物流現場のかんたん動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」を展開する、現場改善ラボ編集部です。
慢性的な人手不足や作業の属人化など、物流倉庫が抱える問題は年々深刻化しています。運用の見直しが求められる一方で、自社に最適な改善策がわからず、一歩を踏み出せずにいる現場も少なくありません。
本記事では、物流倉庫が直面する代表的な課題とその改善策を詳しくまとめています。業務改善を実現している物流企業の事例も紹介していますので、現場の課題解決に向けたヒントとして参考にしてください。
目次
倉庫業務で課題を抱えている割合
倉庫管理システムを販売する株式会社ニーズウェルが「倉庫で働いている方」「倉庫業務に関連する事業を行っている経営者の方」を対象に実施した調査によると、8割以上の方が「自社の倉庫業務に課題がある(85.0%)」と感じていることがわかりました。
さらに、具体的にどのような課題を感じているかという質問には、以下のような回答があがっています。
- 人手の確保・戦力化までの時間確保(48.9%)
- 商品のロケーション変更が上手くいかない(36.0%)
- 棚卸作業の負荷が大きい(34.8%)
この調査結果からは、深刻な人手不足や業務効率化の難しさなど、多くの倉庫現場が抱える切実な課題が見えてきます。
参照元:倉庫で働いている方と倉庫業務の経営者の8割以上が『自社倉庫の業務』に課題を感じている!?倉庫業務を効率良く進めていくための改善点とは(株式会社ニーズウェル)|PR TIMES
物流倉庫の現場で発生しがちな課題
物流倉庫の現場では、日々の業務において以下のような課題が発生しがちです。
- 従業員ごとの作業品質にばらつきがある
- 慣れや確認不足によるヒューマンエラーの多発している
- 特定の従業員しかできない属人化業務が蔓延している
- 在庫の数量を正確に把握できず、過剰在庫や欠品が発生している
- 倉庫内の作業スペースが不足している
- 人員不足によって従業員ごとの作業負担が増加している
効果的な改善策を講じるためには、まず自社で発生している課題を整理し、円滑な倉庫運営を阻む要因を特定することが重要です。
従業員ごとの作業品質にばらつきがある
物流倉庫では経験値や習熟度の異なる多様な人材が働いており、従業員ごとの作業品質にばらつきが生じやすいという課題があります。特に従業員数が少ない、会社が急激に拡大しているなどの企業では、従業員教育に時間を割けない状況に陥りがちな傾向です。
実際に物流企業「ソニテック株式会社」でも、作業品質の面で以下のような課題を抱えていました。
会社が拡大し、従業員も多くなってきたことにより、指導者や管理者への負担が増大していました。作業品質の問題は、個別に教育する時間が減り、十分な教育が出来なくなってきたことも原因の一つにあると考えています。マニュアルはエクセルで作成するものの、その後更新がされず、一度作成して終わりというケースが多かったです。
同社が課題に対してどのように向き合い、どのように解消したのかについては、以下のインタビュー記事をご覧ください。
慣れや確認不足によるヒューマンエラーが多発している
物流倉庫の現場は日々繰り返されるルーティン作業が中心となるため、仕事に慣れてくると従業員の注意力が低下し、確認不足や思い込みによるヒューマンエラーが増える傾向にあります。
しかし、ミスの背景には非効率なプロセスや作業環境の不備といった構造的な問題も関係しており、単なる注意喚起だけではヒューマンエラーを防ぐことは難しく、倉庫作業そのものを最適化するための抜本的な対策が必要です。
特定の従業員しかできない属人化業務が蔓延している
一部の作業が特定の従業員に依存している状態では、担当者の不在時に他の従業員で対応できず、作業品質の維持が困難になります。属人化が進行すると、突発的な欠勤や退職時の引き継ぎに支障をきたし、業務が停滞するリスクが高まります。
加えて、特定の従業員に作業が集中することで、当人に過剰な業務負担がかかり、心身の不調やモチベーションの低下を招く恐れもあります。
物流企業「アスクル株式会社」でも、業務の属人化について以下のような課題を抱えていました。
教育者の経験側によるOJTや個別での紙の手順書作成を行い教育を行っていたのですが、従来の教育手法だと教育担当者の属人化や、担当者ごとで正確性のバラつきが起きていたことで、現場ではさまざまな場面で非効率な状況に陥っていました。
同社が抱えていた属人化の課題や課題に対してのアプローチなどを知りたい方は、以下のインタビュー記事をご覧ください。
在庫の数量を正確に把握できず、過剰在庫や欠品が発生している
在庫管理の正確性に欠ける物流現場では、過剰在庫や欠品といった問題が継続的に発生しています。特に小規模な倉庫では、目視や手作業を中心としたアナログな運用体制が多く、在庫の数え間違いや帳簿への記入ミスが頻発している現場も少なくありません。
在庫を正確に把握できていないと、余分な在庫によるコストの増加や長期保管による品質劣化、さらには在庫切れによる出荷遅延や販売機会の損失が発生し、現場全体の業務効率や顧客満足度に多大な影響を及ぼします。
倉庫内の作業スペースが不足している
倉庫や物流センター内での保管物量が増え続け、従業員の作業スペースが不足しているという課題もよく見られます。
十分なスペースを確保できていない現場では、倉庫内の作業動線が乱れやすく、ピッキングや仕分け作業の効率が著しく低下してしまいます。また、スペース不足により在庫の保管場所(ロケーション)が安定せず、商品を取り間違えるピッキングミスも発生しがちです。
倉庫内の作業スペース確保に向けた整理する方法や具体的な手順については以下の記事をご覧ください。
関連記事:倉庫整理の悩みを解決!5Sに基づく基本手順と劇的に改善するコツ
人員不足によって従業員ごとの作業負担が増加している
物流業界全体で人材不足が進行するなか、特にトラックドライバーの確保が難しくなっており、輸送・配送業務に大きな影響が出ています。
【トラックドライバーの就業者数の推移】
物流業の人手不足問題」トラックドライバーの就業者数の推移.png)
引用元:内閣府「地域の経済2023 (補論)物流業の人手不足問題」
内閣府が公表している「物流業の人手不足問題」によると、トラックドライバーの就業者数は1990年代半ばから2000年頃をピークに減少している傾向があり、慢性的な人手不足が続いていることが読み取れます。
限られた人員に過度な負担が集中すると、作業効率の低下やミスの増加、さらには労働災害の発生や離職率の上昇などさまざまな悪影響が及びます。
物流倉庫の課題を解決する改善策
物流倉庫が抱える課題は多岐にわたり、業務効率やサービス品質に大きな影響を与えています。課題を解消するには、現場の業務や環境を見直し、以下のような改善策を講じていく必要があります。
- 物流倉庫の作業をマニュアル化し、標準化を進める
- 従業員への教育を実施し、多能工化を進める
- 5S活動を実施する
- 作業動線の見直し/レイアウトの最適化を促進する
- ロケーション管理を最適化する
- 定期的に安全教育を実施し、事故や労災のリスクを防ぐ
- 作業の一部を自動化/削減して省人化を実現する
物流倉庫の作業をマニュアル化し、標準化を進める
作業品質のばらつきや属人化を防ぐには、物流倉庫の標準作業をマニュアル化し、現場全体で共有するのが効果的です。標準的な基準を設けることで、作業の進め方や判断に迷いがなくなり、誰が担当しても一定の品質を担保できるようになります。
ASKUL LOGIST株式会社では、紙+マニュアルで実施していた倉庫内作業の教育に実際の動きを見て覚えられる動画マニュアルを活用した教育を実施し、倉庫内業務の標準化を実現しています。
動画マニュアルで教育を行ってみると、従来の教育だけでは受け手側の解釈で理解がバラついてしまう中でも、うまく作業の標準化を進められることが効果として大きいです。
引用元:ASKUL LOGIST株式会社「従業員数3,500名超・全国15拠点で動画マニュアルtebikiを活用!」
同社のように、物流倉庫の作業効率や生産性向上に向けて、動画マニュアルを活用している企業は増加している傾向です。以下の資料では、物流現場において、動画マニュアルを導入するメリットや実際の事例などを紹介しています。下の画像をクリックして資料をご覧ください。
従業員への教育を実施し、多能工化を進める
特定の業務に特化せず、複数の業務をこなせるように育成することを「多能工化」といいます。入荷から出荷までさまざまなプロセスが存在する物流倉庫の現場では、従業員が複数の作業を柔軟に対応できるようになることが、人手不足や属人化といった課題への有効な対策となります。
例えば、物流企業の株式会社近鉄コスモスでは、倉庫作業で活用するハンドリフトの操作方法を動画マニュアルに落とし込む形で業務の多能工化を促進しています。
※「tebiki現場教育」で作成しています。
同社の多能工化促進に向けた取り組みで活用されているのは、動画編集経験がない方でもかんたんに動画マニュアルを作成できる「tebiki現場教育」です。操作に慣れてからは、1本あたりの動画マニュアルを5〜10分程度で作成できているとの声も上がるほど、現場での利用に即したツールとなっています。機能やサービス内容、プランなどの詳細を知りたい方は、以下のサービス資料をご覧ください。
>>物流業界に特化!かんたん動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」の資料を読んでみる
5S活動を実施する
5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)は、物流現場の作業環境を改善・向上させるうえで欠かせない基本的な取り組みです。不要なものを排除し、必要なものを扱いやすい場所に配置することで、作業時間の短縮やミスの減少につなげられます。5Sを徹底することは事故やケガのリスクを減らす安全対策となり、従業員が安心して働ける職場環境の実現にも寄与します。
しかし、5Sに取り組んでも「思うように効果が得られない…。」という悩みを抱えている方も少なくないはずです。そんな方は、数々の企業で5S改革に取り組んできた専門家による、正しい5S活動を解説した動画の視聴がおすすめ。以下のリンクをクリックして動画をご覧ください。
>>【視聴無料】「生産性を高める5S活動 正しい運用に欠かせない「重要なS」とは」を見てみる
作業動線の見直し/レイアウトの最適化を促進する
倉庫内の動線やレイアウトが整っていない場合、商品の入庫やピッキング作業時に無駄な移動が発生し、作業効率が大きく低下します。これを防ぐには、入出荷の流れや作業頻度、従業員の動きなどを十分に考慮したうえで、倉庫内レイアウトを最適化していくことが重要です。
ただし、レイアウトの大幅な変更は現場の負担が大きく、すぐには実行できないケースも多いでしょう。出荷頻度の高い商品を出入口付近に配置するなど、まずは小さな改善から着手し、従業員の意見も聞きながら段階的に見直していくことをおすすめします。
ロケーション管理を最適化する
ロケーション管理とは、倉庫や物流センターにおいて商品の保管場所を明確に定める管理手法です。商品ごとに保管場所を固定することで、入庫時の棚入れ作業がスムーズになり、ピッキング時の取り間違いも防ぐことができます。
ロケーション管理を最適化するには、在庫の回転率に応じた保管場所を割り当てることが重要です。在庫管理システム(WMS)と連携させることで、商品の入出庫履歴や出荷頻度をもとに保管場所を調整でき、より精度の高い在庫管理が実現します。
定期的に安全教育を実施し、事故や労災のリスクを防ぐ
物流倉庫の現場は、荷物の落下やフォークリフトとの接触など、ヒヤリハットや事故が起こりやすい環境にあります。こうしたリスクを未然に防ぐためには、職場における定期的な安全教育の実施が欠かせません。
しかし、口頭や文書による説明だけでは、現場作業における「危険」を十分に認識できない場合があります。より効果的に「危険」を理解させるためには、動画などの視覚的な教材を活用するのがおすすめです。このような取り組みを継続することで、従業員一人ひとりの安全意識が向上し、現場全体で安全対策に取り組む風土が醸成されます。
倉庫内作業で有効な安全対策を詳しく知りたい方は、「設備・ツール面」「教育面」それぞれの具体的な対策を紹介している以下の記事をご覧ください。
関連記事:倉庫作業の安全対策12選:事故防止を実現する物流企業事例も紹介
作業の一部を自動化/削減して省人化を実現する
慢性的な人手不足が続く物流業界では、業務を担当する人員を減らす「省人化」の取り組みも不可欠です。この点、倉庫作業はルーティンワークが多く、省人化を進めやすい領域といえます。
例えば、AGV(無人搬送車)やデジタルピッキングシステム、倉庫管理システムなどの導入により、倉庫作業の一部を自動化することができます。これらの取り組みは作業効率を向上させるだけでなく、従業員一人ひとりの負担軽減や労働環境の改善にも大きく寄与します。
物流現場での省人化に向けた取り組みについては、以下の記事をご覧ください。
関連記事:物流業における省人化を実現する方法と参考にしたい企業事例を解説!
物流倉庫の課題解決につながる現場ツール/システム
物流倉庫の課題を解決するには、現場の業務に直結するツールやシステムの導入も効果的です。これにより、作業効率の向上やヒューマンエラーの削減、安全性の強化など、多方面からの業務改善が期待されます。
動画マニュアル
動画マニュアルは、倉庫作業の内容や手順、注意点などを視覚的に伝える教育ツールとして活用できます。動画を用いた教育には以下のような効果があります。
教育時間の短縮
動画マニュアルは個々の理解度や習熟度に応じて何度も繰り返し視聴できるため、従来の対面指導よりも効率が良く、教育時間の大幅な短縮につなげられます。
動画マニュアルを活用している「ASKUL LOGIST株式会社」では、2時間ほどかかっていた教育時間が導入によって30分程度にまで短縮することに成功しています。
標準作業の徹底
動画マニュアルを活用することで、各工程における正しい手順や動作を誰にでもわかりやすく伝えられます。これにより、作業品質のばらつきや担当者への依存を防止し、現場全体で業務の標準化を推進することができます。
従業員の安全意識向上
動画を用いた安全教育は、物流現場における危険な行為や状況を視覚的に伝えられるため、従業員の安全意識を効果的に高めることができます。実際の事故事例やシミュレーション映像を通じて具体的なイメージを持たせ、安全対策の重要性をより深く理解させることが重要です。
例えば、物流企業の株式会社近鉄コスモスでは、倉庫作業で使用するフォークリフトのNG操作を動画にまとめて、社内に展開する形で安全意識の向上を図っています。
※「tebiki現場教育」で作成しています。
同社のように、動画マニュアルを安全教育に活用する事例は物流現場全体で広がっています。動画マニュアルの効果や安全意識の向上に向けた取り組みなどについては、以下の資料で詳しく解説していますので、下のリンクをクリックして資料をご覧ください。
>>「~物流業の事例から学ぶ~動画マニュアルを使った安全教育の取り組みと成果」を見てみる
WMS(倉庫管理システム)
WMS(倉庫管理システム)は、物流倉庫における入荷から出荷までの一連の作業を効率化するためのシステムです。
WMSの導入によって在庫情報や業務進捗をリアルタイムで把握できるようになり、特に手作業や紙ベースの運用を続けている現場では、作業の効率や正確性が大幅に向上します。これにより、納期遅延や誤出荷といったトラブルが減少し、顧客満足度の向上にも寄与します。
在庫管理システム
在庫管理システムは、在庫情報を正確かつ効率的に把握・管理するためのシステムです。従来のアナログ管理で起こりやすい記入ミスや集計ミスを削減できるため、在庫管理の精度が飛躍的に向上します。
その結果、過剰在庫や欠品といった在庫トラブルを防ぎ、安定した供給体制を維持することができます。
物流ロボット
物流ロボットは、倉庫作業の省人化を推進するうえで欠かせない存在です。荷物を自動運搬するAGV(無人搬送車)や、出荷指示に従って商品を取り出すピッキングロボット、商品を自動的に包装する自動梱包機など、多様な機器が物流現場の負担軽減に役立てられています。
コストはかかるものの、深刻な人手不足で業務進行が停滞しているような現場では、物流ロボットの導入が業務の効率化・安定化に大きく貢献するでしょう。
物流倉庫の課題を解消した企業の好事例
物流倉庫の課題解決に成功した企業の事例は、業務改善のヒントや効果的な手法を示してくれます。ここでは、実際に課題を克服し、倉庫作業の効率化を実現している「ソニテック株式会社」の事例を紹介します。
同社は、新築戸建て住宅に使用される建築副資材を提供する事業を展開している企業です。これまで物流倉庫ではマンツーマン教育を必須としていたため、時間やコストの負担が大きく、指導者の日常業務にも支障が出ていたといいます。
この課題を解消するには、直感的に作業内容を理解できる「動画」による教育が有効と考え、動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」を導入。従来のマンツーマン教育から動画を活用した教育に切り替えたことで、かつて3か月かかっていた教育時間が実質ゼロになり、さらには教育の質の均一化や業務の標準化などさまざまな効果がもたらされたそうです。
同社の事例を詳しく知りたい方は、インタビュー記事「3ヶ月間の直接指導を動画マニュアルで完全に置き換え、業務の効率化を実現」をご覧ください。
tebiki現場教育の機能やサービス内容、プランなどは以下の資料で紹介しているので合わせてご覧ください。
まとめ
物流倉庫の現場では、作業品質のばらつきやヒューマンエラー、特定の従業員に依存する属人化など、さまざまな課題が発生しています。これらを解消するには従業員への教育や倉庫環境の見直しが必須であり、標準作業のマニュアル化や多能工化、5S活動の実施、レイアウトの最適化などが有効な改善策となります。
なかでも「作業の標準化」は物流現場の効率化に欠かせない取り組みであり、実際の動作を視覚的に伝える「動画マニュアル」が重要な役割を果たします。倉庫業務の属人化が進行している、在庫差異や誤出荷が頻発しているなどの課題を抱えている現場は、動画マニュアルによる標準作業の徹底を図ることをおすすめします。当記事で紹介した「tebiki現場教育」について詳しく知りたい方は、以下のリンクをクリックして資料をご覧ください。