現場改善ラボ 記事一覧 お役立ち情報 稼働率とは?低下する工場が陥りがちな3つの損失と改善事例

かんたん動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」と、かんたんデジタル現場帳票「tebiki現場分析」を展開する、現場改善ラボ編集部です。

製造業における課題の1つは、生産設備の稼働率を最適化することにあります。稼働率とは、生産設備や人材が、本来稼働すべき時間に対して、実際にどれだけ稼働したかを示す割合です。

本記事でお伝えする情報は、生産ラインの運用を最適化し、製造業における効率と生産性を向上させるための重要な情報です。より生産的な製造業の未来に向けて、稼働率について学んでいきましょう。

稼働率とは?わかりやすく説明

稼働率とは、生産設備や人材が、本来稼働すべき時間に対して、実際にどれだけ稼働したかを示す割合です。例えば、「工場の機械が1日8時間稼働できる中で、実際に6時間稼働した場合、稼働率は75%」になります。

稼働率は、製造業を中心に「効率性を測る重要な指標」として用いられており、数値が高いほど生産性が高いことを意味します。

稼働率が重要である理由

稼働率が高いほど、限られた設備や人員から最大限の生産量を引き出せ、結果として利益を最大化できるため、稼働率は、企業の収益性につながる重要な指標です。

例えば、工場の機械の稼働率が高ければ、同じ時間でより多くの製品を製造でき、売上増を実現できます。また、稼働率を分析することで、生産工程のボトルネックや無駄を発見し、改善策を検討できます。さらに、将来の設備投資計画や人員配置を適切に行うためのデータとしても活用することが可能です。

稼働率と類似用語との違い

稼働率は、可動率、設備総合効率(OEE)、設備利用率など、類似する用語と混同されがちです。ここでは稼働率と類似用語との違いについて以下の3つの順に解説します。

  • 可動率(べき動率)との違い
  • 設備総合効率(OEE)との違い
  • 稼働率と設備利用率との違い

可動率(べき動率)との違い

可動率(べきどうりつ)は、設備が故障やトラブルなく正常に稼働できる状態にあった時間の割合を示します。稼働率が「実際にどれだけ稼働したか」を重視するのに対し、可動率は「設備が正常に動くべき時に動ける状態だったか」という信頼性に重点を置いています。

可動率の計算式や稼働率との違いは、後述する「可動率(べき動率)とは?稼働率との違い」章で解説しています。

設備総合効率(OEE)との違い

設備総合効率(OEE)は、稼働率、性能、良品率の3つの要素を掛け合わせた指標で、設備の総合的な生産効率を評価します。計算式は「OEE(%)=稼働率×性能×良品率」です。稼働率が時間的な稼働状況(=時間稼働率)を示すのに対し、OEEは、品質や速度といった事項も加味し、設備のパフォーマンスを把握できます。

例えば、稼働率が高くても、不良品が多ければOEEは低くなります。OEEを分析することで、生産ライン全体のボトルネックや改善箇所を特定し、総合的な生産性向上につなげることが可能です。

OEEの低下も製造現場における課題の1つとしてよく挙がるので、対策のポイントを知っておきましょう。以下の無料セミナー動画では、OEEが低下する原因である7大ロスから紐解くOEEの改善ポイントについて、詳細に解説しています。あわせてご覧ください。


7大ロスを防ぐ!製造現場から見る設備総合効率を向上させるポイント

稼働率と設備利用率との違い

設備利用率は、ある一定期間における設備の利用状況を示す指標であり、稼働率とは視点が異なります。稼働率が「本来稼働すべき時間に対する実際の稼働時間」の割合であるのに対し、設備利用率は「一定期間における設備の利用時間」の割合です。

例えば、月間や年間といったスパンで設備の利用状況を把握する際に用いられます。設備利用率からは、設備がどれだけ有効活用されているか、遊休状態になっていないかを把握することが可能です。一方、稼働率は、操業時間内での効率性を評価する指標です。稼働率と設備利用率は異なる時間軸と視点を持つため、目的に応じて使い分ける必要があります。

稼働率の計算式

稼働率の計算式は次の2式があります。

▼式1
稼働率(%)=実際の生産量÷生産能力×100

▼式2
稼働率(%)=実際の稼働時間÷本来稼働すべき時間×100

いずれの式も表裏一体の関係にあり、式1は「生産量」ベース、式2は「稼働時間」ベースの計算式です。いずれも「本来の能力に対して、どれだけ実際に生産活動が行われたか」を割合で表しています。

▼式1の例
ある製造工場では、ある製品の最大生産能力は1日に1,000個であるとします。しかし、ある日の実際の生産量は800個でした。この場合、稼働率は次のように計算されます。

稼働率(%)=実際の生産量÷生産能力×100
= 800個÷1,000個×100%
= 80%

結果から、設備がその日のうちに能力の80%を使用していたことが分かります。

▼式2の例
同じく製造工場の例を使用しますが、今回は時間に基づいて稼働率を計算します。設備は1日に最大8時間稼働可能ですが、ある日の実際の稼働時間は6時間でした。この場合、稼働率は次のように計算されます。

稼働率(%)=実際の稼働時間÷本来稼働すべき時間×100
= 6時間÷8時間×100%
= 75%

結果から、設備がその日のうちに75%の時間稼働していたことがわかります。

可動率(べき動率)とは?稼働率との違い

稼働率とは、本来稼働すべき時間に対する実際に稼働した時間の割合を示す一方、可動率(べきどうりつ)は「設備が正常に動作可能な時間に対する実際に正常に動作した時間の割合」を示します。

ここでは稼働率と可動率との違いについて解説し、トヨタ生産方式との関係性についても言及します。

可動率の計算式

可動率は次の計算式で求められます。

可動率の計算式
可動率(%)= 実際に正常に動作した時間 ÷ 正常に動作可能な時間 × 100

▼可動率の計算例
製造工場の1つの生産ラインを考えます。この生産ラインは1日8時間運転する予定でした。しかし運転開始後、途中で2時間の機械故障が発生し停止しました。そこで、生産ラインが正常に稼働していた時間は、「正常に動作可能な時間である8時間」から「故障時間の2時間」を差し引いた「6時間」となります。

したがって、可動率は次のように計算されます。

可動率(%)= 実際に正常に動作した時間 ÷ 正常に動作可能な時間 × 100
= 6時間 ÷ 8時間 × 100%
= 75%

この場合、可動率は75%であり、機械の故障によって生産ラインが計画よりも25%停止していたことが分かります。

可動率が生産現場における重要な指標である理由

可動率は生産現場における効率性と設備の信頼性を示す重要な指標です。 なぜなら、設備の正常な動作時間を把握することで、設備の故障やトラブルの頻度や影響を評価できるからです。

可動率が高いということは、設備が安定して稼働していることを意味し、計画通りの生産を実現できるだけでなく、生産リードタイムの短縮や、生産コストの削減にもつながります。

一方、可動率が低い場合、頻繁に発生するチョコ停(小さな停止)や、段取り替え時間の長さ、設備の故障以外にも、材料の供給遅延や作業員のスキル不足などが原因として考えられます。また、生産ラインの安定性が低下すると、納期遅れや生産計画の変更、設備の故障が原因で不良率が悪化するなど、製品品質に悪影響を及ぼす可能性もあります。

そのため、可動率の低い現場では、早急に改善アクションを講じる必要があります。例えば、予防保全の実施や、故障原因の分析と対策、作業員の教育・訓練などが、可動率向上に効果的な改善アクションとして挙げられます。

予防保全や設備トラブルの改善策について知りたい方は、以下のPDF資料「製造業の設備トラブルによる生産性低下を解消する設備保全のDX」もあわせてご覧ください。


資料をダウンロードする

可動率とトヨタ生産方式との関係

トヨタ生産方式(TPS)の基本思想である「ジャストインタイム(JIT)」生産と、ニンベンのついた「自働化」は、製造業の効率性と品質を向上させるための重要な手法であり、その実現には可動率の最大化が欠かせません。

JIT生産の根底には、必要なときに、必要な量だけを生産するという精度の高い生産計画とスケジューリングが必要であり、「自働化」は、設備異常を即座に検知し、機械を自動停止させることで、不良品の流出を防ぎつつ、可動率の維持に貢献します。

トヨタ生産方式では、可動率を最大化することで、JIT生産を実現します。可動率が低下すると、生産計画に狂いが生じ、以下のような問題を引き起こす可能性があります。

  • 顧客への納期遅延
  • 生産計画の遅れ
  • 設備の停止

納期遅延は顧客満足度の低下や企業の信頼損失につながり、生産計画の遅れは仕掛品在庫の増加を招き、キャッシュフローの悪化や、保管スペースの圧迫などの問題を引き起こします。設備の停止は生産効率の低下を招き、単位あたりの生産コストを増加させます。

そのため、トヨタ生産方式では、「自働化」の考え方に基づき、設備の異常を迅速に検知し、対処することで、可動率を高く維持し、安定した生産を実現しています。

実際のトヨタ生産方式を用いた現場の改善方法について専門家が解説する動画も公開していますので、あわせてご覧ください。


トヨタ生産方式と現場改善~産業の垣根を超えた改善の着眼点~ (1)

稼働率の計算に必要なデータと取得方法

稼働率の計算に必要なデータを、以下の2つの場合に絞って解説します。

  • 「生産量ベース」の稼働率の場合
  • 「稼働時間ベース」の稼働率の場合

「生産量ベース」の稼働率の場合

生産量ベースの稼働率の計算に必要なデータは以下2つです。

  • 実際の生産量
  • 生産能力

実際の生産量は、特定の期間内に実際に生産された製品の数量です。このデータは、通常、生産管理システムや、製造日報などから取得できるでしょう。

生産能力は、設備や人員が一定時間内に最大限に生産できる製品の数量です。設備の仕様上の最大生産能力だけでなく、過去の実績データや、人員のスキルレベルなども考慮して算出されます。多くの場合、生産能力のデータは、生産技術部門が設備仕様書や過去の生産実績データをもとに算出し、生産管理システムで管理しています。

ただし、生産能力は、あくまでも理論値や過去の実績に基づくものであり、実際の生産量とは異なる場合があることに注意が必要です。そのため定期的に見直しを行い、実態に合わせて調整することが重要です。

「稼働時間ベース」の稼働率の場合

稼働時間ベースの稼働率の計算には以下2つのデータが必要です。

  • 実際の稼働時間
  • 本来稼働すべき時間

実際の稼働時間は、特定の期間内に設備や人員が実際に稼働した時間です。このデータは、通常、タイムカードや、設備に設置されたセンサー、生産管理システムなどから取得できるでしょう。

本来稼働すべき時間は、休憩時間や定期メンテナンス時間、段取り替え時間などを除いた、実質的に稼働可能な時間です。これは生産計画に基づいて算出され、多くの場合、生産管理部門が生産計画書や生産管理システムで管理しています。ただし、生産計画は、予期せぬトラブルや、材料の供給遅延などによって変更される可能性があるため、常に最新の計画に基づいて稼働率を計算する必要があります。

工場における稼働率の目安

稼働率が高ければいいわけではない

設備の稼働率は受注数と生産能力のバランスが重要であるため、稼働率が高ければ良いというわけではありません。

生産能力をはるかに超える受注がある場合や、逆に生産能力に対して受注量が極端に少ない場合、どちらも企業の経営にとって好ましい状態とは言えません。

生産能力をはるかに超える受注がある場合のデメリット

生産能力をはるかに超える受注がある場合、以下のようなデメリットが考えられます。

▼設備への影響
設備の過剰稼働による故障リスクが増大し、メンテナンス時間も不足するため、設備の寿命が短縮する可能性があります。

▼従業員への影響
長時間労働による従業員の健康問題が発生したり、疲労蓄積により生産効率が低下したりする可能性があります。また、離職率の上昇を招くリスクもあります。

▼品質への影響
生産を急ぐあまり、品質管理が疎かになり、不良品の発生率が高くなる可能性があります。

▼納期への影響
受注過多により、納期遅延が発生し、顧客満足度の低下や企業の信頼損失につながる可能性があります。

生産能力に対して受注量が極端に少ない場合のデメリット

一方、生産能力に対して受注量が極端に少ない場合には、以下のようなデメリットが考えられます。

コストへの影響
設備の稼働時間が減ることにより、減価償却費が無駄になります。また、人員が遊休状態になることで、人件費の無駄が生じます。

従業員の士気への影響
仕事量が減少することで、従業員のモチベーションが低下する可能性があります。

適正な稼働率とは?

適正な稼働率とは、生産能力と受注量が適度にバランスを取り、設備の稼働と停止が効率的に行われる状態を指します。適正な稼働率は、企業の業務内容や設備の特性、市場状況などにより大きく変動するため、一概には定義することは困難です。

しかし、一般的には、設備のメンテナンス時間や故障リスクを考慮に入れつつ、最大限の生産効率を実現する稼働率が適正な稼働率とされます。例えば、製造ラインの稼働率が80%~90%であれば、生産能力を最大限に活用しつつも、メンテナンスや予期せぬトラブルに対応するための余裕を持つことが可能です。

適正な稼働率を判断するためには、「過去のデータ分析」や「ベンチマーキング(同業他社の稼働率データを参照)」「シミュレーション」といった視点が重要になるでしょう。

加えて、適正な稼働率の維持には以下のような施策が有効です。

  • 需要予測の精度向上
  • 柔軟な生産体制の構築
  • 予防保全の強化

特に生産体制の構築には、現場の作業粒度に即した人材配置、つまり適材適所にのっとった視点が大切です。すなわち、従業員全体のスキルの可視化と一元管理が求められます。従業員のスキル習得状況が適切に把握できるスキルマップを整備し、人員配置や生産計画を立てることがより重要になるでしょう。

例えば製造現場に特化したクラウド型スキルマップ「tebiki現場教育」では、形骸化しないスキルマップの作成と運用を支援しています。

【原因特定】工場の稼働率が低下する3つの損失

工場の稼働率が低下する3つの損失として時間損失、速度損失、品質損失を解説し、その他の損失についても解説します。

時間損失

時間損失とは「本来稼働すべき時間の中で、生産が停止している時間のこと」であり、稼働率低下の大きな要因となります。時間損失の発生原因は以下の2点が主に挙げられます。

  • チョコ停(予期せぬ停止)
  • 段取替え(計画された停止)

チョコ停

チョコ停とは、設備が短時間停止し、すぐに復旧する現象のことです。数秒から数分程度の停止が頻発することで、生産効率が低下します。これは予期せぬ停止であり、主な原因はセンサーの誤検知、部品の供給不良、軽微な詰まりなどです。

チョコ停は、一見すると小さなトラブルに見えますが、積み重なると大きな時間損失となります。また、作業者が頻繁に介入する必要があるため、作業効率の低下にもつながります。チョコ停を削減するためには、設備の定期的な点検、センサーの精度向上、作業環境の改善などが有効です。

また、発生原因を記録・分析し、再発防止策を講じることが重要です。5S活動の徹底や、現場の改善活動などを通じて、チョコ停の発生を未然に防ぐことが求められます。

チョコ停の発生原因や改善策の詳細に関しては、以下の記事で理解を深められます。

段取替えのための停止

段取替えとは、生産品目を切り替える際に行う一連の作業を指し、金型の交換、治具の調整、材料の補充などが含まれます。段取替えに伴う停止時間は、特に多品種少量生産を行う現場において、大きな時間損失となります。

段取替え時間の短縮は、生産性向上につながります。そこでSMED(Single Minute Exchange of Die)などの手法が有効です。SMEDでは、段取り作業を内段取り(設備停止中に行う作業)と外段取り(設備稼働中に行える作業)に分け、可能な限り外段取り化を図ります。

▼例:金型交換の場合
内段取り:現在の製品の金型を取り外す、新しい金型を取り付ける、位置調整を行うなど
外段取り: 次の製品の金型を事前に準備しておく、必要な工具を揃えておく、作業手順を確認しておくなど

事前にできる準備(外段取り)を増やせば、それだけ機械停止時間(内段取り)を削減できます。それだけでなく、作業手順の標準化により、段取り作業の効率化を図ることも重要です。

速度損失

速度損失とは「設備の稼働速度が、標準速度(仕様書や過去の実績などから算出された速度)より遅くなることで生じる損失」を指します。

ボトルネックの存在

ボトルネックの存在は、特定の工程が全体の生産スピードを制限し、速度損失の大きな要因となります。

例えば、前工程の処理能力が低い、あるいは後工程の処理能力が過剰である場合、ボトルネック工程で待ち時間が発生し、全体の生産効率が低下します。

設備トラブルの発生

設備トラブルの発生も速度損失につながります。軽微な設備トラブルによるチョコ停の頻発や、設備の老朽化による性能低下は、稼働速度の低下を招きます。速度損失を削減するには、ボトルネック工程の特定と改善、設備の予防保全、適切な人員配置などが重要です。

品質損失

品質損失とは「不良品の発生によって生じる損失」です。不良は、原材料の品質問題、設備の状態不良、作業者のスキル不足など様々な要因で生じ、品質のばらつきが大きいほど不良発生リスクは高まります。

特に「手順不遵守」による作業品質のばらつきは大きな課題になりがちであり、早急な対策が必要です。以下のPDF資料「手順不遵守に起因する品質不良対策の考え方と対策」では、手順不遵守を改善するための対策についてまとめられているので、あわせてご覧ください。


手順不遵守を解決する”標準化”の方法について知る

その他

その他として計画非稼働は、稼働率が低下する代表例です。計画非稼働とは、生産計画に基づかない設備の停止や、休憩時間、会議、教育訓練など、生産活動に直接関与しない時間のことです。時間は、生産活動には必要なものですが、過度に長くなると稼働率を低下させる要因となります。計画非稼働時間を適切に管理し、最小限に抑えることが重要です。

例えば、会議時間の短縮、効率的な教育プログラムの導入、休憩時間の最適化などが有効です。その他、災害や事故など、予期せぬ事態による稼働停止も、稼働率を低下させる要因となります。

稼働率を上げるには?改善方法

稼働率向上には、損失の特定と原因分析、そして適切な対策が不可欠です。ここでは、具体的な改善方法として以下の5点を解説します。

損失特定の原因を特定:現場帳票のデジタル化

稼働率を正確に把握し、改善につなげるためには損失の原因を特定することが重要です。そのためには、稼働率のデータ化と可視化が不可欠です。従来の手書き帳票では、データの集計・分析に時間と手間がかかり、リアルタイムな状況把握も困難です。そこで、現場帳票のデジタル化が有効となります。

デジタル化により、データの自動集計やグラフ化が可能になり、稼働率の推移やボトルネックを容易に特定できます。さらに、「半自動で記録される仕組み作り」 が重要です。例えば、設備にセンサーを取り付けて稼働状況の自動記録やタブレット端末で作業実績を簡単に入力できるシステムの導入で、データの正確性と収集効率が向上します。

帳票のペーパーレス化という副次的な恩恵もあり、現場帳票のデジタル化は多くの製造現場で浸透しつつあります。現場帳票のデジタル化を少しでも検討される方は、以下のPDF資料「はじめての現場帳票デジタル化ガイド」をご覧いただくと、デジタル化の推進方法ややるべきことが把握できます。


CTAはじめての現場帳票デジタル化

品質不良の改善:現場教育の徹底整備

品質不良は、稼働率低下の大きな要因です。不良品は、材料費の無駄、廃棄費用の発生、手直しによる追加工数の発生、生産効率の低下、納期遅延、顧客満足度の低下など、様々な損失をもたらします。

品質不良を改善するためには、「品質損失」章で前述したように、様々な改善策が考えられます。しかし、それらの取り組みを真に効果的なものにするためには、現場教育の徹底整備が不可欠です。

特に、技術継承、多能工化、作業標準化は、品質不良を削減し、稼働率を向上させるために非常に重要です。しかし、これらの取り組みには課題が残ります。従来のOJTによる技術継承には、時間とコストがかかり、教育の質が指導者によってばらつくという問題があります。

多能工化は従業員一人ひとりが習得すべき技術や知識が多くなり、教育の負担が大きく教育難易度が高いです。極めつけが作業標準化で、紙の作業手順書は文章や写真だけでは細かい作業ニュアンスが伝わりにくく、内容が更新されず形骸化してしまう、といった問題があります。

これらの課題を解決し、現場教育を効率化・高度化する上で非常に有効なのが、動画マニュアルの活用です。たとえば、製造業に特化した動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」は、現場教育の課題を解決し、品質向上、ひいては稼働率向上に大きく貢献します。

例えば以下の動画は、製造業の「児玉化学工業株式会社」が作成した「バリの取り方」を動画マニュアル化したものです。文字による言語化が非常に難しい作業プロセスですが、動画で見ればある程度の作業要領が把握できるとともに、要所要所に字幕が入り、動画の内容をより理解しやすくなっています。

▼ドリルで穴のバリをとる動画マニュアル(音量にご注意ください)▼

※現場従業員がtebikiで作成

動画マニュアルを取り入れた製造業は徐々に増えつつあります。動画マニュアルを活用している製造業事例をもっと知りたい方は、以下のPDF資料「製造業における動画マニュアル活用事例集」もあわせてご覧ください。


tebiki WP 用 (11) (1)

最適な生産ラインの構築:スキルマップ運用の徹底

生産ラインの最適化には、適切な人員配置が重要です。各工程に最適なスキルを持つ作業者を配置することで、作業効率が向上し、生産量増加やコスト削減につながるからです。加えて、従業員が自身のスキルを活かせる環境で働くことで、モチベーションの向上=離職率の低下にも寄与するでしょう。

しかし、各従業員のスキルや経験を正確に把握し、適材適所に配置することは容易ではありません。そこで、スキルマップの運用徹底が求められます。スキルマップとは、従業員一人ひとりの保有スキルや経験を一覧化したものです。

スキルマップを活用することで、各工程に必要なスキルを持つ作業者を特定し、最適な人員配置を実現できます。例えば、特定の作業に高いスキルを持つ従業員をその作業に集中させることで、生産効率の向上が期待できます。また、スキルマップは、従業員のスキルギャップを明確にし、教育計画の立案にも役立ちます。

とはいえ、スキルマップの運用が続かず形骸化している製造現場は少なくありません。紙による管理が煩雑で、気が付けば最新状態に更新されていないというケースが多いです。そこで推奨したいのが、「クラウド型スキルマップ」の導入です。

例えば、製造現場に特化したクラウド型スキルマップ「tebiki現場教育」では、下図のように「従業員ごとのスキル習得状況」を可視化します。

製造業におけるスキルマップ一覧例 PC画面

「動画マニュアルが紐づくクラウド型スキルマップ – tebiki現場教育」より抜粋】

tebiki現場教育の詳細機能や活用事例について詳しく知りたい方は、以下のPDF資料もあわせてご覧いただくと、tebikiを現場でどのように活用できるのか・どのように稼働率向上に貢献するのかが具体的にイメージできます。

生産ライン全体の生産性工場:段取り替えの効率化

段取り替えは、生産品目を切り替えるために必要な作業であり、時間の創出に大きく寄与します。特に多品種少量生産を行う現場では、段取り替えの頻度が高く、その効率化が生産性向上につながります。段取り替え時間の短縮には、SMED(Single Minute Exchange of Die)などの手法が有効です。

生産リードタイムのさらなる改善:チョコ停の解消

チョコ停とは、設備が数秒程度停止し、すぐに復旧する現象です。数秒の停止でも、積もり積もれば大きな時間ロスになります。また、復旧処置の際に、挟まれ・切傷・火傷などの労災に繋がる可能性もあります。さらに、設備の無人・少人運転の妨げになり、効率化の阻害要因となります。

チョコ停を避けるために、設備の作動を遅く設定し、生産能力を下げてしまうケースも少なくありません。加えて、チョコ停への対応が属人化しやすいため、発生原因の特定や再発防止が困難になりがちです。そのため、チョコ停の解消には、体系的な教育と標準化が重要です。

作業標準化の取り組み例として、工作機械の製造販売を手掛ける新日本工機株式会社は、現場教育に「動画マニュアル」を導入することで作業標準化を実現しています。

▼インタビュー動画:新日本工機株式会社▼

もともと紙マニュアルによる指導で運用してきていましたが、読み手によって文字情報の解釈に差が生じ、作業者間で認識が異なっていたことが課題でした。結果的に品質のばらつきが生まれ、作業の後戻りが頻発。

そこで動画マニュアルを主軸に置いた教育方針や情報伝達を整備したところ、複雑な作業手順もスムーズに教育できるうえに、海外拠点への情報共有も難なくできるようになり、品質向上やコミュニケーション工数削減を実現しました。

動画マニュアル導入効果を実感した同社は、1年間で1,500本もの動画マニュアルを作成しており、効果的かつ効率的なマニュアル整備を進めています。

同社の事例について詳細を知りたい方は、以下のリンクからご覧ください。

稼働率を改善した工場や製造業・物流拠点の事例

稼働率を改善した工場や製造業の事例として以下の3社を解説します。

  • 株式会社アルバック
  • 株式会社 日本電気化学工業所
  • アスクル株式会社

株式会社アルバック

株式会社アルバックは、世界最高水準の真空技術を誇るグローバル企業であり、半導体製造などに不可欠な材料を製造しています。同社は、九州と東北の2拠点間におけるボンディング工程の生産性に大きな差があるという課題を抱えていました。その差は、同じ製品を作るのに74分もの時間差として現れ、原因はテキストや画像だけでは伝えきれない暗黙知やノウハウの共有不足にありました。

そこで導入されたのが動画マニュアルによる教育体制(tebiki現場分析です。映像による作業分析により、作業全体の流れと細かな作業手順の両方を詳細に捉え、標準化を図りました。さらに、両拠点の作業者が一堂に会する合同上映会を開催し、動画を視聴しながら意見交換を実施。「なぜそのように作業するのか」という理由や背景まで議論することで、暗黙知の共有と相互理解を深めました。

その結果、東北工場の製造時間を78分短縮、1日あたりの生産可能枚数を167%に向上させるという目標を大幅に超える成果を達成。動画による暗黙知の可視化は、技術伝承の促進、継続的な改善文化の醸成、拠点間のコミュニケーション活性化を実現しました。アルバックの事例は、動画マニュアルが製造現場の稼働率改善、特に属人化しがちな技術・ノウハウの共有、拠点間の生産性格差の是正に極めて効果的であることを示す好例と言えるでしょう。

同社の稼働率改善に関する詳しいエピソードは、以下のインタビュー記事からご覧いただけます。

株式会社日本電気化学工業所

▼稼働率改善事例:NACLインタビュー動画▼

株式会社日本電気化学工業所(NACL)は、アルミニウム表面処理の老舗企業であり、紙ベースの帳票管理に起因する非効率性とデータ活用不足が課題でした。異常値検知の遅れ、データにもとづいた改善活動の不足、非効率な承認プロセス、過去データの検索性の低さが、品質管理と稼働率向上の足かせとなっていました。

そこで同社は、現場帳票のデジタル化(tebiki現場分析)を導入。その結果、設備や工程データのリアルタイム監視が可能となり、異常発生時には即座にアラートが通知され、迅速な対応と品質問題の未然防止を実現しています。例えば、製造工程の温度データ監視で、普段とは異なる推移を検知。配管の穴を早期発見し、大規模な故障やライン停止を未然に回避しました。

また、データの自動蓄積・集計・グラフ化により、データ分析にもとづく継続的な改善活動が促進されました。さらに、管理者はPC上で全記録を確認・承認できるため、承認プロセスが大幅に効率化。改善により、品質管理の精度と効率が飛躍的に向上し、データの蓄積・分析に基づく長期的な品質改善計画の立案も可能となりました。

同社の稼働率改善に関する詳しいエピソードは、以下のインタビュー記事からご覧いただけます。

アスクル株式会社

アスクル株式会社は、「ASKUL」「LOHACO」を運営する大手EC企業であり、全国10カ所の物流拠点で「明日来る」サービスを実現しています。同社は、高度に自動化された物流センターのマテハン設備メンテナンスにおいて、教育の属人化と非効率性という課題を抱えていました。

OJTや紙マニュアルによる教育では、教育担当者のスキル依存や内容のバラつき、習熟度の差が生じ、特に経験の浅い業務ではベテランへの依存が発生していました。そこで動画マニュアル作成ツール(tebiki現場教育)を導入。誰でも簡単に動画マニュアルを作成・編集できる機能と、タグ付けやコース設定による体系的な管理、高い検索性が決め手となりました。「tebiki」導入後は、現場で200本以上の動画マニュアルが作成され、メンテナンス作業の「辞書」として活用。

新人教育では、動画で作業イメージを掴んでからOJTを行うことで、教育期間を半年から3ヶ月へ半減させることに成功しました。また、テスト機能で習熟度確認も実施。「tebiki」は、属人化解消と技術伝承を推進し、教育の効率化と作業レベルの均一化を実現することで、物流現場の安定稼働、ひいては稼働率向上を実現しています。

同社の稼働率改善に関する詳しいエピソードは、以下のインタビュー記事からご覧いただけます。

まとめ:稼働率の改善は「現場帳票のデジタル化」と「現場教育の徹底」が鍵を握る

製造業において、稼働率の最適化は永遠の課題です。稼働率は単なる数値ではなく、企業の収益性につながる重要な指標であり、その改善は生産性向上、品質向上、コスト削減へとつながります。

この記事では、稼働率の定義から計算方法、類似用語との違い、トヨタ生産方式との関連性、そして稼働率低下の要因となる「3つの損失」とその改善方法を詳細に解説しました。さらに、動画マニュアルツール「tebiki」等を活用して稼働率改善に成功したアルバック、日本電気化学工業所、アスクルの3社の事例を紹介しました。事例から、現場データのデジタル化、動画による暗黙知の可視化、体系的な教育、そして継続的な改善活動が稼働率向上の鍵であることが見えてきます。

特に、製造現場のあらゆるデータ・情報をデジタル化し、記録・蓄積・分析を容易にする現場帳票のデジタル化は極めて重要です。稼働率向上は一朝一夕に実現できるものではありません。しかし、この記事で紹介した知識と事例を参考に、データドリブンな改善活動を地道に継続することで、必ずや生産性向上、そして企業競争力強化を実現できるでしょう。

 
\ 製造業のペーパーレス化をかんたんに実現する2つのサービス /

現場改善ノウハウが届く
「メルマガ登録」受付中!

無料のメルマガ会員登録を行うことで、企業の現場課題を解決する実践的な情報やセミナーをご案内いたします。
様々な現場の人材不足や、生産効率・品質・安全などの課題を解決するための実践的な情報をお届けします。

関連記事

お役立ち資料

現場改善に役立つ!無料で見れる専門家による解説セミナー

新着記事

目次に戻る