『現場改善探求』では、さまざまな企業の現場においてどのようなカイゼンに取り組んでいるのか?その内容や背景、考え方についてインタビューで掘り下げることで、あらゆる現場で改善を実現するヒントを見つけていきます。
今回は、自動車や住宅設備のプラスチック製品/部品の製造~販売を行う児玉化学工業株式会社 西湘工場 工場長の山根 卓也氏に、製造現場における『品質不良率半減までの道のり』や『現場改善が改悪にならないために必要なこと』についてお話を伺いました。
目次
児玉化学工業について
山根さん 私たち児玉化学工業は1946年に創業した化学メーカーで、プラスチックの真空成型機械を日本で初めて導入した会社です。
現在では主に、自動車や住宅設備のプラスチック製品/部品の製造を行い、それぞれの領域のメーカーに対して販売を行っています。国内外で5~600名ほどの従業員を抱え、複数の拠点で製造を行っています。
品質向上には『人の質』が欠かせない
山根さん 我々は2020年に社長が代わり、第一声で言われたのは『品質が大事』だということです。製造業である以上、品質が会社の生業になるため、劇的に品質の向上を努めなさいという方針からも、弊社における品質の立ち位置がお分かりいただけるのではないでしょうか。
また、現場では『3つのつくり』というものを掲げています。3つの内容は人つくり、現場つくり、モノつくりとなっていて、この中でも特にモノつくりは今のお話に関わる部分で、会社の第一優先として掲げています。そのためには残り2つの人つくり、現場つくりも欠かせない要素になるため、重要視している要素になります。
新人教育では「品質とは何ですか?」という話もするのですが、現場では人の質と書いて『人質(ひんしつ)』と読ませています。人質(ひとじち)ではないですよ(笑)
モノを作ってるのは機械が大部分ですが、その機械を操ってるのも人であるし、検査するのも人だし、ちょっとした作業にはすべて人が関わっているので、人の質が良くないとよい品質のモノができません。
そういったところから我々は、人の質を上げることが品質向上に一番つながるというように考えています。私も若いころからそのように教育を受けてきて、品質道場といった取り組みも行われています。
品質は突然良くなるものではない
山根さん 品質道場では主に、新人に加えて社内異動など職種が変わる人を集めて、今一度品質と現場の基礎を勉強し直しましょうといったことを行っています。品質道場で教育を受けたうえで現場に入り、標準作業をやりながら品質向上につなげようと試みています。品質道場の取り組みを始めて8年ほど経ちますが、道場教育を行ったことで品質が60~65%ほど向上しています。
やはり、お客様との信頼関係は品質が第一なので、そこを良くしないと商取引が成り立たないのではないでしょうか。
品質は突然明日良くなるものではありません。5年などの中期的なスパンで計画を立て、不良率の半減を目指すことで、世の中のお客様が「児玉さんの品質って良いよね」と言っていただける水準をはじめて実現することができます。
当然、お客様の視点からすると「不良はない」という前提なんですよね。そのため、最終的には品質不良ゼロを目指しています。とは言え、ゼロにするというのは難しいのも事実です。まずは5年で半減を目指しましょうといったところで、達成までには紆余曲折がありました。
我々が扱っている自動車部品というのは、平準化された作業で生産が続くので、日々作業を繰り返していけば品質はどんどん良くなっていきます。一方で、コロナ禍で生産がストップしてしまうと、しばらく作業をしていないことで忘れてしまうといったこともあり、自分たちではどうしようもない外的要因に振り回されてしまうことがありました。
それ以外にも、新製品の立ち上げで一時的に人のリソースが投下されることで、既存領域の品質が悪くなってしまうこともありました。退職といったケースもあるので、このような人の入れ替わりというのも少なくありません。そのような入れ替わりによって人が変わってしまうと、品質にも影響してしまい回復させるのがなかなか難しかったです。
これからは不良をゼロにするという、更に高いハードルにチャレンジしていかなくてはいけません。恐らく普通のことに取り組んでいても、その領域には到達できないですね…これまでとは手段を変えたり、視点を変えたりなどアプローチを変えていかないといけません。
山根さんが考える『品質不良ゼロ』アプローチとは?
山根さん 昨年から品質に対して、ある役員が『Hard to fail(失敗しにくい)』という合言葉を掲げています。先ほど品質は人という話をしましたがその反面、人って絶対に失敗すると思うんですね。
人間は忘れることもあるし、失敗することもある。たまにルールを無視してしまうこともある。そうすると品質不良をゼロにできる日を迎えられないので、ある一定のところまでは人に依存しても、過度に人に依存しないようなモノづくりに変えていこうというところがこれからの課題になりそうです。そのためには機械化や自動化といったことに取り組み、なるべく人が介在しないような仕組みづくりをしないと、品質不良をゼロにするのは難しいですよね。
一方で、自動化の文脈でロボットを入れるケースがありますが、ロボットは品質不良があろうがなかろうが同じ動作をしてしまうんですね…人間はその点、品質不良を見つけたら止めてくれるという点で人間の方が優れているんですよ。ただ、作業で失敗する可能性というのは、ロボットは100回中100回同じ動作をするんですが、人間はその中の1回失敗する可能性があります。
なので単純に自動化ロボットを入れるのではなく、そのモノが不良なのか良品なのか?良否の判断ができるような仕組みも必要なのかなと考えています。
現場改善が『改悪』にならないように
山根さん ここまでの話したような改善を現場の人と相談しながら進めていますが、現場視点では改善というのはものすごく抵抗感があるものだと思います。今まで作業をしていた人からすると、これまでと違うことをやるので、その人にとっては『改悪』なんです。
しかしそのような新しい取り組みによって、より状況が良くなるほど結果的に現場改善になり、改善したあとの方が自分たちが楽になるといったところを説明し、実際に楽になる状態を早く体験してもらうといったことが1つカギになります。世の中でも、成功体験をするともう元には戻れないよねということもありますが、改善するときには『成功したらこんなにいいことがあるよ』ということを体験してもらう必要があると考えています。
このような体験をナシに「作業が早くなるんだよ」「楽になって残業が減るんだよ」と言っても、実際にそうならないとやらなくってしまいます。そういった点で、早く成功体験をさせてあげるというのが改善の近道ではないでしょうか。
一方で、現場改善は「理屈上ではこうなる」ということがあっても、実際にやってみないと分からない部分も多く、いろいろな問題が出てきて想定通りに改善が進むことは少ないと思います。その中で成果を見せるというのはすごく難しいところですが、成功体験という成果がないと、改善を費やしたその期間がムダになってしまい、改善活動そのものが続かないですよね。そのためにも、早く成功体験をさせるというのが現場改善には重要なのではないでしょうか。
児玉化学工業の品質不良削減で活用されている現場教育システム『tebiki』
児玉化学工業株式会社では品質不良を削減するの取り組みの一環で、動画マニュアルを軸とした現場教育システム『tebiki』を活用しています。導入前に抱えていた課題から、導入後に改善したこともインタビューでお話いただきましたので、併せてこちらもご覧ください。
インタビュー動画:tebiki導入事例(児玉化学工業株式会社様)
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