食品衛生法の改正により、食品の衛生管理に関わる全ての事業者で義務化されたHACCPですが、「難しそう」「確認しないといけないことは何だろう」と、お悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本記事では、HACCPの内容や事業者に求められること、取り組み法について簡単に分かりやすく解説します。また、HACCPの導入に違反した際の罰則やHACCP導入の例などもわかりやすくご紹介します。
現場改善ラボでは、専門家による「HACCPに基づく衛生管理手法」の解説を動画を無料公開しています。こちらでもHACCPの概要を紹介していますので、以下からぜひご視聴ください。
目次
HACCP(ハサップ)とは?簡単にわかりやすく解説
HACCP(ハサップ)とは、食品の安全を守るための仕組みです。簡単にわかりやすく言うと、「食品を作る工程の中で危ないポイントを見つけ出して、そこを重点的に監視するシステム」です。
HA(Hazard Analysis=危害分析)とCCP(Critical Control Point=重要管理点)という2つの取り組みで構成されており、食品の安全性を脅かす要因を取り除くために、原則としてすべての食品事業者へ導入が義務化されています。
例えばハンバーグを作る場合、HACCPでは「肉の温度管理」や「加熱温度」を重要管理点(CCP)として設定し、常に監視します。加熱温度が規定の70℃を下回ると食中毒の危険があるため、温度が低い場合は作業を中断し、原因を特定・改善します。このようにHACCPは危害の予防に重点を置き、問題が発生する前に対策を取る仕組みです。
HACCPが義務となる業種・事業者
これまでHACCPは各事業者の任意による取り組みでしたが、2021年6月から「全ての食品関連事業にとってHACCPに沿った取り組みが義務化」されました。
HACCPが義務となるのは、「生産」「製造」「調理」「販売」に関わる4業種です。食品を加工する食品製造業や調理したものを直接提供する飲食業だけでなく、食品の生産者やスーパーなどの小売店も対象となっています。また従業員数によって、HACCPの導入方法が異なります。
- 食品を取り扱う従業員数が50名以上:HACCPに基づく衛生管理
- 食品を取り扱う従業員数が50名未満:HACCPの考え方を取り入れた衛生管理(簡易版)
事業規模に応じた管理負担を考慮し、無理なく衛生管理を実施できるようにするために上記のように定められています。
現場改善ラボでは、専門家による「HACCPに基づく衛生管理手法」の解説を動画でも無料公開しています。食品衛生管理における実践的なポイントを知りたい方は、以下からぜひご視聴ください。
HACCP導入を進める「7原則12手順」
HACCPを導入する際には、「7原則12手順」に従って進めていきます。これは、安全な食品を製造するための「7原則(手順を含む)」と7原則を進めるための準備となる「5手順」から構成されています。
手順・原則 | 内容 | 具体的な動き |
---|---|---|
手順1 | HACCPチームの構成 | 対象製品に詳しいメンバーで構成(HACCPの知識を持つ人がいないなら外部の専門家を招くor専門書を参考にしましょう) |
手順2 | 製品説明書の作成 | 対象となる食品の特性を明確にする |
手順3 | 意図する用途及び対象となる消費者の確認 | 製品がどう消費されるかを定義する(用途:製品の使用方法(加熱等はあるか)/対象:提供する消費者) |
手順4 | 製造工程一覧図の作成 | 原材料の受け入れから製品の出荷までの流れを、工程ごとに書き出す |
手順5 | 製造工程一覧図の現場確認 | 手順4で作った一覧図を現場で確認・修正する |
手順6 | 危害要因分析の実施(ハザード) | 各工程に原材料由来や行程中に起こりうる危害要因をあげ、管理手段を確認する |
手順7 | 重要管理点(CCP)の決定 | 危害要因を除去・減少させるため、特に重要な工程を決める |
手順8 | 管理基準(CL)の設定 | 危害要因分析で特定したCCPを管理する基準を設定する |
手順9 | モニタリング方法の設定 | CCPが正しく管理されているかを適切な回数で確認して記録する |
手順10 | 改善措置の設定 | 確認の結果、CLを怠ったときに対策すべき措置を設定する |
手順11 | 検証方法の設定 | HACCPプランに従い管理がされているか、修正は必要か検討する |
手順12 | 記録と保存方法の設定 | HACCPシステムに対してすべての手順と記録に関する文書を設定する |
HACCPでは、重要管理点のモニタリングなどの様々な記録を残す必要があります。記録は、HACCPシステムが適切に運用されていることを証明するだけでなく、問題発生時の原因究明にも役立ちます。しかし、記録作業は定常業務に加えて発生する追加作業となり、現場スタッフにとって負担が大きくなってしまうケースが多く見られます。
現場スタッフの負担を軽減して正しい記録を取るためには、シンプルな記録形式で簡単に記録が取れるよう「記録をデジタル化」するのがおすすめです。デジタル化の手順やおすすめのツールについては、以下の「はじめてのデジタル化ガイド」をぜひご覧ください。
初心者でも安心◎HACCP導入におすすめのツール
食品安全管理に不可欠なHACCP導入をサポートするためのおすすめITツールをご紹介します。ITツールを導入することで、安全かつ効率的な食品衛生管理を実現できます。
ここでは以下の3つのITツールについて、機能とメリットを詳しく解説します。
温度管理システム
温度管理システムとは、冷蔵庫などの温度管理が必要なところにセンサを設置するだけで、温度データの収集や、収集したデータの記録・保管を自動で行えるITツールです。導入によって、以下のようなメリットが得られると考えられます。
- 正確な温度管理ができる
- 省力化による人員コスト削減につながる
- 記録の自動化により、手間が省ける
測定ポイントの数やシステムの規模によって変動しますが、温度管理システムには導入コストや運用コストが発生します。全ての温度管理点にシステムを導入するのではなく、重要管理点のみに設置するなど工夫が必要でしょう。また、導入するシステムによっては、操作が複雑で、使いこなすまでに時間がかかる場合があります。
動画マニュアル
動画マニュアルを導入することで、従業員教育や作業の標準化に大きく貢献します。
従来の紙媒体のマニュアルでは、理解が難しかったり、読むのに時間がかかったりするといった課題があります。動画マニュアルなら、視覚的に分かりやすく情報を伝えられるため、これらの課題を解決してHACCPシステムの円滑な運用を促進できます。具体的なメリットとしては、以下の通りです。
- 映像と音声で情報を伝えられるため、理解度が向上する
- 作業の標準化を実現できる
- 教育効率を向上できる
- 紙マニュアルよりも興味を引きやすく、学習意欲の向上につながる
動画マニュアルを導入してみたいという方は、以下のリンクから動画マニュアル作成ガイドをぜひご覧ください。はじめて取り組む方へ向けて、導入や作成のアドバイスをわかりやすく解説しています。
デジタル記録システム
手書きやExcelによる記録を行っている事業者は、記録システムを導入してデジタル化するのがおすすめです。手書きによる記録は、時間と労力がかかるだけでなく、誤記のリスクも孕んでいます。Excelによる記録は、分析がしにくいというデメリットがあります。
デジタル記録システムなら、簡単に記録が取れるだけではなくデータ分析が容易になり、HACCPシステムの運用効率を向上させられます。具体的なメリットとしては、以下の通りです。
- 手書きの記録作業をなくして、大幅な時間短縮を実現できる
- 手書きによる記入ミスや、Excelへの転記ミスを防止できる
- リアルタイムでデータ共有できる
- 必要なデータを簡単に検索できる
記録のデジタル化に挑戦したいという方は、以下のリンクから「はじめてのデジタル化ガイド」をぜひご覧ください。デジタル化を進める手順とポイントなどを図解つきで詳しく解説しています。
HACCPの実施はまとめてtebikiにお任せ!
食品系事業者にとって、HACCP導入・運用は避けて通れない課題です。しかし、複雑な手順・膨大な記録業務・人材育成など、多くの課題に直面し、頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか?
そのようなお悩みをお持ちであれば、「tebiki」というツールがおすすめです。
tebikiは、「動画マニュアルを作成できるツール」と「デジタル記録を取る・分析するツール」の2つがあります。ここでは、HACCP導入・運用に伴う様々な課題をまとめて解決できるtebikiについてご紹介します。
>>>「tebiki現場教育」「tebiki現場分析」の資料をまとめて読む
かんたん動画マニュアル作成
「tebiki現場教育」は、動画マニュアルを簡単に作成できるツールです。直感的に使えるシンプルなデザインになっているため、パソコン操作に不慣れな方でもすぐに使いこなせます。また、クラウド上で動画マニュアルを一元管理しているので、作業手順の変更や新しい手順の追加も迅速に行えます。
▼「tebiki現場教育」の紹介動画▼
tebikiには、主に「動画を簡単に作成できる機能」と「教育管理ができる機能」があります。
- 音声認識による自動字幕生成
- 100カ国語以上への自動翻訳
- 字幕の読み上げ(多言語にも対応)
- アクセス履歴等がわかるレポート機能
- オリジナルのテストを作成できるテスト機能
- 従業員のスキルを評価・可視化できる機能 など
実際に導入いただいている企業からは、「tebikiは単なる動画作成ソフトではなく“社員教育ツール”」という声もいただくほど現場教育に特化したツールです。そのため、複雑なHACCPに基づく衛生管理もしっかり定着できるでしょう。
かんたんデジタル記録ツール
現場教育の中で見てきた課題を解決するために開発された「tebiki現場分析」は、記録帳票の作成 / 記録 / 承認 / 分析が簡単にできるツールです。画像の記録や、遠隔地での記録閲覧もリアルタイムで可能になります。
「tebiki現場分析」でできる主なことは、以下の通りです。
- クラウド上に誰でも簡単に帳票を作成・管理できる
- 正常値を設定することで、異常値アラートを出せる
- 記録した数値を自動でグラフ化でき、
- 画像をアップロードして、そのまま記録できる など
実際に導入いただいている企業では、「帳票の集計作業が1日2時間から1分にまで削減できた」という嬉しい声をいただいています。
その他にも業務改善につながる機能が盛りだくさんです。tebiki現場分析の導入費用や機能についてより詳しく知りたい方は、以下からサービス資料をダウンロードしてぜひご覧ください。
【事例】tebikiを活用してHACCPに沿った食品衛生を徹底!
食品衛生管理の強化を目指し、「tebiki現場教育」を導入して教育を効率化させた企業事例をご紹介します。
食品業界だけではなくより多くの業界の企業事例を知りたい方は、以下の導入事例集も併せてご覧ください。 各社がどのような現場教育の悩みを抱えて、tebikiで解決してきたのかがわかりやすく1冊にまとまっています。
株式会社大商金山牧場
株式会社大商金山牧場は、食肉の生産・加工・販売までを行っている山形県の総合食肉会社です。同社では、新人教育を紙のマニュアルやOJTで行っており、教育者が自分の教えやすい形で教育していたため、各拠点で衛生管理教育に大きなバラつきがありました。
そこで、全拠点における衛生教育内容を統一し、食肉の安全を確実にするためにtebikiを導入。
導入によって新人教育マニュアルが統一され、トレーナーが付きっきりで新人教育を行う必要がなくなり、OJTの教育工数を5割削減することに成功しました。さらに、拠点ごとのマニュアルがtebikiの中で一元管理できるため、質の高い拠点のマニュアルを会社の基準として水平展開することで、会社全体の衛生教育レベルの底上げにもつながっています。
大商金山牧場の事例をより詳しく読みたい方は、以下のインタビュー記事も併せてご覧ください。
インタビュー記事:衛生管理教育を徹底し、食肉の安全性を確実なものとするために動画マニュアルを活用!
イセ食品株式会社
イセ食品は、国内外でも事業を展開する鶏卵の販売・製造を行う企業です。同社では、外国籍の方が多く、言語の違いから教育に時間がかかってしまうことで、教育者の時間が取られることが課題としてありました。また、せっかく教育をしても作業内容を理解していないということがありました。
そこで、外国人労働者の教育体制を整備するためにtebikiを導入。
tebikiを導入することによって、研修にかける時間を半日から1時間半に削減することに成功しました。また、以前は座学研修を実施しても、現場研修ができていないことがあったのですが、動画マニュアルで教えることで、作業理解が深まり現場に入っても早く作業を進めることができました。
イセ食品の事例を詳しく読みたい方は、以下のインタビュー記事も併せてご覧ください。
インタビュー記事:導入3ヶ月で動画200本作成。製造現場の作業標準化と多能工化を推進しています。
より多くの企業事例と効果を知りたい方は、以下の導入事例集もご覧ください。
詳しく知りたい人向け!HACCPを深掘り解説
より詳しくHACCPについて知りたい方向けに、HACCPについてもっと深掘りした内容をご紹介します。衛生管理への理解度を高めるために、ぜひ最後までご覧ください。
従来の衛生管理法との違い
HACCPと従来の衛生管理は、どちらも食品の安全性を確保することを目的としています。しかし、アプローチ方法や重点が異なります。
従来の衛生管理では、主に最終製品の検査や作業環境の清掃・消毒などの後処理に焦点を当てており、問題が発生してから対応することが一般的でした。しかしHACCPは、リスクが発生する前に、あらかじめ重要な管理点(CCP)を設定し、予防的に管理。危害が発生するリスクを最小限に抑えることを目的としています。
「認証」と「導入」の違い
HACCP認証とは第三者機関にHACCPに準拠した取り組みを行っている事業者だと認めてもらうことに対し、HACCP導入はHACCPに則った取り組みを組織内で自発的に行うことを指します。
HACCP導入は義務化されていますが、HACCP認証の取得は義務化されてはいないため、食品関連事業に関わる方は混同しないようにしましょう。
認証を受けるメリット
HACCP認証を受けるおもなメリットは、以下の5つです。
- 第三者が入ることで気づかなかった課題や問題がわかり、改善できる
- 認証取得が条件の取引先とつながりやすくなる
- 自社で取り組んでいる衛生管理を外部へ示せる
- HACCP認証が条件の国への輸出ができる
- 企業としての信頼が得られる
認証を受けると、自社の製品が衛生的につくられた証明になり、消費者への安心へつながります。認証機関によっては管理方法に困った際に相談に乗ってもらえたり、アドバイスをもらえたりする場合があるので、どの機関で認証を取得するかは慎重に決めましょう。
まとめ
HACCPは、従来の衛生管理とは異なり、事前予防的な対策に重点を置くことで、食中毒のリスクを最小限に抑えることを目的とした、より科学的かつ体系的な衛生管理手法です。食品に関わる事業者の方は、HACCPに基づいた衛生管理を実施して、顧客や消費者に安全な食品を届けるよう尽力しましょう。
HACCPシステムに則って徹底した衛生管理を実現させるには、本記事でご紹介した「tebiki」というツールの活用がおすすめです。
「tebiki現場教育」では動画マニュアルの作成から教育管理まで行えるので、複雑化した衛生管理も従業員の方へ効率的に教育可能です。「tebiki現場分析」では衛生管理記録が簡単に取れるだけではなく、異常値アラートや自動分析機能があるため、現場改善にも役立てることができます。
tebikiの機能や料金プランなどについて詳しく知りたい方は、以下から必要事項を記入のうえ資料をダウンロードしてご覧ください。