未然防止について、定義は理解できても「具体的な実践方法がわからない」といったお悩みを抱える方は多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、未然防止の原則や対策方法、未然防止型QCストーリーの進め方などを解説します。
目次
未然防止とは
未然防止とは、将来のリスクを予見し、リスクに対する対策を講じることにより、実害のあるトラブルや事故を未然に防ぐことを指します。未然防止は単なるコストと捉えるのではなく、経営者が実践すべき経営理念であり、製造業における現場改善の重要な要素です。
例えば、製造業の現場では日々業務上のトラブルが発生します。
トラブル処理には、多大な時間・労力・コストが費やされるでしょう。しかし、もしもトラブルを未然に防げれば、生産性の向上だけでなく、時間をより創造的な仕事に振り向けることが可能となります。結果として、従業員の仕事に対するモチベーションが向上し、会社の業績の向上が期待できます。
現場改善ラボでは、事故の未然防止につながる安全教育の進め方を動画で無料公開しています。労働安全コンサルタントによる解説を見たい方は、本記事と併せてご覧ください。
未然防止の原則
未然防止の原則とは、「科学的な根拠を前提に、予見されるリスクを生じさせないために対応策を講じるべきである」というものです。
製造現場の場合、「機械の故障を未然に防ぐためのメンテナンス」が未然防止の対応策となります。故障が発生した場合、生産停止や製品の品質低下といった大きな損失が発生します。これらを防ぐために未然防止策が講じられます。
未然防止の具体的な方法は、後述する『未然防止のための3ステップ対策』でご紹介します。
予防原則との違い
「予防原則」と「未然防止原則」は、科学的根拠があるかどうかに違いがあります。
予防原則は、環境に重大かつ不可逆的な影響を及ぼす可能性のある物質や活動に対して、科学的証明が不確実でも、環境への悪影響を防止するために規制措置を可能にする制度や考え方です。科学的な証明が不十分な状況でも、可能な対策を延期せずに行うという考え方を示しています。
一方、未然防止は、科学的な根拠に基づき、問題が発生する前に対策を講じることで、問題そのものを起こさないようにする原則です。科学的な根拠に基づき、問題が発生する可能性がある状況を事前に予見し、その予見に基づいて対策を講じるという考え方を示しています。
「再発防止」や「予防」との違い
未然防止はそもそもミスを起こさないために行うものであるのに対して、再発防止や予防は、同じミスや問題を二度と繰り返さないことを目的としています。
未然防止のための3ステップ対策
未然防止は、次の3つのステップで成り立ちます。
最初からすぐに未然防止を行うことは難しいもの。そのため、これら3つのステップを順番に行うことで、未然防止を実現できます。以下で、1つずつ詳しく解説します。
STEP① 緊急対応
緊急対応は、問題が発生した際にすぐに行う行動です。
火事に例えるならば、火を消すこと・延焼を止めることが緊急対応と言えるでしょう。
緊急対応をするためには、トラブルや事故の事実を正確に把握しましょう。トラブルの事実を把握できないと、動き出しを間違えて、トラブルが拡大する可能性もあります。
STEP② 再発防止
再発防止は、過去に起こった問題が再度起こらないようにするためのステップです。
火事に例えると、過去と同じ場所や同じ原因の火事を防止することが目的になります。
防止するためには、過去に起こったトラブルの根本原因を追究します。その後、根本原因に基づいて対策を立案・実行・結果の検証を行います。
STEP③ 未然防止
未然防止は、将来起こる可能性があるトラブルを未然に防ぐことを目指すステップです。
火事を例にすると、まだ火災が発生していない他の場所や、異なる原因で火災が発生する可能性を考えることが未然防止だと言えます。他の場所での火災の可能性を特定し、その場所で火災が発生しないように予防策を講じます。定期的な安全チェック / 適切な消火設備の設置 / 従業員への火災予防の教育などが含まれます。
未然防止のためには、チームで将来のリスクに気付いて、対策を立案、実行をし、振り返りを行うことが重要です。
未然防止型QCストーリーの進め方
事故やトラブルを防ぐための手法として、未然防止型QCストーリーを紹介します。
未然防止型QCストーリーとは、ミスや問題を防ぐためのステップをまとめたものです。以下の7つで構成されています。
QCストーリーを用いて品質不良を再発防止したいという方は、元トヨタ自動車九州の主幹が解説している以下の動画をご覧ください。品質不良の真因が特定できない理由やQCストーリーの正しい進め方を解説しています。QCストーリーについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。
テーマの選定
具体的なテーマを設定することで、全体の活動の方向性を明確にし、効果的な改善を進められます。
テーマには、その問題の重要性や解決した時の効果が大きいものを選ぶと良いでしょう。良いテーマを選ぶために、日頃から現場のデータを収集することも重要です。
▼未然防止型QCストーリーのテーマ例
- 製造ラインでの事故率の低減
- 製品の品質向上 など
現状の把握と目標の設定
現状を正確に把握することで、問題の原因を特定し、原因に対する適切な対策を立てられます。現状の把握や目的の設定は、できるだけ具体的な数値を出すことを意識してください。
活動計画の策定
どの問題をいつまでに解決するか、どのような手段を用いるかなどの計画を策定しましょう。
具体的な計画を立てることで、目標達成のためのステップを明確にし、それぞれのステップで何をすべきかを明確にできます。
改善機会の発見
過去に発生した事故の原因を分析し、それが再発しないようにするための改善策を考えます。具体的には、以下のような方法で改善策を考えましょう。
- 過去の事故やトラブルのデータ収集 / 分析
- リスクの特定と評価
- 真相原因の追究 など
真相原因の追究には、「なぜなぜ分析」という手法がおすすめです。なぜなぜ分析の進め方を知りたい方は、以下の専門家解説動画か別記事『【専門家解説】なぜなぜ分析の進め方とコツ!事例やテンプレート、例題を紹介』をご覧ください。
対策の共有と水平展開
対策が決まったら、社内やチームに共有しましょう。具体的には、以下のような方法で展開するのがおすすめです。
- 全従業員が閲覧できる社内ポータルサイトに掲載する
- 改善策をまとめたニュースレターを配布する
- 朝礼やミーティングで共有する
- 社内勉強会を開催する など
どんなに有効な対策を講じても、一部の人だけが知っているだけでは、組織全体の改善にはつながりません。改善案の立案と共有はセットで行いましょう。
効果の確認
『現状の把握と目標の設定』で決めた目標に対して、どのような効果があったか確認しましょう。
効果の確認は、改善策が目標に対して効果的であるかを検証するために必要です。もしも、期待した効果が得られない場合は、再び改善策を立案して実施しましょう。上手くいった場合も、成功要因を分析して、次の改善活動に活かしてください。
標準化と管理の定義
改善策の定着のために、改善策の標準化 / 管理を行いましょう。例えば、新たに見つけた改善策を作業手順に組み込み、定期的に見直すことで、改善策が継続的に適用されるようにします。
改善策の標準化には、動画マニュアルがおすすめです。詳しくは、後述する『標準化には「動画マニュアル」が有効』でご紹介します。
未然防止には、改善策の標準化が重要
そもそも標準化とは、一定の取り決めに従って統一していく活動のことを指します。未然防止を成功させるには、この標準化が重要。なぜなら、標準化できていないバラバラの改善策を実施しても、想定した効果はでないからです。そのため、全従業員が同じルールの下で、同じ作業ができるようにする必要があります。
業務標準化を徹底すべき理由については、以下の資料でより詳しく解説していますので参考情報としてご活用ください。
標準化の課題
未然防止において、標準化は非常に重要です。しかし、以下のような理由から標準化を進めるのは難しいと考えられます。
- 標準類の内容がわかりにくい
- 標準類の通りに実行するのが困難
- 教育不足によって理解できていない
- 教育者によって指導内容が異なる など
これらの理由を解消するためには、「動画」の活用がおすすめです。
標準化には「動画マニュアル」が有効
動画は視覚的にわかりやすく、学習の心理的ハードルが低いなどのメリットがあります。そのため、標準化には動画マニュアルが最適! ここでは、動画の活用がおすすめである理由を詳しく解説します。
動画を活用するメリットやおすすめのツールをマンガでご紹介する資料もあります。マンガで楽しく知りたいという方は、以下からご覧ください。
読解力や言語の差に左右されない
文章や口頭で説明する場合、受け手の解釈に幅が出てしまい、上手く標準化の基準を伝えられない可能性があります。一方、動画は内容を「目で見て」理解するため、解釈に幅が出ず、正しい内容を伝達できるでしょう。また、動画ならば外国人従業員の方へも、内容を伝えやすいというメリットがあります。
自分のペースで何度でも復習できる
対面での教育と違って、動画を活用すれば自分の都合の良い時間に学習を行えます。また、難しい部分を繰り返し動画を視聴し、理解を深めることもできるでしょう。
教育工数を大幅に削減できる
標準化する内容を伝えるには、何度も周知を促す必要があります。そのため、教育工数が膨大になり、生産性が低下してしまうことも……。しかし、「未然防止の改善策は動画を見る」という方法を取れば、教育工数を大幅に削減できます。その中でもしもわからないことがあれば、熟練者に聞くというフローにすれば、メリハリのある教育体制を実現でき、効率的に標準化を進められるでしょう。
動画マニュアル作成なら「tebiki」がおすすめ
動画での教育を導入したくても、「編集スキルがないから難しいのでは?」とお思いの方もいらっしゃるでしょう。たしかに一般的な動画編集ソフトであればある程度のスキルが必要ですが、動画マニュアル作成ツール『tebiki』であれば、誰でもかんたんに動画の編集が可能です。
▼動画マニュアル作成ツール「tebiki」紹介動画▼
わかりやすい動画マニュアルが簡単に作成可能
tebikiは直感的な操作で動画編集が行えるため、パソコン操作に自信がない方でも、簡単に動画マニュアルを作成できます。tebikiを用いた動画マニュアルの基本手順は、以下の画像の通りです。
さらにtebikiでは、動画編集時に手間となる字幕の作成が、音声認識機能により自動で可能! また、データはクラウド上に保存されているため、端末さえあれば必要な動画マニュアルをいつでもどこでも簡単に見つけられます。
教育内容の定着も促進
動画編集機能だけではなく、テスト機能やレポート機能での、習熟度の管理が可能です。そのため、「マニュアルを作って終わり」ではなく未然防止に向けて効果を出しやすいでしょう。
テスト機能 | テストをオリジナルで作成できる機能です。回答形式は、単一選択式/複数選択式/記述式が選べます。作成時に正解となる回答を入力できるため、自動採点が可能です。 |
レポート機能 | ユーザーごとのマニュアル視聴状況などが可視化できる機能です。アクセスされているマニュアルのランキングもわかるため、従業員がどの項目を理解していないのかもわかります。 |
▼レポート画面▼
ほかにも、tebikiには自動翻訳機能や従業員のスキル管理機能なども備わっています。tebikiについてより詳しく知りたい方は、以下のサービスご紹介資料『3分でわかる tebiki』をご覧ください。
tebikiを使って標準化を実現している企業事例
tebikiの活用により、作業手順などの標準化を実現した企業事例をご紹介します。より多くの業界の事例を知りたい方は、以下の活用事例集も併せてご覧ください。
新日本工機株式会社
▼動画マニュアルtebiki活用事例動画:新日本工機株式会社▼
工作機械などの製造販売を行っている新日本工機株式会社では、作業の標準化ができておらず、基準が曖昧な状態で仕事を進めてしまっていた過去がありました。そこで、標準化プロジェクトを立ち上げて、動画マニュアルtebikiの導入を決定。
文字ベースのマニュアルから動画に置き換えることで、作業手順を視覚的にわかりやすく伝えることに成功し、作業品質の安定を実現しました。さらに、tebikiの自動翻訳機能により、海外向けの手順書作成の工数がゼロに。プロジェクトメンバーへの負担軽減という点でも大きな効果を発揮できました。
新日本工機株式会社のインタビュー記事をもっと読みたい方は、以下からご覧ください。
インタビュー記事:人が育つ環境づくりとして動画マニュアルtebikiを活用。技術の蓄積と作業品質の安定を実現
ソニテック株式会社
▼動画マニュアルtebiki活用事例動画:ソニテック株式会社▼
建築副資材を提供する事業を展開しているソニテック株式会社。業務効率化と品質維持が必須な現場で、従業員への教育時間とコストが課題となっていました。会社の拡大により課題も大きくなってしまい、直感的に理解できる動画マニュアルを検討。その中でも、簡単に作成できる点が決め手となり、「tebiki」を導入しました。
従来のマンツーマン教育を動画へ置き換えることで、新人教育において、教育時間と人手の削減 / 教育の質の均一化など、さまざまな利点がもたらされました。そして、かつて3か月かかっていた教育時間が実質ゼロに。教える側と教えられる側双方のストレス緩和にもつながり、全体の効率化に大きく寄与していると実感していただいています。
現在、新人教育はマンツーマン指導を行わず、全てtebikiを通じて実施しているというソニテック株式会社の詳しい事例は、以下からインタビュー記事をご覧ください。
インタビュー記事:3ヶ月間の直接指導を動画マニュアルで完全に置き換え、業務の効率化を実現
大同工業株式会社
大同工業株式会社は、自動車/産業機械/福祉機器などさまざま領域を展開し、2022年には海外11カ国に拠点を持つグローバル企業です。言語化しにくい高度な技術が多いゆえに、業務手順が“我流化”し、品質にバラつきが発生していることを課題視していました。
この我流化を防ぐために、社内に動画マニュアルtebikiを導入。各メンバーが持つカンやポイントを活かしながらマニュアルを整備したことで、業務の効率化や最適化、最終的には部内での業務標準化を実現し、評価エラーを削減することを実現しました。
大同工業株式会社のインタビュー記事をもっと読みたい方は、以下からご覧ください。
インタビュー記事:製造業の技術部門での動画マニュアル導入事例|製造業の技術部門の業務を動画で標準化。品質評価に関わるヒヤリハットを8割削減して、多能工化を実現
未然防止の事例
未然防止の事例として、
- 自動車産業
- 品質問題
- 介護業界
の3つを解説します。
自動車産業(トヨタ自動車株式会社)
トヨタ自動車株式会社では、一人ひとりの安全意識を変える活動を行い、労働災害の未然防止を行っています。
「現場の作業で危ないものを危ないと思い、安全を考えることができる人材の育成」を目的として、安全道場 / 基本技能道場などと銘打って安全対策を行っているそうです。
参照:安全衛生優良企業における安全衛生取組事例シート(厚生労働省)
品質問題
品質問題が発生すると、製品のリコールや市場からの信頼の喪失といった深刻な結果を招く可能性があるため、品質問題の未然防止は、製造業をはじめとしたあらゆる業界における重要な課題です。
例えば、樹脂の事例を考えてみましょう。高温というストレスがかかると、熱劣化により亀裂が発生し、液漏れが起こり、最悪の場合、火災が発生する可能性があります。問題を未然に防ぐためには、まずストレスの調査が必要です。
また、過去に発生した品質問題を集めて「過去のトラブル集」を作成し、未然防止の対策を考えることも有効です。自動車のリコールや電化製品の市場回収、食中毒、医療ミスなど、人命にかかわる重要品質問題は、ほとんどが未然防止できたものばかりです。そのため、品質の未然防止は重要な位置づけにあると言えるでしょう。
品質改善するためには、ヒューマンエラーを未然に防止することも大切です。現場改善ラボでは、専門家解説による「ヒューマンエラーの防止策」の動画も無料公開中です。こちらもご覧ください。
介護現場
介護現場でも未然防止は重要な概念です。なぜなら、介護は人の生命や健康に直結するサービスであり、事故やトラブルが起きるとその影響は深刻だからです。
例えば、「転倒防止のためにふらつきの原因を調べ、睡眠薬の量を少し減らしたらふらつきがなくなった」という事例があります。ふらつきの原因を探り当て、改善することで、転倒という事故を未然に防いだ成功事例です。
未然防止策は発見が難しいものの、発見できた場合は事故防止効果を発揮します。そのため、未然防止策を最優先で考え、なおかつ、長期的な体制で取り組むようにすると良いでしょう。
まとめ
未然防止とは、問題が発生する前にそれを防ぐための手法です。再発防止とは異なり、未然防止はそもそもミスを起こさないことを目指します。未然防止型QCストーリーを活用すれば、ミスや問題を防ぐための対策の取り方や現場改善が行えるため、未然防止に取り組みたい企業はぜひ実践してください。
未然防止のためには、未然防止策の標準化が重要。標準化の方法としておすすめなのが、動画マニュアルです。動画マニュアルならば、視覚的にわかりやすい情報を伝達できます。動画マニュアル作成ツールtebikiであれば、誰でも簡単に動画マニュアルの作成が可能! さらに、習熟度の把握も可能なので、より一層標準化を進めることができます。
tebikiについてより詳しくチェックしたい方は、以下のサービス説明資料をご覧ください。