「省人化について詳しく知りたい」
「省人化と省力化の違いは何?」
「具体的な省人化・省力化の実践方法は?」
などの疑問や悩みを抱えている製造業勤めの方は多いはずです。
そこでこの記事では、省人化の概念とその背景、省力化や少人化との違い、それぞれのメリットとデメリットについて分かりやすく解説します。
また、省人化・省力化を実現するための具体的な手法や、成功事例、さらには省人化・省力化を支援するための補助金も紹介します。
この記事では、製造業で現場改善を目指す方への、省人化・省力化の理解と実践に向けた情報を提供しております。現場改善では省人化・省力化は欠かせない要素ですので、この記事をぜひ参考にしてみてください。
現場改善ラボでは、省力化・省人化・小人化の基礎知識、進め方のポイントなどについて、ふくだ5S実践舎 代表 福田 隆氏が解説している動画も無料でご覧いただけますので、本記事と併せてご覧ください。
目次
省人化とは
省人化とは読み方は「ショウジンカ」で、人間が行っていた作業を機械やコンピューターに置き換えて、人間が行う必要のない作業を減らすことで、労働力をより効率的に活用すること」を指します。
省人化の目的は、単純に人件費を削減するだけではなく、単純作業や繰り返しの作業を機械化したことで手があく作業者を、人手不足の他の工程や、高度な作業、人の思考を使う創造的活動に活かすことです。
製造業では、人が行っていた作業を産業ロボットに代替させることがひとつの具体的な省人化の方法となります。
例えば、オムロン株式会社では人の補助をするロボットである協働ロボット(Collaborative Robot、コボット)の開発により省人化を実現。人の代わりにロボットが工場や製造現場で組み立てやハンドリングなどの作業を行えるようになりました。
省人化とは、人の労働力を自動化や機械化で削減し、人の労働力を高度な作業などのより価値のある活動へ集中することで、生産性や効率性の向上を図るものです。
省人化はトヨタ生産方式から始まった
省人化は、徹底的な無駄排除を目指すための「トヨタ生産方式(TPS)」由来の言葉になります。
TPSは、無駄を排除し、効率的な生産を追求するための手法であり、TPSの一環として省人化が採用された経緯があります。
TPSの詳細は下記セミナーをご視聴ください。
省人化が求められる背景
省人化が求められる背景としては、労働人口減少が挙げられます。日本では少子高齢化が進み、労働人口は年々減少傾向にあります。人手不足に悩まされている企業も多く、今後の日本では、さらに人材の確保が難しくなる可能性もあります。
少子高齢化といった社会問題を受け、製造業でも人材不足を解消するために、生産性の向上や効率化が求められています。
人手不足を打破するには、業務の無駄をできるだけなくし、限られたリソースを有効活用できる環境を整えることが求められています。そのため、省人化は製造業において重要な取り組みと言えるでしょう。
省人化と省力化の違い
省人化と省力化は、どちらも業務効率化を目的とした取り組みですが、その意味合いには微妙な違いがあります。
省力化とは、人の労力を減らすことで業務効率化を図ることです。
つまり、省人化は人員を減らすことに重点を置いた取り組みであり、省力化は人の労力を減らすことに重点を置いた取り組みです。
具体的な例を挙げると、省人化では、自動化設備を導入したり、業務の分担を見直したりすることで、人員を削減することができます。一方、省力化では、作業の効率化や簡素化を図ったり、作業員に適切な教育や訓練を行ったりすることで、人の労力を減らすことができます。
省人化と省力化は、どちらも業務効率化を図るための有効な手段ですが、その目的や方法には違いがあります。
省人化と少人化の違い
省人化と少人化は、両方とも人間の働き手の数を減らす傾向を表す言葉ですが、その背後にある理由や状況が異なります。
少人化とは、後工程の需要の変化に応じて、最も少ない人数で業務に対応することが目的です。
つまり、省人化はあくまでも人員を減らすことを目的としていますが、少人化は人員を減らすことで、効率的に業務を遂行することを目的としています。
具体的な例を挙げると、省人化では、自動化設備を導入したり、業務の分担を見直したりすることで、人員を削減することができます。一方、少人化では、需要の変化に応じて、人員を増減させながら、効率的に業務を遂行することができます。
省力化・省人化・小人化への具体的な対応策については下記セミナーをご視聴ください。
省人化・省力化のメリット
省人化・省力化のメリットとして3つがあります。
- 生産性向上
- 品質の向上
- 人手不足の解消
生産性向上
省人化と省力化の最大のメリットは、生産性の向上です。なぜなら、省人化と省力化により、作業の自動化や効率化が進み、同じ時間でより多くの製品を生産することが可能になるからです。
例えば、製造ラインにロボットを導入することで、人間が行う作業時間を大幅に削減し、生産性を向上させられます。
品質の向上
人間の作業にはミスが生じる可能性がありますが、ロボットやAIによる自動化により、そのリスクを大幅に減らせるため、省人化と省力化には品質の向上というメリットもあります。
例えば、精密な組み立て作業をロボットに任せることで、人間の作業によるミスを防ぎ、製品の品質を一定に保つことが可能になります。
人のミスを減らす、ヒューマンエラーの原因分析と対策法については下記セミナーをご視聴ください。
人手不足の解消
人間が行うべき作業を減らし、人手が不足している部分に人材を配置することが可能になるため、省人化と省力化は人手不足の解消にもつながります。
例えば、自動組み立て機械やロボットアームで製造ラインを自動化し、人の手による作業を削減することで人手不足を解消することが可能です。
省人化・省力化のデメリット
省人化・省力化のデメリットとして2つが考えられます。
- 導入コストがかかる
- 専門家が必要
導入コストがかかる
省人化・省力化の取り組みは、製造業における生産性向上や品質向上に一役買いますが、一方で機械やロボットの導入には初期費用や維持コストが必要となるため、導入コストがかかるというデメリットがあります。
例えば、自動化ラインの設置やAIシステムの導入は、高額な投資が必要となります。また、導入に多くの時間や費用をかけたにも関わらず、自動化できた業務が投資コストに見合わなかったというリスクも存在します。
そのため、どれぐらいの業務が自動化でき、自動化によって生まれた時間をどの業務に割り当て、またどれぐらいの利益を生み出すのかなど、全体の流れをよく確認した上で導入を検討することが重要です。
専門家が必要
省人化・省力化を進め、機械やロボットを導入して自動化を図るには、システムを管理する専門人材が必要となるでしょう。
例えば、故障した際に復旧にどれぐらいの時間がかかるのか、システムの管理を円滑に行えるかなど、導入後のことを考えて専門人材を獲得したり、業務委託したりする必要があります。
社内に専門知識を持つ人材がいない場合は、新たに採用するコストも必要となります。そのため、導入前には自社に専門的な知識を持った人材がいるか、または獲得できるかを確認することが求められるでしょう。
省人化・省力化の実現方法
省人化・省力化の実現方法として考えられることは次の3つがあります。
- 業務フローの可視化
- 業務の標準化
- AIやツールの導入
業務フローの可視化
現状の業務フローを明確に理解することで、無駄な工程や改善の余地がある部分を見つけることが可能になるため、省人化・省力化をはじめるには、業務フローの可視化が重要です。
例えば、製造業の現場では、製品の組み立て工程や検査工程などを詳細にマッピングすることで、人手が必要な部分や時間がかかっている部分を特定できます。結果として、どの部分に省人化・省力化の取り組みを導入すべきかの判断材料になります。
業務の標準化
業務が標準化されていないと、人によって作業の手順や品質が異なり、結果的に省人化・省力化の妨げとなるため、業務の標準化は省人化・省力化をはじめるには重要でしょう。
例えば、製造業の現場では、製品の組み立て方法や検査方法が人によって異なると、品質のばらつきが生じ、再作業や廃棄が必要になることがあります。そこで、業務を標準化することで、作業の手順や品質が一定に保たれ、これらの問題を解消できます。
さらに、業務が標準化されると、新たな機械やシステムを導入する際の基準も明確になり、省人化・省力化の取り組みをスムーズに進められます。
AIやツールの導入
業務を標準化すれば、業務プロセスにAIやツールを導入するのも1つです。
AI技術は発展していますし、便利なツールは世の中に溢れています。これまで人が必要であった作業が、AIやツールを導入することで省人化を実現できるかもしれません。
省人化・省力化の事例
金剛株式会社
金剛株式会社は、図書館などで使用される移動式の棚やオフィス器具のメーカーです。
2016年の熊本地震で本社工場が被災し、嘉島工場(熊本県嘉島町)を2018年に新設しました。
嘉島工場を新設したタイミングで自動化の計画を実行しました。曲げ加工や溶接部門に多関節ロボット計10台を導入し、塗装工程にも一部ロボットを取り入れ生産ラインの自動化を進めました。
その結果、残業時間を570時間短縮することに成功しました。
参考元:残業時間570時間短縮、オフィス器具メーカーが導入したロボットの活躍
株式会社イメージ・マジック
株式会社イメージ・マジックは、オリジナル製品のオンデマンドプリントサービスを展開しているソリューションカンパニーです。
株式会社イメージ・マジックは、生産ラインに「DIGITAL LINE(デジタルライン)DL2400」と「GTX600」という製造システムを導入し自動化を進めました。
従来の生産ラインでは5、6人が行っていた作業を、2つの製造システムを導入し連結させることで6分の1程度まで省人化させることに成功しました。
参考元:省人化の波! イメージ・マジックの岐阜拠点がブラザーの「DL2400」を導入 6人分の仕事を1人で
省人化・省力化を理解して業務改善にいかそう!【まとめ】
省人化とは、作業を省力化するとともに、作業にかかる作業者の人数を減らすことを指す概念で、トヨタ生産方式から始まり、労働人口の減少が関係しているという背景があります。
さらに、省力化のメリットとしては、生産性の向上、品質の向上、人手不足の解消が挙げられますが、一方で導入コストや専門家の必要性といったデメリットも存在します。
また、工場や小売業における省人化・省力化の取り組みを支援するための補助金についてもあるため、積極的に利用して現場改善を促進させましょう。