食品工場におけるアレルゲン管理は、消費者の安全を守るために必要不可欠です。アレルゲンの混入を防ぐことで健康被害を未然に防ぎ、食品の安全が確保されます。しかし、「従業員のアレルゲン管理に対する意識が低い」「アレルゲン管理を適切に実施できていない」とお悩みの方も多いでしょう。
そこで本記事では、食品工場でのアレルゲン管理方法や食品事故を防ぐための教育について詳しく解説します。
食品事故を未然に防ぐためには、従業員への教育がカギとなります。手間を減らしながら効果的に教育するには「動画マニュアル」の活用がおすすめです。動画マニュアルの教育効果やおすすめのツールは、以下の資料でぜひご確認ください。
目次
対策をする前に、アレルゲン情報の確認を!
アレルゲン対策を実施するために、まずアレルゲンに関する以下の情報を整理しましょう。
原材料に含まれるアレルゲン
アレルゲン対策の第一歩は、原材料に含まれるアレルゲンを確認することです。
食品アレルギーを持つ消費者にとって、少量のアレルゲンでも深刻なアレルギー反応を引き起こす引き金になります。仕入れ先から、アレルゲン含有状況を記載した資料(原材料規格書、仕様書、分析証明書など)を必ず受け取って管理しましょう。
アレルゲンに関する資料を受け取ったら、製品に含まれるアレルゲンの一覧表を作成するとよいでしょう。製品の表示作成や製造工程上で管理すべきアレルゲンの把握に役立ちます。
▼製品に含まれるアレルゲンの一覧表(例)▼
アレルギー表示の対象となる原材料は、後述する『アレルゲン管理すべき原材料』で解説します。
仕入れ先へ規格変更がないか
どんなに対策を行っていても、仕入れ先の規格変更によってアレルゲンと製品表示の不一致が生じるおそれがあります。
仕入れ先には、情報共有なしに規格変更しないよう依頼し、対応できる体制を整えましょう。
クロスコンタミネーションの危険性
クロスコンタミネーションとは、ある製品から別の製品へアレルゲンが移行してしまうことを指します。
製品に直接アレルゲンが含まれていなくても、工場内でアレルゲンを含む原材料の取り扱いがある場合、アレルゲンが含まれた製品が意図せず消費者に届いてしまう危険性があります。とくに気を付けなければならないのは以下の点です。
- 原材料の動線
- 人の動線
- 廃棄物の動線
- 共有する機械器具
- (粉体の場合)空気の流れ
食品工場におけるコンタミネーションの原因、防止策などを以下の記事でわかりやすく解説しています。詳しく知りたい方はぜひご覧ください。
関連記事:【事例あり】食品衛生の「コンタミネーション」とは?防止策や原因も解説
食品工場でのアレルゲン管理方法
それでは、実際に食品工場でアレルゲン管理を行うための具体的な方法を解説します。以下の方法を実践し、安全な食品製造を目指しましょう!
アレルゲン管理の目的やアレルギーの知識の共有
1人の従業員がアレルゲン管理を怠るだけで、消費者に健康被害をもたらし、企業全体の信頼を損なう可能性があります。アレルゲン管理を徹底するためには、まず「全従業員がアレルゲン管理の目的やアレルギーについて正しい知識を持つ」ことが重要です。
アレルゲン管理の不備でどのような事態が発生するかも共有すると、重要性をより実感できるでしょう。定期的にテストを行うなどして教育効果を確認すると、アレルゲン管理に対する意識の向上に繋がります。
直接製造に関わる人だけでなく、原材料の仕入れ担当者 / 清掃業者 / 物流業者を含めた全員にアレルゲン管理について教育を行いましょう。
アレルゲン管理のための教育としておすすめなのが、動画マニュアルの活用です。詳しくは、後述する『アレルゲン管理には「動画による従業員教育」が有効』で解説します。
製造ラインや製造機器の洗浄
製造ラインや製造機器の洗浄には、アレルゲンを残さないための手順を定める必要があります。以下の内容を洗浄方法に盛り込むことをおすすめします。
- 対象とする機器とエリア
- 洗浄するタイミング
切替時、終了時、製造ライン上にアレルゲンがこぼれた場合など - 洗浄用具、洗剤
ブラシやスポンジ、モップ、ふきんなど - 洗浄作業手順
- 実施状況のモニタリング方法
- 適切に行われなかった場合、またはアレルゲンが残っていた場合の対応方法
洗浄方法を決めた後は、その方法で本当にアレルゲンが除去できるかを調べる必要があります。さまざまな条件下でふき取り検査や製品検査を行い効果を確かめましょう。
製造過程でのクロスコンタミネーション対策
クロスコンタミネーションとは、ある製品から別の製品へアレルゲンが移行してしまうことを指します。製造過程では異なる製品を同じ製造ラインで作成していたり、同じ機器を使用していたりすると発生しやすくなります。
対策を立てる上での考え方は、「クロスコンタミネーションのおそれのあるシーンをできるだけ少なくする」ことです。具体的には、「製造空間と時間を分ける」と「専用器具を使用する」などの対策があります。
製造空間と時間を分ける
まず、製造空間を分けることはできないか、または十分に離すことはできないかを検討しましょう。特定のアレルゲン専用エリアを設けたり、パーテーションを取りつけるなどして、物理的に接触を防ぎます。
十分に製造空間を分けることができない、十分離すことができない場合は、製造時間を分けましょう。たとえば、アレルゲンを含まない商品から製造する・終業時にしっかり洗浄するなどスケジュールを立てておくとよいでしょう。
専用器具を使用する
原材料にアレルゲンを含む食品がある場合、器具を共有せずに専用器具を使用しましょう。間違えて器具を使用させないために、色や形で区別できる見た目のものを選ぶのがおすすめです。
たとえば、卵ならば青、乳ならば赤と色を決めて、スコップや容器などを色で区別しアレルゲン管理をします。もし専用化できないのであれば、洗いやすい形のものを選び、すみずみまで取り除けるようにしましょう。
ラベルや包材の管理
機器の洗浄やクロスコンタミネーションと比較すると軽視されがちな項目ですが、2022年に発生した自主回収の大半は「不正表示」によるものでした。ラベルシールの誤った貼り付けや貼り忘れが主な原因とされています。従業員には「1枚のラベルの貼り間違えが消費者の健康を脅かす」という認識を持たせることが必要です。
さらに、以下の対策を行うことで、ラベルや包材の管理を徹底することができます。
- ラベルシールや包材は、指定された場所に保管する
- 使用しないラベルや包材は全廃棄する
- ラベルシールに、表示漏れがないか・文字のかすれや印字不良がないか確認する
- 誤ったラベルや包材を付けてしまった時の対処法を定めておく
ふき取り検査(A3法)
ふき取り検査(A3法)とは、製造空間や製造ラインにアレルゲンが残っていないかを専用のシートで拭き取って確認する方法です。10秒程度で誰でも簡単に確認でき、比較的安価なため、多くの食品工場で日常的に行われています。
ふき取り検査(A3法)のポイントは、食品が直接触れる場所、接触頻度の高い場所、洗浄しにくい場所など、アレルゲンが残りやすい場所を選ぶことです。検査結果は必ず記録し、定期的に分析します。これにより、アレルゲンの残留傾向や問題箇所を特定できます。
フードディフェンス
フードディフェンスとは、悪意のある第三者の手によって、意図的な異物混入を防ぐ取り組みのことです。具体的な対策は以下をご覧ください。
- 従業員の教育
- 私物の持ち込みの制限
- 移動のできる範囲を固定化
- 訪問者への対応
- 無人の時間帯の防犯
菓子やアイスクリームを製造する森永製菓でも、フードディフェンスに取り組んでいます。従業員が安全・安心を最重要視するよう意識を高め、私物持ち込み制限やカメラによる監視を行い、リスク低減に努めているそう。
フードディフェンスについてもっとよく知りたい方は以下の記事をご覧ください。フードディフェンスの概要から発生した事件までわかりやすく解説しています。
関連記事:【対策事例あり】フードディフェンスとは?事件から学ぶ「食品防御」の重要性
アレルゲン管理すべき原材料
特定原材料(8品目)
食品アレルギーの発症数が多く、重篤度が高いことから表示が義務化しているもの。
- えび
- かに
- くるみ
- 小麦
- そば
- 卵
- 乳
- 落花生(ピーナッツ)
2023年5月より、くるみが「特定原材料に準ずるもの」から「特定原材料」に変更されました。これは、くるみによるアレルギー症例が著しく増加し、この傾向が続いていくと予測されたためです。今後も症例数によっては「特定原材料」への追加が検討される場合があります。
特定原材料に準ずるもの(20品目)
特定原材料と比較すると症例数が少ないため、表示することが推奨されるもの。
- あわび
- いか
- いくら
- オレンジ
- キウイフルーツ
- さけ
- さば
- しらす(いわし)
- スイカ
- 大豆(遺伝子組換え)
- たけのこ
- ナッツ類(アーモンド、カシューナッツ、くるみなど)
- バナナ
- まつたけ
- みかん
- もも
- やまいも
- りんご
- レモン
- ワカメ
ずさんな管理によるリスクとは?アレルゲン管理の目的
ずさんなアレルゲン管理は、消費者の健康被害リスクが高まります。もし製品を摂取した消費者がアレルギー反応により重い症状を引き起こしてしまった場合、訴訟問題に発展することも。さらに消費者からの信頼が失われ、顧客離れにもつながります。
たとえば、大手コンビニエンスストアのローソンが販売する「サラダチキン」を食べた人から「小麦アレルギーの症状が出た」という問い合わせがありました。調査の結果、パッケージに記載されていないアレルギー物質として「小麦、卵、乳成分」が混入していたことが判明。これにより、ローソンは6万個以上の製品を自主回収し、多大な費用を負担することになりました。
つまり、ずさんな管理によりアレルゲンが含まれていることが判明すると、消費者の健康を脅かすと共に、自主回収するコストが発生。さらに企業の信頼性の低下につながります。
参照元:LAWSON「日配食品「大きなサラダチキン 柚子こしょう風味」の回収のお詫びとお知らせ」
アレルゲン管理には「動画による従業員教育」が有効
アレルゲン管理は、厳密な手順や操作が求められます。そのため、口頭での説明や文章だけでは伝えきれない細かな作業もあるでしょう。動画マニュアルの場合、視覚的にわかりやすく正しい方法を理解しやすいため、有効だと言えます。
以下では、アレルゲン管理における動画マニュアルの有効性をより詳しく解説します。
視覚的な情報による理解度向上
動画は目と耳で情報がわかるため、従業員の理解度が高まり実践に進みやすくなります。
たとえば、アレルゲンを残さない器具の洗浄方法やふき取り検査(A3法)の手順などは動画化することで、文字や紙のマニュアルでは知りえなかった細かい動きやタイミングを正確に理解することができます。
実際の作業環境での手順をリアルタイムで示せる動画だからこそ、作業の流れを具体的にイメージしやすくなり学習効果を高められるでしょう。
教育内容の画一化
全従業員が同じ動画で教育を受けられるため、教育者の教え方やニュアンスによる理解度の差がなくなります。また、教育の品質が均一化されることで、知識やスキルのばらつきを減らします。
教育時間やコストの削減
OJTの一部を動画に置き換えることで、教育時間や教育者の人件費の削減が可能です。実際に動画マニュアルを導入したある企業では、入職時の研修の手間を1/10にまで削減できました。
自己学習の促進
動画による従業員教育は、反復学習を容易にするため、アレルゲン管理の知識を定着させるのにとても効果的です。動画内での実演や詳細な説明を繰り返し視聴することで、従業員は自信を持って作業を行えるようになります。
動画マニュアルを簡単に作成するなら「tebiki」
動画マニュアルを簡単かつスピーディーに作成するには「tebiki」が最適です。tebikiとは誰でも簡単に動画マニュアルが作成できるツールです。ここでは、tebikiの特長をご紹介します。
▼動画マニュアル作成ツール「tebiki」紹介動画▼
「かんたん動画編集」を実現する機能
動画マニュアルtebikiは、いつもの作業をスマートフォンで撮影するだけで、簡単にマニュアルを作成できます。
音声を自動認識して字幕に変換し、編集や図形の追加もクリック1つで行えるため、編集技術やパソコンの知識がなくても作成可能です。
▼tebikiを使った動画マニュアル作成手順▼
他にも現場教育を改善できる豊富な機能
tebikiには、動画マニュアル作成以外の機能も豊富に備わっています。以下の機能を活用することで、アレルゲン管理に関する教育の理解度を高めます。
多言語対応
動画再生画面で「言語切り替えボタン」を押すことで、100ヶ国語以上に自動翻訳されるため、理解しやすい言語を選択できます。アレルゲン管理においては、アレルギーに関する正確な知識を持つことが重要です。多言語対応により、情報がより明確に伝わるため、アレルゲンの危険性を理解するのにとても効果的です。
テスト機能
食品工場ではアレルゲンについて教育する必要がありますが、知識がきちんと付いているのか不安になりますよね。tebikiでは、オリジナルテストの作成も簡単に行えます。あらかじめ回答を入れておけば、自動採点もできるため、従業員の理解度を手間なく確認できます。
(株式会社大商金山牧場の導入事例より)
スキル管理
tebikiには作成したマニュアルと連動できる「スキルマップ機能」が搭載されているため、従業員一人ひとりのスキルを把握して評価や適切な人員配置を行えます。スキルの評価方法をカスタマイズすることも可能なので、独自の評価基準を設定することができますよ。
tebikiの機能詳細や導入効果、導入サポート体制については、以下の資料でわかりやすく解説しています。「動画マニュアルに興味がある!」という方はぜひご覧ください。
教育効果を最大化!食品工場でのtebiki活用事例
動画マニュアルtebikiで教育効果を最大化した食品工場を3社ご紹介します。より多くの導入事例を知りたい方は、以下から導入事例集を無料ダウンロードしてご確認ください。
タマムラデリカ株式会社
▼動画マニュアルtebiki活用事例動画:タマムラデリカ株式会社▼
タマムラデリカ株式会社は、大手コンビニエンスストア向けの専用工場として1991年に創業した食品メーカーです。同社では、紙のマニュアルでは細かいニュアンスが伝わらず、従業員間での指導内容に差が生じていました。教育方法を模索する中でtebikiを知り、導入へと至りました。
その結果、1回あたり2時間かかっていた教育時間を30分に削減成功! さらに、外国人労働者向けの多言語マニュアル作成の手間が省け、動画マニュアルの作成時間も75%の大幅削減を実現しました。
もともと動画マニュアルの内製に取り組んではいましたが、tebiki導入前は動画マニュアルを作成できる人が3名ほどしかいなかったそう。しかし、導入後は作成が簡単なことから20名近くまで増加。一部のメンバーでマニュアルを作成するという体制から、すべての工場の製造部でマニュアルが作成できる体制になりました。
「今後もOJTの効率化や、全社の質の向上のためにtebikiを活用し続けたい」と語るタマムラデリカ株式会社の導入効果を詳しく知りたい方は、以下のインタビュー記事をご覧ください。
インタビュー記事:動画マニュアル作成時間が75%削減!教育体制を強化し、お客様に喜ばれる商品を提供したい
理研ビタミン株式会社
「ふえるわかめちゃん」や「リケンのノンオイル 青じそ」などでおなじみの理研ビタミン株式会社では、紙マニュアルによる業務手順の伝達が難しく、業務にばらつきが生じていました。そこで、簡単に動画マニュアルを導入できるtebikiを知り、導入に至ります。
その結果、OJTの教育時間が短縮! 業務が伝わりやすくなり、教育のムラがなくなりました。さらに、業務の動きや音など文字以外の情報も伝えられるため技術伝承が推進。作成が簡単なため「想定以上に多くのマニュアルを作成できています」との声も。
理研ビタミンが実感しているtebikiの導入効果や、動画マニュアルを社内展開させたコツについては、以下のインタビュー記事をご覧ください。
インタビュー記事:動画マニュアル導入事例│品質保証部門と製造部門がONEチームで取り組んだ業務標準化と技術伝承
株式会社大商金山牧場
食肉の生産から加工・販売までを手掛ける株式会社大商金山牧場。同社は、教育者が自分の教えやすい形で教育しているため、簡略化されてしまっている部分や会社の基準とずれた教育を行っていたことを課題視していました。そこで、豊富な機能を持つ動画マニュアルtebikiを導入することに。
その結果、教育内容の属人化が解消されただけでなく、教育の質も向上しました。実際に、中途採用で入社した方に衛生管理マニュアルを確認してもらったところ。「中途採用でこんなにしっかり教えてもらったのは初めて」と好評でした。
「tebikiの新機能も魅力の1つ」と語る大商金山牧場の導入事例やtebikiの新機能を詳細に知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
インタビュー記事:衛生管理教育を徹底し、食肉の安全性を確実なものとするために動画マニュアルを活用!
アレルゲンに関するよくあるQ&A
アレルゲンに関するよくある疑問をまとめて解決します。
アレルゲンとアレルギーの違いは?
アレルギーは食べ物だけでなく、花粉、ほこり、ダニなどに自分の体を過剰に防御して起こる症状のことをいいます。一方、食品表示法第4条第1項において、アレルゲンは食物アレルギーの原因となる物質のことを指しています。
アレルゲンは加熱すると無害になる?
無害にはなりませんが、一部の食品は加熱することで症状が出にくくなります。
たとえば鶏卵や鶏肉は、加熱によってタンパク質が変性しアレルゲン性が低下します。しかし、変わらず症状が出る人もいることから「アレルゲンは無害にはならない」と考えた方がよいでしょう。
まとめ
食品工場におけるアレルゲン管理方法と、食品事故を防ぐための教育方法について解説しました。1人の従業員がアレルゲン管理を怠るだけで、企業全体の信頼を損なう可能性があります。そのため、全従業員に適切な教育を行い、徹底したアレルゲン管理を行うことが重要です。
アレルゲン管理の教育には、洗浄方法やふき取り検査(A3法)の手順などの細かい動きが正確に伝わる動画マニュアルがおすすめです。とくに動画マニュアル「tebiki」は、いつもの作業をスマートフォンで撮影するだけで、簡単にマニュアルを作成できますよ。
tebikiの機能やサポート体制について詳しく知りたい方は、以下の資料をダウンロードしてご覧ください。