現場改善ラボ 記事一覧 お役立ち情報 ジャストインタイム(Just In Time)とは?意味や3原則、メリットやデメリットを解説!

ジャストインタイムは(Just In Time)とは、世界的に有名なトヨタ自動車が生み出した生産管理システムの1つです。ジャストインタイムを実現することで、大幅にコストを削減できるとされています。今回はジャストインタイムの概要やジャストインタイムのメリットとデメリットについて解説します。

ジャストインタイムはトヨタ生産方式の柱です。現場改善ラボでは、トヨタ自動車の生産現場を知る専門家が、トヨタ生産方式について解説する動画を公開していますのでご覧ください。

ジャストインタイムとは?

ジャストインタイムとは、トヨタが取り入れている独自開発の生産管理システムです。基本的には必要なものを、使う分だけ使用するときに供給するための生産管理のことをいいます。ジャストインタイムを導入することで、在庫や経費を最小限まで削減できる可能性があります。

製造業において、ジャストインタイムが広く知られる前は、「大量生産方式(フォード方式)」といって、ひとつの製品を大量に生産することで低価格の製品を市場に供給する方式が主流でした。大量生産方式が完成したのは1913年頃のアメリカ、フォード社であるといわれています。大量生産方式は、コストが抑えられる上に、製品の種類が少ないことから品質にバラツキが生じにくいというメリットもあり、アメリカから世界に広がりました。

その反面、大量に生産した在庫を抱えることになるため、製品が思うように売れなかった場合に多くの在庫を抱えるリスクをはらんでいます。また常に在庫を保管・管理する必要があり、管理コストも発生します。

一方、トヨタ自動車の創業者である豊田喜一郎は、1937年の時点でジャストインタイムの実施を提案しています。当時のトヨタでは、毎日必要なものを必要な分だけ作るために、生産方式の変更に取り組みましたが、第二次世界大戦の勃発により一時中断。実際にジャストインタイムが実現したのは1954年です。

トヨタのジャストインタイムによる生産や経営の効率化が明らかになると、多くの製造業がジャストインタイムの考え方に基づく生産方式を取り入れました。今では、製造業をはじめ小売や物流などの他業種にも、ジャストインタイムの考え方が広がっています。

ジャストインタイムに関連する用語

ジャストインタイムを理解するために知っておくべき用語について解説します。
すでにご存知の方は読み飛ばしていただいて構いません。

トヨタ式生産方式

トヨタ式生産方式とは、ジャストインタイムと自働化を柱としたトヨタの生産方式のことを指します。トヨタ式生産方式と呼ぶときは、ジャストインタイムのことを指すこともあれば、ジャストインタイムを含むトヨタの生産方式全体を指すこともあります。

トヨタ式生産方式において、ジャストインタイムと並んで重要なのは自働化です。自働化とは「ラインで異常が発生したとき製造機器をただちに停止させることで不良品を作らないこと」が目的の生産方式です。

いずれの生産方式もトヨタの基本思想である「徹底的なムダの排除」を実現するためのものです。トヨタ生産方式については、以下の記事で詳細を解説していますので、併せてご覧ください。

かんばん方式

かんばん方式とは、ジャストインタイムを実現するための仕組みです。ジャストインタイムでは、後工程が前工程に必要な部品を発注します。かんばんとは、発注情報が書かれた発注書の役割を果たす書類です。前工程が後工程に完成した部品や製品を渡すときに、納品書のかわりとしてかんばんも送ります。

かんばんが存在することで、各工程の作りすぎによる過剰在庫を防止できます。かんばん方式も、図解を付けてわかりやすく解説している記事がありますので、併せてご覧ください。

ジャストインタイムを導入するために知っておくべき3原則

続いて、ジャストインタイムを導入するために知っておくべき前提と3つの原則について解説します。

ジャストインタイムが向かない現場もある

ジャストインタイムは製造業の効率化に、大きく貢献する優れたシステムであることは広く知られています。しかし、ジャストインタイムはすべての製造業で実現できるとは限りません。

「顧客の発注によって5種類の金属プレス品を製造している」という現場では、ジャストインタイムを導入するメリットは生じにくいといえるでしょう。プレス品の製作過程のほとんどは機械が担っており、工程数も少ないからです。

ジャストインタイムを自社の現場に適用することで、コスト削減、効率化が進むかどうかは前もって検討しておきましょう。

平準化生産ができる状態が大前提

ジャストインタイムを導入する大前提は「平準化生産」ができていることです。平準化生産とは、生産する製品の種類や日々の生産量のバラツキをなくして安定して供給することをいいます。

時間や工程によって、生産数量のバラツキが出てしまうと、「暇な工程」と「忙しい工程」が生まれてしまい、人件費がムダになってしまいます。また工程によって在庫量に差がでてしまうことにもなりかねません。

ジャストインタイムの3原則

ジャストインタイムの3原則は以下の3つです。

後工程の引き取り

後工程の引き取りとは、後の工程が前の工程に対して必要な製品を発注し、前工程は受注分だけ生産することをいいます。そして、前工程は後工程が引き取っていったものと同数の製品を生産します。後工程の引き取りのポイントは、前工程が後工程が引き取っていた製品と同数を生産することです。

完全な受注生産にしてしまうと、生産完了までのリードタイムが長くなってしまいますが、この方法であれば最低限の在庫を持つことになりますので、リードタイムを短縮できます。

生産現場の流れをつくる

「生産現場の流れをつくる」とは、部品が前工程から後工程に送られていく流れが逆流、停滞しないようにすることです。ジャストインタイムの3原則である生産現場の流れは「細く速い流れ」と表現されます。

生産現場の流れは「一個流し」で作ります。一個流しとは製品や部品を1工程で1つずつ生産をして次の工程に流していく生産方法です。一個流しを徹底すれば、原材料や仕掛品や完成品の在庫を最小限に抑えることができます。

必要性でピッチタイムを決める

ピッチタイムは、稼働時間と顧客の要求量から計算されます。ピッチタイムは以下の計算式で求めます。

ピッチタイム(タクトタイム)=生産可能な時間÷生産要求量

たとえば稼働時間が8時間で、必要な生産量が160個だった場合の製品1個当たりのピッチタイムは3分です。ピッチタイムを計算したらサイクルタイムを計算します。

サイクルタイムとは実際に製品作成にかかる時間のことです。サイクルタイムは以下の計算式で求めます。

サイクルタイム=稼働時間÷実際の生産数

稼働時間が8時間で実際の生産数が80だった場合、ピッチタイムは6分となります。ピッチタイムよりもサイクルタイムが大きい場合には、必要な量に生産が追いついていないということです。逆にピッチタイムがサイクルタイムよりも短ければ、顧客の必要量を満たしており、その工程で最大量を生産すれば過剰在庫が生まれてしまうということです。

こうしてピッチタイムとサイクルタイムを比較して、ピッチタイムを調整することでムダな人件費や在庫管理費を削減できます。

ジャストインタイムのメリット/デメリット

ジャストインタイムは、現場のムダを削減でき生産効率が向上する仕組みです。しかし、メリットだけでなくデメリットも存在します。ここではジャストインタイムのメリットとデメリットを比較してみましょう。

ジャストインタイムのメリット

ジャストインタイムのメリットは以下の3点です。

  • 各種コストの削減
  • 現場の課題の可視化
  • 生産リードタイムの短縮

ジャストインタイムを実現することで削減できるコストは、在庫の保管コスト、管理コスト、過剰在庫のコストです。ジャストインタイムでは、必要な量だけを生産するため、過剰な在庫は生じず、在庫の保管や管理にかかるコストは最小限で済みます。

また、ピッチタイムの調整によって、生産リードタイムを短縮できます。さらに1個流しによって、現場の流れを作ることで、現場の課題を可視化できます。

ジャストインタイムのデメリット

ジャストインタイムのデメリットは以下の2つです。

  • 平準化できなければ導入してもメリットがないこと
  • 在庫切れが生じたときに生産が停止すること

大前提の平準化が難しい製品や業種の場合、ジャストインタイムの導入は難しく、無理矢理当てはめてもメリットがほとんど生じません。またジャストインタイムによって、原材料や部品の在庫がほとんどない状態になると、突発的なアクシデントによって在庫切れが生じるリスクもあります。

デメリットとはいえませんがジャストインタイムを導入するためには、協力企業の理解が必要です。原材料や部品の自社在庫を最小限に抑えるということは、協力企業にも必要最低限の原材料を納品してもらうことになります。そのためには、数か月先の発注の内示や、発注量の振れ幅などを定期的に共有してく必要があります。

こういった外注管理と協力が必要になる点は、ジャストインタイムを導入する前に知っておくべきです。

コロナ禍でジャストインタイムの弱点が表面化

ジャストインタイムは、世界中のモノづくりの現場で導入されている優れた生産管理方式です。しかし新型コロナウイルスの蔓延によって、その弱点が顕在化してきたといわれています。これまで説明してきたように、ジャストインタイムは原材料、部材等の在庫も製品在庫も最小限に抑えられる生産方式です。したがって有事による物流の停滞などにより部材の供給が停止すると、ただちに生産ラインが停止の危機に直面するリスクをはらんでいます。

実際に、2020年以降のコロナ禍の影響によって、トヨタ自動車は部品の供給不足によるラインストップに見舞われました。2020年1月には、国内の28ラインのうち19ラインが3日間の稼働を停止しています。

また日本中のさまざまな企業がジャストインタイムを導入していたために、コロナ禍の物不足が発生したとする向きもあります。

ジャストインタイムは、1938年頃から提唱されはじめた生産管理方式であり、時代に即して形を変えてきました。今回のコロナ禍における弱点の顕在化を受けて、ジャストインタイムはまた形を変えるかもしれません。今後はジャストインタイムではなく、自社の生産能力に見合う在庫を持つことや、状況に応じて臨機応変に調達することが求められます。

まとめ

ジャストインタイムは、必要なものを必要なときに、必要なだけ作るトヨタ式の生産方式です。ジャストインタイムを徹底することで、過剰在庫を削減し、管理や保管コストも軽減できます。生産の平準化が可能な現場であれば、ジャストインタイムは導入可能です。

ただしジャストインタイムには、自然災害等のアクシデントに弱い側面もあります。ジャストインタイムを導入する際は、自社と市場の状況に即してフレキシブルに対応することを心がけましょう。

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