KYT(危険予知訓練)とは、職場の労働災害を予防するために、メンバー全員の危険意識を高め、職場の危険源を対策・低減するトレーニングです。製造現場や建築現場など危険が伴う作業現場において、ヒヤリハットや労働災害を予防するための取り組みとして、全国的に普及し一般的に行われるようになりました。
この記事では危険予知訓練について、特徴や目的、実施方法、例題などを紹介していきます。
現場改善ラボでは、効果のあるKYT活動の方法について、専門家の解説動画を無料で公開しています。「KYTを実践しているけれど、成果が出ない」とお悩みの方は以下のバナーから動画をご視聴ください。
目次
KYT(危険予知訓練)とは?
KYTの概要
KYT(危険予知訓練)とは、製造業を中心に、作業や職場で災害に繋がる危険を探し出して対策を行う能力を高めるために考案・実施されている訓練のことです。小集団で活動するのが一般的で、メンバー同士で職場や作業に潜む危険要因を見つけ、話し合いを行い、対策を検討する活動です。これらの頭文字を取って、KYTと呼びます。
似た言葉にKYK(危険予知活動)がありますが、こちらは危険(Kiken)・予知(Yochi)・活動(Katsudou)の略字です。KY活動とKYTは、基本的な内容は同じですが、KY活動はより実践に重点を置いた活動です。
現場改善ラボでは、元労働基準監督署署長の村木氏が解説する「KY活動の進め方」の動画を無料で公開しています。さまざまな現場を見てきた専門家ならではの解説を聞きたい方は、以下より併せてご覧ください。
KY活動については記事でも解説しています。目的や活動内容例などを知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
関連記事:KY活動(危険予知活動)はなぜ必要?進め方や活動内容の例、記録方法は?
KYTの由来
もともとは住友金属工業で始まった手法です。現在では日本全国、様々な業界で活用されるようになりました。中央労働災害防止協会がゼロ災運動(労働災害や疾病をゼロにする活動)の一環として、1973年に取り入れたことが起源とされています。
1978年に問題解決4ラウンド法と結びつけたKYT4ラウンド法が実施されるようになり、翌年から中央労働災害防止が産業界に研修を開始していき全国展開されるようになりました。中央労働災害防止はその後現在に至るまで、ゼロ災運動とともに危険予知訓練を推奨しており、活動内容の普及に努めています。
また厚生労働省の設定している「交通労働災害防止のためのガイドライン」にも、危険予知訓練が職場の事故防止に効果があると記載しており、交通事故においても有効な事故予防手法として定義しています。
KYTの特徴
KYT(危険予知訓練)は「安全の先取り」を行う訓練です。参加者の危機意識を高めることで、事故が起きにくい風土や職場環境を醸成します。
危険予知訓練が行われる前の事故防止の考え方は、「発生した事故原因を追求して対策を行う」ことでした。もちろんこれも、類似災害を防止する観点から重要な手段です。
ですが、それだけでは本質的な安全を考えると不足しているといえます。なぜなら、時間とともに人間の記憶は低下していき、どのような災害があったかは忘れられていくからです。その点、危険予知訓練は事故を未然に防ぐために行うことに特徴があります。
KYT(危険予知訓練)の目的
KYT(危険予知訓練)の主な目的は、従業員の危機意識レベルを高めて、労働災害を未然に防止することにあります。KYTを効果的に行うことで、労働災害を減少できるだけではなく、職場の5Sが徹底される/チームワークが向上するなどの成果も期待できます。
以下に、KYT(危険予知訓練)の目的を詳細に1つずつ解説します。
労働災害を未然に防止する
危険予知訓練を行う一番の目的はもちろん、職場での労働災害を未然に防止することです。労働災害の発生件数は、会社や労働者などの安全に関する取り組みで減少してきてはいますが、依然として被災者が発生しています。
厚生労働省労働基準局の「令和3年 労働災害発生状況」によると、死亡者数は長期的には減少傾向にある一方で、休業4日以上の死傷者数は、減少幅の鈍化や増加の傾向が伺えます。
<労働災害による死亡者数、死傷者数の推移>
【引用元:令和3年労働災害発生状況(厚生労働省労働安全基準局】
特に製造業はほかの業種に比べて、労働災害の発生件数が多い業種です。そのため今後も労働災害を防止する活動である危険予知訓練には重要な意義があるといえます。
危険予知訓練を通して、普段の作業に気付かない危険なポイントが無いか、職場内に潜んでいる危険な設備が無いか、関係者全員で一斉に点検すれば、これまで気付かなかったリスクが顕在化して事故を予防することができるからです。
また、労働災害を防止するためには、業務中に発生したヒヤリハットを把握し適切な対策を講じることで、将来的な労働災害の芽を摘むことが可能です。具体的な取り組みの方法や流れは、専門家が解説する以下の無料動画をご覧ください。
職場や作業の危険要因を洗い出す
危険予知訓練では、残存する危険源を働くメンバー間で作成した小集団で洗い出しを行います。それにより、危険源を見える化させることや、安全意識の醸成が可能になります。
生産現場である工場は、以下のような多くの危険源が潜んでいます。
- 製品自体が重量物である場合、落下させて怪我する
- 製品を運搬するフォークリフトやホイストクレーンなどの車両や運搬具が、工場内を歩行する作業者と衝突する鋳造機や機械加工設備などの生産設備に挟まれて死亡する
そのような危険源に対して、多くの職場で保護具の着用や安全柵で囲うなどの安全対策が施されています。しかし、完全に危険をなくすことは難しいことも事実なので、KYTなどの対策を行う必要があるのです。
危機意識/安全意識レベルを高める
危険予知訓練は危険ポイントを洗い出すとともに、参加したメンバーの危機意識を高めることができます。なぜなら訓練を実施する職場の多くは、すでに基本的な安全対策を実施済みであり、すぐ目に見えて危険な点は対策が打たれていることがほとんどだからです。
そのため参加者は、想定を超えたレベルで危険なポイントが無いかを探し出す作業が必要です。例えば、職場の蛍光灯が切れて、脚立に上って交換するような何気ない作業の中にも多くの危険源が隠れています。
- 脚立の位置が悪くて姿勢を崩していて脚立が倒れる
- 蛍光灯の下の床に凹凸があってバランスを崩しやすい
- 脚立がドアの近くで、誰かが入ってきてぶつかるかもしれない
- 脚立の留め金をつけないと作業中に脚立が開いてバランスを崩す
このように可能性は低くても危険に陥るパターンをメンバー同士で洗い出して、どうしたら事故なく作業が行えるのか考えることで、それぞれの危機意識/安全意識レベルを高めることが可能です。
危険予知訓練は危険意識を高める目的であることから、安全教育の1つであるとも捉えられます。危険予知訓練以外にも、危険意識/安全意識を高めるための安全教育の方法や進め方を知りたい方は、専門家が解説する以下の動画も併せてご活用ください。
行動目標を指差し呼称で顕在化する
危険予知訓練では事故を未然に防止するために、それぞれが最終的に守るべき行動目標を設定します。上司や職場で言われた目標と違って、自らが設定した目標のため、より高い意識付けが可能になります。そして指差し呼称で行動目標を意識や習慣に植えつけることができるため、危険予知訓練が終わってからも継続的に危機管理ができるようになります。
ただし危険予知訓練は一度終わればずっと効果が続くわけでは無いので、定期的に実施して常に高い危機管理能力を職場が保持し続けることが重要だと考えられます。
KYT(危険予知訓練)の進め方「4ラウンド法」
中央労働災害防止協会の定めている危険予知訓練は、旧国鉄が実践していた安全確認手法「指差し呼称」と、危険予知活動を組み合わせた「KYT4ラウンド法」を標準的な活動方法としている点に特徴があります。
「KYT4ラウンド法」は以下の4ステップで進めていきます。
現場改善ラボでは、4ラウンド法をスムーズに進めるためのテンプレートシートをExcelでご用意しています。以下のフォームより、現場改善ラボのメルマガにご登録いただくとテンプレートをダウンロードいただけます。
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1ラウンド:現状を把握する
4ラウンド法では実際の作業場所で行われる場合や、作業風景などが書かれたイラストシートを用いて行います。最初のステップでは、作業場所やイラスト内に、どのような危険が潜んでいるか参加者で意見を出し合います。司会進行役のリーダーが各メンバーに意見を求め、出された意見を書記役のメンバーが記録していきます。
このステップで重要なことは、すべての危険源を洗い出すことです。そのためにはより多くの意見を出すことが重要で、活発にコミュニケーションを取れる雰囲気作りが大切になります。
2ラウンド:本質を追求する
1ラウンドで洗い出した危険源の中で、「特に危険なポイントはどこか」をメンバー間で話し合います。本質的な危険源だと認められた項目には、目印をつけましょう。
このステップで気を付けることは、多数決でどの項目が本質的な危険源であるかを決めないことです。あくまで、メンバー全員が納得して話し合いを進められるように、コミュニケーションを取ることが大切です。
3ラウンド:対策を立案する
2ラウンドで、本質的な危険源と決めた項目に対して、どのような対策を行うのかを検討します。このときも、メンバー全員で意見を出して、それぞれに納得感のある対策を決めることが重要です。
決めた対策に対して、メンバー全員が納得しなければ、せっかく話し合いで決めた対策が定着しない可能性があります。司会進行役のリーダーは、メンバーが疑問や不安を自由に質問できる雰囲気を作り、的確に回答できるようにしましょう。
4ラウンド:行動目標を決める
これまでのステップで特定した危険ポイントに対して、今後どのような行動目標で取り組むかを決めます。これは、危険源から「潜在的に回避する行動を身に着けるため」に行うものです。
行動計画を決める際は、メンバー全員で行動目標を話し合い、出された案の中から実際に取り組む行動目標を決定します。行動目標に沿った安全衛生確認をする際は、指差し呼称を行いましょう。指差し呼称により、呼称しない場合と比べてミスが減るという傾向があります。
KYT(危険予知訓練)のネタ切れ対策
日々まったく異なる作業をするわけではありませんよね。そのため、「変化を見つけられない」「危険に慣れてしまって、あえて話題にあげない」などからKYT(危険予知訓練)がネタ切れしてしまうこともあるでしょう。
効果が出ないKYTの特徴の1つとして、マンネリ化が挙げられます。同じネタを何度も話題にあげず、ネタ切れ対策を行いましょう。
これまでと変わった点に着目する
同じ作業を行う中でも、日々状況はわずかでも変化するものです。そのため、以下のような変化に着目しましょう。
- 使用する機械の変化
- 使用する道具の変化
- 天気や温度の変化
- 原料の変化
- 場所の変化
- メンバーの変化
製造業では上記のような4M(人/機械/方法/材料)が変化するタイミングに、トラブルが発生する危険源が潜んでいます。
小さな変化が、大きな危険を引き起こす可能性もあります。「変化によって、危険が起こりうる可能性はあるだろうか」と話し合いを行ってください。変化点を見つけ出せなくても問題ありません。「変化点がないかどうか」を考えること自体が、脱マンネリ化になり、ネタ切れ防止につながります。
具体的にどのような出来事が4Mの変化点になるか知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
関連記事:4Mとは?分析方法や変更管理の目的とポイントを解説
実際に発生した事故を取り上げる
残念なことに、日々さまざまな現場で労働災害が起きています。その事例をKYTに取り入れることで、あらゆる状況から対策を立案する力がつき、労働災害などの危険を回避できるでしょう。
厚生労働省が運営する『職場のあんぜんサイト』というサイトでは、死亡災害や重大災害などの事例を閲覧できます。その事例の発生状況/原因/対策なども見れるので、ネタ切れした際には活用してみてください。
従業員の意見を取り入れる
現場には、経歴/現職の経験年数/考え方などが1人ひとり違う従業員が集まっています。1人だけの意見では気づかない危険でも、複数人で意見を出し合えば、見落としていた危険性を可視化できる可能性が高いです。
そのためにも、些細な意見でも報告しやすい現場作りを心がけましょう。コミュニケーションの機会を増やす/言いにくい意見を出させる際は匿名性を保障する/報告者を評価するなどがおすすめです。
業界別のKYT(危険予知訓練)の例題と解答
危険予知訓練で取り扱われる例題と解答例を紹介します。業界ごとのイラストで考えられる危険を検討してください。定期的にトレーニングすることで、小さな危険を見逃さない感覚が身についていきます。
以下のフォームより現場改善ラボのメルマガにご登録いただくと、KYTの例題集を無料ダウンロードいただけます。「印刷したものをメンバーに共有したい」という方は、こちらの資料をぜひダウンロードしてご活用ください。
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製造業の例題
回答例は以下の通りです。
- 工作機械の刃物で手などを怪我する
- 話をしていて注意が散漫になる
- 床に置かれた荷物につまづき機械に衝突する
- コンベアの荷物を取るときにコンベアに手を挟む
物流業の例題
回答例は以下の通りです。
- 荷物が落ちてきて体にぶつかる
- 踏み台がずれて転倒する
- 床に置いてある荷物につまづいて転ぶ
- 荷物が重くてバランスを崩して転ぶ
- コンベアの荷物を取るときにコンベアに手を挟む
建設業の例題
回答例は以下の通りです。
- 運転手の死角から他の作業者が侵入してくる
- 誘導員が後ろを見ずに後退して、車両と衝突する
- 運転手がハンドル操作を誤って他の作業者とぶつかる
- ブレーキとアクセルを踏み間違える
KYT(危険予知訓練)において、例題をもとに解答を考えさせる方法は、トレーニングの曖昧さをなくすために重要です。現場改善ラボでは、ほかにも専門家が解説する「脱曖昧のためのKYTのためのカイゼン方法」の動画を無料で公開しています。実践的なKYTを目指す方は、以下のバナーから動画をご視聴ください。
KYT(危険予知訓練)による効果
職場の事故や災害が減少する
危険予知訓練が全国展開された昭和53年(1978年)以降、労働災害の発生件数は減少し続けています。前述の『労働災害を防止する』でもご紹介した厚生労働省労働基準局「令和3年労働災害発生状況」によると、昭和54年(1979年)の労働災害による死亡者数が約3,000人に対して、令和3年(2021年)の死亡者数は約900人以下となっています。
危険予知訓練以外の安全対策が進んだことも要因に考えられますが、危険予知訓練の広まりによって、危機管理能力が向上したことも大きく貢献していると考えられます。
危険予知訓練が開始された昭和中頃の労働災害では、「生産優先的な考えを持つ作業者」や「職場の雰囲気」が事故の原因となっていました。例えば、設備を止めずに異常処置を行うために、加工設備やコンベア内に侵入して挟まれる死亡災害が多く発生していました。
こうした悲惨な事故を無くすためには、上司部下に関わらず不安全な行動を見かけたら、注意し合う安全第一な風土を醸成することが重要です。
職場の5Sが徹底される
危険予知訓練は、5S活動の推進にも貢献できます。5S活動とは、以下の頭文字をとったものです。
- 整理(Seiri)
- 整頓(Seiton)
- 清掃(Seisou)
- 清潔(Seiketsu)
- しつけ(Shitsuke)
危険予知訓練を行うことで、職場内の整理整頓されていないデスクや、油が付着して汚いまま放置された設備などが危険源として洗い出されるので、整理整頓や清掃作業が進みます。また、危険予知訓練を通して、ベテランメンバーが若手メンバーに対して、危険なポイントの見つけ方や、整理整頓の重要性を伝える機会となるため、5S活動のしつけを行うことも可能です。
5S活動で生産性を向上させるには、正しい手順で進めることが大切です。現場改善ラボでは、数々の企業で5S改革を行ってきた5Sコンサルタントによる、「現場で実践できる正しい5S活動」の解説動画を無料で視聴できます。本記事と併せてご参照ください。
5Sについての詳細な解説や実際の事例について知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
関連記事:5Sとは?意味や活動の目的と効果、ケース別の事例を解説!
チームワークが向上する
危険予知訓練では、働くメンバーで小集団を作って活動を行います。日頃は、生産活動に追われてコミュニケーションが不足している職場でも、危険予知訓練を通して安全意識を高めるとともに、コミュニケーションを活発化できるでしょう。
また、安全に関する内容は、職場の上下関係や年齢に関係なく、誰でも発言しやすいテーマであることもコミュニケーションを活性化するポイントです。普段は作業に従事していて発言する機会が無い若手メンバーも、自分の作業で危険なポイントを感じていれば積極的に意見を出して議論することができます。
このように危険予知訓練を通して、職場のチームワークを高める副次的な効果も期待できます。
KYT(危険予知訓練)の実情と失敗パターン
KYT(危険予知訓練)の重要性はわかっていながらも、「指示されているからただ毎日やっているだけ」と作業前の儀式となっている現場が多いのが実情です。ここでは、KYTの成果が出ない失敗パターンをご紹介しますので、反面教師としてチェックしましょう。
内容が曖昧になっている
KYTを行うとき、「どの作業の中で」「どのような危険が潜んでいるのか」などの点に具体性を持たせないと、危険が発生する原因を掴めず、トレーニングの意味がありません。
曖昧なKYTから脱するには、作業の内容(一連の作業ではなく、一場面をクローズアップする)/作業を行う場所/設備/道具/人などの「作業を行う状況」に具体性を持たせて明らかにすることを心がけてださい。そうすることで、作業員の印象に残りやすく、安全意識を高められるでしょう。
内容がマンネリ化している
内容がマンネリ化している状況だと、特定の危険に慣れが生じてしまい、適切な対策を実行できなくなる可能性があります。マンネリ化を防ぐためには、前述の『KYT(危険予知訓練)のネタ切れ対策』を行いましょう。
KYTについての教育がない
KYTについて、見直して学ぶ機会がなければ、現在実施しているKYTに問題があるのかわかりません。そもそも、問題があるとすら思っていない現場もあるでしょう。その結果、「形だけのKYT」になってしまい、失敗する可能性が高いです。
実行されていない
上記の実情の集約ともなりますが、内容が曖昧であったりマンネリ化していたりすると、「KYTで話した内容が記憶に残らず、実行されていない」ということが多くの企業で起こっています。
KYTの内容を実行させるには、KYTへの参加意識を強める/KYTで話した内容をチェックするなどを行い、忘れられないようにしましょう。
現場改善ラボでは、「KYTを成功に導く具体的な改善策」を動画でも無料で公開しています。今すぐ取り組める実践的な方法など、専門家の解説を聞きたい方は以下から動画をご視聴ください。
KYT(危険予知訓練)を成功に導く課題の解決策
そもそも、KYT(危険予知訓練)の目的は、従業員の危機意識レベルを高めて、労働災害を未然に防止することです。そのためには、1つ前に解説した『KYT(危険予知訓練)の実情と失敗パターン』の改善策をとる必要があります。
そこで、改善策として有効なのが動画マニュアルの活用です。以下に、動画マニュアルのメリットや効果を解説します。
動画マニュアルのメリット
リスクが動的にわかる
動画マニュアルの1番の特徴は、動きをそのまま伝えられる点です。そのため、起こりうる危険や事故事例を動画でわかりやすく伝えられ、具体的に理解しやすくなります。紙のマニュアルや口頭での説明の場合、危険性がイメージしにくいですが、動画であれば、その場の様子や音をリアルに伝えられて、記憶に残りやすいでしょう。
教材を作成/更新しやすくマンネリを防げる
動画マニュアルであれば、過去に発生した危険な動作やヒヤリハット事例を再現して撮影するだけで、簡単にわかりやすいKYT教材を作成/更新できます。ヒヤリハット事例の数だけ教材を作れるため、マンネリ化する心配はありません。
再現性が高く、自分事として捉えやすい
危機意識を高めるには、「危険な状況を実際に体験する」のが良いですが、それにはリスクが伴います。しかし、動画であれば危険性をありのまま再現できるため、いつ/どこにいてもリアルな状況を視聴でき、自分事として捉えやすく、実行につながりやすいという効果が期待できます。
繰り返し復習ができる
KYTで話した内容を1度では理解できず、忘れられてしまうということもあるでしょう。しかし、動画マニュアルを用いれば、自分の好きなタイミングで何度でも学習が可能です。これにより、安全意識を高められるでしょう。
動画マニュアルの作成は「tebiki」がおすすめ
動画マニュアルを活用してみたいと考えても、編集や管理が難しいイメージから導入を断念しようとする方も少なくないでしょう。しかし、動画マニュアル作成ツール「tebiki」であれば、作成や編集が誰でも簡単に行えます。
▼動画マニュアル作成ツール「tebiki」紹介動画▼
tebikiが「現場の教育を動画でもっとかんたんに」できるのは、以下の特徴があるためです。
- シンプルな操作画面で、初めて使う人でも迷わない
- カット/一時停止/画像追加など自由自在
- 音声認識によって自動で字幕を生成できる
- 自動翻訳機能により、翻訳工数をゼロにできる
- 学習進捗やアクセス履歴が見れるレポート機能搭載
- 理解度を把握できるテスト機能搭載など
実際に導入いただいている企業では、操作性の高さから「導入3年で200本の動画マニュアルを作成/運用」できた事例もございます。tebikiの機能や導入効果などついてより詳しく知りたい方は、以下の資料も併せてご覧ください。
実際に活用されている動画マニュアル例
以下は、イセ食品株式会社という鶏卵の販売/製造を行う企業で、実際に活用されている動画マニュアルです。イセ食品株式会社の事例は、『tebikiを使ってKYT(危険予知訓練)を行っている事例』でも紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
▼動画マニュアルサンプル▼
(音量にご注意ください)
こちらは、怪我や事故の要因になるロール台車の扱い方を動画化したものです。このように間違った扱い方と正しい扱い方を動画化することで、危険性を理解させながら印象に残すことができるでしょう。
tebikiを使ってKYT(危険予知訓練)を行っている事例
tebikiを導入して安全指導を行っている企業事例をご紹介します。より多くの導入事例を読みたい方は、全7つの現場の課題や導入効果を1冊にまとめた以下の導入事例集も併せてご覧ください。
児玉化学工業株式会社
児玉化学工業株式会社は、合成樹脂加工や産業機器の製造などを行っている化学メーカーです。同社では紙のマニュアルを運用していましたが、書面だと正しい手順を伝えきれないという課題を抱えていました。そこで、簡単に手順を動画化できるtebikiを導入することに。
導入して強く実感していただけたのが、「紙のマニュアルより作成や管理がラク」ということ。なんと手順書作成の工数は、紙の1/3まで削減。「マニュアルはtebikiと決めてしまえば、管理もしやすく標準化にもつながる」という声もいただきました。さらに、tebiki導入を進めるうちに、明確になってきた事も多く出てきたとのことです。
現在は、従業員の安全意識を高めるために安全指導にもtebikiをご活用いただいています。ほかにも、総務関連の業務から製造現場の作業手順や異常処置など幅広いシーンで、効果を出されています。
1946年に創業した老舗の化学メーカーである児玉化学工業株式会社の、導入の経緯や導入方法などをより詳しく知りたい方は、以下のインタビュー記事も併せてご覧ください。
インタビュー記事:製造業の動画マニュアル導入事例 | 工場の作業手順や異常処置、安全指導を動画で作成。手順書作成の工数は紙の1/3に。自動翻訳で外国人教育にも活用
イセ食品株式会社
鶏卵の販売/製造を行うイセ食品株式会社は、鶏の飼育から産卵、包装までを一貫して手掛けることで、品質の高い商品を提供している企業です。安全教育を意識的に注意しないと、工場内で転んで怪我をするなどの労災が発生していました。
安全教育をはじめとした社員教育に力を入れようと、tebikiを導入。ある工場では、新人教育でtebikiをフル活用していただいています。その結果、座学に要する時間を丸1日削減成功。座学を動画に置き換えたことで、トレーナーの教育工数も削減でき、他の業務に時間を割けるようになったとのことです。
外国籍の方への教育にも活用いただいており、「わかりやすいね!」と好評とのこと。より詳しい導入効果を知りたい方は、以下のインタビュー記事も併せてご覧ください。
インタビュー記事:食品メーカーの動画マニュアル導入事例 | 導入3か月で動画200本作成。食品製造現場の作業標準化と多能工化を推進。各工場含め会社全体で「品質向上」に取り組んでいます
トーヨーケム株式会社
トーヨーケム株式会社は、各種コーティング製品やメディカル製品などをグローバルな生産体制で幅広く手掛けている中核事業会社です。OJT中心の教育により、新人の業務習熟度にバラツキが起き、不安全行動につながるのではないかと不安視していました。
以前より動画の有効性は認識していたため、動画マニュアルの内製化に取り組んだ過去もありましたが、作成の困難さから計画が頓挫……。そこで、動画編集が誰でも簡単にできるtebikiを導入する流れになりました。
実際に作成を始めてみたところ、紙マニュアルの作成よりも工数が半分に短縮されたという嬉しい声が。さらに、新入社員からは「自立的な学習が出来る」という意見であったり、ベテラン社員からは「業務の振り返りが楽になった」という意見が出たそうです。
現在は、業務品質の向上のための教材としてだけではなく、動画という特性を活かし、動画上で作業中の事故を再現させるなど現場作業における安全教育にも活用いただいています。
動画マニュアルの社内展開で苦労した点や今後の展望などは、以下のインタビュー記事からご覧いただけます。
インタビュー記事:新人からベテランまで700名超の組織で挑む教育のグローバルスタンダード
まとめ
労働災害は、1度起これば会社や従業員だけでなく、周囲の家族や友人などを巻き込んで多くの被害者を産んでしまいます。そのような事態を防止するためにも、危険予知訓練の定期的な実施は必要不可欠です。
安全衛生コンサルタントとして3,000人以上へ研修を行ってきた専門家が解説する、「効果のあるKYT活動の方法」を動画で視聴したい方は、以下のバナーからご覧ください。実践的な方法や事例を学べて、従業員の安全意識を高められるでしょう。