現場改善ラボ 記事一覧 お役立ち情報 工場のヒヤリハット事例21件を解説!事故対策につなげる方法もご紹介

工場内の安全を確保するには、発生したヒヤリハットを認識し、適切な対策を講じることが大切です。しかし「ヒヤリハットが多発しているが、具体的な対策がわからない」「ヒヤリハットを未然に防ぐための教育方法に悩んでいる」という方も多いのではないでしょうか。

そこで、本記事では工場で発生しやすいヒヤリハット事例とその原因や対策について解説します。ヒヤリハットを活用する方法や、事故防止に有効なツールも紹介するので、安全管理に携わる方は最後までご覧ください。

ヒヤリハットは、労働災害のタネとなる可能性がある小さな出来事です。このヒヤリハットをいかに現場で共有し、事故を防ぐ対策がとれるかが職場の安全を左右するといえるでしょう。
ヒヤリハット対策の手法やコツについては、以下の労働安全コンサルタントによるウェビナー動画もご覧ください。


労働災害を撲滅するヒヤリハット対策の心得 (1)

目次

【8つのシーン別】工場で発生しやすいヒヤリハット事例

厚生労働省による「職場のあんぜんサイト」を参考に、発生した種類ごとのヒヤリハット事例を8つのシーン別に21件ご紹介します。

工場内で発生しやすいケースも多いため、従業員の安全教育や安全対策にお役立てください。従業員の安全意識を高めて継続させる「安全教育の進め方」は、労働安全コンサルタントによる解説動画を以下のリンクをクリックしてご覧ください。

はさまれ・巻き込まれ

挟まれ・巻き込まれに関するヒヤリハットとして、以下の事例が報告されています。

作業の種類ヒヤリハットの状況発生した理由対策
金属製品の切削加工作業(製造業)フライス盤での作業中に切粉をハケで払ったところ、軍手が回転するドリルに巻き込まれそうになった。・清掃中にフライス盤を停止させなかった。

・切粉を除去する際に軍手を着用していた。
・清掃の際はフライス盤を停止させる。

・ドリルに巻き込まれる恐れがある作業を行う際は、軍手を外す。
プレス機械を用いた圧着成形作業(製造業)圧着後の金型を取り出す際、プレス機械の下降中に手を入れてしまい、挟まれそうになった。・下降中にプレスの下に手を入れた。

・設備の安全対策が不十分であった。
・工具を使用し、手を入れる必要がない作業内容に変更する。

・身体の一部が危険領域に入った際に、機械が自動停止するようインターロックを取り付ける。

転倒

転倒に関するヒヤリハットとして、以下の事例が報告されています。

作業の種類ヒヤリハットの状況発生した理由対策
ダンボールの運搬作業(食品製造業)
トマトが入ったダンボール4箱を重ねて運ぶ際、斜路で滑りそうになった。・作業靴の底がすり減っていたことに気付かなかった。

・運搬通路の斜路が急であり、湿っていたため滑りやすくなっていた。
・作業靴を定期的に点検し、靴底がすり減っている場合は交換する。

・斜路はゴムマットなどを用いて、滑り止め加工を行う。
アーク溶接作業(金属製品製造業)作業場を移動する際、床に散乱したアーク溶接機のコードに足を引っ掛けて転倒しそうになった。・使用したホースや工具をそのまま放置していた。

・工具などの置き場や管理方法、管理担当者が決められていなかった。
・コードやホースは床に放置せず、一定の場所に巻いて保管し、必要に応じて引き出して使用するようルール化する。

・工具などの管理担当者を決めておく。
クリーンルーム内での洗浄作業(製造業)クリーンルームでの洗浄作業を終えて出る際、マットに足を取られて転倒しそうになった。・足元に注意を向けていなかった。

・クリーンルームを使用する際の注意点を理解していなかった。
・粘着マットへの注意喚起ポスターをクリーンルーム内に掲示する。

・クリーンルーム内の歩行方法や使用人数、注意点について教育する。

動作の反動・無理な動作

動作の反動・無理な動作に関するヒヤリハットとして、以下の事例が報告されています。

作業の種類ヒヤリハットの状況発生した理由対策
点検作業(紙製品製造業)大型ローラーコンベアの上を歩いていた作業員が、足を取られて転倒し、膝を打った。ローラーコンベア上を歩くことは禁止されていたが、守られていなかった。・ローラーコンベア上での歩行禁止を徹底する明確なルールを作成し、作業員全員に周知する。

・定期的に監視を行い、違反行為があれば厳格に対応する。
清掃作業(プラスチック製造業)天井近くの機器を清掃する際に、ダクトの上でつま先立ちになり、滑り落ちそうになった。・適切な足場や安全器具を使用せず、不安定な場所で作業を行っていた。

・高所作業に対するリスク意識が不足していた。
・足場や高所作業用の安全器具の使用を徹底し、全作業員に対して高所作業のリスクについての教育を行う。

・作業前に安全確認を義務付け、適切な足場が確保されているか確認するルールを導入する。
フォークリフトでの運搬作業(倉庫業)フロント窓枠から身を乗り出したときに膝でレバーを引いてしまい、窓枠とマストの間で首が挟まりそうになった。確認作業中に体を無理に乗り出したため、危険な姿勢になっていた。・フォークリフトの操作手順を見直し、確認作業時に無理な姿勢を取らないよう指導を徹底する。

・レバーの誤操作を防ぐためのガードやカバーを設置する。

墜落・転落

墜落・転落に関するヒヤリハットとして、以下の事例が報告されています。

作業の種類ヒヤリハットの状況発生した理由対策
フォークリフトによる資材荷上げ作業(野菜研究施設)中2階から荷物を受け取る際に、フォークリフトのパレットに足をかけてふらつき、落ちそうになった。・フォークリフトのパレットに誤って足をかけた。

・フォークリフトのフォークを中2階に差し込まなかった。
・荷物の積み込みや積み卸しを行う際は、フォークを作業床にしっかり差し込む。

・必要に応じて安全帯を使用する。
トラックからの荷降ろし準備(道路貨物運送業)荷台に載せた鋼材の上で作業した際、雨で濡れた鋼材で足が滑り、荷台から転落しそうになった。足元への注意が不足していた。荷台から落下しないように安全帯を着用する。
鋼板加工作業(製鉄業)台車上から作業用椅子を使って降りようとした際、ぐらついて転落しかけた。作業用椅子を踏み台として使用した。作業用椅子を踏み台の代用としないよう、ルールを整備し周知する。

切れ・こすれ

切れ・こすれに関するヒヤリハット事例は、以下の通りです。

作業の種類ヒヤリハットの状況発生した理由対策
切断作業(製材業)バンドソーを動かしたまま盤上のゴミを取り除こうとした際、回転している刃に手が当たりそうになった。バンドソーを停止せずに清掃しようとした。電源スイッチを切り、停止させた状態で清掃すること。
食肉の加工作業(食料品小売業)食肉加工場で豚肉の塊を切断する際、右手中指が安全カバーのないスライサーの回転刃に触れそうになった。・スライサーの回転刃に安全カバーが設置されていなかった。

・食材を支える際に専用の道具を使用せず、手で直接持って作業を行っていた。
・回転刃の使用しない部分にカバーをつける。

・スライスする食材を支える時は専用の道具を使う。

激突

激突に関するヒヤリハットには、次のようなものがあります。

作業の種類ヒヤリハットの状況発生した理由対策
製造設備機械の積卸し作業(製造業)重量350kgの機械をクレーンで吊ってトラックから下ろす際、荷が不安定だったため急に回転し、作業員に激突しそうになった。荷が不安定な状態であったが、玉掛けを修正せずに吊り上げ作業を続行した。荷物の積み下ろし作業時には、荷の形状や重心をよく確認し、最も安全な方法で玉掛けを行う。
市場内荷卸し作業(食品製造業)方向転換のためにフォークリフトをバックさせた際、近くにいた作業者と激突しそうになった。・作業者がフォークリフトの作業場を自由に行き来できる状態だった。

・フォークリフトの誘導員が配置されておらず、作業計画も十分に定められていなかった。
・フォークリフトの作業場に作業者が立ち入らないよう、ルールを整備する。

・フォークリフトの作業計画を定めた上で周知徹底し、フォークリフト運行時には誘導員を配置する。
運搬作業(食品製造業)小走りで台車を運搬していた際、柱の角から急に出てきた作業員と衝突し、滑って転倒した。通路床面が気化したバターや食用油で滑りやすくなっており、台車のブレーキが効きにくい状態であった。・定期的に床面を清掃し、滑りやすい状況を防ぐ。

・通路での歩行や運搬時の安全ルールを再確認し、小走りを禁止するように指導する。

感電・火災

感電・火災に関するヒヤリハットとしては、以下の事例が報告されています。

作業の種類ヒヤリハットの状況発生した理由対策
製鋼作業(鉄鋼業)電気炉に近づいた際、酸素ガスの流量が異常に多いことに気づき、酸素バルブを閉止した。
密閉された空間であれば、高酸素濃度により燃え出す可能性があった。
・電源系のコードに異常があって停電したため、機械が停止した。

・機械が停止しても、酸素の供給が止まらなかった。
・機械が停止した場合には、関連機器も自動的に停止するよう設定する。

・流量や圧力などが規定範囲内を超えた際には、自動停止や警報装置を作動させる。
その他(喫煙スペースの管理)吸い殻をスチール缶に集めて通路に置いていたところ、自然発火した。・吸い殻が完全に消火されていなかったため、スチール缶内で発火した。

・また、通路に可燃物を置くことに対するリスクが認識されていなかった。
・吸い殻を捨てる前に完全に消火するよう徹底する。

・専用の消火設備が整った耐火性の容器を使用し、通路など危険な場所に吸い殻を置かないようにする。
溶接作業(建設業)水管の溶接作業中、アーク溶接の火花が作業員の作業服に引火し、慌てて消火した。・作業員が適切な防火対策を講じていなかった。

・作業服が耐火性ではなく、火花が引火しやすい材質であった。
・耐火性の作業服や防火エプロンの着用を義務付ける。

・溶接作業エリアには適切な消火設備を設置し、作業員に対して防火教育を徹底する。

有害物との接触

有害物と接触するヒヤリハット事例は、以下の通りです。

作業の種類ヒヤリハットの状況発生した理由対策
洗浄作業(製造業)エタノールを用いたブラシ洗浄作業中に、液体が飛散して目に入りそうになった。作業中に適切な保護具(ゴーグル)が着用されていなかった。エタノールなどの化学薬品を扱う際は、必ずゴーグルやフェイスシールドなどの適切な保護具を着用することを義務付ける。
排出弁の閉塞物の除去作業(医薬品製造業)フィルター装置底部にある排出弁を手作業で開けようとしたところ、突然排出弁から70〜80℃の3%濃度のNaOH水溶液が流出し、右足を火傷しそうになった。閉塞物を棒で突いて取り除く作業の危険性を認知していなかった。・安全教育で棒で突いて除去する危険性を周知し、適切な方法で除去できるようにする。

・やむを得ず突く場合は、内圧がないことを確認したのち、保護衣・保護メガネ・手袋等を着用して慎重に行う。

ここまで、シーン別に工場で発生しやすいヒヤリハットの事例をご紹介してきました。ヒヤリハットが発生した理由は事故によって異なるものの、その状況に陥る不安全行動や判断などをしてしまう原因は別にあるでしょう。

次章では、ヒヤリハットにつながる行動や判断をしてしまう原因について整理します。

ヒヤリハットが発生する主な原因

ヒヤリハットにつながる不安全行動や判断をしてしまう背景には、下記のような原因が潜んでいる可能性があります。

作業手順の不徹底

作業手順の不徹底は、急速に人員が増加している職場やマニュアル/作業手順書の整備が不十分な職場で起こりやすいヒヤリハットです。作業手順が明確に設定や周知がされていない場合、作業者が自己判断で作業を進めることになり、事故やミスのリスクが高まります

また、作業手順の重要性を認識していないと作業者が正しい手順を守らず、結果として事故を引き起こす可能性があります。たとえば、工作機械の整備前に電源を切る手順が定められていても、その手順が必要な理由が周知されていなければ、作業者が手順を守らずに機械を動かしたまま清掃を行う可能性が高いです。

このような状況では、工作機械に指を挟みそうになるヒヤリハットが発生しかねません。

教育・訓練の不足

教育・訓練の不足は、短期労働者や外国人労働者が多い職場で起こりがちなヒヤリハットです。教育や訓練が不十分だと、作業者が必要な知識やスキルを十分に習得できず、作業中にミスや誤解が生じやすくなります

特に、新入社員や経験の浅い作業者が適切な教育や訓練を受けていない場合、作業手順や安全対策を正しく理解できず、予期せぬトラブルが発生しやすくなります。例として、化学薬品を扱う作業者が薬品の取り扱いや安全対策について十分に教育されていない場合、誤った操作で薬品が混合され、危険な化学反応が起こる恐れがあります。

このような状況では、火傷や健康被害を引き起こすヒヤリハットが発生しやすいです。

作業環境の問題

作業環境の問題は、整理整頓が行き届いていない職場や、照明や換気が不十分な職場で特に発生しやすいヒヤリハットです。作業環境が適切ではない場合、作業者は安全かつ効率的に作業を行うことが難しくなり、ヒヤリハットや事故のリスクが高まります

たとえば、通路が狭く資材や道具が散乱している環境では、作業者がそれらにつまずいて転倒する可能性が高いです。さらに、照明が不十分で作業エリアが暗いと、道具で手を挟んだり、機械や壁にぶつかるヒヤリハットが起こりやすくなります。

作業者の疲労やストレス

長時間労働が常態化している職場や、精神的なプレッシャーが強い職場では、作業者が疲労やストレスによってヒヤリハットを引き起こしやすくなります。作業者が疲労やストレスを抱えると、集中力や判断力が低下し、作業ミスや事故のリスクが高まります

たとえば、疲労により集中力が低下した作業者がフォークリフトを運転した場合、周囲の確認を怠り、近くにいる作業者に衝突しそうになるヒヤリハットが発生しやすくなるでしょう。

コミュニケーションの不足

シフト制や交代勤務の職場、外国人労働者が多い職場では、コミュニケーション不足によるヒヤリハットが起こりやすいです。コミュニケーションが不足すると、業務に関する重要な情報が正しく伝わらず、従業員が誤った作業を行うリスクが高まります

例として、原材料や機器の置き場が変更された際、日勤のチームにはその変更が伝わっていても、夜勤のチームには正確に伝わらないことがあります。このような状況では、夜勤の作業者が過去の手順で作業を続けることにより、原材料や機器につまずいて転倒するヒヤリハットが起こる可能性が高いです。

ヒヤリハットの背景には、上記で挙げたようなヒューマンエラーによる課題のほか、機械や材料などモノに由来する課題も存在しています。

このような課題を含めた現場に潜むリスクを洗い出すには「リスクアセスメント」の実施が効果的です。リスクアセスメントの詳細や具体的な進め方については、こちらの別記事や、元労働基準監督署署長による以下のウェビナー動画も是非ご覧ください。


現場のキケンを見極める『リスクアセスメント術』

ヒヤリハットを活用し、事故を未然に防ぐ5つの対策

現場でのヒヤリハットは、労働災害に繋がりかねない要注意事項です。しかし、これらの小さな兆候こそが、将来発生しかねない重大事故を未然に防ぐための重要なヒントであるといえるでしょう。
ここでは、ヒヤリハットを活用して事故を未然防止できるような5つの対策についてご紹介します。

「ヒヤリハット対策がマンネリ化し、ネタがない…」という方に向け、現場改善ラボではこちらの別記事や、労働安全コンサルタントによるヒヤリハット対策の手法をまとめた動画もご用意しております。本記事と併せてご覧ください。


労働災害を撲滅するヒヤリハット対策の心得 (1)

ヒヤリハット報告の推奨

ヒヤリハットを事故防止に活用するには、ヒヤリハットとの距離が最も近い現場の従業員からの報告が欠かせません。作業者がヒヤリハットを即座に報告できる環境を整え、報告をもとに迅速に改善策を検討・実施する体制を構築することで、重大な事故の発生を減少させられます。

たとえば、簡単にヒヤリハットを報告できるフォーマットの整備や、報告した作業者を評価する制度を設けたりすることで、作業者からの報告がより積極的になるでしょう。

ヒヤリハット報告を推奨することで、潜在的なリスクを早期に発見し、重大事故が発生する前に対策を講じることが可能です。一方で、ヒヤリハット報告が推奨されていない、または報告内容が適切に対処されていない職場では作業者の安全意識が低下し、事故の発生率が高まる恐れがあります。

ヒヤリハット報告書の書き方

ヒヤリハット報告書を作成する際は、状況を正確に伝えるために以下の項目を記載しましょう。

  • 日時
  • 報告者名
  • 発生場所
  • ヒヤリハットの概要
  • ヒヤリハットの分類
  • ヒヤリハットの原因
  • ヒヤリハットの対策

文章だけで状況を十分に伝えられない場合、絵や図を用いることで、情報をより効果的に伝えられます。そのため、ヒヤリハット報告書には、必要に応じて絵や図を記載できるスペースを設けておくのがおすすめです。

ヒヤリハット報告書の例文

ヒヤリハット報告書は、次のように記載します。

日時2023年7月22日 14:30
報告者名山田 太郎
発生場所第3製造ラインの包装エリア
ヒヤリハットの概要包装作業中、機械の動作を止めずに手袋を装着しようとした際、手袋が機械のローラーに巻き込まれそうになった。
幸い、即座に手を引き戻したため、怪我には至らなかったが、危険な状況であった。
ヒヤリハットの分類機械操作ミスによるヒヤリハット
ヒヤリハットの原因作業中に手袋が破れたため、作業を一時中断せずに素早く交換しようとした。
機械の動作を止めるべきという手順を一時的に無視したことが原因。
ヒヤリハットの対策今後、手袋の破損や交換が必要な場合は、必ず機械を完全に停止してから行うことを徹底する。
また、作業前に手袋の状態を確認し、破損がないかを確認することで、交換頻度を減らす工夫を行う。

ヒヤリハットの報告書を記載する際は、以下の記事も是非ご参照ください。書き方のコツやポイントについて、より詳しく解説しています。

報告の「ネタ切れ」を防ぐには?

ヒヤリハット報告が継続的に行われるには、まずその目的を現場に浸透させることが重要です。ヒヤリハットが重大事故を防止するための有効な気づきであると認識してもらうことで、報告のモチベーションを維持しやすくなります。

また「誰のための取り組みか」を意識させることも効果的です。ヒヤリハットの報告が同僚や後輩、そして将来の作業者の安全を守る行為であると知ってもらうことで、その意義がより明確になり、ネタ切れを防ぐための取り組みにつながります。

さらに、ヒヤリハットの報告者を積極的に褒めることも重要です。従業員の中には、「ヒヤリハットを報告すると責められる」と誤解している人がいるかもしれません。このような誤解があると、非難を恐れてヒヤリハットを発見しても報告しない傾向が強まります。

そのため、ヒヤリハットの報告があった際は、「よく報告してくれた。事故を防ぐヒントをありがとう」という声掛けをすることで、積極的な報告が促進される可能性が高まります。

ヒヤリハットのネタ切れ対策やネタ例について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

5S活動の徹底

5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を徹底することで、作業環境を整備し、ヒヤリハットにつながる潜在的なリスクを取り除くことが可能です。具体的には、定期的な整理整頓活動や清掃当番の導入などが有効です。

まず、整理整頓を徹底することで、作業者の動線が確保され、つまずきや転倒のリスクを減らせます。また、清掃を徹底することで不要なものを排除し、火災や機械の故障による事故を防ぐことができます。

さらに、しつけを徹底して清潔な状態を維持することで、作業者全員が安全意識を持って行動するようになります。これにより、作業環境の整備と安全意識の向上が相まって、ヒヤリハットの発生を効果的に防ぐことができます。

5S活動の各要素や具体的な進め方について知りたい方は、こちらの別記事や、数々の企業で5S改革を行った経歴を持つ講師による以下のウェビナー動画をご覧ください。


現場改善ラボ ウェビナー用 (7)

安全教育の実施

ヒヤリハット事例を用いた安全教育を実施することで、従業員は作業手順を遵守する重要性を理解し、安全に作業する能力が向上します。たとえば、新人の入社時やヒヤリハット発生時に事例を用いた安全研修を行うことで、安全な作業習慣を定着させることができます。

さらに、ディスカッションやシミュレーショントレーニングを行うことで、作業者の安全意識が高まり、問題解決能力を養うことができます。これにより、作業者は実際の状況で適切な対応ができるようになります。

安全教育が不足していると、同じミスが繰り返され、結果として重大な怪我や事故が発生するリスクが高まります。したがって、定期的な安全教育を実施し、継続的に安全意識と対処能力を向上させることが重要です。

安全教育は実施が法律で定められた重要な取り組みです。安全教育の種類や具体的な教育内容、成功事例について知りたい方は、こちらの別記事や、労働安全コンサルタントによる以下のウェビナー動画もご覧ください。


現場改善ラボ ウェビナー用 (5)

KYT(危険予知トレーニング)の実施

ヒヤリハットを活用した対策案を考えるには、KYT(危険予知トレーニング)の実施も効果的です。KYTは作業中に潜在する危険を事前に察知し、事故を未然に防ぐための訓練です。KYTを実施することで、作業者は現場でのリスクを把握し、適切な対策を講じる能力を高めることができます。

具体的には、月ごとのヒヤリハット事例をもとに、製造現場の危険箇所やその回避方法を全員で検討することが有効です。作業者全員でディスカッションを行い、KYTの成果を工場内の掲示板にまとめることで、日常業務の中で自然とリスク意識が高まります。これにより、安全な作業習慣を身につけることが可能です

一方で、KYTが不十分であったり実施されていない場合、作業者は現場のリスクを十分に認識できず、ヒヤリハットに気づかずが重大な事故に発展するリスクが高まります。たとえば、機械の清掃時に発生したヒヤリハットがKYTで共有されなかった場合、他の作業者が同じ状況に直面してもリスクを察知できず、手や指が機械に巻き込まれて重傷を負う可能性があります。

KYT(危険予知トレーニング)の進め方や例題を知りたい方は、こちらの別記事や、安全衛生コンサルタントによる以下のウェビナー動画もご覧ください。


効果あるKYTとは (1)

マニュアル/作業手順書の整備

現場で発生したヒヤリハット報告を収集し、その内容をもとにマニュアルや作業手順書を作成・見直すことで、重大な事故を防止できる可能性が高まります

たとえば、作業者が機械の操作ミスによるヒヤリハットを報告した場合、その報告内容をもとに機械操作の手順書の注意点やチェックリストを改訂します。その後、改訂された手順書を作業者全員に共有し、内容が確実に伝わるようにすることで、操作ミスによる事故を防止できます。

一方で、ヒヤリハット報告をもとに作業手順が整備されていない場合、作業者は不完全な手順に従うことになり、怪我や事故につながるリスクが高まるため十分な注意が必要です。

効果的なマニュアルや作業手順書の整備に関しては、後述する『「tebiki」による教育で社内ノウハウを可視化し、事故を未然防止!』や、以下のガイドブックでも詳しくご紹介しています。是非ご覧ください。


tebiki WP 用 (1)-1

ヒヤリハットを有効活用して「組織の安全意識」を高める方法

ヒヤリハットは、事故に至らなかったもののヒヤッとハッとした出来事です。このような、たまたま事故につながらなかった出来事を現場で共有/周知することが、安全トラブルや労働災害の未然防止につながります

本章では、発生したヒヤリハットを活用して組織の安全意識を高める活動に役立てる方法をご紹介します。

安全意識の向上に必要なこと

さまざまな現場の安全対策を支援してきた私たちTebikiは、安全意識を高めて安全文化が根付いている組織には、以下の特徴があると考えています。

  • 危険感受性が高い
  • 現場の危険が可視化/記録されている

危険感受性が高い

危険感受性とは「何が危険か、どうなると危険な状態になるのかを直観的に把握し、危害の程度・発生確率を敏感に感じ取る能力」です。(参照元:厚生労働省)この能力があることで、職場における潜在的な危険要因を早期に察知し、事故や災害につながるような不安全行動や判断をしないようになります。

危険感受性が低い組織の場合、現場の危険を従業員自身が察知できずに不安全な行動や判断をし、事故につながりやすいでしょう。そこで、発生したヒヤリハットを共有/報告する仕組みを整えることで、何が危険だったのかを知る機会が設けられます

似たような場面に遭遇した場合、『あの報告で見た場面と似ているな』と直感的に危険な状態を把握しやすくなり、危険感受性が高いを保つことができます。このように危険感受性を高めるには、次にご紹介する「現場に潜む危険が可視化/記録されている」必要があります。

現場の危険が可視化/記録されている

危険感受性を高めるためには、危険な場面をイメージできる状態が必要です。そのため、現場における危険な作業やエリアなどが可視化されていたり、過去に起きた安全トラブルの記録が閲覧できる状態が理想です

このような情報を得る手段としては、作業手順書やヒヤリハット報告書などが一般的です。

一方で、上記のような文書は文字や写真といった二次元的な形式が多いです。工場のようなヒト/モノ/機械など、三次元的な動きがある環境において、危険な動作などを知る形式としては適していません。そこで、手順書やヒヤリハットの報告/共有に動画マニュアルを活用することで、視覚的に分かりやすく伝えることが可能です。

ここからは、動画マニュアルを活用した安全意識の向上、安全文化を醸成する方法や活用事例をご紹介します。

「動画マニュアル」で危険を可視化し感受性を高める

従業員の危険感受性を高め、現場の危険を可視化するには、動画マニュアルを活用した教育がおすすめです。

動画マニュアルによる教育とは、作業手順や安全対策、製品の取り扱い方法などを動画形式でまとめ、社員教育に活用する方法です。従来の紙ベースのマニュアルとは異なり、視覚と音声を通じて具体的な手順や注意点を伝えられるため、社内に潜む危険やリスクを可視化しやすいというメリットがあります

例として、以下の動画マニュアルサンプルをご紹介します。

▼ロール台車の扱い方(株式会社イセ食品様提供)▼

ロール台車の扱い方について動画で解説することで操作方法が視覚的に理解できるほか、事故のリスクが視覚的に伝わることでヒヤリハットをイメージできるようになり、危険感受性が向上することがうかがえます。

また、動画はいつでも繰り返し視聴できるため、社員は自分のペースで学習や復習ができ、現場でのスキルを効率的に習得できます。

さらに、動画マニュアルはヒヤリハット事例を用いた教育にも有効です。例として、発生したヒヤリハットを動画で再現し、マニュアルに落とし込むことで誤った作業方法と正しい手順を解説することや、ヒヤリハットの内容や原因、対策を1つの動画マニュアルに盛り込み、全部署に展開することが考えられます。

このように動画マニュアルを活用することで、ヒヤリハットを紙ベースの報告書よりもわかりやすく、かつ簡単に全従業員に伝えることができ、従業員の危険感受性を高め、現場の危険を可視化することが実現します。

動画マニュアルの教育効果や活用事例について知りたい方は、以下の画像からハンドブックをダウンロードしてご覧ください。


動画マニュアルで現場の教育をかんたんにする方法

次章では、特におすすめな動画マニュアルについてご紹介します。

「tebiki」による教育で社内ノウハウを可視化し、事故を未然防止!

動画マニュアルのメリットはわかっても、「編集スキルがないから、動画マニュアルの導入に踏み切れない」とお思いの方もいらっしゃるでしょう。

しかし、tebikiという動画マニュアル作成ツールを使用すれば、誰もが簡単に動画マニュアルの作成から教育管理が可能になります。

ここでは、tebikiの特長などをご紹介します。

▼動画マニュアル作成ツール「tebiki」紹介動画▼

誰でも動画の編集がかんたん

tebikiはマニュアル作成に必要な機能を厳選したシンプルな設計のため、パソコン操作が苦手な方でも、使い始めたその日から動画マニュアルの作成が行えます。さらに、編集に時間がかかる字幕追加を自動で行う機能も搭載

動画マニュアルの内製化に取り組んでいたある工場では、「1時間かかっていた動画作成が、tebikiによって5分になった」という嬉しい声もいただいています。

tebikiでは動画の編集が簡単であることが分かる編集画面

多言語対応のため外国人従業員教育にも

tebikiの自動翻訳機能を使用すれば、ボタン1つで100か国語以上の自動翻訳が行えます。日本語がわからない外国人従業員でも母国語で教育が受けられるので、ヒヤリハット対策の重要性をしっかり理解した上で作業を進められるでしょう。

tebikiではボタン1つで100か国語以上の自動翻訳が行える多言語対応と自動翻訳機能があることが分かる画面

tebikiの自動翻訳機能と動画による説明を活用することで、紙ベースのマニュアルや作業手順書では伝えきれなかった細かいニュアンスや作業手順が外国人労働者にも正しく伝達が可能です。
これにより、作業手順の遵守や標準化が促進され、ヒヤリハットや労働災害を未然に防ぐ体制が整備されるでしょう。

まだある!tebikiに搭載されている機能一覧

tebikiには、動画マニュアルの教育を効率化する機能がたくさん搭載されています。その中の一部をご紹介します。

テスト機能テストをオリジナルで作成。単一選択式/複数選択式/記述式と回答形式が選べます。
作成時に正解となる回答を入力できるため、自動採点も可能です。
レポート機能ユーザーごとのマニュアル視聴状況などが可視化できる機能。
アクセスされているマニュアルのランキングもわかるため、従業員がどの項目を理解していないのかも確認可能!
タスク機能「〇日までに画面操作マニュアルを閲覧してください」というようなマニュアルの閲覧指示を、指定のユーザーに送ります。
スキル管理機能従業員のスキル取得状況を可視化して、正確に把握できる機能。
作ったマニュアルと評価を連携でき、効果的な教育を行うことも可能です。

tebikiにはヒヤリハット教育や重大な事故の防止に役立つ機能がまだまだ搭載されています。詳しくは以下のサービスご紹介資料『3分でわかるtebiki』を是非ご覧ください。


動画マニュアルがかんたんに作れる「tebiki」の概要を見る

tebikiをヒヤリハット対策に活用している事例

動画マニュアルtebikiを導入し、従業員教育やヒヤリハット対策に成功した製造業の事例を3つご紹介します。実際にどのような効果を得ているのか見ていきましょう。より多くの企業事例と効果を知りたい方は、以下の導入事例集もご覧ください。


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株式会社ロジパルエクスプレス

物流サービスを提供している株式会社ロジパルエクスプレスは、正確な情報が伝わりにくい紙マニュアルによって、安全や品質に影響を与えてしまっていることを問題視していました。実際に、台車から荷物が落ちるといったヒヤリハットが起きてしまっていたそうです。

そこで、さまざまな動画マニュアル作成ツールを検討したうえで、圧倒的に操作性がよかったtebikiを導入。

導入後、動画を見ておいてもらうだけでも安全品質意識を担保できていると実感いただきました。さらに、感じていただけた効果としては、品質の向上。実際にロジパルエクスプレスのお客様からも「品質が上がっている」と評価をいただいたそうです。
また、紙マニュアルと比べて、作成工数と承認までの期間が大幅に削減できたという効果も実感いただいています。

株式会社ロジパルエクスプレスの導入事例をより詳細に知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

御幸毛織株式会社

御幸毛織株式会社は、1921年設立の繊維メーカーです。長年にわたる経験と技術の蓄積を基に、高級スーツ生地を中心とした製品を提供しており、業界内での信頼と評判を確立しています。

同社では、製造工程における専門的な知識や技能の継承が難しく、新入社員や若手社員が熟練の技術を効率的に習得することが困難という課題を抱えていました。また従業員教育を一部の社員に依存しており、教育の質がばらつくことで、作業ミスや漏れなどのヒヤリハットが発生することも課題視していました。

そこで御幸毛織株式会社は、課題解決のために動画マニュアル「tebiki」を導入しました。

tebikiを活用することで、ベテラン社員の熟練した技術や知識を動画で記録し、新入社員や若手社員に効果的に伝えることが可能に。
特に、現場の事故によるトラブルや被害を視覚的に理解できる、“べからず動画”を作成し、潜在的に潜む危険性を動画で再現し訴えることでヒヤリハットの削減や現場の安全教育を促進されています。

結果として、属人的な教育方法から脱却し、標準化された教育内容を全従業員に提供できるようになりました。

御幸毛織株式会社の導入事例をより詳細に知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

大同工業株式会社

大同工業株式会社は、オートバイや自動車、産業機械、福祉機器など幅広い事業を展開するグローバル企業です。

現場では新人教育をOJTで行っていたものの、技術や手順が我流化していました。結果として、教え方のバラつきによるヒヤリハットが発生しており、早急な対策が求められる状況でした。特に、試験手順の小さな違いが原因で、ヒヤリハットや評価結果のエラーが発生する問題を課題視していたとのこと。

そこで、動画マニュアルtebikiを導入し、部署内全員で試験手順を再標準化することで、ヒヤリハットや評価エラーの削減を実現しました。tebikiは視覚的に手順を確認できるため、言葉だけでは伝わりにくい「コツ」や「ポイント」も効果的に伝えることが可能です。

結果として、業務の標準化が進み、教育工数も大幅に削減されました。

大同工業株式会社の安田氏は、tebikiの導入によって、部署内での試験中のヒヤリハットや評価エラーが削減できたと実感しているとのことです。また、tebikiの動画マニュアルは、海外の拠点での現地スタッフの教育にも活用することが考えられ、グローバルな展開にも対応できると紹介されています。

大同工業株式会社の導入事例をより詳細に知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

まとめ

この記事では、工場で発生しやすいヒヤリハットの事例や具体的な対策について解説しました。工場では転倒・転落・激突など、さまざまなヒヤリハットが発生しています。

また、ヒヤリハットの原因も作業手順の不徹底や教育不足など、多岐にわたります。そのため、この記事を参考にしながら自社のヒヤリハットを分析し、どのような事故防止対策を実施すべきかを検討してみましょう。

効果的な事故防止対策を行いたい方は、動画マニュアル「tebiki」を活用するのがおすすめです。作業手順や注意点を視覚的に示すことで、文章や口頭での説明よりも理解が深まり、ミスによる事故を効果的に防止できます。

さらに、作業の流れやタイミングを正確に伝えられるため、誤操作や不注意によるヒヤリハットを低減することが可能です。動画マニュアル「tebiki」の資料は、以下の画像から無料でダウンロード可能ですので、ぜひ詳細をチェックしてみてください。


動画マニュアルがかんたんに作れる「tebiki」の概要を見る

【おまけ】ヒヤリハットに関する基礎知識

ヒヤリハットに関する基礎知識を再確認し、事故の未然防止に活用したい方に向け、以下のお役立ち情報をまとめました。

  • そもそもヒヤリハットとは
  • ヒヤリハット対策の重要性
  • ヒヤリハットとハインリッヒの法則の関係

上記の内容は下記の関連記事内でも詳しく解説しているため、本記事と併せてご覧ください。
▼関連記事▼
ヒヤリハットとは?報告書の例文や業界別の事例、対処法について紹介
ヒヤリハットのネタ切れ対策方法とは?具体的な事例やネタを紹介

そもそもヒヤリハットとは

ヒヤリハットとは、日常業務の中で発生する「事故には至らなかったが、事故が起きそうになった」事象のことを指します。これらの事象は、事故や大きなトラブルにつながる可能性があるため、重要な危険信号と捉えられています。

ヒヤリハット対策の重要性

ヒヤリハットは、表面的には小さな出来事に見えるかもしれませんが、その背景には従業員の不注意や作業手順の不備など、根本的な問題が潜んでいることが多いです。
そのため、これらの問題を早期に発見し適切な対策を講じることで、将来的な重大事故の発生を未然に防クことが可能です。

ヒヤリハットとハインリッヒの法則の関係

ハインリッヒの法則について▲グラフで事故の内訳を表した図

ハインリッヒの法則は、労働災害や事故発生のメカニズムに関する考え方です。この法則によると「1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、さらにその背後には300のヒヤリハットが存在する」とされています。

これは、ヒヤリハットを軽視せず、早期対応が重大な事故の発生を防ぐために大切であることを示しています。ヒヤリハットは、日常で起こっているこの300件の事故寸前の気付きを共有・対策することで、事故が起きることを未然防止できます。

そのため、ヒヤリハットの原因深堀や対策は、現場の全従業員を安全に守るために必要不可欠な取り組みです。

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