かんたん動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」を展開する、現場改善ラボ編集部です。
プレス加工とは、金属などの材料に圧力を加えて目的の形状に成形する加工方法であり、自動車や家電、電子機器部品など、日々の生活に欠かせない製品の生産に広く用いられています。
この記事では、プレス加工の基礎から、現場で実際に発生する不良の種類と原因、具体的な対策方法に加え、教育改善による品質向上の取り組み事例まで解説します。
プレス加工の不良原因を掘り下げると、設備・金型・材料・加工条件に加えて、材料のセットミスや機械の設定間違いなど、「人(ヒューマンエラー)」に起因するケースが多いです。設備を見直し、教育を改善しても、この「人に起因するエラー」を防ぐ仕組み、とりわけ決められた手順が守られない人の操作や確認に起因する不良については、手順が守られる仕組みまで整えなければ、再発防止が難しい場合があります。本記事の解説とあわせて、手順不遵守に起因する品質不良を防ぐための考え方と具体的対策をまとめた実践資料をご用意しました。記事内の取り組み事例とセットで、品質向上の取り組みにお役立てください。
>>手順不遵守に起因する品質不良の考え方と対策(実践資料)を見てみる
目次
プレス加工の主な種類
プレス加工とは、金属の塑性変形を利用し、金型を用いて圧力を加えることで目的の形状を得る加工方法です。生産現場で特に多用される代表的な4種類を紹介します。
せん断(打抜き)加工
せん断加工は、金属をはさみで切るような原理で加工物を分離する方法です。プレス加工のなかで最も広く用いられ、大量生産における効率の良さが特徴です。「打ち抜き(ブランキング)」「穴あけ(ピアッシング)」「切断(シャーリング)」「切り欠き(ノッチング)」などがあります。適正なクリアランスが確保されていないとバリやダレの原因となるため、加工精度に直結する重要な工程です。近年はタレットパンチプレスによる高精度な打抜きも普及し、加工力とスピードを両立できます。加工時の荷重やパンチ状態をモニタリングすれば、不良の早期検出や金型損傷の防止につながります。
曲げ加工
曲げ加工は、金属に引張力と圧縮力を加えて目的の角度に成形する方法です。代表的な方法にV形やU形に曲げる「ベンディング」があります。せん断加工と異なり材料を分離しないため、材料に残る「スプリングバック(弾性変形)」を考慮する必要があります。これを無視すると寸法精度の低下や不良品発生の原因となります。
絞り加工(深絞り)
絞り加工は、パンチとダイで金属板を挟み込み、引張応力を利用して立体形状に成形する方法です。「深絞り」はコップ状や筒状の製品を一体成形する際に用いられ、接合が不要なため強度・美観に優れる反面、加工難易度が高いのが特徴です。深絞り加工では、フランジ部に円周方向の圧縮応力が生じて「シワ」が発生しやすくなります。一方で、パンチ肩部から側壁にかけては過大な引張応力が集中するため、板厚の減少や「割れ(クラック)」が生じやすくなる点に注意が必要です。
これを防ぐには、材料の選定、金型のR形状調整、しわ押さえの圧力管理が重要です。
フランジ加工
フランジ加工は、主に円筒形状や孔の周囲を外側または内側に拡げて立ち上げる加工です。絞り加工やせん断加工の後工程として行われることが多く、強度の確保や部品の結合性向上に関係します。局所的な引張や圧縮が加わるため、条件が不適切だと「シワ」や「割れ」が発生しやすくなります。均一な材料厚さや金型の摩耗状態が品質を左右するため、定期的な金型メンテナンスが欠かせません。加工条件(圧力・速度)の最適化により、不良率の低下と生産性向上が期待できます。
加工条件によって発生する不良の種類や原因は変わります。ここからは、プレス加工で発生する不良の種類と原因・メカニズムを詳しく解説します。
プレス加工で発生する不良の種類と原因/メカニズム
プレス加工は高効率な大量生産を実現する反面、工程中でさまざまな不良が発生しやすい加工方法です。現場で特に頻発する6つの代表的な不良とその原因・メカニズムを解説します。
割れ(クラック)
深絞りでは底面に圧縮、側面に引張応力が生じるため、引張に弱い材料や過度な成形条件下ではクラックが発生しやすくなります。曲げ加工でも材料の圧延方向や曲げ半径が不適切だと、曲げ部に微細なひび割れや裂け目が発生します。対策としては、金型のR形状を滑らかにして成形抵抗を低減する、材料の方向性に配慮した配置、板厚の8倍以上にする曲げ幅の適正化などが効果的です。
シワ
シワは、主に絞り加工中にフランジ部分へ過剰な圧縮力がかかり、材料が波打って発生する不良です。美観を損ねるだけでなく、寸法精度や強度にも悪影響を与えます。材料が薄い場合や、しわ押さえの圧力が不均一な場合に発生しやすくなります。対策としては、しわ押さえ装置(ブランクホルダー)で材料の流れを均一化することが有効です。固定式だけでなく、スプリングやダイクッションを使った可動式のしわ押さえも、柔軟な圧力制御ができて効果的です。
バリ
バリは、せん断加工時にパンチとダイの隙間(クリアランス)が適正でないと、材料の一部が切断時に飛び出し、鋭利な突起として残る不良です。クリアランスが大きすぎるとバリは大きくなり、はめあい精度の低下や安全性リスクを招きます。過小クリアランスでも「ヒゲ状のバリ」が発生します。バリは製品品質だけでなく作業者の安全にも影響するため、特に注意が必要です。対策としては、材質や板厚に応じてクリアランスを設定し、切断面を観察します。適正なクリアランスを判断する目安の一つとして、せん断面が板厚の1/3~1/2程度になっているかを確認します。4Kマイクロスコープによる観察で微細なバリの発生状況を評価し、加工条件を最適化できます。
スプリングバック
スプリングバックは、曲げ加工後に被加工材の内部に残留した応力により、加工部が元の形に戻ろうとする現象です。意図した曲げ角度からズレが生じ、寸法精度が確保できなくなります。特に高強度材料や薄板では顕著に表れ、精密部品の製造では深刻な問題です。対策としては、あらかじめ深めの角度で曲げる「オーバーベント」、パンチにストライキングを設けて応力を分散させる方法、ノッチを付けて変形しやすくする手法などが有効です。
穴ズレ
穴ズレは、パンチとダイの位置ズレや材料の送りズレなどにより、意図した位置に穴が開かない不良です。特に順送プレスや多工程プレスでは、材料の搬送や金型の精度がズレを生じさせます。組立時の不具合や機能不全を招き、再加工や廃棄のコストが発生します。対策としては、金型の位置精度を定期的に確認・補正し、材料の送り装置(フィーダー)の精度管理、ピッチずれの検出センサーの導入が効果的です。
表面キズ
表面キズは、材料搬送中の摩擦、スクラップ・異物の混入、金型のかじりなどにより発生する不良です。特にスクラップがパンチに吸着する「カス上がり」が原因で製品に打痕や傷が残るケースが多く、生産性・品質を大きく損ねます。対策には、「キックピン」でスクラップを物理的に除去する、パンチ先端からエアを噴出する、油の粘度を下げるなどが効果的です。4Kデジタルマイクロスコープによる高コントラスト観察で、微細な傷や打痕も可視化でき、原因究明と対策立案が速まります。
プレス加工の不良は、作業や手順のミス、原材料の特性など、さまざまな原因で生じます。次章では、製造現場で最低限実施しておきたい対策を解説します。
プレス加工における不良/不具合に対する対策
不良の発生を防ぐには、日常の管理・運用における具体的な対策が必要です。品質を安定させるための4つの実践的対策を解説します。
金型の検査などメンテナンスを定期的に実施する
金型の摩耗や損傷は品質に直結するため、定期的なメンテナンスや検査といった保守点検は必須です。特にバリの発生は刃先の摩耗によるクリアランス拡大が原因となるケースが多く、精密な点検で不良リスクを最小限に抑えられます。製品や材料の特性に応じて、加工方法・金型仕様・プレス機の設定(圧力・速度)を品質管理部門や生産技術部門と連携して最適化することが重要です。さらに、現場の作業者がその加工条件にもとづいて正確に作業することも品質維持につながります。標準作業/作業標準を現場の作業ルールとして明確にし、現場と管理部門が一体で改善を進めることが、安定した生産と歩留まり向上につながります。
関連資料:メンテナンス業務の“ベテラン頼り”を解消する現場教育の新標準
しかし、この品質維持の要である「金型の精密な点検」や「最適な加工条件の調整」が、特定のベテランの経験や勘に依存している現場は少なくありません。「刃先のわずかな摩耗にあの人しか気づけない」という状態では、ルールを明確にしても経験の浅い作業員が正確にメンテナンスを実行できず、不良発生のリスクが残ります。真の標準化には、個人のスキルに頼らず、経験の浅い作業者でも一定水準の保守点検を行いやすい環境を整える「教育の仕組みづくり」が急務です。手順が守られないことで起きる品質不良を断つ考え方と具体策は、以下の資料で解説しています。
>>手順不遵守に起因する品質不良の考え方と対策(実践資料)を見てみる
ヒューマンエラーによる不良を防ぐポカヨケの実施
プレス加工では、作業者の小さなミスが重大な不良につながります。これを防ぐには、ポカヨケ(Poka-Yoke)と呼ばれる誤操作防止策の導入が効果的です。金型セット時の位置ズレを防ぐガイド設置や、材料の表裏・前後を逆に入れると物理的にセットできない非対称なピンの設置などが一例です。異物混入や部品の取り違いは現場でよくあるポカミスですが、ポカヨケにより作業者の意図せぬミスを未然に防げます。ポカヨケを「仕掛け」だけで終わらせず、なぜそのミスが起こるのかを理解させて定着させる進め方は、以下の動画で解説しています。
>>ポカミスゼロへ!ヒューマンエラーの未然防止「ポカヨケ」の進め方を見てみる
原材料の品質確保を目的とした不純物/異物混入の確認
高品質な製品を安定生産するには、原材料の品質確保が必須です。不純物や異物が混入した材料を使うと、せん断面でバリやクラックが発生しやすくなり、金型の損傷リスクも高まります。入荷時の受入検査で異物の有無や材質の均一性を確認すれば、加工トラブルを未然に防げます。トレース可能な材料管理体制(トレーサビリティ)を構築すれば、不具合発生時も迅速に原因を追跡できます。
圧力や速度、温度などの加工条件の最適化
「圧力」「速度」「温度」といった加工条件は製品品質に大きく影響します。条件が適切でないと、材料が正確に切断・成形されず、バリ・シワ・割れといった品質不良が発生しやすくなります。製品ごとの仕様や材料特性にもとづき、最適な加工条件を設定することが生産安定化の基本です。加工条件の設定では、生産技術や品質管理部門と連携し、実データや過去の実績をもとに科学的な根拠をもって最適化を図ることが重要です。あわせて、現場の作業者が条件を正確に理解し常に遵守できるよう、現場教育の推進や標準作業の確立も不可欠です。条件の変化をリアルタイムで把握できるシステムを導入すれば、不具合の早期発見と再発防止に大きな効果を発揮します。
ここまではハード側の対策が中心ですが、プレス加工は人の手を必要とする工程であるため、人材育成というソフト面の対策も欠かせません。次章では、品質向上における「教育改善」の重要性と難しさを解説します。
プレス加工の品質向上を難しくする壁【教育改善も大切】
標準作業の未整備による品質のバラつき
作業手順が標準化されていない現場では、作業者ごとにやり方が異なり、製品に品質のばらつきが生じます。特に段取りや設備調整など精度が求められる作業ほど、「いつも通り」が人によって異なることが不良の原因になります。標準作業を整備することは、誰が作業しても一定の品質を担保するために必要です。一方で製造現場では、標準作業の中にカンコツが要求される作業があるケースもあります。こうした「守られない標準」を放置すると、手順からの逸脱が起きやすくなり、品質不良につながる可能性があります。手順不遵守を断つ具体策は、以下の資料で解説しています。
>>手順不遵守に起因する品質不良の考え方と対策(実践資料)を見てみる
金型メンテナンスなど、作業者にカンコツが要求される
プレス加工では、金型のメンテナンスやトラブル対応で熟練者の技能(カンコツ)が要求される場面が多くあります。微妙な摩耗の見極めや異音の違和感を察知する判断は経験にもとづく技術であり、マニュアルやOJTだけでは伝えきれません。技術伝承が進まない現場では、メンテナンス不足からバリの増加や寸法不良が発生し、品質の安定性が損なわれます。属人的な対応を脱し、技能の見える化・標準化を図ることで、技術の底上げと不良品の抑制が可能になります。教育改善は、品質安定のための土台作りです。
関連資料:“伝わらない”“属人化している”カンコツ作業を標準化する最適解
段取り替えが多く、作業手順の共有がOJTなどに依存してしまう
プレス加工では、加工品目や材料の変更により頻繁な段取り替えや金型交換が必要です。その結果、作業手順の種類が膨大になり、手順書の作成や更新が後回しになりがちです。手順の共有がOJTに依存すると、管理者の負担増加や指導内容のばらつきにより、作業ミスや品質不良が発生しやすくなります。手順の標準化、教育ツールの整備、誰でも再現できる仕組みづくりが求められ、その一環として動画マニュアルの活用が有効です。樹脂製品の製造・販売を行う日本クロージャー株式会社では、現場で大きな負担が生じていたOJTの7割を動画マニュアルに置き換え、現場教育の大幅な効率化を実現しています。
外国人籍の従業員へ、うまく作業内容を伝えられない
プレス加工が盛んな金属製品、自動車部品、電気機械器具などの製造分野では、外国人従業員が一定数在籍しています。外国人従業員が在籍する現場では、専門用語や日本語だけの手順書では、作業内容が十分に伝わらない場合、手順の理解に差が生じ、作業ミスにつながる可能性があります。紙のマニュアルや口頭指示だけでは理解が難しく、指導内容が伝わらないまま作業を進めてしまうケースもあります。こうした課題には、視覚的に理解できる動画マニュアルの導入が効果を発揮します。動作を直接見て学べる仕組みにより、言葉に頼らずとも理解度を高め、品質の安定化と安全な作業環境づくりを両立できます。かんたん動画マニュアル「tebiki現場教育」であれば、字幕の100ヶ国語以上への自動翻訳、自動音声による字幕読み上げ(一部言語)、管理ページや文書マニュアルの多言語化(一部言語)などにより、外国籍の従業員が母国語で業務を学べる環境を整えられます。
「人材育成」で品質向上に取り組む製造業の事例
プレス加工における品質不良の改善には、ハード面の対策だけでなく、人材育成というソフト面の対策も大切です。人材育成を通じて品質向上を実現した製造業の事例を紹介します。
言語の壁を越えて手順を標準化し、遵守させることに成功した事例(児玉化学工業株式会社)
自動車の樹脂製品を製造・販売する児玉化学工業株式会社は、多国籍の従業員が在籍する製造現場において、言葉の壁などから手順書が正しく理解されず、作業ミスや品質不良が発生する課題を抱えていました。従来の紙マニュアルでは専門用語や作業の細かいコツが伝わらず、「暗黙の了解」に頼る教育が常態化。指導者によって教え方が異なるなどOJTのばらつきも大きく、製品不良の要因となっていました。
そこで同社は動画マニュアルを活用し、人材育成を通じた品質向上に取り組みました。「tebiki現場教育」を導入して作業手順を視覚的に可視化したことで、言語の壁を越えて日本人・外国人を問わず正しいルールが浸透。これにより、これまで発生していた手順不遵守による不良を防ぎ、正しい作業の標準化に成功しました。社内ルールや作業のカン・コツが映像で「見える化」されたことで教育担当者の負担が軽減されただけでなく、マニュアルの作成工数も紙の1/3に低減。品質の安定と業務効率化の両面で大きな成果を上げています。
動画マニュアルによる教育改善で品質を安定させる
製造現場において、品質不良や安全トラブルの一部は、作業手順の誤りや理解不足から発生します。特に複雑な作業や細かなカンコツが要求される工程では、紙や口頭だけの教育では限界があります。手順を動画で標準化し、誰が見ても同じ基準で学べる環境を整えることが、手順不遵守による品質不良を根本から減らす近道です。かんたん動画マニュアル「tebiki現場教育」の機能・プラン・活用事例は、以下のサービス資料でご覧いただけます。
>>かんたん動画マニュアル「tebiki現場教育」のサービス資料を見てみる
プレス加工で発生する不良を改善しよう【まとめ】
プレス加工の不良は、割れ・シワ・バリ・スプリングバック・穴ズレ・表面キズなど多岐にわたり、その多くは加工条件や金型管理といったハード面と、手順不遵守・カンコツの属人化といったソフト面の両方に原因があります。ハード側の対策に加え、標準作業の整備と教育改善によって「人に起因する不良」を減らすことが、品質向上の要です。
まずは自社のプレス工程で、段取りや金型メンテナンスの手順が標準化され、誰でも同じ基準で守れる状態になっているかを確認してみてください。そのうえで、手順不遵守による品質不良を断つ具体策と、動画による教育標準化の進め方を、以下の資料でご確認いただけます。











