CBMとは、IoT技術を活用した次世代の予知保全のことで、設備・機械の状態に応じてメンテナンスを行う新しい保全方式です。
しかし、定義だけ聞いても「CBMは具体的にどうやればいいの?」「もっとCBMと現場の関わりを知りたい!」「CBMの実施事例を教えてほしい!」といった疑問や悩みもあるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、CBMの定義からはじめ、TBMやBDMとの違いや、CBMの導入が製造現場にどのようなメリットをもたらすのか、具体的な導入プロセスについて詳しく解説し、JR東日本や東急電鉄といった企業の事例を紹介します。
この記事を読めば、CBMが製造現場でどのように導入され、どのような効果を生み出しているのかを理解できるでしょう。この記事を通じてCBMを理解し、現場での活用を検討してみてください。
また、このような設備保全業務はノウハウが属人化しやすいという課題があります。現場改善ラボでは、設備保全業務の属人化をどのように解消するか?専門家が解説する動画を無料でご覧いただけますので、本記事と併せてご覧ください。
目次
CBMとは?
CBMとは、Condition Based Maintenanceの略称で、機械や設備を監視して、適宜メンテナンスを行う保全方式のことです。IoTやAIなどの先端技術を活用し、設備の劣化や故障といった事態がいつ起こるかを監視します。
そして、予測することで、故障や不具合が起こる前に適切な修理が可能になります。結果として、安全かつ安定的な稼働を維持し、生産性の向上が期待できます。
先に設備保全の目的や種類をおさらいしたい方は、以下の記事もご覧ください。
関連記事:設備保全とは?種類と考え方、取り組む重要性や事例を解説!
状態基準保全とも呼ばれる
CBMは状態基準保全とも呼ばれます。状態基準保全の言葉を一言で説明すると「機械などの設備の状態をもとにメンテナンスを行う」という意味です。
たとえば、ある機械が異常な振動を示した場合、CBM(状態基準保全)では情報をリアルタイムで検知することにより、必要なメンテナンスをすぐに行うことが可能です。
CBMが注目されている背景
CBMが注目されている背景には、製造現場の保全・保安力が低下しているという問題があります。設備や機械の経年劣化、保全業務の経験が豊富な検査員の退職、若手検査員の経験不足などにより、現代では企業の保全・保安力の低下が問題となっています。
そのため、デバイスなどを利用したIoTの活用や、AIなどを用いて監視・分析が可能なCBMによる予知保全が現代では注目されています。つまり、DX推進の風が強くなったことにより注目されたと言えるでしょう。
たとえば、若手検査員でも熟練人材と同様の設備管理を実現できるようになり、保全力と保安力の低下を防ぐことが可能です。
CBMが注目された背景にはDX推進があります。DX推進を実現するために、製造業ができる事について専門家が解説した動画がありますので、ぜひ参考にしてみてください。
TBMとは?
TBMとはTime Based Maintenanceの略称で、一定の時間や稼働時間が経過したらメンテナンスを行うという方式のことです。機械や設備の寿命を予測し、故障する前の段階にメンテナンスを行うことで故障を未然に防ぐ考え方になります。
時間基準保全とも呼ばれる
TBMは時間基準保全とも呼ばれます。設備や機械のメンテナンスを一定の時間間隔で行うという意味で、設備や機械の寿命を延ばすことが可能です。時間基準保全では、定期的なメンテナンスにより、機械や設備の劣化を早期に発見し、修理や部品交換を行うことで、故障を未然に防ぐことができます。
わかりやすく例を挙げるとすれば、エアコンのフィルター交換は一定の期間ごとに行うのが一般的でしょう。つまり、エアコンのフィルター交換は時間基準保全の一例と言えます。
CBMとの違い
TBMとCBMの主な違いは、メンテナンスを行うタイミングの基準にあります。
TBMは時間や稼働時間を基準にメンテナンスを行いますが、CBMは設備の状態を基準にメンテナンスを行います。TBMは一定の時間が経過したらメンテナンスを行うのに対し、CBMは設備の状態をリアルタイムで監視し、異常が検知された時点でメンテナンスを行います。
たとえば、TBMではエンジンオイルを一定の走行距離ごとに交換します。一方、CBMではエンジンの状態を監視し、必要に応じてオイル交換を行います。
BDMとは?
BDMとは、Breakdown Maintenanceの略称で、故障が発生した後にメンテナンスを行う方式のことです。BDMは、機械や設備が故障するまでメンテナンスを行わず、故障が発生した時点で修理や部品交換を行うという考え方です。
事後保全
BDMは日本語で事後保全とも呼ばれます。Breakdownは日本語で「故障」、maintenanceは日本語で「保全」や「維持」と訳せますので、BDMの直訳と言えるでしょう。事後保全は、設備や機械が故障した後にメンテナンスを行うという意味です。
たとえば、自動車のエンジンが故障した場合、その時点で修理を行うのが一般的で、事後保全の一例と言えるでしょう。
CBMとの違い
BDMとCBMの主な違いは、メンテナンスを行うタイミングの基準です。
BDMは故障が発生した時点でメンテナンスを行うのに対し、CBMは設備の状態をリアルタイムで監視し、異常が検知された時点でメンテナンスを行います。
例えば、BDMではエンジンが故障した時点で修理を行いますが、CBMではエンジンの状態を監視し、必要に応じて修理を行います。
CBM導入のメリット
CBM導入のメリットとして、主に以下の5つがあります。
- 機械の安定稼働
- 機械の延命化
- メンテナンス頻度の最適化
- 保全業務の標準化が可能
機械の安定稼働
CBMの導入により、機械や設備の状態をリアルタイムで監視することが可能となり、故障の予兆を早期に把握し、必要なメンテナンスを行うことで、機械の安定稼働を実現できます。
予防保全としてのCBMは、故障が発生する前に対応することが可能であり、生産計画に影響を与えるほどの機械の突発的な停止を防ぎ、設備の安定稼働が期待できるので稼働率の最適化を実現できるでしょう。
たとえば、自動車製造工場を例に考えてみましょう。組み立てラインのロボットが突然停止すると、全体の生産が停滞し、大きな損失になります。しかし、CBMを導入することで、ロボットの異常を早期に検知し、予防メンテナンスを行うことが可能となります。結果として、突発的な停止を防ぎ、生産ラインを安定稼働させて最適な稼働率を実現できるでしょう。
稼働率の目安や改善方法、計算方法については以下の記事をご覧ください。
関連記事:稼働率の計算方法は?可動率との違いや目安、改善策、改善事例を解説!
機械の延命化
CBMの導入は、機械の寿命を延ばす効果もあります。
機械の状態をリアルタイムで監視し、異常が検知された時点でメンテナンスを行うことで、機械の過度な劣化や故障を防げます。前もって劣化や故障を防げるため、機械の延命化が期待できるでしょう。
たとえば、風力発電のタービンを考えてみましょう。タービンは、過酷な環境下で稼働し、故障のリスクがあります。そこで、CBMを導入すれば、タービンの状態をリアルタイムで監視し、異常が検知された時点でメンテナンスを行うことが可能です。結果として、タービンの過度な劣化や故障を防ぎ、寿命を延ばすことができるでしょう。
メンテナンス頻度の最適化
CBMの導入により、メンテナンスの頻度を最適化することができます。なぜなら、機械の状態をリアルタイムで監視することで、必要な時だけメンテナンスを行え、不必要なメンテナンスを避けられるからです。結果として、メンテナンスのコストと時間を大幅に削減することが可能となります。
たとえば、製造業におけるCNCマシンは、定期的なメンテナンスが必要です。そこで、CBMを導入することで、マシンの状態をリアルタイムで監視し、必要な時だけメンテナンスを行うことが可能となります。結果として、不必要なメンテナンスを避け、メンテナンスのコストと時間を大幅に削減することができます。
保全業務の標準化が可能
CBMの導入は、保全業務の標準化も期待できるでしょう。CBMではセンサーを備えたIoT機器による監視を行うため、経験豊富な従業員の監視が必要なく、属人化を防げるからです。
結果として、保全業務を標準化しやすく、経験の浅い人材でも比較的対応しやすい環境を作ることが可能となります。
たとえば、製造業におけるプラントの保全業務は、従業員の経験や技術に依存していることが課題となっています。いわゆる属人化です。そこで、CBMを導入すれば、センサーを備えたIoT機器による監視を行えるため、経験豊富な従業員の監視が必要なく、属人化を防げます。結果として、保全業務を標準化し、経験の浅い人材でも比較的対応しやすい環境を作ることができるでしょう。
CBM導入によって業務標準化が行えると解説しました。そこで、具体的に業務標準化を行う方法を解説した動画がありますので、ぜひ参考にしてみてください。
CBM導入のやり方
CBM導入のやり方として、以下の2つが挙げられます。
- IoTの導入
- センサーの活用
IoTの導入
IoTの導入は、CBMの実現に不可欠な要素です。IoTデバイスは、設備の状態をリアルタイムで監視し、データをクラウド上に送信することで、遠隔からでも設備の状態を把握することができます。
IoTデバイスはセンサーを通じて設備の状態を監視し、データをリアルタイムで収集・分析することで、必要なメンテナンスを予測し、適切なタイミングでメンテナンスを行えるでしょう。結果として、マンパワーで行っていた業務を減らすことで作業員の負担を軽減し、生産性を向上させることが可能となります。
センサーの活用
CBMの導入において、センサーの活用も重要です。前節のIoTの導入にも似ている箇所ではありますが、センサーは、設備の状態をリアルタイムで監視し、データをIoTデバイスを通じてクラウドに送信します。
センサーは設備の温度、振動、音、電流などの物理的な状態を監視し、データをリアルタイムで収集・分析することで、設備の異常や故障の予兆を早期に検知することが可能となります。結果として、故障の予防や設備の寿命延長に役立ち、生産性の向上を実現できるでしょう。
IoTやセンサーの導入は、DX時代における製造業には欠かせないと言ってよいでしょう。DX時代の製造業のあり方について解説した動画も現場改善ラボでは視聴可能なので、ぜひ参考にしてみてください。
CBMの導入事例
CBMは実際に、どのような現場でどのように導入されているのでしょうか。導入事例として、以下の2社をご紹介しましょう。
- JR東日本
- 東急電鉄
JR東日本
JR東日本は、CBMを活用して鉄道輸送の安全性と効率性を向上させた企業です。
JR東日本では、センシング技術やICTを活用して、車両や線路の状態をリアルタイムで監視します。必要なメンテナンスを行うことで、故障の未然防止とメンテナンスの効率化を図っています。
たとえば、車両のCBMでは、走行中の車両の機器状態を常時モニタリングし、車両から得られるビッグデータを活用・分析して、自動的に機能の確認や機器の劣化、寿命の把握、異常の把握を行っています。結果として、輸送の安全性・安定性向上を実現しました。
また、線路のCBMでは、ICT等の先端技術やビッグデータを活用して、線路のメンテナンス業務を改善することに成功しています。具体的には、検測装置や撮影装置を営業列車に取り付け、線路状態を高頻度でモニタリングすることで、ビッグデータを活用した線路の管理が可能になりました。さらにAIを活用して効果的なメンテナンス手法を構築しています。
参考元:メンテナンス × CBM~先端技術を活用した技術革新の取組み~
東急電鉄
東急電鉄は、CBMを導入したことにより、鉄道設備の保守業務の高度化を実現させた企業です。
東急電鉄は、日本IBMと共同で開発したCBM支援システムを活用し、鉄道設備の状態モニタリングとリスクスコアの可視化を実現しました。具体的には、遠隔で取得した鉄道設備に関するデータを蓄積・分析し、設備の故障リスクを可視化する機能を整備しました。定期的な点検と比較して、現地検査の見直しによる業務の効率化、夜間の作業負担を軽減、データをもとにスムーズな技術伝承といった効果が期待されています。
また東急電鉄は、適切な設備更新の計画の策定と実行によってコストの抑制や、故障の未然防止による運行の品質維持と向上を目指している企業です。現時点で対象は転てつ機およびレールに限られていますが、今後も順次対象の拡大に取り組む予定とのことです。
CBMで効率的な保全をしよう!【まとめ】
この記事では、CBM(状態基準保全)の導入とメリットについて詳しく解説しました。
CBMの導入事例として、JR東日本と東急電鉄の取り組みを紹介しましたが、どちらの企業もCBMの導入による鉄道設備の保守業務の高度化を実現しており、製造業でのCBM導入の参考になるでしょう。
CBMには、設備の状態をリアルタイムで監視し、状態に応じてメンテナンスを行うことで、機械の安定稼働、延命化、メンテナンス頻度の最適化、保全業務の標準化などのメリットがあります。
設備保全業務はノウハウが属人化しやすいという課題があります。現場改善ラボでは、設備保全業務の属人化をどのように解消するか?専門家が解説する動画を無料でご覧いただけますので、本記事と併せてご覧ください。