現場改善ラボ 記事一覧 お役立ち情報 「タクトタイム」「サイクルタイム」「リードタイム」の意味や違いをわかりやすく解説!

「サイクルタイムって何?」「タクトタイムの計算方法は?」「リードタイムを短縮するには?」といった疑問やお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。製造業での生産性向上や現場改善をするためには、サイクルタイム、タクトタイム、リードタイムの理解が欠かせません。

サイクルタイム、タクトタイム、リードタイムは、いずれも製品の製造や開発の工程にかかる時間のことを指しています。

この記事では、サイクルタイム、タクトタイム、リードタイムの定義や計算方法、トヨタ生産方式との関連性、3つの概念の関係性のほか、それぞれの時間を短縮する具体的な改善策を解説します。

製造業の生産性向上と現場改善を目指している方は、この記事の内容をぜひ参考にしてみてください。

サイクルタイムとは

サイクルタイムとは、原材料から製品を一つ生産するのに必要な時間を指します。サイクルタイムが短いほど、同じ時間内により多くの製品を生産することが可能となり、結果として生産効率が向上するため、製造業において重要な指標です。

例えば、一つの自動車を組み立てるのに必要な時間がサイクルタイムであり、これが短いほど1時間当たりに組み立てられる自動車の数が増えます。

サイクルタイムとトヨタ生産方式の関係

サイクルタイムは、トヨタ生産方式と深く関連しています。トヨタ生産方式は、「出力を1つ引き出すごとに入力を1つ補う」ことで生産のムダを排除し、製造効率を最大化することを目指す生産管理手法です。サイクルタイムは1つ引き出すごとの時間を指し、その短さがトヨタ生産方式における効率の鍵となります。

例えば、自動車製造の組立ラインを考えてみましょう。各工程で部品の組立、検査、修正などが行われ、一台の自動車が完成することは理解できるでしょう。ここで、トヨタ生産方式では、前工程から次工程へと製品が移動するたびに、新たに部品の組立が開始されます。

この各工程での組立時間こそがサイクルタイムであり、サイクルタイムが一定で短いほど生産ライン全体の流れがスムーズになります。

サイクルタイムの計算方法

サイクルタイムの計算式は「サイクルタイム = 稼働時間 / 生産した製品の総数」です。

例えば、8時間のシフトで400個の部品を製造したとしましょう。サイクルタイムは8時間(480分)を400で割った1.2分になります。つまり、一つの部品を製造するのに平均で1.2分かかったということを意味します。

サイクルタイムの値が小さいほど生産効率が高いと言えるでしょう。

マシンサイクルタイムとは?

マシンサイクルタイムとは、ある特定の機械が1つの部品を製造するために要する時間のことです。具体的には、部品を取り付けてから取り外すまでの時間、すなわち機械が1つの作業サイクルを完了するまでの時間を意味します。

例えば、CNCフライス盤が金属ブロックを加工して部品を作る場合を考えてみましょう。フライス盤が金属ブロックを受け取ってから加工を終え、完成した部品を排出するまでの時間がマシンサイクルタイムとなります。

マシンサイクルタイムは、製造現場において機械のパフォーマンスを評価し、必要な改善を特定する上で重要なツールです。短いマシンサイクルタイムは高い生産効率を意味しますが、他の機械のサイクルタイムや、部品の取扱時間、機械のメンテナンス時間なども全体の生産時間に影響を及ぼすため、全体の生産ラインの効率が高くなるとは限りません。

スループットとは?

スループットとは、単位時間当たりにあるプロセスが処理できる作業量のことです。製造現場における生産能力を評価する主要な指標であり、高いスループットは高い生産性と関連しています。

例えば、自動車組み立てラインで1時間に20台の車を組み立てる能力がある場合、そのスループットは「1時間に20台」となります。スループットは資源(人手、機械、時間)の使用効率を示し、製造業者が生産能力を最大化するためにはどの部分を改善するべきかを示すことから、製造業における生産能力と効率性の把握が可能になります。

タクトタイムとは

タクトタイムとは、顧客からの需要に対応するために、製品一つを製造するための所要時間のことです。

タクトタイムを順守することで、無駄な生産を防ぎ、製品の在庫過剰や供給不足を回避できるため、製造ラインのスピードを管理するための基準となります。

例えば、顧客からの注文が一日に100個で、製造時間が8時間(480分)の場合、タクトタイムは480分÷100=4.8分となります。つまり、一つの製品を作り終えるのに4.8分を必要とする、という意味です。

タクトタイムの計算方法

具体的には、タクトタイムは次の式で計算されます。

タクトタイム = 稼働時間 / 必要生産数

例えば、製造ラインが1日に8時間(480分)稼働し、顧客からの注文が1日に100個だとします。タクトタイムは480分 / 100個 = 4.8分/個となります。

実行タクトタイムとは?

製造業では理想的な状況が常に続くわけではなく、定時以外の時間でタクトタイムを設定する必要が生じることもあります。実行タクトタイムとは、生産活動の中で適応を必要とする状況における、実際のタクトタイムのことです。

例えば、機器の故障や原材料の遅延など、予期せぬ事態が発生した場合、生産ラインの動作時間が計画通りにはいかないかもしれません。計画通りではない状況では、顧客の需要に基づく理論的なタクトタイムだけではなく、現実的な制約を考慮した実行タクトタイムが必要となります。

リードタイムとは

リードタイムは、製造業において製品が生産ラインに入る瞬間から、顧客に到達するまでの期間を表す時間指標のことです。

製造業では製品の調達から生産、そして納品までの全工程を効率的に管理することが重要であり、すべての工程をひとくくりにした指標としてリードタイムを利用することが基本です。リードタイムは生産プロセス全体の効率と顧客満足度に直接影響することもあります。

調達リードタイム

調達リードタイムは、製品の製造に必要な部品や材料を発注から受け取るまでの期間を指します。材料が遅延すると全体の生産スケジュールが遅れ、結果として製品の納期が遅れる可能性があるため、調達リードタイムは生産のスケジューリングに非常に大きな影響を与えます。

例えば、自動車製造業では、エンジン部品の調達が遅れると、全体の車の組み立てが遅れ、顧客への納車が遅れる可能性があります。

生産リードタイム

生産リードタイムは、製品の組み立てから完成までの期間のことです。生産工程が遅延すると、製品の出荷が遅れ、また製品の品質が低下する可能性があるため、生産リードタイムは生産ラインの効率性と製品の品質に直接影響を与えます。

例えば、エレクトロニクス製造業では、半導体の組み立てや検査工程が遅れると、製品の出荷が遅れ、顧客からの信頼を失う可能性があります。

納品リードタイム

納品リードタイムとは、製品が製造工場から顧客まで運ばれる期間のことです。顧客のニーズを満たせない可能性があり、顧客満足度に直接影響を及ぼします。

例えば、オンライン販売業界では、製品の配送が遅れると、顧客の期待を裏切ることになり、再購入率や口コミ評価に影響を与える可能性があります。

フォワード法

フォワード法とは、リードタイムを計算する際に、製造の開始日から順に各工程を進めていく計算法です。フォワード法により、具体的な生産計画を立てやすくなることで知られています。

例えば、ある製品が顧客から注文された時、材料調達から製造、検査、出荷までの各工程を順に進め、最終的な納期を計算します。

フォワード法は、特に生産過程が複雑でなく、予測可能な製品や状況に適しています。また、顧客の注文に対する迅速な回答が可能で、顧客満足度を向上させる手段ともなるでしょう。

バックフォワード法

バックフォワード法は、納期から逆算して製造開始日を決定するリードタイム計算法です。顧客に確定した納期を満たすためには、全生産過程を逆算していくバックフォワード法が必要となります。

例えば、顧客からの注文が4週間後に納品されるとされている場合、バックフォワード法を用いることで、各工程がいつまでに終わらなければならないかや、材料調達がいつ始まらなければならないかを明確にすることが可能です。

結果として、納期遵守率を向上させ、顧客満足度を高めることが可能となります。

サイクルタイム・タクトタイム・リードタイムの関係性とは?

製造業の効率性を高めるために、サイクルタイム、タクトタイム、リードタイムの3つの概念を理解することが重要です。ここでは、次の3つのパターンについて解説し、どの状態が理想的かについても紹介しましょう。

  • サイクルタイム=タクトタイムの時
  • サイクルタイム>タクトタイムの時
  • サイクルタイム<タクトタイムの時

サイクルタイム=タクトタイムの時

サイクルタイムとタクトタイムが等しいときは、生産が最適な状態であると言えます。なぜなら、顧客の要求を満たすために必要な製品を、正確なタイミングで生産していることを示しているからです。

例えば、1時間に100個の製品を生産する必要があり、1時間に100個を生産できる場合、サイクルタイムとタクトタイムは等しくなります。

サイクルタイム>タクトタイムの時

サイクルタイムがタクトタイムよりも長い場合、製品の製造に必要な時間が、顧客の要求を満たすために許容できる時間よりも長いため、製造プロセスが目標に追いついていないということを示します。

例えば、1時間に100個の製品を生産する必要があるのに対して、実際には1時間に80個しか生産できない場合、製造プロセスが目標に追いついていないため、問題になるでしょう。

サイクルタイム<タクトタイムの時

サイクルタイムがタクトタイムよりも短い場合、製造は目標以上に効率的に行われています。しかし、生産が速すぎると、過剰在庫となり、ストレージコストや在庫リスクを増大させる可能性があるため注意が必要です

サイクルタイムとタクトタイムの両者の数値が近い方が理想

サイクルタイムとタクトタイムの両者が等しいか、あるいは非常に近い数値であることが理想的です。なぜなら、生産プロセスが効率的であり、顧客の要求に適切に対応できていることを意味するからです。しかし、製造現場は常に変化し、それらの数値は一定ではありません。

そのため、数値を定期的に見直し、現場の改善点を見つけることが重要です。それぞれの要素は製造プロセス全体のバランスを保つ役割を果たし、それぞれの差異は改善のための重要な指標となります。

サイクルタイムを短縮する方法

製造業の現場では、サイクルタイムを短縮することで、同じ時間でより多くの製品を生産することが可能になり、生産性が向上するため重要になります。サイクルタイムを短縮する具体的な3つの方法について解説します。

  • 予知保全の実施
  • ボトルネックの改善

品質検査の自動化

予知保全の実施

故障によるダウンタイムはサイクルタイムを延長させ、生産効率を低下させる重大な要因であるため、予知保全は機械や設備の故障を予防するための活動として重要です。

例えば、製造業でよく用いられる機械の振動分析や油脂分析などを行うことで、異常の早期発見と対策が可能になります。また、IoT技術を利用して機械の稼働状況をリアルタイムでモニタリングし、異常を早期に捉えて予防保全を実施することも有効です。

このような形で設備保全に取り組むことが必要ですが、保全は場合によって高度な技術が求められることから、技術者が属人化しやすい傾向にあります。設備保全の属人化を解消する方法について、専門家が解説する動画を公開していますので併せてご覧ください。



設備保全の属人化、どう防ぐ?属人化を解消する3つの秘訣

ボトルネックの改善

一部の工程で生産速度が遅くなると、全体のサイクルタイムを長引かせるため、製造プロセスにおけるボトルネックは、全体の生産効率を下げる大きな要因です。

ボトルネックを改善する方法の一つとして、作業員のスキルアップや、効率的な機械の導入が挙げられます。また、工程間のバランスを見直し、時間がかかる工程に対して労力を集中させることも重要です。

品質検査の自動化

品質検査は製品の品質を保証するために必要な工程ですが、人手による検査は時間と労力がかかります。時間と労力の問題を解決するためには、品質検査の自動化が有効です。

例えば、AIや画像認識技術を活用した自動検査システムを導入すると、人の目では見逃しがちな微細な不良を素早く正確に検出することが可能になります。また、自動化により、検査員が長時間作業に従事することによるヒューマンエラーも減少します。

リードタイムを短縮する方法

調達リードタイム

特定の部品が遅れると、製品全体の生産が遅れることにつながるため、製造業では部品の調達に時間がかかることが、リードタイムを長引かせる一因となります。そのため、調達リードタイムを短縮するための方法として、部品や仕様を共通化することがあげられます。

共通化により、部品の種類が減少し、調達を一元化することが可能です。結果として、取引先との調整がスムーズになり、調達プロセス全体の効率が向上します。

また、共通部品の使用は在庫管理の簡素化にもつながり、ムダな在庫を減らすことが可能になります。部品の共通化は、供給の安定性を確保するためにも重要な戦略です。

生産リードタイム

生産リードタイムを短縮するためには、業務の軽量化が重要です。不必要な工程やムダな動きを排除することで、全体的な生産時間を削減できるからです。

業務の軽量化には、生産ラインのレイアウトの見直しや、作業手順の最適化などが含まれます。改善活動により、製品が工場内を効率的に移動できるようになり、待機時間が減少します。

また、ボトルネックとなっている工程の特定と改善により、サイクルタイムを短縮することが可能になるでしょう。

納品リードタイム

納品リードタイムの短縮は、お客さまへの納期順守に直結します。なぜなら、製造から出荷までのスピードを向上させることで、顧客への迅速な対応が可能になるからです。そのため、人員の配置転換が重要となります。

出荷作業に人員を適切に配置することで、納品プロセスの効率化が図られます。また、倉庫内のレイアウトを改善し、製品の移動経路を最適化することも納品リードタイムの短縮に寄与します。具体的には、よく動く製品を倉庫の出口近くに配置する、ピッキングルートを効率的に設計するなどの工夫があります。

そのほか、情報の共有やコミュニケーションの改善も重要です。適切な情報共有により、各部門が連携してスムーズに動くことで納品リードタイムを短縮できます。例えば、製造部門と物流部門がタイムリーに情報を共有すれば、生産完了と同時に出荷作業を開始でき、待ち時間を最小限に抑えることが可能です。

「タクトタイム」「サイクルタイム」「リードタイム」を理解して現場にいかそう!【まとめ】

この記事では、製造業における生産効率の鍵となる「サイクルタイム」「タクトタイム」「リードタイム」について解説しました。

それぞれの定義から計算方法、関係性までを詳しく解説し、数値を最適化するための具体的な手法も探求しました。サイクルタイムを短縮するためには、予知保全の実施やボトルネックの改善、品質検査の自動化などが有効です。リードタイムの短縮には調達、生産、納品それぞれの段階で改善策を打つようにしましょう。

現場改善ラボではメールマガジンで、トヨタ英国製造副社長の小森治氏をお招きした現場改善についての動画など、現場改善や効率化に関する専門家をお招きしたイベント情報などを配信しています。

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