物流現場のかんたん動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」を展開する、現場改善ラボ編集部です。
ピッキング作業は、倉庫業務のなかでも特にヒューマンエラーが起きやすい工程の1つです。しかし、ピッキング作業における「時間がかかる」「ミスが多い」といった課題は、基本的なコツを掴むことで大きく改善できます。
本記事では、ピッキング作業のスピードと正確性を高めるコツを8つ紹介します。実際に効率的なピッキングを行っている物流現場の事例も取り上げていますので、日々の業務改善や新人教育の参考にしてみてください。
目次
ピッキング作業の概要・種類について
ピッキング作業とは、出荷指示(ピッキングリスト)に基づき、倉庫内の棚から必要な商品を取り出す作業のことです。単純な作業のように思われがちですが、些細なミスが納期の遅延や誤出荷に直結するため、常に正確な作業を行うことが求められます。
ピッキング作業には複数の種類があり、出荷量や作業工程に応じて最適な方法を選択します。ここでは、代表的な手法である「シングルピッキング」「トータルピッキング」「マルチピッキング」について、それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。
シングルピッキング
シングルピッキング(摘み取り方式)とは、出荷指示ごとにピッキング作業を行う方法です。
1件ずつ処理することでミスの発生を抑制しやすい反面、注文数が多い場合や複数の注文に同じ商品が含まれる場合には作業効率が悪くなります。倉庫全体として出荷件数が少なく、ピッキング作業の「正確性」を最優先したい現場に向いています。
トータルピッキング
トータルピッキング(種まき方式)とは、複数の出荷指示に含まれる商品をまとめて取り出し、後から出荷先ごとに仕分けを行う方法です。同じ商品を一括でピッキングすることで、倉庫内を移動する回数や時間が減り、特に出荷量の多い倉庫では作業効率が大幅に向上するメリットがあります。
一方で、ピッキング後に仕分け作業が発生するため、シングルピッキングよりも工程が増えることになります。急なオーダー変更に対応しにくく、柔軟性に欠ける点もデメリットといえるでしょう。
マルチピッキング
マルチピッキングとは、複数の出荷指示分をピッキングしながら、それに並行して仕分け作業も進める方法です。シングルとトータルの中間的な手法であり、正確性と効率性の両方を高めることができます。
一方で、作業員はピッキングと仕分けを同時に行う必要があり、経験値や習熟度によって作業品質に差が出やすい方法ともいえます。そのため、一定の作業経験を持つスタッフが多く、かつ小口の出荷件数が多い現場に適しています。
ピッキング作業をミスなく正確に行うコツ
ピッキング作業は単純に見えて、実はミスが発生しやすい工程です。正確な作業を行うためには、以下に挙げる基本的なコツを押さえることが重要です。
なお、ピッキング作業の改善につながる具体的な事例は以下の関連記事でも紹介しています。改善の必要性や成功に向けた具体的な方法にも触れていますので、あわせてご覧ください。
関連記事:ピッキング改善事例5選:生産性向上や効率化を実現するポイントとは?
定められている作業手順・ルールに沿って作業をする
ピッキング作業を正確に行うコツは、現場で定められている手順やルールに従って作業することです。作業に慣れてくると自己流に走ってしまいがちですが、標準化された手順を守ることがミスを防ぎ、作業の精度を高める最も確実な方法といえます。
ルールを守ることは転倒災害や衝突などの危険を回避し、安全で円滑な作業環境を保つことにつながります。
物流企業「株式会社ロジカルエクスプレス」では、拠点ごとにルールや作業手順が統一されていないことで、ピッキングを初めとした業務品質・手順にばらつきが発生していました。ばらつきを防止するために取り組んだのは、紙マニュアルやOJTと比べて、視覚的に学べる動画マニュアルの活用です。
動画マニュアルの活用によって、従業員ごとの作業理解度をある程度統一することに成功。作業標準化が実現し、ピッキング作業のミスを削減につなげています。同社の事例は以下のインタビュー記事をご覧ください。
インタビュー記事:動画で全拠点の安全品質意識の向上と業務ノウハウの可視化を達成
品番や数量を指差し確認する
ピッキング作業の正確性を高めるには、「商品ラベルの品番」と「出荷指示書に記載されている品番」を1件ずつ指で指しながら確認するのが効果的です。目視だけで流してしまうと、似たような品番やパッケージを見間違えることがあり、ピッキングミスの原因となります。
数量についても、「いつも1箱だから今回も1箱だろう」との思い込みから、出荷指示の「2箱」を作業員が見落とし、結果的に誤出荷が発生してしまうケースがあります。こうした確認不足や思い込みによるミスを防ぐためにも、品番とあわせて数量も指差し確認する習慣を徹底することが大切です。
関連記事:【事例あり】指差呼称とは?効果はある?正しいやり方や定着させる教育方法
ロケーション管理を徹底する
ロケーション管理とは、商品が倉庫内のどこにあるかを明確に把握・記録しておく管理方法です。これが徹底されていないと、ピッキング時に無駄な移動や時間のロスが発生し、作業ミスを招きやすくなります。商品の配置や在庫情報を正確に登録・更新し、定期的に棚卸を行って在庫と実際の配置にズレがないように保つことが重要です。
特に新人作業員にとっては、倉庫内のロケーションをある程度覚えておくことが、スムーズな作業の第一歩となります。よく使うエリアや棚の位置を把握するだけでも、ピッキングのスピードと正確性が向上し、ミスの防止にもつながります。
ピッキング後に再確認を行う習慣をつける
ピッキングした商品が正しいかどうか、最後にもう一度確認する習慣をつけることもミスの防止に効果的です。通常はピッキングの後に出荷検品を行いますが、その段階でミスが発覚すると手戻りが発生し、全体の作業効率が下がってしまいます。
最後のひと手間として、出荷指示書とピック済みの商品を照らし合わせて確認することで、ピッキングミスとそれに伴う手戻り、さらには誤出荷を未然に防ぐことができます。
ピッキング作業のスピードを向上させるコツ
ピッキング作業では「正確さ」と同時に「スピード」も求められ、限られた時間で効率よく作業を進める必要があります。ピッキング作業のスピードを向上させるには、以下に挙げるコツを押さえ、事前の準備や動線の工夫を行うことが大切です。
倉庫内の棚の位置を把握する
倉庫内の棚の位置を把握することは、ピッキング作業のスピードを高める基本的なコツの1つです。棚の並び方や商品の配置、エリアごとの特徴を理解していない場合、目的の商品を見つけるまでに余計な時間がかかり、無駄な移動や作業の遅れが生じてしまいます。
倉庫全体のレイアウトを頭の中でイメージできれば、効率的なピッキングルートを事前に計画しやすくなり、倉庫内をスムーズに動き回れるようになります。
倉庫を整理する上での基本的な手順や作業効率・安全性を高める改善方法などを知りたい方は、以下の関連記事もご覧ください。
関連記事:倉庫整理の悩みを解決!5Sに基づく基本手順と劇的に改善するコツ
倉庫内の動線を把握し、最短ルートで移動する
ピッキング作業を行うときは、無駄な往復や遠回り、同じエリアを何度も行き来することがないよう、あらかじめルートを考えたうえで動くのが理想です。そのためには、倉庫内の動線を把握し、最短ルートで効率よく商品をピックアップする意識が欠かせません。
動線を意識すると、複数の作業員が同時に作業を行う際にも移動ルートが重ならず、接触や混雑のリスクも減少します。特に通路の狭い倉庫では動線の工夫が安全性に直結し、作業中の事故や荷物の転倒といったトラブルの防止につながります。また、スムーズな動線を確保することで作業効率も向上し、作業員の負担軽減にも寄与します。
関連記事:倉庫作業の効率化!15の改善アイデアと成功事例を紹介
出荷頻度の高い商品を手前に配置する
ピッキング作業のスピードを高めるには、頻繁に出荷される商品を取り出しやすい位置に配置することが重要です。出荷頻度の高い商品を出荷口付近に集約すれば、倉庫内を移動する時間と距離を最小限に抑えられ、作業効率が大きく向上します。
レイアウトを見直す際は、倉庫管理システム(WMS)の出荷実績を分析するなど、データを根拠とした戦略的な判断が求められます。定期的に商品の出荷傾向を見直し、レイアウトを更新していくことが、無駄のない効率的なピッキング作業につながります。
作業前にピッキングリストを確認しておく
ピッキング作業を効率よく進めるコツは、作業に取り掛かる前にピッキングリストの内容をチェックしておくことです。リストを確認せずに場当たり的に動くと、取り忘れや取り間違い、無駄な移動が発生しやすくなり、結果として作業時間がかさんでしまいます。
事前にピックアップする商品やロケーションを頭に入れておけば、動き方のイメージがしやすくなり、スムーズに作業を進めることができます。
なぜ上達しない?ピッキング作業のコツが掴めない原因
本記事で紹介したように、ピッキング作業には正確にこなすための“コツ”があります。ピッキング作業がなかなか上達しない場合は、日々の業務の中でコツを習慣化できていないのが大きな原因です。ここでは、その原因について紹介していきます。
作業手順を理解せずに自己流の方法で行っている
ピッキング作業が上達しない原因の1つに、作業手順を理解せずに自分のやり方で行っているケースが挙げられます。最初はマニュアル通りに取り組んでいても、作業に慣れてくると規定の手順を省略し、自己流の方法に変えてしまうことがあります。
こうなると、作業ミスや誤出荷が起きやすくなるのはもちろん、周囲との連携にも支障をきたし、全体の効率が下がる恐れもあります。自己流に頼らず、定められたルールを守って取り組むことが、上達への近道です。なお、ピッキングのミスや数量間違いなどが多い人の特徴、ミスを防止するための具体先については以下の記事をご覧ください
関連記事:ピッキングミスや数量間違いが多い人の特徴と9つの対策!改善事例もあわせて紹介
参照できるマニュアルがない
現場によってはピッキング作業の手順書やマニュアルが整備されておらず、ベテラン作業員がその都度口頭で指示を出しているケースも少なくありません。
標準作業を示したマニュアルがない場合、作業方法や品質にばらつきが出やすく、ミスの増加や作業効率の低下を招くことがあります。安定した品質と効率を保つためには、誰もが同じ手順で作業できる業務マニュアルの整備が不可欠です。
例えば、物流企業「ソニテック株式会社」では、作業風景・手順を動画におさめ、QRコードですぐに動画マニュアルを確認できるような教育体制を構築しています。
QRコードをスキャンすることで作業コースを簡単に確認できる機能も、大変好評です。該当のコースや動画マニュアルを探す手間が省けるため、この機能は非常に便利です。ピッキング作業は各便ごとに作業内容が異なるため、それぞれの便に合わせたコースを設定しています。作業に不慣れな方や初めて作業をする方でも、QRコードをスキャンするだけで、該当の便の作業手順を動画でチェックでき、安心して作業を開始できるようになっています。
同社で動画+QRコードによる教育体制は、物流業界に特化した動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」によって構築しています。動画のリンクをQRコード化し、現場でQRコードを設置することで、手順が分からなくなった時に、スマホでQRコードを読み取ればその場ですぐに正しい作業手順が把握できます。
tebiki現場教育の機能詳細や活用事例がまとめられている資料は、以下の画像をクリックしてダウンロード頂けます。
ピッキング作業の効率化に有効なツール・システム
ピッキングの精度を高めるには、作業の効率化に貢献するツールの導入が有効な手段となります。ここでは、倉庫・物流現場のピッキングに役立つ主なツール・システムを4つ紹介します。
動画マニュアル作成ツール
倉庫・物流現場のように、業務ノウハウが「動作」に集約される現場で高い効果を発揮するのが「動画マニュアル」です。言葉だけでは伝えづらい細かな動作や判断のポイントを視覚的にわかりやすく示すことで、作業の標準化やミスの削減、新人作業員の習熟スピード向上に役立ちます。
ピッキング作業ではないものの、物流企業「三井物産グローバルロジスティクス株式会社」で実際に活用されている包装作業における動画マニュアルです。
▼包装作業を動画マニュアル化したサンプル動画▼
※現場従業員が「tebiki現場教育」で作成
ピッキングのコツや発生しがちなミスなどを動画マニュアルにまとめ、視聴できる環境を整えて置くことで、作業標準化が図れるでしょう。このように物流業界では、様々なシーンで動画マニュアルの活用が進んでいます。動画マニュアルの活用効果やその他の活用事例も知りたい方は、以下の資料もご覧ください。下のリンクをクリックすると資料をダウンロードできます。
>>「物流業界の生産性向上を助ける動画マニュアルのチカラ」を見てみる
倉庫管理システム(WMS)
倉庫管理システム(WMS)は、商品の入荷から保管、ピッキング、出荷までの一連の倉庫業務を効率化するためのシステムです。在庫数やロケーションを正確に管理し、ピッキングルートを最適化することで、作業スピードと正確性が大幅に向上します。
さらに、蓄積されたデータの分析によってボトルネックの特定や改善策の立案がしやすくなり、属人化しがちな倉庫業務を標準化させる役割も担っています。
DPS/DAS
DPS(Digital Picking System)はシングルピッキング(摘み取り方式)、DAS(Digital Assort System)はトータルピッキング(種まき方式)を支援するシステムです。
どちらもデジタル表示器を使い、ピッキングや仕分けの指示をリアルタイムで作業員に伝えるものです。作業指示を電子化することで、紙の指示書よりも誤読や見落としのリスクが軽減され、作業の正確性と効率を高めることができます。
マテハン機器
マテハンとは「マテリアルハンドリング」の略称で、フォークリフトやコンベア、AGV(無人搬送車)など、商品の移動や保管、搬送を効率化するための機器全般を指します。
これらの機器を活用することで、重い商品や大量の荷物を安全かつ迅速に運べるようになり、作業員の身体的負担が大幅に軽減されます。さらに、ピッキングから出荷までの連携がスムーズになるため、現場全体の作業効率と生産性の向上にも大きく寄与します。
効率的にピッキング作業が行えている物流現場の事例
ピッキング作業の効率化は、物流現場の生産性向上に直結します。効率的な作業が行えている現場では具体的にどのような取り組みを行っているのか、ここでは「ソニテック株式会社」の事例を紹介します。
同社は、新築戸建て住宅に使用される建築副資材を提供する事業を展開している企業です。これまでは新入社員に対する3ヶ月間のマンツーマン指導を必須とし、教育にかかる時間とコストが大きな課題となっていました。特にピッキング作業は荷主や便によって異なる作業方法を理解しなければならず、教える側・教えられる側の双方に過度な負担がかかっていたといいます。
そこで同社が導入したのが、作業方法を直感的に理解できる物流業界に特化した動画マニュアル作成ツールの「tebiki現場教育」です。従来のマンツーマン教育から動画を使った教育へシフトしたことで、教育にかかる時間と人手の削減が実現し、さらには教育の質の均一化に成功。現在はマンツーマンでの指導は行わず、動画マニュアルによる教育に切り替えており、以前は3ヶ月かかっていた教育時間が実質ゼロになるまで改善できています。
同社の事例を詳しく知りたい方は、以下のインタビュー記事をご覧ください。
>>ソニテック株式会社のピッキング作業改善事例のインタビュー記事を読んでみる
まとめ
ピッキング作業は、物流工程のなかでも特にミスが起こりやすく、正確性とスピードの両立が求められる重要な作業です。しかし、作業の標準化や指差し確認、倉庫のレイアウトや動線の見直しなど、本記事で紹介したコツを押さえることで、ピッキングの効率と精度は大きく向上します。
特に、動画マニュアルを活用した標準作業の共有は、誰でも同じ品質で作業できる体制づくりに効果的です。標準化された手順やルールを現場全体で統一して守ることが、安定した作業品質と生産性の向上につながります。ピッキング作業に課題を感じている現場では、まずはこうした標準化の仕組みを導入することが、業務改善への第一歩となるでしょう。
物流現場における動画マニュアルの有用性については、以下のリンク先から資料をダウンロードいただけます。物流現場に特化した動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」の詳しい機能や活用事例もまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。