現場改善ラボ 記事一覧 お役立ち情報 産業用ロボットの点検・メンテナンスとは?現場で実践する安全点検と保全のポイント

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産業用ロボットの点検は、労働安全衛生規則で定められた明確な義務です。しかし、現場の点検表が「とりあえずのレ点チェック」と化し、ルールが形骸化しているケースは少なくありません。事実、こうしたルールの軽視や未遵守が、作業者の挟まれといった死亡事故という取り返しのつかない事態を招いています。

ベテランの退職が迫る中、新人や外国人スタッフを含めた全員が安全に作業するには、属人的な点検から脱却する教育体制が必要です。そこで本記事では、法令に基づく点検の基本から現場課題を整理し、誰もが同じ基準で異常に気づける「作業標準化」の方法を解説します。

産業用ロボット点検の基本|法令と安全ルール

産業用ロボットの安全稼働には、法令の理解と遵守が必須です。現場でルールを守らなかった結果、労働災害が起き、最悪の場合は死亡事故が起きる可能性があるからです。まずは法的義務と安全を守るルールを次の順に整理します。

  • 労働安全衛生法と産業用ロボット特別教育 
  • ロボット点検は「法令+メーカー推奨」で考える
  • ロボット点検の担当者(オペレーター・保全・メーカー)

労働安全衛生法と産業用ロボット特別教育 

ロボットの可動範囲内で作業を行うには、作業員の特別教育の受講が必須です。知識を持たない無資格者が操作すれば、法に違反した挙句、誤作動による事故を招く危険性が高いからです。労働安全衛生規則第36条*1に基づくと、教示や検査業務には特別教育の実施が義務付けられています。また同規則第150条の4に沿えば、運転中の接触を防ぐ安全柵の設置も遵守すべき必須要件に他なりません。

現場のルールを守らず、形骸化した点検を放置することは明確な法令違反であり、労働災害に繋がります。属人化を排し、有資格者のみがルールを厳守して点検作業にあたる現場を構築してください。

ロボット点検は「法令+メーカー推奨」で考える

ロボットの点検基準は、法令を守りつつ、メーカー推奨項目に合わせて設定すべきです。労働安全衛生規則第150条の5*1に沿えば、修理や検査時の厳格な安全措置は必須となります。

現場では法令要件を満たしつつ、メーカー指定の定期点検を確実に実施する体制を整えましょう。具体的には、自社の設備環境に合わせ、形骸化しない点検のルールを定めることが有効な対策です。

ロボット点検の担当者(オペレーター・保全・メーカー) 

ロボット点検は、作業の難易度に応じて担当者を明確に分ける必要があります。役割分担が曖昧な状態では、スキル不足による誤操作などを招くからです。労働安全衛生規則第150条の5*1に沿えば、修理や点検時には運転停止や施錠といった厳格な措置が義務付けられています。

また、JIS B 8433-2*3の規定に基づくと、特定のスキルを必要としない作業はオペレーターが行い、専門知識が必要な保全作業は「技能がある人」が行うことが望ましいとされています。具体的には、日常的な外観確認はオペレーター、メーカーが推奨する専門的な定期点検は保全部門、高度な整備はメーカーやSIerへ委託するといった「線引き」が重要です。このように法規や規格に準じて役割を体系化し、現場の属人化を防ぐ仕組みを構築しましょう。

産業用ロボットの主な故障原因とトラブル事例

ロボットの故障は、生産ラインの停止や労災を招く深刻な問題です。原因として、形骸化した点検による不備が考えられます。ここでは、実際の故障原因から、予防保全の重要性を次の順に改めて解説します。

  • ケーブル断線・摩耗 
  • グリスの不足・劣化 
  • 原点ズレ・位置ズレ 

ケーブル断線・摩耗 

ロボットの故障の中で、ケーブル断線や被覆の摩耗は頻発するトラブルです。具体的には、アームの反復動作による金属疲労や配線の取り回し不良が原因で発生します。点検で配線の摩耗などを見逃せば、断線の原因となり、結果としてロボットの故障となるでしょう。

また、断線で漏電による作業員の「感電」やショートが火種となる「火災」といった災害が同時に起きる事態を招きかねません。ベテランの退職が進む中、こうした微細な摩耗を「ただの傷」と見過ごさず、誰もが火災や事故の予兆として正しく認識できる目視点検の標準化が必要です。

グリスの不足・劣化 

減速機や各軸を支えるグリスの不足と劣化は、致命的な動作不良の引き金となります。潤滑が不十分になることで内部の摩擦が激しくなり、部品の破損や焼き付きを招くからです。

現場の「レ点チェック」で異音やグリス変色などの初期兆候を見落とせば、安全な設備稼働は担保できません。ひとたび減速機が破損すれば、修理費用と数日間にわたる長期間のライン停止が発生するでしょう。ベテランの感覚に依存せず、若手や外国人も正確にグリスの状態を判断できる教育体制の構築が必須と言えます。

原点ズレ・位置ズレ 

ロボットの原点ズレや位置ズレは、品質不良や周辺設備との衝突を引き起こす重大なトラブルです。エンコーダの異常や治具との干渉により、設定したティーチングポイントが狂ってしまうからです。わずかなズレを放置した結果、安全柵に衝突したりワークを落としたりする事故が現場で起きています。

厚生労働省の発表*4によると、令和6年度の製造業の機械による「はさまれ・巻き込まれ」の死傷者は4,692人です。一概には言えませんが、原点ズレ・位置ズレのロボットの可動範囲内に入って「はさまれ・巻き込まれ」による事故は起こりえます。

そのため、誰もが点検によって原点ズレ・位置ズレの異常を早期に発見し、安全な手順で復旧できる教育体制が現場には必要です。

ロボットの日常点検と保全項目

産業用ロボットの点検は、業務の難易度に応じた「3層の役割分担」で考えましょう。「誰が・何を・どこまで点検すればいいか?」の役割が曖昧なままでは「ここの他の人がやってるでしょ」といった他人ありきの意識が芽生え、ルールが形骸化してしまいます。ここではさらに掘り下げて次の3つの役割を考えます。

  • 作業開始前点検(オペレーターの役割) 
  • 設備保全による定期点検(保全担当の役割) 
  • メーカー・SIerによるメンテナンス(重整備) 

作業開始前点検(オペレーターの役割) 

作業開始前点検では、オペレーターが主体となり「安全装置が正しく機能するか」を必ず確認すべきです。点検や清掃中に第三者が不用意にスイッチを入れることが、事故の原因になりえるからです。

労働安全衛生規則第150条の5*1に沿えば、検査等の作業時には起動スイッチへの施錠など、他人に操作させないための措置を講じる義務があります。現場では操作防止のための措置の有効性を確認した上で、安全柵の施錠や破損、非常停止ボタンの動作を点検します。

さらに、ケーブル外観の擦れを目視で確認し、空圧機器を使用する設備ではエア圧の数値もチェックしてください。こうした命を守るルールを軽視し、形骸化したレ点チェックで済ませることは法令違反に他なりません。誰もが確実に異常を見抜けるよう、自社の設備環境に合わせた点検基準を明確化することが重要です。

設備保全による定期点検(保全担当の役割) 

月次や年次の定期点検は、専門知識を持つ設備保全の担当者が実施すべき役割となります。日常点検では見抜けない内部の劣化を早期に発見し、突発的なライン停止や事故を防ぐためです。

JIS B 8433-2*3の指針に沿えば、専門スキルを要する保全作業は技能がある人だけが行うことが望ましいとされています。

具体的には、各項目の判断基準を明確にして保守を実施しましょう。グリスは変色や硬化が見られる場合、補充ではなくて、交換が必要であると考えられます。正常な色は機種により異なるため、初回点検時の状態を記録することが重要です。

ケーブル被覆は、傷や摩耗が内部の編組や芯線に達した状態が交換の目安となります。エンコーダバッテリーは1〜2年、または警告アラーム点灯が交換時期の目安です。バッテリー切れはデータ消失を招くため、アラーム前の定期交換をおすすめします。

ただし、上記の内容は一般的な目安であり、正確な基準はメーカーマニュアルを参照してください。点検基準を明確化して形骸化を防げば、部品の焼き付きや原点ズレを未然に防げると考えます。

メーカー・SIerによるメンテナンス(重整備) 

高度な専門性を要する重整備については、無理に内製化せずメーカーやSIerへ外部委託するべきです。現場で安易に調整を行えば、ロボットの精度低下や予期せぬ誤作動を招き、事故に繋がるからです。

例えば、軸バックラッシュの測定やモータ電流値の確認、専用ツールを用いるサーボ診断などがこの領域に該当します。こうした専門的な作業は現場の担当者が不用意に触らないよう、社内で明確な「線引き」を行うことが求められます。

ルールを逸脱した場当たり的な対応は、死亡事故などの取り返しのつかない事態を引き起こしかねません。自社で抱え込まず外部の専門知識を活用し、現場は異常の早期検知の仕組み化に注力しましょう。

ロボット点検でよくある現場課題

ロボットの点検ルールが存在しても、現場での運用が追いつかずトラブルが多発しています。形骸化したレ点チェックやベテラン頼りのアラーム対応など、現場の最前線の課題を次の順に解説します。

  • 点検の形骸化と異常の見落とし 
  • アラーム対応や判断基準の属人化 
  • 触れる人が限られる「特別教育」と教育ハードル 

点検の形骸化と異常の見落とし 

既存の点検表があっても、作業の形骸化による異常の見落としは現場の深刻な課題です。日々の生産活動に追われ、点検表へレ点を入れること自体が目的化しやすいからです。

文字だけの曖昧な指示では、若手や外国人スタッフへ正しい判断基準が正確に伝わりません。厚生労働省「外国人労働者安全衛生管理の手引き」*5に沿えば、作業指示の誤解、勘違いは労災に繋がります。そのため、同資料にも記載がありますが、外国人労働者の「分かりました」という返答を額面通りに受け止めるのは極めて危険と言えます。こうした危険は、外国人労働者に限らず、専門用語の知識がない新人にも言えることです。

こうした言葉の壁による「分かったフリ」が、微小なエア漏れや配線の擦れを見逃す原因となるでしょう。異常を放置してルールを破れば、突発的なライン停止や死亡事故を引き起こす恐れがあります。点検の形骸化を防ぎ、誰もが同じ基準で確実に異常を検知できる分かりやすい仕組みの構築が必須です。

アラーム対応や判断基準の属人化 

アラーム対応や異常発生時の判断基準が、特定の担当者に依存する属人化も深刻な問題です。エラーから復旧するための具体的な手順が、一部のベテランの頭の中にしか存在しないからです。ロボットの異常は、ティーチングペンダント上にエラーコードやメッセージとして表示されます。しかし既存の紙マニュアルには解決策が明記されてない場合が多く、現場が混乱する事態は日常茶飯事です。

JIS B 8433-2*3に基づくと、専門的な保全作業は技能がある人が行うことが望ましいとされています。とはいえ、熟練者が長年の勘や経験に頼ってアラームを解除する状態は属人化であるため、放置してはいけません。結果的に特定のベテランが復旧作業を単独で抱え込み、ベテランが不在もしくは退職した後だと現場は混乱することは間違いありません。

知識不足の新人が無理に直そうとすれば、予期せぬ誤作動による事故を招く危険性もあります。ベテランの退職が迫る中、個人のスキルに過度に依存した点検体制は早急に見直すべきです。

触れる人が限られる「特別教育」と教育ハードル 

ロボット操作に必須となる「特別教育」の受講ハードルも、現場を悩ませる非常に大きな課題です。労働安全衛生規則第36条*1に沿うと、可動範囲内における検査や調整には特別教育の実施が必須となります。

特別教育の対象として、近年は外国人労働者が増加しており、多言語での専門的な教育の実施が現場で求められています。具体的には、厚生労働省「外国人労働者安全衛生管理の手引き」*5によると、外国人労働者の日本語能力に合わせた教育や視聴覚教材の活用等が有効とされています。

しかし、指導の時間が多く、また言語の壁は高く、現場で有資格者を十分に育成しきれていない企業は少なくありません。その結果「安全に触れる人」が極端に限られ、異常時に誰も対応できずラインが長時間停止するでしょう。

ルールを守らず無資格者が作業すれば、当然法律に違反しますし、操作ミスによる事故に繋がる危険性が極めて高いと言えます。そのため、言葉の壁を越えて視覚的に理解できる教育手段が必要だと考えます。

点検品質を上げる「作業標準化」と脱・属人化

ロボット点検の属人化を防ぎ品質を向上させるには、形骸化したルールの見直しと作業標準化が必要です。ここでは次の順に脱・属人化のための課題と方法について次の順で解説します。

  • 文字だけの点検表では限界がある理由 
  • 写真・動画を使った作業標準化へのステップ 
  • 動画マニュアルを活用した教育・定着事例 

文字だけの点検表では限界がある理由 

文字だけの点検表では、作業者間で判断基準がブレるため運用に限界あります。「グリスを適量塗布」「ケーブルの緩みを確認」といった曖昧な表現では正解が伝わりません。ペンダントの操作一つをとっても、文字だけでは現場の若手や外国人に正しい手順を教えきれません。

文字に限界を抱えていた企業の児玉化学工業株式会社*6は、多言語が飛び交う現場において紙の手順書は不評でした。教える人によって手順が異なり、暗黙の了解が横行して製品不良を招いていたと言います。そこで文字では伝わらないコツを動画マニュアル「tebiki現場教育」で視覚化し、日本人と外国人の双方へ正しい基準を浸透させました。

課題導入後
・外国人作業者に対する教育が課題
・紙ベースの手順書では伝わらない
・社内のルールが暗黙の了解となる
・指導する人によって手順が異なる
・動画活用で外国人にもルール浸透
・視覚的なマニュアルで正確に伝達
・マニュアル作成工数を大幅に削減
・正しい点検基準を全社で統一完了

児玉化学工業株式会社のように、ベテランの感覚に依存する曖昧な表現を排除し、視覚的に伝わる仕組みへの移行が現場改善に必要と言えます。

写真・動画を使った作業標準化へのステップ 

属人化を解消するには、写真や動画の活用が極めて有効です。まずは明日からできる活動として「正常な状態」と「異常な状態」を写真で比較できるよう、既存の手順書を改善しましょう。その上でペンダント操作やグリスアップなど、動きを伴う点検箇所は動画で残す手法をおすすめします。

事例として株式会社神戸製鋼所*7では、OJTの教え方の違いから作業品質に深刻なバラつきが生じていました。そこで、紙の標準書と動画マニュアル「tebiki現場教育」を使った組み込んだ結果、教育のムラが減りマニュアル作成時間も短縮されています。

課題導入後
・紙マニュアルで詳細が伝わらない
・紙マニュアルは作成時間がかかる
・OJTは教育内容にムラが生じる
・作業者の出来栄えにバラツキあり
・動画化で作業の詳細まで伝達可能
・動画導入により作成時間を短縮化
・動画の活用でムラのない教育実現
・作業者の出来栄えバラツキが低減

現場に出る前に動画で予習させることで、指導者が付きっきりで行うOJT時間を約3割も削減できたとのことです。徐々に視覚化を進める無理のない移行をしてみましょう。

動画マニュアルを活用した教育・定着事例 

作業標準化を現場へ定着させるには、必要な時にすぐスマートフォン等で確認できる環境づくりが有効です。教育直後は正しい手順で点検できても、時間が経つと自己流の危険な作業に戻ってしまうこともあるからです。現場でアラーム解除手順等をいつでも確認できれば、こうした課題を解決できます。

明和工業株式会社の事例*8に基づくと、外国人作業者へ標準作業が正しく伝わらず、キズ不良が多発していました。そこでQRコードを読み取ると、モニターに母国語字幕の動画が自動再生される仕組みを導入しています。

課題導入後
・言語の壁で標準作業が伝わらない
・紙の標準書では作業にバラつき有
・混流生産で全作業を覚えられない
・誤った作業手順により不良が発生
・自動翻訳機能で外国人へ確実伝達
・いつでも動画を閲覧できる環境へ
・工程内におけるキズ不良率を改善
・職制の意識が変わり細部を標準化

結果として、作業のバラつきが消え、工程内におけるキズ不良率を4.5%から1.5%へ低減させました。いつでも正しい基準にアクセスできる環境の整備が、国籍を問わず現場の安全水準を向上させます。誰もがすぐに手順を理解できる現場にして、点検の属人化を防ぎましょう。

まとめ|ロボット点検は「仕組み化」が重要

産業用ロボットの点検を確実に行い労災を防ぐには、個人の努力ではなく組織の「仕組み化」が重要です。法令順守や役割分担のルールを定めても、文字だけのマニュアルでは現場へ正しく定着しないからです。形骸化したレ点チェックやベテランへの過度な依存は、予測不可能なトラブルや重大な死亡事故を招きます。

こうした事故を防ぐには、言葉の壁を越えて伝わりやすい動画マニュアルなどの視覚的な標準化が極めて有効と言えます。いつでも正しい手順をスマートフォン等で確認できる環境があれば、若手や外国人も同じ基準で異常に気づけます。

ベテランのカン・コツを誰でも理解できるようにして、属人化を排除し、誰もが安全に作業できる教育体制を構築してみましょう。

参考元/引用元

*1:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」

*2:日本産業規格の簡易便覧「JISB8433-1:2015 ロボット及びロボティックデバイス」

*3:日本産業規格の簡易便覧「JISB8433-2:2015 ロボット及びロボティックデバイス」

*4:厚生労働省「令和6年労働災害発生状況」

*5:厚生労働省「外国人労働者安全衛生管理の手引き」

*6:児玉化学工業株式会社「手順書作成の工数は紙の1/3になったと思います。動画で作るのはかんたんだし、学ぶ側にもわかりやすいですよね。」

*7:株式会社神戸製鋼所「動画を活用した現場の人材教育効率化と作業標準化」

*8:明和工業株式会社「自動車内装部品の製造工程における外国人教育に動画マニュアルを活用し、工程内不良を1/3まで削減」

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