物流現場のかんたん動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」を展開する、現場改善ラボ編集部です。
検品作業のミスは在庫差異や誤出荷に直結し、物流品質や顧客満足度にも悪影響を及ぼします。単なる注意喚起で済ませず、検品ミスの根本原因を分析し、再発を防ぐための具体的な仕組みを構築することが重要です。
本記事では、検品作業でミスが発生する主な原因を整理し、現場で取り組める防止策について詳しく解説しています。倉庫での検品ミスが増えている、対策を講じても効果が出ないなど、検品品質に課題を感じている方はぜひ参考にしてみてください。
なお、検品作業のミスに対する対策をはじめに知りたい方は『検品作業のミスを防止する上で有効な対策』をクリックしてください。
目次
倉庫での検品作業で発生しがちなミス
検品とは、商品を入荷・出荷する際に、品番や数量が指示通りの内容になっているか、品質に問題がないかを確認する作業です。
倉庫や物流の現場では精度の高い検品作業が求められますが、現場の忙しさや不明確なルール、作業環境といったさまざまな要因により、以下のようなミスが発生するリスクがあります。
品番や数量違いの見逃し・誤出荷
検品作業のなかでも特に起こりがちなのが、品番や数量の間違いを見逃してしまうミスです。特に目視での検品作業を行っている場合、一度に大量の商品を入荷するときや、外観が似ている商品を出荷するときなどにミスが発生しやすくなります。
入荷検品時のミスは在庫差異や滞留在庫の発生、出荷検品時のミスは誤出荷や返品処理の発生につながり、業務上の手間を増やすだけでなく、顧客や取引先からの信頼を損なう原因にもなりかねません。数量間違いによるミスについては、以下の関連記事で詳しく解説していますので合わせてご覧ください。
関連記事:ピッキングミス・数量間違いが多い人の特徴と対策!改善事例もあわせて紹介
汚損・破損などの品質不良の見逃し
検品作業においては、品番や数量の確認だけでなく、商品の外観や状態に異常がないかチェックするのも重要な作業です。
パッケージの汚れや破れは比較的見つけやすいものの、パーツの欠損や機能の不具合などは内部を確認しなければ気づきにくく、明らかな品質不良を見落としてしまうことも。こうした不良品がそのまま出荷されると、顧客満足度の低下やクレームの発生につながり、企業イメージにも悪影響を及ぼす恐れがあります。
実際に物流企業「ソニテック株式会社」でも、以前に同様の課題を抱えていました。
作業内容の正確な伝達が難しく、ミスが発生することもしばしばあります。例えば、「商材の表面にシールを貼る」という指示が、誤って「横面にシールを貼る」という行動になるなど、指示の不明瞭さが課題となっています。
同社が抱えていた課題を解消し、作業の標準化を実現した事例については以下のインタビュー記事をご覧ください。
インタビュー記事:3ヶ月間の直接指導を動画マニュアルで完全に置き換え、業務の効率化を実現
付属品や同梱物の入れ忘れ
出荷検品時には、電源ケーブルやアダプター、説明書、保証書など、商品の付属品や同梱物を入れ忘れるミスが発生しがちです。商品本体の検品に意識が集中するあまり、同梱すべき内容物の確認が疎かになり、入れ忘れに気づかないまま梱包作業を完了させてしまうことがあります。
付属品・同梱物は在庫管理の対象としないケースが多いため、検品時のチェックが抜けやすく、顧客から指摘が来るまでミスに気づかないことも少なくありません。
伝票とデータの情報が一致しない
検品作業の精度が低い場合、伝票に記載された内容とシステム上のデータに差異が発生することがあります。例えば、出荷指示の修正後にピッキングリストを再発行したものの、倉庫担当者には誤って古いリストを手渡してしまい、修正前の指示でピッキングと出荷検品が進められてしまうケースです。
このようなミスが発生すると、実際の出荷内容と指示データが食い違い、在庫差異や誤出荷を引き起こす要因となります。
対策しているのになぜ起きる…?検品作業でミスが発生する原因
検品作業におけるミスは、手順や体制の不備、現場特有の作業環境など、複数の要因が重なって発生することが少なくありません。具体的には、次の3点に起因するケースが多く見られます。
仕組みやルールによる原因
検品作業中のミスは、作業手順やルールといった仕組みそのものに問題があるケースも多く、ミスが頻発している場合には根本的な見直しが求められます。
作業手順が不明確であり、標準化が進んでいない
標準化が進んでいない現場では、作業員ごとに異なる手順で作業を進めてしまい、誰が担当するかによって検品の精度が大きく左右されます。
新人作業員が現場に入った際も、共通の手順書やマニュアルが整備されていないことで判断に迷いが生じ、作業に時間がかかりすぎたり確認漏れが多発したりすることがあります。こうした状況が続くと、現場全体の作業品質が不安定になり、検品ミスの発生リスクが高まります。
実際に、物流企業「株式会社ロジカルエクスプレス」でも、以下のような課題を抱えていました。
拠点ごとにマニュアルやルールが統一されてなく、同一の業務を行っていても業務品質や作業手順にバラツキがあり、同じ作業手順で品質を均一化させることが課題でした。
同社が抱えていた課題や課題に対する取り組み、成果については「動画で全拠点の安全品質意識の向上と業務ノウハウの可視化を達成」をご覧ください。
発生したミスを共有し、再発防止を徹底する仕組みがない
倉庫作業におけるミスを完全に防ぐことは難しいものの、何度も同じミスを繰り返すような現場では、発生した問題を共有し再発防止につなげる仕組みが整っていないと考えられます。
特に、ミスに対する責任追及が厳しい場合、作業員がなかなか報告を上げられず、問題が表面化しにくくなります。その結果、ミスの原因が現場全体で共有されず、再発防止策が講じられないまま現場の問題が放置されてしまうことがあります。
繰り返し発生する同じようなミスを防止するための具体的な再発防止策について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:再発防止策の具体例5選!対策の考え方や作業ミスの原因を解説
人による原因
検品ミスの多くは「人」に起因しており、作業員個人の理解度や意識の違いがヒューマンエラーを招く主な原因となっています。
検品作業を十分に理解していない状態で現場に出ている
倉庫や物流の現場では人の入れ替わりが激しく、新人や経験の浅い作業員が検品の目的や手順を十分に理解しないまま現場に入るケースも少なくありません。その結果、必要な確認項目を見落としたり、検品の精度にばらつきが生じたりすることがあります。
検品作業の重要性を理解できていない場合、品質管理に対する意識が希薄なまま作業を続けてしまうため、確認漏れや不良品の見逃しといったヒューマンエラーが発生しやすくなります。
作業への慣れによって、我流で検品作業をしている
検品中のミスは、現場作業に慣れているベテラン作業員でも起こり得ます。長期にわたって同じ現場で作業を続けていると、慣れによる慢心から作業工程を省略したり、“自分がやりやすい”方法を編み出したりと、標準的な手順やルールから逸脱してしまうことがあるからです。
検品作業の経験が豊富にあっても、自己流のやり方では確認すべき項目に偏りが生じやすく、結果的に見落としや誤認識といったミスにつながる可能性が高くなります。
作業不遵守が発生する従業員の心理や原因などを詳しく知りたい方は、以下の資料をご覧ください。不遵守の根本的な原因から標準化する方法まで詳しく解説しているので、人由来の検品作業のミスを防止するヒントも得られるはずです。
>>「手順不遵守に起因する品質不良対策の考え方と対策」を見てみる
環境による原因
倉庫内の作業環境は仕事の品質を大きく左右し、検品作業の正確性や効率にも影響を与えます。検品ミスが頻発している場合は、作業員が仕事をしやすい環境が整備されているかどうかを確認する必要があります。
作業スペースが整理されていない
整理整頓が不十分な環境は、検品作業の精度を大きく損なう要因の1つです。乱雑な作業スペースでは効率よく動けず、検品にかけるべき集中力が分散され、品番の取り間違いや数量ミスといったヒューマンエラーが起こりやすくなります。
加えて、床に散乱している緩衝材や電源コードにつまずきそうになる、荷物が積み上がりすぎて視界が遮られるなど、作業環境の問題は安全性においてもリスクを高めることに注意が必要です。これらの作業スペースを整理する上で有効なのが5S活動です。詳しくは『5S活動を推進する』で詳しく紹介しています。
作業動線が明確化されていない
作業動線が明確に設計されていない現場では、作業員同士の動線が重なりやすく、狭い通路上でのすれ違いや接触が頻繁に発生します。
これにより検品作業の流れが断続的に中断されるため、作業員の集中力も削がれ、業務効率や生産性が著しく低下してしまいます。さらに、動線が混雑すると商品の取り間違いが起こりやすくなり、在庫数のズレや誤出荷が発生するリスクも高まります。
検品作業のミスを防止する上で有効な対策
検品作業のミスを防ぐためには、現場全体で“ミスが起こりにくい仕組み”を整えていくことが重要です。具体的には、次の3つの観点から検品ミスを防止する対策を講じることで、安定した品質と効率の確保につなげられます。
仕組みやルールによる検品作業のミスを防止する対策
現場全体で検品ミスを減らすには、検品作業の仕組みそのものを見直すことが求められます。個人の能力や経験に依存せず、いつでも一定の品質を担保できる体制を整えることが大切です。
誰が作業しても同じ品質を保てるように「作業の標準化」を進める
ミスのない正確な検品作業を行うには、標準的な作業手順を現場全体で共有し、全員が手順通りに作業を進めることが重要です。作業の標準化が実現すると、作業員による品質のばらつきが生じにくくなり、誰が担当しても同程度の品質を保てるようになります。
検品作業の標準化を進めるうえで動画マニュアルの活用が有効な手段の1つです。実際に物流企業の「ASKUL LOGIST株式会社」では、従業員によって理解度のばらつきが発生していましたが、動画マニュアルの活用によって、作業の標準化を実現していると導入効果を実感しています。同社の事例を詳しく読んでみたい方は、こちらのインタビュー記事をご覧ください。
なお、検品作業の標準化を進める上では、「カンコツが中々伝わらない…」という場合もあるはずです。以下の資料では、標準化を実現している企業の事例や標準化する方法を詳しくまとめているので合わせてご覧ください。
>>「“伝わらない”“属人化している”カンコツ作業を標準化する最適解」を見てみる
作業の不明点があった際、すぐにマニュアルを閲覧できる環境を構築する
検品ミスを防ぐためには、現場での疑問や不明点をスピーディーに解決できる仕組みが欠かせません。必要なときにいつでもマニュアルを閲覧できる環境を整えることで、作業中の迷いや不安が解消され、手順間違いや判断ミスが起こりにくくなります。
現場作業においては、作業場所からすぐに必要な情報にアクセスできる状態にすることも重要です。例えば、テーブルマーク株式会社では、作業する箇所に動画マニュアルを閲覧できるコードを貼り付け、必要なときにQRコードを読み込んでマニュアルを閲覧できるような体制を構築しています。
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同社の取り組みについては、「属人化業務の指導工数を83%削減!標準化教育により安心安全な食品を提供」のインタビュー記事で詳しく紹介しています。検品作業のミスを防止するヒントも得られるはずですのでぜひご覧ください。
倉庫管理システム(WMS)やハンディターミナルを導入する
手作業中心の検品作業を行っている場合は、倉庫管理システム(WMS)やハンディターミナルの導入によってヒューマンエラーを大幅に削減できる可能性が高く、作業効率や生産性の向上につなげられます。
バーコードスキャンによる照合システムは、見間違いや記入・転記ミスなどが起こりづらく、検品作業の精度とスピードを同時に高められます。また、在庫の変動がシステム上で即座に反映されるため、実際の在庫状況と作業員が参照する情報とのズレが生じにくく、「在庫があるはずなのに見つからない」といった現場の混乱を防ぐことができます。
再発防止のサイクルを回す
検品ミスを完全にゼロにするのは難しくても、原因究明と再発防止のサイクルを回すことで、検品作業の精度は確実に向上していきます。発生したミスを関係者全員で共有し、同じ失敗を繰り返さないための仕組みを現場に根付かせることが重要です。
そのためには、定期的なミーティングを通じて現場作業を振り返り、ミスを責めるのではなく“改善のきっかけ”と捉えられる、報告しやすい雰囲気づくりが欠かせません。なお、再発防止に取り組む上で、「実施しているのにトラブルが減らない…」などの悩みを抱えている場合も少なくないはずです。以下の動画では、再発防止に必要な視点や好事例などを専門家の視点で詳しく解説しています。検品作業においても参考になる情報もあるので、合わせてご覧ください。
>>「繰り返す品質・安全トラブルを防ぐには?効果のある再発防止策と現場で活かせる具体例」を見てみる
人由来による検品作業のミスを防止する対策
検品ミスを防止する人的アプローチとしては、個々の理解度を底上げする教育や、継続的な意識づけが必要です。具体的には以下のような対策が考えられます。
検品の作業内容を体系的に学べる教育を実施する
検品作業は確認項目が多く、物流業務のなかでも特に細かい注意を要するプロセスです。新人や経験の浅い作業員に指導する際には、まず検品作業の目的や重要性を理解させたうえで、具体的な作業フローを体系的に学べるカリキュラムを用意しましょう。
また、検品作業で起こりがちなミスの具体例を示し、問題発生時の対応や再発防止の取り組みも共有することで、作業員一人ひとりの品質意識の向上につなげられます。これにより、現場全体でのミス発生率が低減し、安定した作業品質を維持できるようになります。
定期的な「標準作業」の再教育を実施する
検品作業に慣れてくると、標準作業から逸脱した自己流の方法で作業を進めてしまい、検品品質にばらつきが生じることがあります。
これを防ぐには、標準作業の手順やルールをあらためて確認する再教育を実施し、現場で実際に行われている作業とのズレがないかをチェックすることが重要です。実際に調べて見ると想定と実態に大きな乖離があり、手順の不遵守が蔓延している可能性も十分に考えられます。
このような手順の不遵守を防止し、標準化するための手段については以下の資料で詳しく解説しているので合わせてご覧ください。
>>「手順不遵守に起因する品質不良対策の考え方と対策」を見てみる
環境による検品作業のミスを防止する対策
作業環境に起因する検品ミスは、環境の整備・改善によって迅速に是正されるケースが多く、比較的短期間で効果が現れやすい傾向にあります。
5S活動を推進する
現場の作業環境を改善するには「5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)」の徹底が不可欠です。特に検品作業のように確認項目が多い工程では、作業スペースの整備がミス防止の第一歩となり、作業効率の向上とヒューマンエラーの削減に直結します。
日々の業務に5S活動を取り入れ、作業に必要なものだけを手元に置く習慣を徹底することで、見落としや誤認識のリスクが低減し、作業品質の向上につなげられます。
5S活動について詳しく知りたい方は、数々の企業で5S改革を行ってきた専門家による解説動画をご覧ください。5S活動の具体的な実践方法や成功させるためのポイントなどを詳しく解説しているので、検品作業のミスを防止するうえでのヒントが得られるはずです。
ロケーション管理を徹底する
倉庫内のロケーション管理が不十分だと、入荷した商品を本来とは異なるエリアに保管してしまい、ピッキングミスが起こりやすくなります。出荷検品でミスが見落とされると誤出荷に直結するため、検品前の段階で正確なピッキングが行えるよう、ロケーション管理の精度を高める必要があります。
ミスを防ぐためには、商品ごとのロケーションを明確に区分し、入荷時点で正しい場所に商品を配置することが重要です。やむを得ず仮置きする場合には専用のロケーションを設け、可能な限り早期に正式な保管場所へ移す運用ルールを徹底することが求められます。
検品作業のミスを防止し、作業効率の向上を実現している企業事例
精度の高い検品作業を実現している企業では、ミスを防ぐためにどのような対策を行っているのでしょうか。ここでは、検品ミスの防止に成功し、効率的な倉庫業務を行っている企業の事例を紹介します。
サッポログループ物流株式会社
サッポログループ物流株式会社は、事業会社の商品における安定的な輸配送を主軸に事業を展開している企業です。検品作業や装製作業といった物流現場特有の「動き」が伴う業務において、紙のマニュアルだけでは効率的な技術伝承が行えず、業務の属人化や品質のばらつきが課題となっていました。
これらの課題解決に向けて、同社が着目したのが「作業手順の動画化」です。ノウハウの「可視化」と「共有」を実現する手段として、動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」を導入した結果、月額30万円もの教育コストの削減に成功。ノウハウ共有の効率が上がり、知識や経験のブラックボックス化を防げるようになりました。
同社の事例を詳しく読んでみたい方は以下のインタビュー記事をご覧ください。
インタビュー記事:物流現場のノウハウを動画で可視化!ロジスティクスの生産性を上げるため人財教育の課題に挑む
レンティオ株式会社
カメラや家電、ベビー用品などを“買わずに使える”レンタルサービスを展開するレンティオ株式会社。レンタルから返ってきた商品の「検品清掃」が重要な作業の1つですが、OJTによる指導では教育にばらつきが出てしまい、教える側・教わる側の双方が多くの時間を費やすことに課題を感じていました。
こうした課題を解消するために同社が取り入れたのが、動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」です。標準作業を動画にまとめて共有したことで、検品作業の精度が統一され、指導時間の大幅な削減に成功しました。動画を活用したノウハウ共有の仕組みが構築されたことで、職場内のコミュニケーションも積極的になったそうです。
同社の事例を詳しく読んでみたい方は以下のインタビュー記事をご覧ください。
インタビュー記事:お客様から返ってきたレンタル品を分解、清掃、組み立て、出荷検品する作業を動画で標準化
まとめ
検品作業におけるミスは、主に「仕組みやルール」「人」「環境」の3点に起因します。完全に防ぐことは難しくても、作業の標準化や体系的な教育、5S活動などに取り組むことで、現場で同じミスを繰り返さない仕組みが構築されていきます。
そのなかでも、標準作業の徹底は検品ミスを防ぐための基盤となります。誰が担当しても同じ手順で作業を進められるようにするには、現場の動作を視覚的に理解できる「動画マニュアル」の活用が有効です。当記事で紹介した動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」の詳しいサービス概要を知りたい方は以下の画像をクリックして資料をご覧ください。