
たとえば、ベテラン社員が長年の経験をもとに機械の調整を行っている場合、そのスタッフが休みの日は誰も調整を行えず、機械の不具合で製造ラインが止まってしまうリスクがあります。そのため、保守点検の作業を明確にし、誰でも同じ基準で作業できるようなマニュアルを整備することが重要です。
保守点検を含む設備保全業務はその複雑さから、熟練の技術者にノウハウや技能が集中して属人化しやすい傾向にあります。このような属人化を防ぐ3つの秘訣について、設備管理コンサルタントが詳しく解説した動画を以下の画像より視聴可能ですので、是非ご参考ください。
ヒューマンエラーによるミス
保守点検では、ヒューマンエラーによるミスで作業漏れが発生することがあります。繰り返し行う作業や複雑な作業では、注意力が途切れることでベテラン作業員、新入社員問わずミスをしてしまうリスクが高まります。たとえば、長時間にわたる保守点検で疲労が蓄積してしまい、本来チェックすべき項目の見落としや作業手順の間違いが発生することがあります。
そのため、作業手順をわかりやすく示したマニュアルやミスを防ぐためのチェックリストを活用して、ヒューマンエラーを防ぐことが重要です。ヒューマンエラーの効果的な対策方法については、別記事「ヒューマンエラーとは?多い人に特徴はある?原因や防止方法も事例を元に紹介」か、以下の専門家が解説する無料の動画をご覧ください。
紙による記録や報告
保守点検で紙による記録や報告を行うと、作業漏れが発生しやすい傾向があります。手書きによる記録は記入漏れなどのミスをしやすいだけでなく、異常値をリアルタイムで共有できないという問題があります。また管理者の承認時、記入された内容がミスなのか?本当に異常値なのか?記入者に確認する工数も発生します。
そのため、保守点検表のような帳票は項目のマスターデータを整え、デジタル化することで管理しやすく、異常をリアルタイムで共有できるようになります。帳票をデジタル化する方法や流れ、費用対効果の算出方法については以下の資料で詳しく解説しています。併せてご活用ください。
保守点検のミスをなくして効率化するにはtebiki現場分析がおすすめ!
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tebiki現場分析とは
tebiki現場分析は、製造現場で使う帳票の作成・記録・承認が簡単にできる、帳票管理サービスです。このシステムを利用することで、記録にかかる時間やミスの削減のほか、紙では難しい画像の記録や離れた拠点からの記録ができるようになります。
tebiki現場分析を導入するメリット
tebiki現場分析を導入する最大のメリットは、リアルタイムで現場の状況を把握できるようになる点です。紙で記録を行うと、異常が発生した際に電話やメールでの情報共有が必要になるため、時間と手間がかかります。
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tebiki現場分析の機能詳細や導入サポート体制については、以下の画像から詳しい資料をダウンロード可能ですので、是非ご参考ください。
tebiki現場分析で保守点検を効率化しよう!【まとめ】
この記事では、保守点検を行うメリットや実施方法、作業漏れをなくすコツなどを紹介しました。正しい方法で保守点検を行うことで、設備や機器のトラブルを防ぎ、製造ラインを正常に稼働させられるようになります。そのため、製造効率や製品の品質を上げたいと考えている方は、ぜひ正しい方法で保守点検を行ってみてください。
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