自社の仕組みが整っておらず、自社が行う品質管理に疑問を持っている方はいるはず。仕組みづくりは一朝一夕でできることではなく、会社全体が一丸となって行わなければならないため、そのような疑問がでるのは無理もありません。
そこでこの記事では、会社全体で品質管理を行うTQC(総合的品質管理)について解説します。TQCを用いれば、とくに製造業で品質向上を実現でき、社内の仕組みを整えることが可能です。
この記事では、まずTQCとは何かについて解説し、TQCの歴史、TQCとTQMの違い、そして取り組みの例を解説します。この記事を読めば、TQCについて抱えている疑問を解消できますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
TQCとは?
TQCとは、Total Quality Controlの略称で、総合的な品質管理手法のことを指します。
1951年に日本の文部科学省(当時の科学技術庁)で開催された「品質管理技術講習会」において、岸見一郎によって提唱されました。その後、日本での製造業界の高度な品質管理に貢献し、海外にも広がった手法です。
TQCの意味
TQCは、品質を総合的に管理するための手法を意味します。
社員などの組員全員が品質管理に参加することが基本であるため、全工程において品質を向上するための活動を行い、品質の改善を常に追及する姿勢が求められます。
また、品質改善には、組織的なアプローチが必要であり、社内の品質管理のプロセスに沿って継続的に改善を行うことが重要といえるでしょう。
そもそも品質管理とは?
品質管理とは、製品やサービスの品質を維持・向上するためのマネジメント手法のことです。
製造業で品質管理が必要な理由として、製品の不良率低減、生産性向上、コスト削減などが実現できるからです。
製造業以外の業種、例えばサービス業では、サービス品質の向上、顧客満足度の向上、サービス提供プロセスの改善などが目的となります。
品質管理の手法としては、PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)を用いたサイクル改善や、品質保証(Quality Assurance)、品質管理(Quality Control)、品質改善(Quality Improvement)などがあります。
また、ISO9001などの国際的な品質マネジメント規格に基づく品質管理も行われており、現代ではグローバルスタンダードのマネジメント手法といえるでしょう。
関連記事:品質管理の基本を解説!目的や品質保証との違い、主な手法は?
TQCの効果
TQCの導入により、組織内で品質意識が高まるため、組織内の品質に対する取り組みが積極的に行われるといえるでしょう。
また、品質管理プロセスの見える化によって、問題点を早期に発見し、改善することが可能です。不良品の削減やリコールの回避、生産性の向上、コスト削減などの効果が得られる点がTQCの効果になります。
一方でTQCの導入は、従業員のモチベーション向上にもつながります。
なぜなら、社内全体で品質管理を行うことにより、従業員が自らの仕事に責任を持ち、品質改善に積極的に取り組み、自己肯定感や自己実現感が高まることが期待できるからです。
自らの仕事に対する誇りや責任感が芽生えるため、仕事に対する取り組み方や意識が変わること期待できるでしょう。
TQCはPDCAサイクル、つまり「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Act(改善)」の4つの工程を繰り返すことで、持続的な品質改善を実現する手法です。PDCAサイクルに基づいて、品質改善を継続的に行うことで、企業の成長につながること効果もあります。
TQCの歴史とトヨタの関係
TQCは、日本の最大級の自動車メーカーであるトヨタ自動車が提唱した品質管理手法です。
製品の品質を担保するために、製造ライン全体で品質管理を行うという考え方に基づいてTQCが提唱されました。
TQCの歴史
TQCの歴史を振りかえれば、トヨタ自動車の創業者である豊田佐吉がはじめた品質管理(QC、Quality Control)に端を発します。
豊田佐吉は、製品品質の向上に向けて、製造ライン上の全員が品質管理に参加することを提唱しました。
豊田佐吉のアイデアは、トヨタ自動車が発展するにつれ、よりシステマチックかつ戦略的な品質管理手法であるTQCへと進化したのです。
TQCとトヨタの関係
TQCは、トヨタ自動車が1950年代に取り組んだ「作り直しのない工場」プロジェクトにおいて、徹底した品質管理を取り入れたことで広く知られるようになりました。
「作り直しのない工場」プロジェクトでは、製造ライン上のすべての作業工程において品質管理を徹底し、品質の向上に注力。その結果として製品の品質が向上し、トヨタ自動車は自動車産業における品質のリーダーとして認知されたのです。
トヨタ自動車は、TQCを中心に据えた品質管理体制を確立することで、高い品質の自動車を製造し、顧客満足度を高めることに成功しました。
また、トヨタ自動車が取り組んだTQCの手法や哲学は、他の産業にも広がり、世界中の企業に影響を与え、現在でも製造業をはじめとするあらゆる業種において、品質改善のための重要な手法のひとつとして現代でも語り継がれています。
関連記事:トヨタ生産方式(TPS)をわかりやすく解説!7つのムダやメリット/デメリットとは?
TQMとの違い
TQCとTQMの違いは、TQCが主に製造現場の品質改善に焦点を当てた手法であるのに対し、TQMは全社的な品質マネジメント手法である点です。
TQMでは、製造現場だけでなく企業全体の品質向上を目指し、顧客やサプライヤーとの緊密な協力関係の構築や、社員の参加・貢献を促すための教育・訓練が重要なポイントとなります。
TQMとは?
TQMとは、Total Quality Management(トータル・クオリティー・マネジメント)の略であり、全社員が品質に対する意識を共有し、品質を継続的に改善していくためのマネジメント手法です。
TQMでは、品質を改善するためのPDCAサイクルを中心に、社員の教育・訓練、組織改善、顧客ニーズの把握と反映など、幅広い取り組みが求められます。
TQMでは、企業が顧客満足度を向上させるための経営戦略として、全社的な品質改善を目指すことが重要視されています。
なぜなら、顧客が求めるニーズを正確に把握し、商品やサービスの品質を向上させることで、企業が競争優位を獲得できると考えられているからです。
TQMでは、品質管理を経営戦略と捉え、全社的な品質改善に取り組むため品質管理の対象となる部門や業務が、TQCよりも広範囲にわたります。また、品質改善には、経営者が率先して取り組むことが求められます。
関連記事:TQM(総合的品質管理)の目的は?進め方やトヨタ式などの事例を解説!
TQCとTQMの違い
TQCとTQMの主な違いは、「現場視点か」「全社的な視点か」ということです。
TQCとTQMでは、PDCAサイクルの考え方は共通していますが、TQCでは主に品質改善のためのサイクルとして捉えられていたのに対し、TQMでは全社的な改善サイクルとして捉えられます。
TQMでは、顧客ニーズの把握や改善活動の計画立案から、実行、評価、改善までのサイクルが繰り返され、品質改善を継続的かつ総合的に行っていくことが求められます。
(4)TQC/TQMの取り組み例
TQCの取り組み例として主に、
- ・QCサークル(小集団改善)
- ・4M分析
- ・QC7つ道具
- ・新QC7つ道具
- ・シックスシグマ(6σ)
- ・5S
- ・7つのムダの排除
があげられます。それぞれ解説していきましょう。
関連記事:製造業における品質改善5つの手法は?品質バラつき防止の取組事例を解説
QCサークル(小集団改善)
QCサークルとは、従業員が自らの手で生産プロセスの改善を行うために立ち上げる小集団です。従業員が自らの手で改善案を出し、実際に改善案を実行することで、生産プロセスの改善につながります。
「トヨタ式のカイゼン」につながる活動で、QCサークルに参加することで、自らの案が採用されることにより、従業員のモチベーション向上につながり、さらには品質向上につながることが期待できます。
QCサークルによる改善活動を続けることで品質不良の発生を防ぐためのヒントを得ることができます。しかし、QCサークルを実施しているものの具体的にどうやって進めればよいかわからないという経験はございませんでしょうか?QCサークルを効果的に活用するためには正しい進め方で実施することが重要です。
現場改善ラボでは元トヨタ自動車九州株式会社で品質保証部や品質管理部、組立部に従事してきた古里 和敬氏による「現場で実践できる形骸化させないQCサークル活動における進め方」について解説した動画を無料で視聴できます。ぜひこの機会にご視聴くださいませ。
関連記事:【事例付】QCサークル(小集団改善)活動の進め方|メリットやデメリットなども解説
4M分析
4M分析とは、生産プロセスの問題点を解決するために、原因を4つの観点から分析する手法です。
4Mとは、Material(材料)、Machine(機械)、Method(方法)、Manpower(人)の頭文字をとったものです。4Mが原因となっている問題、例えば機械の故障などを明らかにして改善策を考えることで、品質向上につなげます。
関連記事:【図解あり】4M分析とは?問題整理や変更管理での分析方法を解説!
QC7つ道具
QC7つ道具とは、品質管理の基本的なツールであり、問題解決に役立てるための7つの手法のことを指します。
7つの手法は、「図表」「ヒストグラム」「パレート図」「散布図」「チェックシート」「直交表」「因果図」です。QC7つ道具を使うことで、品質問題を可視化し、解決につながる改善策を考えることが可能です。
関連記事:QC7つ道具とは?業務実例から具体的な使い方を解説【練習問題付き】
新QC7つ道具
新QC7つ道具とは、QC7つ道具を発展させた、より実践的で使いやすい道具のことを指します。
新QC7つ道具には「フローチャート」「チェックリスト」「直感図」「インターロック図」「関係図」「PDCAサイクル」「FMEA(失敗モード・エフェクト・解析)」があります。
関連記事:【図解あり】新QC七つ道具とは?QC七つ道具との違い、各手法をわかりやすく解説!
シックスシグマ(6σ)
シックスシグマ(6σ)は、Define(問題の定義)、Measure(問題の測定)、Analyze(原因の分析)、Improve(改善策の実施)、Control(改善策の維持・管理)の5つのプロセスを順に実行することで、品質改善を実現する手法のことです。
シックスシグマとは、品質管理手法のひとつで、製品やサービスの品質を向上させるために使用されます。統計学的な観点での6σは、1カ月あたりの欠陥数が6個以下であることを意味します。
つまり、製品の品質を高く維持するためには、1カ月あたりの欠陥数を6個以下にすることが目標です。
関連記事:シックスシグマ(6σ)とは?経営/品質管理で必要な概念をわかりやすく解説!
5S
5Sは、工場やオフィスなどの職場環境を整理整頓し、効率化する手法であり、Sort(整理)、Straighten(整頓)、Shine(清掃)、Standardize(標準化)、Sustain(維持)の5つのプロセスを順に実行します。
現在では、5SにSafety(安全)が追加され、6Sとして考えられるようになりました。5Sは、職場環境を改善することで、作業効率の向上や品質の向上につながることが期待されます。
具体的には、必要なものだけを置くことでムダを排除し、機材や工具の配置を最適化することで作業時間の短縮を図るなど、多方面にわたって改善の効果が期待できる手法です。
5S活動に力を入れることで現場の安全性や品質を高めることができ、全体の生産性を向上させることができます。しかし、5S活動に取り組んでいるのにも関わらず失敗に終わってしまう企業も多いです。5S活動で生産性を向上させるには、正しい手順で取り組む必要があります。
そこで、現場改善ラボでは数々の企業で5S改革を行ってきた、株式会社ヒューマン・ナレッヂの代表取締役である前田 康秀氏による、現場で実践できる「正しい5S活動」の解説動画を無料で視聴できます。ぜひ本記事と併せてご参照ください。
また、下記の記事では5Sの目的や5S活動を行うことで得られる効果について事例を交えながら説明しています。ぜひ、こちらの記事もご参照ください。
関連記事:5Sとは?意味や活動の目的と効果、ケース別の事例を解説!
7つのムダの排除
7つのムダの排除とは、業務プロセス上に存在するムダを特定し、効率的な業務遂行を実現するために行う改善活動のことを指します。
「オーバープロダクション」「待ち時間」「不必要な在庫」「不必要な運搬」「不必要な作業」「不必要な加工」「不良品」が7つのムダの要素です。
7つのムダを排除することによって、製品やサービスの品質を向上させ、時間やコストの削減につながります。さらに、ムダを排除することによって業務プロセスがシンプルになり、作業のミスや不手際を防ぐことが可能です。
例えば、不必要な在庫を排除することで、生産コストを削減できます。
また、不必要な作業を省くことで、作業時間を短縮でき、生産性を向上させることが可能です。さらに、不良品を排除することで、品質を向上させることも期待できます。
関連記事:【トヨタ式】7つのムダとは?具体例を交えてムダを解説
まとめ
この記事ではTQCをわかりやすく解説と題して、
・TQCの意味
・TQCの歴史とトヨタの関係
・TQCとTQCの違い
・TQC/TQMの取り組み例
を解説してきました。
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