現場改善ラボ 記事一覧 お役立ち情報 工程管理の基本を解説!目的や効率的な手法は?

工程管理とは、製品の製造工程など、モノづくりの進行を管理することを意味します。また、QCD(品質・コスト・納期)の最適化や生産性向上を実現するためにも重要なポイントとなります。ここでは、工程管理の方法や改善事例をご紹介します。

工程管理とは?取り組む目的や必要性

工程管理の概要

工程管理とは、顧客から依頼された製品を、所定の数量、品質価格、納期で納品するために行う製造工程の管理活動のことをことをいいます。生産管理の一部として扱われ、QCDSいわゆるQuality(品質)/Cost(コスト)/Delivery(納期)/Service(サービス)を満たし、最適化するために進捗や実績を管理する業務です。

つまり立案された生産計画や日程計画などに沿って実施する際に、工程内で発生する問題の解決、計画とのズレを調整、統制、改善する活動といえます。

工程管理の目的、必要性

工程管理の目的は、大前提として顧客の要求事項を満足させるためです。具体的な目的はさまざまありますが、以下のことが主要項目となります。

  • 進捗状況の把握
  • 認識に齟齬を生じさせないため
  • 現場の負担過多などの課題や問題の認識
  • 生産効率の改善(不良率、過剰品質など)
  • 人員不足やムリ、ムダ、ムラのない人員配置
  • 納期遅れを生じさせない

よりよい製品を顧客に届けるために工程管理は必要不可欠です。生産管理では主に、Quality(品質)・Cost(コスト)・Delivery(納期)の3つの要素が求められ、工程管理はその一部分を担います。常にさまざまな工程の課題、問題を解決、改善していくことでさらに顧客を満足させること、売り上げ拡大につながるために工程管理は各工程の業務において非常に重要です。

生産管理の3要素の視点

目的

説明

品質(Quality)面

  • 顧客要求(製品の規格、基準)に合致しているか
  • そもそも顧客要求は明確になっているか
  • 過剰品質になっていないか

コスト(Cost)

  • 販売価格にあった作り方になっているか
  • 販売価格にあった資材原料を使っているか
  • 購入した資材原料を有効に使っているか
  • 継続的にコストを下げることができているか

納期(Delivery)

  • 客の要求に合致したリードタイムになっているか
  • そもそもリードタイムを把握できているか
  • あまりにも無理な納期を受けすぎていないか

工程管理と生産管理の違い

工程管理と生産管理の大きく違う点は対象範囲です。生産管理は製造工程におけるヒト、モノ、カネの3つの経営資源の流れを管理し、材料の購入、製品の製造、出荷、販売し顧客に届けるまでの製造にかかわる全体が対象範囲です。大きく3つに分けられ、生産計画、生産手配、生産統制(工程管理)です。

一方で、工程管理は生産管理の一部分であり、工程計画や、進捗管理など、製造における各工程の管理が対象範囲です。会社によってはもっと範囲が広かったり、狭かったりと下記の表以外にもさまざまな項目があります。

生産管理における望ましい姿とは、顧客目線でのあるべき姿です。生産管理、工程管理ともに製造における全体最適を考えなければ上手くいきません。管理する範囲は違えど、目指すべきゴール地点は同じであることに違いありません。

生産管理

生産計画日程計画、投資計画、人員計画など
生産手配資材手配、外注手配、輸送手配など
生産統制
(工程管理)
工程計画、進捗管理、現品管理、余力管理、実績管理などが
一般的な工程管理の範囲となります

工程管理に用いられる「PDCAサイクル」とは

PDCAサイクルはマネジメントサイクルとも呼ばれます。それぞれの意味は計画立案(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Action)の頭文字を取ったものです。計画またはルール通り業務が実施されているかを確認します。

PDCAサイクルを循環させ、生産効率、品質を向上させ顧客の要求事項を満足させます。工程管理のPDCAを回すことで製造全体の生産管理が達成できます。5w2hを明確にし生産の進捗管理をします。

計画(Plan)

製品の生産完了までに必要な時間、コスト、品質、人員、設備を含めた計画を立案します。マイルストーンごとのKPIも設定し計画に盛り込んでおきましょう。計画はオープンにし関係者が必要に応じて、いつでも閲覧できるようにしておきます。抜けや漏れがないよう

実行(Do)

立案した計画に従って確実な作業を進めます。定期的にKPIを集計して、その時点でトラブルが発生していないかを確認します。顕在的、潜在的トラブルやミスが隠されぬよう、報告としてきちんとあがってくるようなしくみ作りが製造工程では求められます。

評価(Check)

立案した計画と実績の差異を正しく測定し、差異を埋める行動を考えます。測定し、発見した問題は5w2hを軸に明確にします。メンバーや有識者の意見を参考に問題が発生した原因を分析し、解決策を出し合います。工程の区切りごとにデザインレビュー(DR)など、その工程の評価を行うことも大切です。

改善/カイゼン(Action)

工程表の計画内容と現場の進捗状況との間にズレが発生した場合、ズレを改善するために調整します。例えば、贈れている工程の作業人員を増やすなどの対策を打ちます。

工程管理の主な3つの手法

工程管理の主な手法として3つ紹介します。それぞれメリットとデメリットも理解しておきましょう。エクセル(Excel)を使用した手法はコストパフォーマンスに優れ、多くの企業で採用されています。

紙/ホワイトボード

紙やホワイトボードを利用したアナログなやり方です。コストがかからない点がメリットですが、記入漏れなどの人為的なミスや情報共有がしにくいというデメリットがあります。規模が大きく工程が多岐にわたるプロジェクトには不向きでしょう。

エクセル(Excel)

工程管理の主な手法として最も一般的でコストパフォーマンスに優れています。エクセルはオフィスアプリケーションとして多くの企業で採用されており、すでに操作を習得済みなことが最大のメリットです。

工程管理システム

マクロや関数を使用すれば高度な工程管理が可能で、表現力も高くイメージ通りのガントチャートを作成できます。専用の工程管理システムにも劣らないほどの機能を組み込むこともできます。

汎用性が高いソフトウェアですので工程管理への導入ハードルは低いのですが、デメリットとして情報収集やデータ集計に時間がかかったり、属人化しやすい点が挙げられます。

工程管理システムは、工程管理に特化した専門のアプリケーションです。現在、数多く販売されており、導入やシステム構築のハードルが低くなっています。

メリットとしては工程管理システムは非常に高度な管理が可能で、PMOやプロダクトマネージャーが利用する際も遜色がない製品が数多くあります。PMBOKに準拠しており、さまざまな業種に対応しています。

デメリットは、初期費用やランニングコストがかかります。海外製のものは見える化の部分が性能として弱く、トップダウンで導入される場合が多く、定着率が悪く実際の現場で有効利用されていないという声も挙がっています。高度なITリテラシーとPMBOKの理解が求められ、定着率の悪さはこれらの習得にかかる時間の多さも要因となっています。

工程管理表の種類

工程管理表の種類は主に4つあります。それぞれのメリットとデメリットを知り、使い方、特徴を知りましょう。

ガントチャート

最も一般的に利用されているのがガントチャートです。複数のタスクを同時進行で管理する必要があるプロジェクトで使用されます。タスクの進捗状況を把握することに優れています。

エクセルでも簡単に作成可能で、左側に作業項目、右側のセルを塗りつぶしてバー状にしたり、日程を記載してタスクの開始予定日、完了期限を表すこともあります。進捗率を表すので、各作業の工数がわかりにくいこと、作業ごとの関連性を把握しづらい点がデメリットです。

ガントチャート用のエクセルテンプレートは数多く用意されており、プロジェクトに合ったものを利用できます。

グラフ式

バーチャートとガントチャートを組み合わせてグラフで表す工程管理表です。縦軸に進捗率、横軸に日数を記載してあり、作業予定の日数と現在の進捗率を同時に確認できます。

メリットはどこの作業が遅れていて、それによりどの作業が影響するかなど、作業ごとの関連性も把握できる点です。一方で、ガンチャートやバーチャートに比べて表が複雑ですので、慣れるまでは作成に時間を要する恐れがあります。

バーチャート

縦軸にタスク、横軸に各作業を行う日を記載した工程表です。タスクに必要な日数がひと目でわかります。

タスクと作業開始日、作業完了日を記載するだけですので、簡単に作成ができ、作業工程が把握しやすい点が特徴です。

デメリットとして、タスク同士の関連度がわかりにくく、経路を見落としやすいです。ですが各工程を選ばす簡単に導入が可能ですので、まずは試してみるとよいでしょう。

ネットワーク式

各工程の前後関係や流れを、円と矢印を使用して作業のつながりや順番、作業に必要な工数を表したネットワークの形で示した工程管理表です。前工程の作業が完了しないと、次工程のに着手できない場合のタスク管理に用いられます。

パート図とも呼ばれ、ガントチャートと同じくらい工程管理表としてよく使用されています。プロジェクト内の各タスクの処理順番が経路として図示化され、この作業が完了したあとはどの作業にとりかかればよいか、同時に進行できる作業がないか、該当する作業を開始するには、どの作業の完了が必要かが、ひと目でわかって便利です。

タスク全体の関連度が把握しやすいのがメリットです。見た目はシンプルですが、作業工程表の作成時には工程をすべて把握する必要があります。デメリットは各タスクの進捗状況が把握しにくい点です。

工程管理を効率化する手法

エクセル(Excel)の場合

工程管理は手書きではなくエクセルや専用システムを使用するのが一般的です。それぞれメリットとデメリットを解説します。

工程管理にエクセルを利用している企業が多くあります。汎用的なソフトウェアでありハードルは低いのですが、情報の収集や集計に時間がかかったり属人化の傾向が強くなります。

【メリット】

エクセルの導入は各企業で多く見受けられ、すでに操作が習得済みである点がメリットです。マクロや関数を使って非常に高度な工程管理が可能で、工程管理システムにひけをとらないほどの機能を持たせることが可能です。

表現力も豊かで、イメージ通りのガントチャートを作ることができます。

【デメリット】

エクセルもデジタル化の1つですが、自動化にも限界があります。現場からの報告を受け入力したり、日々の集計に時間がかかります。プロジェクトの規模が大きくなるほど、散らばった情報の収集と集計が困難になります。

イメージ通りのグラフや図形グラフ、分析が可能ですが、このレベルになるとマクロや関数など高度な専門的スキルが必須となります。属人化の傾向が強く、プロジェクトチーム内、社内での共有と継承が難しい場合が多いです。

工程管理システムの場合

工程管理システムは、工程管理を円滑に進めるためのアプリケーションです。優れた工程管理システムを導入することで、品質やコスト、納期を守りながらプロジェクトを成功へ導きます。標準化されているシステムを使用することで複雑化しやすい工程管理業務はシンプルなものになります。

【メリット】

人の手で工程表を管理することがなくなり、システム上で一括管理できるため精度の高い工程管理が実現可能となります。プロジェクト全体の工程詳細や進捗具合のみならず、全体の収支も確認できるため、社内全体で利用できる便利なツールです。会社全体の生産性向上に役立つでしょう。

【デメリット】

主に2点あります。コスト面と使い勝手です。初期費用とランニングコストが発生しますが、最適なシステムを導入すれば、たとえコストがかかったとしても、コストに見合う効果が見込めれば問題ありません。

使い勝手の部分は、定着率にも影響するため、導入時には何ができて、どういう機能が必要なのか、工程管理に必要な機能を監督者、現場作業者の両方の観点からリストアップしておきましょう。そうすることで、導入したものの利用されないなどという結果を避けることができます。

まとめ

工程管理についてまとめます。

  • 工程管理とは顧客から依頼された製品を、所定の数量、品質価格、納期(QCD)で納品するために行う製造工程の管理活動のこと
  • 工程管理の目的は、顧客の要求事項を満足させるため
  • 工程管理は生産管理の一部分で、工程計画や、進捗管理など、製造における各工程の管理が対象範囲
  • 生産管理は製造工程におけるヒト、モノ、カネの3つの経営資源の流れを管理し、材料の購入、製品の製造、出荷、販売し顧客に届けるまでの製造にかかわる全体が対象範囲
  • 工程管理及び生産管理の基本は計画立案(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Action)に従って行う
  • 効率的な工程管理の手法はエクセル、または工程管理システムを使用。生産性向上に大きく役立つ
  • 工程管理表は主に4つ。ガントチャート、グラフ式、バーチャート、ネットワーク

工程管理は、顧客の要求事項を満たすために行う管理活動であることを忘れないでください。どんなに立派な工程管理表やシステムを導入したところで、管理方法を遵守しない、工程管理システムを使いこなせないなど、作業者がおろそかな行動だと本末転倒です。

工程管理は会社全体で行うものなので、誰一人として関わらない人はいません。それぞれの工程担当者に教育することはもちろんのこと、顧客によりよいものを届けるために、各員が工程管理に責任を持って業務を行うことが求められます。

どんなに自動化や、効率化が進んだとしても「よいものを作る、届ける」という人の気持ちが品質を保つ上で重要であることも肝に銘じておきましょう。

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