2023年4月13日(木)に現場改善ラボは、オンラインイベント『IMPROVE~品質向上~』を開催しました。お申込みが2,000名を超えた本イベントでは、さまざまな専門家/企業講演をお届けしました。
本ページでは、株式会社T Project代表取締役の荒谷 茂伸氏による「ローコード活用!次世代MESで生産性・品質向上を実現」の講演をギュッと凝縮して皆様にお届けします。
目次
次世代型MES「TULIP」とは?
最近いろいろな業種業界で「ローコード」というワードが話題になっております。製造業の中でもローコードが注目を浴びておりまして、今日はこのローコードを使った次世代型MESである「TULIP(チューリップ)」に関してご紹介していきたいと思います。
TULIPとは2014年にアメリカでマサチューセッツ工科大学の卒業生が作った会社です。私どもT Projectという会社はDMG森精機の100%子会社となっており、2019年にTULIP社とDMG森精機が業務資本提携しております。そのため日本国内でのTULIPの販売やサポートを私どもが任されており、2020年にT Projectという会社を設立しました。
TULIPはローコードプラットフォームソリューションで、ローコード(プログラミングをせずに)にてアプリを作るためのプラットフォームです。今日はTULIP社が作った「TULIP」というソリューションに関してご説明をしていきたいと思います。
IT技術の活用でミスを減らし品質向上へ
TULIPの1つ目の特徴は、PLC・計測機器やERPシステム・上位の生産管理システムといった様々な機器やシステムと繋がることが可能となっている点です。
2つ目の特徴は現場でアプリを開発するコンセプトになっている点です。SI業者等に開発を任せるのではなく、ローコードを使って現場の担当者自身がアプリを作っていきましょう、という考え方になっております。
先ほど申し上げたTULIPの1つ目の特徴である様々な機器やシステムと繋がることが可能となっている点ですが、これまでは計測機械等と接続する際はメーカー毎に接続することに苦労しておりましたが、TULIP社が提供しているEdge IO(エッジデバイス 端末装置)ではシステムを簡単に繋ぐことができるようになっております。
TULIPはローコードのプラットフォームですので、すでにシステムがあるところは別に今自分たちが課題に思っているけどなかなかデジタル化ができていないところをどうシステム化していくか、デジタル化を進めるうえで様々な機器と繋がるというのは非常に重要になります。
例えば、ノギス計測を通すチェックがあった場合、計測時にこの値からこの値の範囲でなければ次のステップには進めないといった制御をすることができます。これまでのチェックは人が手で書いていて、書き間違ったり入力を間違えたりするということがありましたが、客観的なデータを取ることでポカミスを防ぐことが可能です。
IT技術を利用して、いかにミスを減らすか、品質を高めていくかということです。
またTULIPは属人的な作業をなるべく減らせるように、ひとつひとつの画面ごとに時間を計測しています。この工程にはどのくらいの時間がかかったのか記録し、横軸を工程、縦軸を時間のグラフで個人ごとと標準作業時間で比較することができます。
例えば、標準作業時間よりも全員が短い時間で作業できている場合は、標準作業時間をもっと下げていいということがわかります。
工程ごとに時間を計測しているため、ある工程で1人だけ標準作業時間を超えたこともわかります。つまりこの人はここの工程で何かミスを起こしているかもしれない、ということまで把握することができるのです。
このように属人的な作業をどんどん減らしていき、結果的に生産効率を上げることにつながります。
TULIPでIT人材育成と業務の標準化を実現
製造業の中で課題というのはたくさんあるかと思いますが大きく3つだと考えています。1つ目が先ほどの佐々木様のお話にあった通り会社としてやっていかなきゃいけない、経営側の課題です。2つ目がデジタル化できていない点で、3つ目が人材に関する課題です。社内に専任の方がいなかったり、育成することができない、という話を聞きます。
TULIPでできることは、デジタル化ですが、ローコードを活用し製造現場でシステム化を行うことにより、社内にIT人材を育成していきましょうということです。
ただし、経営側がシステムへの投資やシステムを維持していきましょうということがないと、いくら良いプラットフォームがあっても実行、実現できないものになります。これからITの技術というのはさらに進化していきます。
その中で自分たちの会社がITの技術を利用せずにどうやって今後工場を運営していくのか、維持していくのかというところがポイントになってきます。
外注に頼もうとしてもそういった外注先のプログラムを開発する人もどんどん少なくなってきております。今のうちに自社のDXを実現するためにITの人材を育成していきましょう、というのがTULIPの考え方になります。
続いてデジタル化技術の進化についてです。これまではサーバーを自社で買って構築して運用してきたことを、今ではクラウドサービスに渡すことができます。つまり、もうサーバーを買って初期投資を行うのではなくて、IT資産を保有せずに利用していくという時代です。
システム開発というのは思わぬ費用が発生することがあります。今の業務プロセスに合わなくなったため追加開発だとかバージョンアップしなきゃいけないということが出てくるかと思います。
TULIPの場合は、常にTULIP側でバージョンアップをしておりますので最新の機能が追加されております。1年間に25回程度のバージョンアップを行っております。AIやビッグデータ分析という新しい機能も利用することが可能ですし、ネットワークのスピードやCPUとか数年前のものを使うのではなくて、今の最先端のものを使っていくということが所有ではなくて利用だからこそできることです。
次にSDCAという言葉はあまり聞き慣れないかもしれませんが、PDCAとSDCAが品質管理において大事だと考えております。PDCAは改善活動です。SDCAのSはスタンダードで標準化を行うことです。品質を維持し管理していくこと、PDCAとSDCAを繰り返すことが重要です。
SDCAとPDCAを回すこと、皆さんPDCAはよくやるんですけども、標準化はどうやって運用していくんだってところが抜けております。TULIPで作ったアプリで標準化を実現していくことが重要だと考えております。
様々な現場課題を解消した事例
続いて事例のご紹介です。最初の事例はデジタル計測機器の値を自動的に収集する事例です。
計測結果が合格の値でなければ次のステップに進めない、先ほど申し上げましたけれどもそういった制御をすることにより、手書きによる入力ミスや読み間違いといったミスを防いでいきます。最近はこういったデジタル計測機器は有線だけではなくて、Bluetooth等を使った無線も使えるため非常に簡単に現場で計測することが可能になっております。
次は日常点検の業務をアプリ化した事例です。
現場の方が毎日使う紙の日常点検簿をデジタル化することで、点検漏れがなくなりました。もともとはこれが導入目的だったのですが、監督者・管理者の工数削減にもつながりました。
これまでは現場の人間が点検した後に、本当にチェックしたかどうかを管理者が現場に行ってひとつの点検に30分ぐらいかかるものを20か所以上やっておりましたが、導入後は自席へチェック結果データが上がってきますので、現場に行って点検をすることが不要になり、結果として日常点検に関する管理者の工数を80%削減しました。
次の事例は3次元測定器での活用です。
製造業で3次元測定機械を使っている会社は多いと思いますが、ある程度前に購入したものはネットワークにつながらない環境でスタンドアローンのような状態、つまりデータを自動で収集できない場合が多いです。
測定したデータをスタンドアローンの3次元測定機械側のPCでQRコード化し、iPadやスマートフォンで表示されたQRコードを読み取りTULIPにデータを保管することができます。これまではものすごい数の計測結果を手書きで写したり、エクセルへ入力して記録を保存したりしていたものが、測定したデータをCSVに落としQRコード化してTULIPに取り込むことで測定データを取り込む作業が1,000秒から80秒まで短縮できました。
作業時間の短縮ももちろんですが、記録ミスがなくなった、という点も大事です。
次は基幹の生産管理システムとシステム連携した事例です。
これまでは毎朝、事務員の方が今日はこれを作ってねということで、現場に紙で伝えていて、現場では指示通り作り、作り終わると実際にどれだけ作れたかを日報ベースで報告していて、翌日入力する業務を行っていました。これがTULIPではリアルタイムで行うことができます。作業員さんがプリントアウトすることや日報を手入力するということがなくなりました。
また作業が1つ終わったらその作業実績が1つ、生産管理システムに1個できましたということが登録されますので、作業実績がリアルタイム、つまり予実管理をリアルタイムで行われるようになりました。
リアルタイムに登録されることでどこのラインが遅れている、どこのラインは進んでいるということをリアルタイムで把握することができ、生産スケジュールを練り直すことや再構成することが可能になった事例です。
DXはデジタル化ではなく、業務プロセスをどう変えるか
工場でデジタル化が遅れている、もしくはデジタル化できてないところがあるというのは、皆さんご存知だと思います。ひとつの手段として次世代型ローコードを使ってデジタル化できていないところ、二重入力や手で管理しているところ、紙で管理しているところにTULIPを使ってみてはいかがでしょうか?
今はまだいいよ、という会社も結構あります。
ではその仕組みはあと何年使い続けるのかということをよく伝えておりますが、いつデジタル化するかのプランがない会社が多いです。TULIPはローコードプラットフォームですのでプログラミングを知らない方でもいろんなアプリやシステムを作ることができますので、今から少しずつでも実装していくのはいかがでしょうか?
DXというのはデジタル化ではなくて、そもそもその会社の業務プロセスをどのように変えていくかということが大事だと考えております。皆さんの会社でDXを進める際にTULIPを利用してみてはいかがでしょうか?というのが、今日の私どもの提案になります。
TULIPはDXを実現するためのプラットフォームです。
今日ここに参加している皆さんは品質に関して非常に興味があり、なんとかしなければいけないと考えていらっしゃるかと思います。これを最先端の技術を活用し変えていきたいという方がいれば、TULIPというものをぜひ体験していただければと思います。
T Projectの荒谷が説明いたしました。どうもご清聴のほどありがとうございました。