かんたん動画マニュアル作成ツール「tebiki」とかんたんデジタル現場帳票「デジタル現場帳票tebiki」を展開する現場改善ラボ編集部です。
人時生産性とは、従業員1人が1時間でどれだけの利益を生み出しているかを示す指標であり、その数値が高いほど、短時間での利益創出が可能となります。ただし、人時生産性を理解し、適切に活用するためには、労働生産性や人時売上高との違いを理解することが重要です。
この記事では、製造業に焦点を当て、人時生産性を向上させるポイントや計算方法、可視化・向上させるために役立つツールなどを紹介していきます。
目次
人時生産性とは
そもそも「人時」とは、従業員1人が1時間でできる作業量を指し、「生産性」はインプットに対して、どれだけのアウトプット(成果)が得られたかを表すものです。
つまり、人時生産性(にんじせいさんせい)」は、従業員ひとりが1時間で生み出せる利益を表す指標のことです。従業員ひとりに焦点をあてた指標で1時間あたりの付加価値を表すことができ、数値が大きければ大きいほど、従業員ひとり当たりの利益が高いと言えます。
労働生産性との違い
人時生産性は従業員ひとりの1時間あたりの粗利益で示す指標であるのに対して、労働生産性は投入した労働量で成果があげられたかを表す指標です。
例えば、ある工場で10人の従業員が8時間働いて1,000個の製品を生産した場合には、労働生産性は1,000個/(10人×8時間)=12.5個/時間となります。
人時売上高との違い
人時生産性は従業員ひとりの1時間あたりの粗利益を示す指標であるのに対して、人時売上高は従業員ひとり当たりが1時間でどれくらいの売上を出したかを表す指標です。
例えば、Bさんが1時間で2000円の売上を上げ、その費用が1000円だった場合を考えれば、Bさんの人時売上高は2000円/時間となります。一方で、人時生産性の式は(売上2000円 – 費用1000円)/ 1時間 =1000円/時間となり、人時生産性は売上だけでなく費用も考慮に入れた結果を示します。
人時生産性の計算方法と具体例
人時生産性の計算方法は「人時生産性=粗利益÷総労働時間」です。
計算式からわかるように、人時生産性を計算するためには、まず粗利益と総労働時間を把握する必要があります。
例えば、製造業の工場で、ある製品の製造にかかる粗利益が1日で500万円、その日に働いた労働者が10人で各人が8時間働いていました。ここで、総労働時間は10人×8時間=80時間です。
つまり、人時生産性は500万円÷80時間=62,500円/時間となり、この工場ではひとりの労働者が1時間働くことで平均して62,500円の利益を生み出しているということがわかります。
製造業の人時生産性を上げるには?向上させるポイント
ここでは製造業における人時生産性を向上させるための具体的な方法を紹介していきます。
現場のボトルネックを可視化する
人時生産性を向上させるためにもまずは、現場でボトルネックになっている箇所を可視化するのが大切です。ボトルネック工程が一箇所でもある場合、全体の生産性だけではなく、従業員それぞれの人時生産性にも大きな影響を及ぼします。
ボトルネック工程を可視化するうえでは、製品1つあたりの作業時間が長い工程、作業員の待機時間が長い工程、稼働率があまりにも高すぎる工程など、様々な視点でボトルネックを可視化するのがポイントです。
製造業の共栄工業株式会社では、製造工程の各プロセスの検査・点検を記録に残してましたが、記録すること自体が目的となってしまい、記録から改善点を見出したり、分析したりすることができずにボトルネックの特定ができない状況に陥っていました。
この状況を改善するために、全工程の作業の流れを可視化するプロジェクトの一環として、帳票のデジタル化に着手した結果、トラブル・ボトルネックが発生した際に素早く予防処置ができる体制を構築することができています。
同社の詳しい事例を読みたい方は、こちらのインタビュー記事をご覧ください。なお、帳票のデジタル化によるメリットは『製造業の人時生産性を可視化・向上させるツール』の見出しで詳しく紹介しています。
作業手順をマニュアル化し、業務の効率化を図る
作業工程や手順がマニュアル化されていない状態では、作業手順や基準などが各従業員に依存してしまい、作業品質のばらつきやスピードにも影響します。
そのため、作業工程ごとの手順やルールなどを明文化したマニュアルを用意し、従業員ごとの作業品質を統一することも大切です。最も効率的な正しい手順で作業することによって、人時生産性の向上も見込めます。
マニュアルと聞くと文書と画像を組み合わせた紙マニュアルのイメージが強いかもしれませんが、製造業全体でマニュアルを電子化する動きがあるのが現状です。実際に自動車関連の部品の製造を担っている大同工業株式会社では、文書マニュアルの活用による業務品質のバラつきを解消するために紙マニュアルを電子化し、「動画マニュアル」を活用しています。
動画マニュアルを活用した結果、部内全体の標準化が進み、業務の効率化・最適化が実現しています。同社の事例を詳しく読んでみたい方は、こちらのインタビュー記事をご覧ください。
なお、動画マニュアルの活用によるメリットは『製造業の人時生産性を可視化・向上させるツール』の見出しで詳しく紹介しています。
従業員の適性を踏まえて人員配置を行う
従業員のスキルや適性に合わせた配置を行うことで、生産性の向上が期待できるため、人時生産性を上げるには「適切な人員配置」を行うことが大切です。
例えば、PC操作が得意な従業員を資料作成の業務に機械操作が得意な従業員を製造ラインに配置するなど、適材適所の配置が人時生産性を上げる方法になるでしょう。
しかし、人時生産性の向上だけを目指して人員配置を行うと、従業員の成長や社内の知識蓄積が阻害される可能性や業務が属人化してしまう可能性もあります。そのため、人時生産性の目標を設定しつつ、パフォーマンス向上につながるような配置を心掛けることが大切です。また従業員の多能工化を図ることで人員配置の幅が広がります。
5S活動を実施する
人時生産性向上に向けては、トヨタから生まれたとされる職場環境の改善手法である5S活動(整理/整頓/清掃/清潔/躾)も有効です。
「5S=職場の片付け」というイメージを持っている方もいるかも知れませんが、単に職場をきれいにするのが目的ではありません。人時生産性の向上をはじめ、3M(ムリ・ムダ・ムラ)の排除や労働災害の未然防止などにつながります。
5S活動に取り組んでいる企業は多いものの、進め方がわからない・定着させることができないなどによって、失敗に終わってしまうケースも多いです。そんな方に向けて、数々の企業で5S改革を行って来た専門家による解説動画をご用意しています。5S活動の具体的な実践方法、5S活動を定着させたうえで生産性を上げる方法などをわかりやすく解説していますので、下の画像をクリックして資料をご覧ください。
>>「生産性を高める5S活動 正しい運用に欠かせない「重要なS」とは」を見てみる
ツールを導入して作業効率を向上させる
人の手による作業を効率化する場合、どうしても限界があるため、人時生産性の向上につながるツールを導入するのも有効な手段の1つです。これまで2人で10時間かけていた業務が、ツールの導入で5時間に短縮できれば、1人あたりの総労働時間は5️時間から2.5時間に短縮でき、人時生産性の向上にも寄与します。
例えば、紙ベースのアナログな手段で行っていた作業にツールを導入することによって、デジタル化が実現し、管理や更新作業にかかる時間を大幅に短縮することが可能です。また、時間の短縮だけではなく、ヒューマンエラーの防止や手直しを減らすことにもつながるでしょう。
製造業の人時生産性を可視化・向上させるツール
ここでは、製造業の人時生産性の可視化・向上につながるツールを紹介していきます。
現場帳票作成ツール
製造現場では、製造日報や点検表、検査成績書などの様々な現場帳票が作成されています。これらを紙やExcelで記録・集計・管理する場合、膨大な工数を要することになり、最も重要な分析による課題の発見・対策ができません。
一方で、帳票作成ツールを利用することによって、帳票の作成・保管・検索・管理に伴う手間が大幅に削減でき、記入やファイリングのミスも防ぐことが可能です。
実際に、紙の帳票をかんたんデジタル現場帳票「tebiki現場分析」によって電子化した株式会社日本電気化学工業所では、手書きと比べてタブレット端末に入力することで、入力ミスの削減や作業時間の短縮が実現しています。
同社で使われている「tebiki現場分析」は、現場帳票をクラウド上でかんたんに作成・記録・承認・管理ができるだけでなく、PCや外部モニターはもちろん、スマートフォンやタブレットのような縦型の端末でも記入や閲覧できる画面になっており、製造現場で使いやすい機能が複数搭載されています。
tebiki現場分析のより詳細な情報は、以下の画像をクリックして概要資料をご覧ください。
動画マニュアル作成ツール
製造業では様々な機器の操作や複雑な作業が発生するため、人によって作業手順や基準にばらつきが生じてしまうケースがあります。手順や基準が統一されていない現場では、作業品質・生産性の低下が発生につながることも。
このようなばらつきを防止するためにも、動画で作業マニュアルを作成できるツールがおすすめです。紙マニュアルやOJTの場合、細かなニュアンスや作業手順が伝わらない・担当者によって教育内容が異なるなどの課題がありますが、動画マニュアルであれば、実際の動きを視覚的に学ぶことができます。
実際に動画マニュアルを活用しているアルバック株式会社では、ボンディング工程に東北工場・九州工場のそれぞれで74分の差があり、生産性の違いを課題として抱えていましたが、約半年間の集中的な取り組みによって製作時間を78分短縮することに成功しています。動画マニュアルを通じて生産性を向上させた好事例と言えるでしょう。
同社の動画マニュアルを活用した生産性向上事例を含め、製造業における動画マニュアル活用事例を詳しく知りたい方は、以下のリンクをクリックして参考資料をご覧ください。
>>生産性向上をはじめとする動画マニュアルによる改善事例集を見てみる
RPA
RPAとは、これまで人の手で行っていた作業をAIや機械学習などのロボット技術を駆使し、自動化する取り組みのことです。PC上で行う定型的な作業をロボットに代替することができ、処理するための手順を登録しておけば自動的に操作が実行されます。
製造現場では、発注データのダウンロードや自社システムへの転記作業、製品の在庫数の確認やシステム間の突合作業など、定型的な事務作業をRPAに置き換えることが可能です。
単純作業やルーティン的な業務を自動化できるため、人的なミスの削減・効率化が実現し、本来リソースを注ぐべきコア業務に集中して取り組めます。
製造業の人時生産性を向上させるうえで注意すべきポイント
製造業において人時生産性の向上は様々なメリットがありますが、向上させるうえではあらかじめ注意しておくべきポイントがあります。
人件費の削減による労働品質低下
人時生産性の向上にあたって、製造コストの中で大部分を占める人件費の削減に安易に踏み切るのはベストではありません。人件費の削減により、短期的には数値の改善が実現するかもしれませんが、中長期的に考えたときの損失が大きくなるリスクがあるためです。
人件費の削減によって、従業員の労働意欲が低下してしまい、モチベーションの低下や優秀な人材の流出などを招くリスクがあります。人員の流出により、残った従業員の作業負担が増加してしまうことも考えられるでしょう。
目先のコスト削減を目指すのではなく、人件費は「投資」と捉えた上で中長期的な視点を持ち、人材育成や労働環境の改善に取り組むことで人時生産性の向上につながるはずです。
労働時間の削減によるパフォーマンスの低下
働き方改革や労働環境の整備などの一環として、製造業界全体で労働時間を削減・短縮する傾向があります。適切に実施されれば、ワークライフバランスやモチベーションの向上につながり、人時生産性の向上にも貢献します。
一方で、労働時間が短縮されたとしても、元々の業務量が調整されていない場合、従業員は短い時間で業務をこなさなければならない状況が発生し、作業品質の低下や隠れ残業によるパフォーマンスの低下などにつながることも考えられます。
そのため、削減した時間で作業が完了するような環境の構築、1人の従業員が複数の業務をこなせる多能工化の促進などが有効です。
【補足】人時生産性が注目される背景
近年、人時生産性が注目されている背景には、以下の2つがあげられます。
- 労働人口の減少
- 日本の生産性の低さ
労働人口の減少
日本は少子高齢化が進行し、労働人口が減少しています。総務省「情報通信白書刊行から50年~ICTとデジタル経済の変遷~」によると、2050年には生産年齢人口が1995年比で29.2%も減少すると見込まれています。
労働人口の減少は、企業にとって人手不足という問題を引き起こし、労働環境の悪化や従業員の意欲低下、離職者の増加を引き起こす可能性があります。なぜなら、人手が不足すると、同じ業務量をこなすために従業員ひとり当たりの負担が増大し、結果として労働環境の悪化や意欲の低下を引き起こすからです。
そこで、少ない人数でも経営が成り立つような仕組みづくりが求められており、そのひとつとして、人時生産性の向上が注目されています。
日本の生産性が低い
日本の生産性は、OECD加盟国の中でも低い水準にあります。公益財団法人日本生産本部「労働生産性の国際比較2024」によると、2023年の時間当たりの労働生産性において、日本はOECD加盟の38か国中29位という結果です。理由としては、日本の労働環境は長時間労働が常態化しており、労働時間あたりの生産性が低下しているからと言えるでしょう。
日本の生産性が低いという問題を解決するためには、働き方改革が必要となります。働き方改革の一環として、人時生産性の向上が求められています。人時生産性を高めることで、同じ時間を使ってより多くの成果を出すことが可能となり、企業全体の生産性の向上につながります。
【業種別】人時生産性の平均値
人時生産性は売上高などの単純な指標と比べて、データの水準を可視化しにくい傾向があるため、目安となる基準を把握しておくのが重要です。ここでは、中小企業庁が調査したデータをもとにして、製造業とその他の業界での人時生産性の平均値について紹介していきます。
製造業における人時生産性の平均
中小企業庁による調査データ「中小小売業・サービス業の生産性分析」によると、製造業の人時生産性は2,837円です。次の見出しで紹介するその他の業界の人時生産性の平均値と比べると平均値が上回っていることがわかります。
製造業は、生産ラインの効率性・製品の品質が高いほど、同じ時間内により多くの製品を生産・販売でき、1時間あたりの粗利が増えるため、生産ラインの効率性や製品の品質が直接売上にそして人事生産性に影響を与えると考えられます。
その他の業界における人事生産性の平均
製造業を除くその他の小売業・飲食業・宿泊業の人時生産性の平均は以下のとおりです。
- 小売業:2,444円
- 飲食店:1,902円
- 宿泊業:2,805円
業界によって人時生産性の平均値は大きく異なり、特に飲食店についての人時生産性は2,000円を下回っていることがわかります。
そのため、業界ごとの特性を理解したうえで、人時生産性の目標を立てることが大切と言えるでしょう。
人時生産性を理解し現場改善にいかそう!【まとめ】
人時生産性は従業員1人あたり1時間でどれほどの利益を生み出しているかを示す指標であり、労働人口の減少や働き方の多様化が進んでいる中で重要度が高まっています。
製造業でも人時生産性の向上は重要な要素であり、ボトルネックの可視化や最適な人員配置、作業手順のマニュアル化などに取り組むなどが重要です。また、人時生産性の可視化につながるかんたんデジタル現場帳票「tebiki現場分析」や作業の標準化につながる動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」の活用も有効な手段と言えるでしょう。
この2つのツールの機能や活用事例、サポート内容などをまとめて確認したい方は、以下の資料をご覧ください。