ポカヨケ(Poka Yoke)とは、製造現場で人による作業ミスを防止する仕組みや装置のことです。たとえば、裁断機の刃物部分に人の手が接触する危険がある場合、自動で機械が止まる仕組みがポカヨケです。
この記事ではポカヨケの意味や語源、ポカミス(ヒューマンエラー)の発生原因から、具体的な対策例や実際の事例まで詳しく解説します。
また本記事と併せて、ポカミス対策への考え方や製造現場ですぐに実践できるポカヨケ対策事例を専門家が解説している動画を以下よりご覧いただけます。無料でご覧いただけますので、本記事と併せてご活用ください。
目次
ポカヨケとは?意味や語源
初めて「ポカヨケ」という言葉を知った方は、この特徴的な響きからどんな意味があるのだろう?と感じるかもしれません。まずはポカヨケの意味や語源、目的など基礎的な情報を整理しましょう。
ポカヨケの意味や語源、英語表記
ポカヨケとは、製造ラインで作業者のミス(ポカ)を避ける(ヨケる)ための装置や仕組みのことです。つまりポカミスのようなヒューマンエラーを対策する一環ともいえる取り組みです。
具体的にどのようなミスがポカミスなのか?具体例を示したのが以下の表です。
作業員の状況 | ボルト・ナット・ワッシャーをセットし、スパナで締める作業をしていた |
作業環境 | 十分なスキルや知識がない人が、1人で作業をしていた |
作業員がとった行動 | ボルトとナットの間にワッシャーを入れずに、スパナで締めた |
結果 | ワッシャーを入れ忘れたものは不良品となり、解体作業が行われた |
(「製造業でポカミスが起きる原因は?対策の4つの流れを解説」より抜粋)
ポカヨケという言葉の特徴的な響きの背景は、この語源を知ることで理解できます。
ポカヨケの語源は諸説ありますが、米国の「フールプルーフ(fool proof)」にあるとされています。そのため、ポカヨケとフールプルーフの意味合いに違いはなく、同じと捉えて問題ありません。直訳するとフール(愚か者)プルーフ(耐えられる)で「どんなバカでも作業ミスをしない」というニュアンスから、当初はバカヨケと呼ばれていました。
しかし、ヒューマンエラーのようなポカミスはどんな人であってもゼロにはできないので、人ではなくポカミスに目を向けたポカヨケという表現に改められたとされています。
ポカヨケの語源は米国からやってきていますが、poka-yokeと英語でも表記されており全世界で意味が通じる言葉として浸透しています。語源である「フールプルーフ」について、詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
関連記事:フールプルーフとはどういう設計?品質不良/ヒューマンエラーを未然防止する考え方、使用例を解説
ポカヨケのメリットや目的
ポカヨケはポカミスを防ぐ仕組みですが、このような仕組みを整えることで以下のようなメリットや目的を達成できます。
- 生産性の向上
- 不良品の削減
- 労災防止
生産性の向上
ポカヨケによって作業中のミスや間違いを未然に防げるため、生産性向上が期待できます。
例えば、作業者が間違った部品を取り扱ってしまうと、その部品を取り替えるための時間がムダになります。しかし、ポカヨケが導入されていれば、間違いは未然に防がれ、作業者は正しい部品を適切なタイミングで取り扱えるでしょう。結果として、生産ライン全体のサイクルタイムが短縮し、生産性の向上が期待できます。
作業効率を向上させるために、以下の記事もぜひ参考にしてみてください。
関連記事:「タクトタイム」「サイクルタイム」「リードタイム」の意味や違いをわかりやすく解説!
不良品の削減
ポカヨケは、システムの誤操作や人為的なミス(ヒューマンエラー)を事前に防ぐことができるため、不良品の削減に寄与します。
ポカヨケは作業担当者が過誤を犯す可能性を最小限に抑えるために、設計段階で不良が発生するリスクや潜在的にミスが発生するリスクを特定し、それらを排除するための業務の簡易化や手順の標準化といったプロセスの見直し/システムの導入を行います。
さらに、ポカヨケは一度発生したミスの再発を防ぐ役割も果たします。ミスが発見された際には再び起こらないように、プロセスが改善または修正されて、人を起因とした不良品が出る機会が減ります。実際、品質不良の原因としてヒューマンエラーのような作業ミスが挙げられるケースは少なく、品質改善の対策として効果に繋がりやすいでしょう。
人が起因となる品質不良を減らしたいとお考えの方は、別記事『製造業における品質不良の原因と対策方法は?実際の取り組み事例も紹介!』か、以下の専門家が解説する無料の動画も併せてご活用ください。
労災防止
ポカヨケは、従業員が危険な作業の操作ミスなどを未然に防げるため、労働災害のような事故を減らせる効果もあります。
例えば、プレス機械のような重機の操作ミスによる事故は、重大な損害をもたらす可能性があります。しかし、ポカヨケが導入されていれば、操作ミスは未然に防がれ、より安全に作業を行えるでしょう。結果として、職場全体の安全性が向上し、労災の発生を防ぐことが可能です。
労災防止の取り組みについては、以下の記事も併せてご覧ください。
関連記事:労働災害を発生させない8つの対策とは?企業の取り組み事例や標語の作り方も紹介
ポカミス(ヒューマンエラー)はなぜ起きる?ゼロにできる?
人が行う作業ではポカミスのようなヒューマンエラーが起きる可能性があり、製品不良や顧客からのクレーム、さらには人の怪我を引き起こす可能性もあります。
ここではポカミス(ヒューマンエラー)が起きる原因や種類、ポカミスのようなヒューマンエラーをゼロにできるか深掘りしていきます。
ヒューマンエラーの種類や原因
そもそもヒューマンエラーは2種類に分類することができます。種類によって原因も変化してきます。
- 『意図的ではない』ヒューマンエラー
- 『意図的な』ヒューマンエラー
ポカミスはうっかり発生してしまうようなミスです。以下の図のように、ついつい・うっかり型に該当する意図的ではないヒューマンエラーといえるでしょう。
ヒューマンエラーの原因として主に以下の5つが挙げられます。ポカミスの場合、意図的に手順を守らない【ルール違反】以外の4つが該当するといえるでしょう。
- 記憶エラー:人間の記憶力の限界や忘却により発生
- 認知エラー:人間の認知能力の限界により発生
- 判断エラー:人間の判断力の限界により発生
- 行動エラー:人間の行動の不注意や誤操作により発生
- ルール違反:作業ルールや安全規則を無視または順守しないことにより発生
ポカヨケに取り組む場合、現場で起きているエラーはどれに該当するか?特定したうえで適切な手段を講じる必要があります。ヒューマンエラーの種類や原因について、より詳しい解説を見たい方は以下の記事もご覧ください。
関連記事:ヒューマンエラーとは?多い人に特徴はある?原因や防止方法も事例を元に紹介
ヒューマンエラーのようなポカミスはゼロにできる?
結論、どのようなポカヨケを講じてもヒューマンエラーのようなポカミスをゼロにすることはできません。
その理由について、トヨタ自動車でトップ技能者と認定され、トヨタ社内研修の講師として実績がある伊藤 正光氏によるセミナー講演の内容を一部ご紹介します。
トヨタ流のヒューマンエラーに対する考え方は以下の2つです。 1.ヒューマンエラーをゼロにすることは困難。極力少なくするしかない。 2.ヒューマンエラーを抑えるためには、標準作業を確立し、守る以外に道なし。 今の世の中では数多くの電車が動いていますが、ミスはほとんど出ていません。それは運転手の手順が標準として確立されひたすら遵守しているからです。 数値が誤入力のようなミスがなぜ起きるのか?なぜなぜ分析で洗い出すと以下の4つが挙げられ、この中に必ず原因があります。 ・標準作業を守らなかった ・標準作業を守れなかった ・標準作業が確立されていない ・標準作業はあるが定着していない 原因の原因、真因を特定するためのなぜなぜ分析は「標準作業」がスタートとなります。 |
ポカミスの原因を明らかにしてポカヨケ対策を講じる場合、トヨタ流の考え方に従うと【標準作業の確立と遵守】が本質的な対策となるでしょう。標準作業を確立する具体的なポカヨケ対策の手法については、次の章で詳しく解説します。
今回ご紹介したトヨタ流のヒューマンエラーの考え方や、なぜなぜ分析の進め方に関する伊藤 正光氏のセミナー講演は、以下より無料でご覧いただけます。より詳細な内容が知りたい方はクリックしてご覧ください。
ヒューマンエラーを未然防止するポカヨケ対策の手法は?
ここまでご紹介したように、ポカヨケ対策には標準作業を確立し従業員に遵守させる仕組みが必要です。仕組みを整えるための手法について、以下の手法をご紹介します。
- エラープルーフ化の検討
- 手順不遵守を防ぐわかりやすい作業手順書の作成
- 動画マニュアル活用による業務標準化
これらの手法は、専門家が解説する以下の動画より内容を一部抜粋してご紹介しています。『より具体的に手法の内容を知りたい』『他の手法についても知りたい』という方は、以下の無料動画も併せてご活用ください。
エラープルーフ化の検討
エラープルーフ化とは、そもそもミスが起きないようする、ミスが起きた場合の問題を最小限に留める仕組みに改善することを指します。人に起因しないミスも予め整理することで、ポカミスを含む現場のミスを限りなくゼロに近づけることができるでしょう。
具体的には、以下のような視点で仕組み化できないか検討します。
- エラーとなる危険源の排除する
- 一部工程を機械/システムに代替する
- 作業手順を容易化し、理解/判断しやすくする
- 異常発生時に素早く検出し、問題を最小限に留める
- 影響を緩和するために問題が他部門/工程に拡大しないようにする
(【ポカミスゼロへ!ヒューマンエラーの未然予防「ポカヨケでつくる製造現場の未来」】を参考に作成)
取り組む際にはECRS(排除/結合/交換/簡素化)の4原則のフレームワークを活用することで、分かりやすく整理することが可能です。
ECRS(排除/結合/交換/簡素化)についてより詳しく知りたい方はぜひこちらの記事も参考にしてみてください。
関連記事:ECRSの4原則とは?製造業での具体的な改善方法やメリット
手順不遵守を防ぐわかりやすい作業手順書の作成
製造現場の場合、作業手順書やマニュアルを整備して従業員の手順を標準化しようとするものの、手順書が活用されず結果的にうまくいかないケースが少なくありません。
実際、私たち現場改善ラボが製造業に従事する会員318名の方に行った「作業手順書の形骸化」に関する調査では、約90%もの現場で形骸化している実態がありました。
(【カンコツが伝わる! 『現場で使われる』作業手順書のポイント】より引用)
形骸化の背景には、手順書の内容が現場の実態に則しておらず内容もわかりづらいことが挙げられます。そのため、従業員視点でわかりやすく理解できる作業手順書を作成し、現場で運用をすることで手順不遵守を防ぎポカミスを予防することが期待できます。
作業手順書をわかりやすくする作成/運用/管理のポイントはそれぞれ以下の通りです。
▼作成のポイント
- 手順書化する作業の観察と改善を行う
- ECRSの視点で手順書を作る
▼運用のポイント
- OJT(現場主体の教育)任せにしない
- 正しい教育ステップで教える(準備/説明/やらせる/様子を見る)
- 作業の急所(カンコツ)を伝える
▼管理のポイント
- 問題発生時に作業手順書に反映する
一方で、前述の「ヒューマンエラーの種類や原因」でご紹介したように、ミスの原因として従業員があえて手順を守らない意図的なヒューマンエラーが発生するケースもあります。そのため、教育訓練において作業手順書を守る重要性を伝えたり、業務上で手順書を見ざるを得ない仕組みを作ることで、よりミスをゼロに近づける作業手順書を整備できます。
今回ご紹介した作業手順書をわかりやすくするポイントについて、以下の資料ではより詳細に図解も交えながら解説しているので併せてご活用ください。
動画マニュアル活用による業務標準化
製造業におけるノウハウは「ヒト/モノ/機械の三次元的な動き」です。そのため、二次元的な情報である文字ベースのマニュアル/手順書では、動作の流れをつかみにくく理解を妨げる原因となります。そこで業務手順を撮影した動画マニュアルを活用することで、視覚的に業務手順を理解することが可能です。
一度、現場の実態に則した正しい内容で動画マニュアルを作成することで、管理者や教育担当者が標準を確立させるためのOJT工数など削減につながり、管理者の業務効率化も期待できます。
また撮影した動画を観察することで、手順書の文章/写真では発見できないミスが置きやすい作業の発見ができるため、動画マニュアル活用が作業改善にもつながります。
標準化を目的とした教育を進める場面で、動画マニュアルを活用する具体的な効果やメリットを知りたい方は以下の資料も併せてご活用ください。実際に動画マニュアルをポカヨケ対策に活用し、手順不遵守のようなポカミスを削減した事例は後ほどご紹介します。
実際の企業で行われているポカヨケ事例
ここまでポカヨケ対策の一例をご紹介しました。ここからは、先ほどご紹介した対策を実際に行っている企業事例をご紹介しましょう。
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車では、トヨタ生産方式の柱の1つ「自働化」の一環でポカヨケに取り組んでいることを公式YouTubeで紹介しています。
トヨタ生産方式を実現するために、業務のあらゆるムダを排除し標準を徹底しているトヨタ自動車において、ポカヨケを防ぐための教育体制が整備されているのは言うまでもありません。
本動画は、標準化を徹底する中でもゼロにしきれなかった、ネジの締め付け不良という異常をランプ(アンドン)によって知らせるエラープルーフ化の一例といえるでしょう。締め付け不良があればランプで従業員に知らせ、再度締め付け作業を行います。
仮にランプに気付かなくても、生産ラインが止まり不良品は後工程に流れないため、問題を最小限に留めるエラープルーフ化も併せて運用されているといえます。
児玉化学工業株式会社
住宅設備や自動車向けの樹脂製品を製造/販売する児玉化学工業株式会社では、動画マニュアル活用による業務標準化に取り組み、手順不遵守を削減するポカヨケで成果をあげています。
▼インタビュー動画:児玉化学工業株式会社▼
多国籍の従業員を抱え、紙の作業手順書/マニュアルでは作業の手順やコツを伝えきれずポカミスが発生していた中で、動画マニュアルを活用したことで動きを視覚的にわかりやすく伝えることができました。
従業員が理解しやすくなかったことで作業手順の標準化が進み、結果的に手順不遵守による品質不良を9割削減しています。児玉化学工業の動画マニュアルを活用した取り組みは、こちらのインタビュー記事で詳しくご覧いただけます。
同社が動画マニュアル活用にあたり、導入していたツールが現場教育システム「tebiki」です。次の章では、現場教育システム「tebiki」について詳しくご紹介します。
ポカヨケ(ヒューマンエラー)対策に有効な動画マニュアルtebikiとは?
動画マニュアル「tebiki」とは、製造業を中心とした現場産業で幅広く導入されている、動画を軸とした現場教育の課題を解決するクラウドサービスです。
tebikiに搭載されている主な機能一覧は以下の通りです。
- 編集機能:カット、一時停止、図形挿入、別動画/画像差し込みなど教育に必要な機能を厳選
- 自動字幕:音声を自動認識し、字幕は自動で生成
- 字幕読み上げ:字幕を自動音声により読み上げ
- 字幕翻訳:日本語字幕を100を超える国や地域の言語に瞬時に翻訳
- 画面録画:PC上の操作など画面上の動きも動画マニュアル化可能
- テスト:動画で学んだ内容はテストによって理解度を確認
- レポート:動画マニュアルへのアクセス履歴/習熟度の進捗を一目で確認
tebikiは一番お手軽なプランからでも、動画マニュアルのアップロード本数や閲覧/編集回数が無制限であることが大きな特徴です。より詳細なtebikiの機能や契約プランについて知りたい方は、以下の資料をご覧ください。
主に以下のような課題を抱える現場で導入されており、従業員の手順不遵守といったポカミスやヒューマンエラー対策を目的に、業務手順/品質の標準化を実現するために活用されているケースも多数あります。
tebiki導入の目的 | 導入による効果 |
マニュアル作成工数の削減 | 紙/Excelベースのマニュアルと比較し、作成/改訂時間を50%削減 |
OJT等の教育工数作成 | 管理者のOJT実施時間を50%削減 |
事故/災害の削減 | 大きな事故や災害発生件数を50%削減 |
マニュアル翻訳工数の削減 | 自動翻訳機能によって翻訳コストを80%削減 |
動画と聞くと『編集とか難しそう…』と感じるかも知れませんが、動画編集未経験者の方でもかんたんに操作でき、上記のような改善事例をあげています。
先ほどご紹介した児玉化学工業株式会社以外にも、詳しい導入事例や効果を知りたい方に向けてさまざまな事例をまとめたガイドブックもご用意しています。以下のページよりご覧いただけますので、併せてご活用ください。
ポカヨケでヒューマンエラーを防止しよう!【まとめ】
ポカヨケとは、人による作業ミスといったヒューマンエラーを防止する仕組みや装置のことです。語源は諸説ありますが、米国の「フールプルーフ(fool proof)」にあるとされ、日本に持ち込まれた当初はバカヨケと呼ばれ、次第にポカヨケに変化したとされています。
ポカミスのようなヒューマンエラーの原因は、記憶エラー/認知エラー/判断エラー/行動エラーに分類され、ミスをゼロにすることはほぼ不可能です。そのため『業務標準の確立と遵守』を地道に取り組みつつ、ミス発生源の排除や発生時の問題を最小限に留めるエラープルーフ化の検討が重要です。
『業務標準の確立と遵守』の実現には、動画マニュアルを活用した現場教育の改善が効果的で、児玉化学工業株式会社のように製造現場で既に改善している実例もあります。動画マニュアルの活用にはtebikiの活用がオススメです。
tebikiについて具体的な機能やプランを知りたい方は、以下よりサービス資料をご覧ください。