業務効率や製品の品質を高め、製造業における競争力を維持するには、適切なデータ活用を行うことが重要です。しかし「データの活用方法がわからない」「データを集めたものの、どのように利用すればいいか悩んでいる」という方も多いでしょう。
そこで、この記事では製造業におけるデータ活用の進め方を解説します。メリットや成功事例、おすすめのITツールも紹介するので、データ活用を通して現場の課題を解決したいという方は最後までご覧ください。
生産品質の向上には、製造現場で起きていることをITツールやデータを用いて可視化することが欠かせません。そこで、指標とすべきデータの種類や収集方法、実際にデータ分析を行う実践的な方法を実例を踏まえて解説したセミナー動画もご用意いたしました。本記事と併せてご覧ください。
目次
製造業におけるデータ活用の目的
製造業におけるデータ活用の目的は、主に以下の3つが挙げられます。
- DX推進
- 業務効率の向上
- 競争力の強化
DX推進
DXとは、デジタル技術を活用して業務プロセスやビジネスモデルを革新し、組織全体のパフォーマンスを向上させることを指します。
そのため、データというデジタル技術を活用して製造プロセスを最適化することもDXに相当し、データ活用の推進は現場や工場全体のDXを推進することにつながるといえます。
たとえば、センサーから収集したデータを活用して機械の稼働状況をリアルタイムで監視し、適切なタイミングで保守点検を実施することで、突然の機械故障による生産停止を防ぐことが可能です。
DXのメリットや具体的なDXツールについては、以下の記事でも紹介しているため是非ご覧ください。
関連記事:製造業で役立つ実用的なDXツール9つを厳選!DX成功のポイントも解説
業務効率の向上
製造データを活用すると生産ラインの不具合を引き起こすボトルネックを特定できるため、迅速に改善を行えます。たとえば、生産データを分析して稼働率の低い機械を特定することで、設備の改修や再配置を効率よく実施することが可能です。
また、従業員の作業データと成果をデータで管理することで非効率な業務を削減し、生産性を高めることも期待できます。例として、組み立てラインで作業データを収集し、各工程にどれだけの時間がかかっているかと実際の生産数を分析することで、最も効率の良い生産方法を特定することができます。
業務効率化の手法や具体的なアイデア例について知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
関連記事:業務効率化のアイデア12選と生産性を高めるやり方を徹底解説!
競争力の強化
製品の品質データをリアルタイムでモニタリングすることで不良品の早期検出と対策が可能となり、品質の一貫性を保つことができます。品質不良といったトラブルを起因とする経営問題を未然に防ぐことができるため、市場における優位性や競争力を強化し、競争力低下につながるリスクの芽を摘むことができます。
他にも、エネルギー消費や原材料の使用データを分析することでムダを削減することや、在庫データの活用で管理を最適化し、過剰在庫や欠品を防ぐことでコストを抑え、価格面においても競争力を強化することも期待できます。
製造現場の動きをデータとして可視化することで、発生しているムリムダムラを把握し改善に向けたアクションの指針となります。
関連記事:3M(ムリ・ムダ・ムラ)を無くし業務効率化を図る!実施方法や改善事例も紹介
工場で集められるデータの種類
工場で集められるデータとして、以下の4種類があります。
- 作業員に関するデータ
- 生産に関するデータ
- 品質に関するデータ
- 設備に関するデータ
作業員に関するデータ
作業員に関するデータとは、作業者の出勤状況や作業速度、保有スキルなどを指します。作業員に関するデータを収集・分析することで従業員ごとの生産性を可視化し、最適な人材配置が実現します。に
たとえば作業分析ツールなどを用いて、作業員ごとに作業速度のデータを取得し適切な作業配分を行うことで、全体の作業効率を向上させることが可能です。
他にも、作業員のスキルやパフォーマンスに関するデータを活用することで、より効率的な研修の実施やデータに基づいた公正かつ明確な人事評価が可能になり、組織規模での改善が見込めます。
作業員のスキルやパフォーマンスを可視化する手法として「スキルマップの活用」が挙げられます。スキルマップの概要や現場で使えるテンプレートについてまとめた記事もございますので、併せてご覧ください。
関連記事:スキルマップとは?作り方や項目例、テンプレートをご紹介
生産に関するデータ
生産に関するデータとは、生産数や機械の稼働状況、サイクルタイムデータ(製造にかかる時間)などを指します。
これらのデータを分析すると製造ラインのボトルネックを特定できるため、効率よく製造ラインの改善を行うことができます。
例として、各生産ラインでの作業時間や部品の使用量のデータを活用することで、どの工程で時間がかかりすぎているかやどの部品が頻繁に不足しているかを洗い出し、人員や部品を追加することが考えられます。
▼関連記事▼
・「タクトタイム」「サイクルタイム」「リードタイム」の意味や違いをわかりやすく解説!
・ビジネスにおけるボトルネックの意味は?解消方法を分かりやすく解説!
品質に関するデータ
品質に関するデータとして、不良品の数量や割合、製品検査の結果、検査項目ごとの合否判定などが挙げられます。品質に関するデータは異常値やばらつきを早期に発見するために重要であり、完成した製品に強く影響するため重点的に観測と分析を行う必要があります。
他にも品質に関するデータとして、製造プロセス中の温度、湿度、圧力などに関するデータも含まれます。製造プロセス中のばらつきやムラは不良品の製造に直結するため、ささいな変化も見逃さないことが大事だといえるでしょう。
品質に関するデータは、効果的な品質管理の実現に欠かせない要素です。品質管理に関する基本情報や具体的な分析手法について知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
関連記事:品質管理の基本を解説!目的や品質保証との違い、主な手法は?
設備に関するデータ
設備に関するデータとして、設備の稼働時間やメンテナンス履歴、故障率などが考えられます。設備に関するデータをもとに機械やシステムの保守点検を実施することで、設備の老朽化を防止し、大規模な故障を未然に防ぐことが可能です。
例として、設備の累積稼働時間を記録し適切なタイミングでメンテナンスを実施することで、部品の摩耗や劣化を防ぎ故障を未然に防ぐといった取り組みが挙げられます。
また、消費電力やガスの使用量といった設備データの分析をもとにエネルギー使用の効率化を図ることで、運用コストの削減が期待できます。
設備に関するデータを活用することで、設備保全を漏れなく実施することにつながるでしょう。設備保全の進め方やデジタル化のポイントについて、以下の記事で詳しく解説しているため是非ご覧ください。
関連記事:設備保全の目的とは?課題やあるべき姿、IoT化について解説
製造業でデータを活用をするメリット
製造業でデータを活用をするメリットは、以下の5つです。
- 生産性の向上
- 故障の予測
- 品質改善
- ノウハウの可視化
- 収益の増加
生産性の向上
データを活用して生産プロセスのムダな工程といったボトルネックを発見し改善することで、生産効率を高められます。たとえば、各工程の稼働時間、作業員の動き、機械の稼働率といったデータを分析して特定の工程での待機時間が多いことを発見することができます。
分析をもとにレイアウト変更や工程の再設計といった改善策を行いムダな工数や時間を削減することで、 生産ラインの全体効率が向上し、生産量が増加するという効果が生じるでしょう。
また、データをもとに生産計画を立てることで材料のムダ遣いやムダな在庫を減らし、製造コストや製品ロスを削減できます。
故障の予測
センサーやIoTデバイスからのデータをリアルタイムに分析し、機械の状況を常に監視することで、設備の故障を未然に防ぐこともデータ活用のメリットです。
たとえば、振動データや温度データを用いて異常な動きを早期に検出し、その部分をメンテナンスすることで、突発的な故障や大規模な生産停止といった損害を避けることが可能です。
さらに、過去の故障データをもとに保守点検の方法や頻度を決めることで、機械の故障を最小限に抑える効果も期待できます。
品質改善
製造工程のデータを可視化/分析することで、品質を悪化させている原因を特定し、迅速に改善を行うことが可能です。
たとえば、製品の寸法、重量、電気特性などの品質データに関する基準値を設定し、不良品が発生した際は異常値として即時に特定することが可能です。
特定した不良品の原因追及から改善までを短期的に行えるようになることで、不良品流失の数を最小限に留め、より大きな経営問題に発展することを予防できます。
不良品の発生原因を特定・改善することは歩留まりの向上にもつながるため、データ活用による品質改善は是非行いましょう。
歩留まりを改善するにはデータ活用の他、人・機械・材料・方法といった「4M」の視点に着目することが求められます。歩留まりが低下する原因や、4Mの視点から歩留まりロスを無くす改善事例については以下の専門家による解説動画をご覧ください。
ノウハウの可視化
過去のデータをもとに成功した理由や失敗した原因を分析することでノウハウを言語化し、効果的な教育に役立てることも可能です。
例として、高品質な製品が安定的に生産されていることがデータで可視化できれば、模範的な動きをしている作業員の特定が可能です。現場の生産性を高めるためには、模範的な作業員のノウハウを標準として現場に浸透させることが必要です。模範となるべき動きやコツを洗い出し、言語化することで組織全体の生産能力を高めることにつながるでしょう。
可視化され、言語化に成功したノウハウは再現性を持つため、ノウハウやカンコツの属人化を防ぐことができます。
属人化を防ぐための具体的な取り組みについてはこちらの別記事か、技術・技能伝承コンサルタントによる「品質と生産性の向上を実現する属人化からの脱却戦略」のセミナー動画をご覧ください。
収益の増加
データをもとに意思決定を行うことで効率よくコスト削減や品質管理が行えるため、収益の増加も期待できます。
たとえば、データ活用で工程におけるムダを洗い出し改善に成功した場合、同じリソース(作業時間や従業員数など)でより多くの製品を生産することができるため、生産性の向上とともに収益増加が実現するでしょう。
データの活用は他にも、機械や設備の故障、不良品といったロスの削減につながるため、製造コストが削減され収益が向上という効果もあります。
製造業でデータ活用を進める上での課題
「令和4年度ものづくり基盤技術の振興施策」によると、企業規模を問わず約60%の企業がデータ活用やデジタル化について準備中/必要性は理解しているが実施できていないと回答しており、データ活用やデジタル化が実践できている企業は約35%ほどにとどまっています。(n=2,124)
この背景には、データ活用の推進を阻害する要因が潜んでいます。製造業でデータ活用を進める上での課題は、主に以下の5つが考えられます。
- 紙の記録ではデータが効率的に収集できない
- 集めたデータを分析できる人材がいない
- 集めたデータの管理が難しい
- 設備投資にコストがかかる
- データの種類が多く統合が困難
紙の記録ではデータが効率的に収集できない
製造に関するデータを紙で記録している場合、データを効率的に収集・分析できないため、データ活用をスムーズに進められません。たとえば、手書きの生産ログや品質管理記録をデータベースやExcelに手入力するには、時間がかかるのはもちろん、入力ミスをしてしまうリスクが伴います。
加えて紙に記録されたデータは検索して探すことができず、必要なデータを即座に参照できないという問題もあります。
集めたデータを分析できる人材がいない
大規模なデータ分析には専門的な知識が必要となるため、適切なITスキルを持った人材がいないとデータを活用できません。
たとえば、生産データをもとに効率化を図るためには、シグマ法やZスコア、時系列データの解析といった統計学の知識や、PythonやRを使ったデータ収集などプログラミングの知識が必要な場合があります。
そのため、データ活用を推進するには、これらの知見を持った人材を獲得する必要があります。
集めたデータの管理が難しい
以下2つの要因のため集めたデータを適切に管理できず、データ活用が進められないケースも考えられます
- フォーマットがバラバラ
- リアルタイムで管理できない
フォーマットがバラバラ
異なるソースから得られるデータは形式や構造が一致しないため、一元管理するのが難しいといえます。たとえば、機械からのセンサーデータは数値の時系列データであるのに対し、人の手による記録はテキスト形式と差異が生じてしまいます。
これらのデータを統合するには、スケーリングや正規化など、専門的な技術を使って変換や調整をする必要があります。
他にも、同じ設備保全の作業を行っているにも関わらず機械ごとに記録表のフォーマットが異なることで、データ活用の際に統合の工数がかかり、現場の負担になっているいうことも考えられます。
リアルタイムで管理できない
製造業ではセンサーや機械、ロボットなどから膨大なデータが常に生成されています。これらのデータをリアルタイムで処理するには、非常に高い計算能力と大容量のデータストレージが必要になります。これらを導入するには膨大な費用がかかるのはもちろん、適切な環境の構築ができるエンジニアの獲得が不可欠です。
また、紙による記録の場合はデータ発生から記録までにラグが発生することから、異常が発生した直後の対応が難しい、記録帳票を参照しないとデータが確認できないためデータの閲覧に場所や時間といった制限がかかってしまうという問題も考えられます。
設備投資にコストがかかる
データ活用を行うには、データを収集するためのセンサーやIoT機器、データを保管するためのサーバーが必要になります。これらの設備を使うためには初期投資だけでなく、維持管理にも多くの費用が発生します。さらに、既存の古いシステムやプラットフォームを刷新するにもコストがかかるため、コストの問題がデータ活用における大きな障害となるケースも多いです。
実際に、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社が2022年に行った調査では、データ収集・利活用にかかる課題としてデータ収集にコストがかかると回答した企業は47.2%と半数近くにものぼり、次いでデータの利活用にコストがかかると回答した企業は27.7%となりました。(n=2,090)
参照元:「令和4年度製造基盤技術実態等調査 我が国ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査」
データの種類が多く統合が困難
データ活用を行うためには、生産データ・品質データ・物流データ・顧客データなど、異なるソースからのデータを一元化する必要があります。しかし、異なるフォーマットのデータを統合するには、データクレンジング(データの誤りや欠損を排除し、活用できる状態にする作業)や変換の作業が必要になるため、データを適切に扱うための知識や経験がなく、データを収集しても活用まで至らないということが懸念されます。
データ活用の具体的な進め方
データ活用の具体的な進め方は、以下の通りです。
- データ活用で目指すべきゴールを設定する
- 業務プロセスを洗い出し、解決したい課題を特定する
- 課題解決の優先順位を決める
- データ活用のために必要な設備を洗い出す
- 必要なデータを収集する
- 適切なデータ分析を行う
- 現場で効果検証を行いさらなる改善に努める
データ活用で目指すべきゴールを設定する
初めに目指すべきゴールを設定することで、その後やるべきことが明確になります。目標を明確に定めない状態では、どのデータを収集し、どのように分析するかが曖昧になってしまいます。ゴール設定はデータ活用の方向性を定め、全員が同じ目標に向かって進むための基盤となるため重要だといえます。
目標を設定する際は、定量的かつ具体的な目標であることが望ましいです。
たとえば、生産効率の向上を目標とする場合、「製品の生産量を20%増加させる」という具体的な数値があることで1時間あたりの生産数、不良品率、機械稼働率といったKPIが定まり、どのデータに着目すべきかが明確になります。
結果として、取得すべきデータや導入すべきシステムをスムーズに決められます。
業務プロセスを洗い出し、解決したい課題を特定する
企業内のさまざまな部門やプロセスを詳細に分析し、どこにボトルネックがあるのかを明らかにすることで、どのデータが問題の解決に役立つかが明確になります。
たとえば、生産ライン上で特定の加工工程に過剰に時間がかかっていた場合、各工程の作業時間、待ち時間、機械の稼働率、作業員の作業時間といったデータを収集し、その工程に潜むボトルネックを改善することで目標達成に大きく近づきます。
関連記事:業務プロセスとは?業務フローとの違いや可視化して改善を進める方法を解説!
課題解決の優先順位を決める
製造プロセスの課題が特定できたのちは、緊急度や影響度の大きさなどをもとに解決の優先順位を決めることが重要です。全ての課題に同時に取り組むのは非現実的であり、リソースが分散してしまうため中途半端な結果を招きかねません。
最もコストがかかっている/ボトルネックとなっている製造工程を最優先で改善することで、短期間でROI(投資収益率)を向上させられます。
また、重要かつ影響力の大きい課題から解決することで短期間で目に見える成果が得られ、さらなる改善に短いスパンで到達できるというメリットもあります。
データ活用のために必要な設備やツールを洗い出す
データ活用を進めるためには、取得すべきデータを明確にし、目的に合った設備を導入することが重要です。適切な設備が整っていないとデータが正確に収集できず、分析結果の信頼性が低下する可能性があります。製造業で使われる主な設備は以下の4つです。
- センサー
- ソフトウェア
- サーバー
- アプリケーション
一方で、これらの設備投資はコストが膨大にかかり、高度なデータ収集〜可視化を行いたいケースを除いて実装のハードルは高いでしょう。
「これから初めてデータ収集をして活用したい」「うまくデータを集められていない」という方には、データ活用のツールとして後述の【電子帳票】がおすすめです。
センサー
機械の性能や環境情報など生産プロセスで発生するデータをリアルタイムで捉えるためには、センサーを利用する必要があります。センサーは物理的な環境や機械の状態をリアルタイムで監視し、データを収集する装置であり、温度、湿度、圧力、振動、位置など、さまざまなデータを収集するために使われます。
そのため、温度センサー・圧力センサー・振動センサーなど、さまざま種類があることから、取得したいデータによって適切なセンサーを選ぶことが重要です。
センサーがあることで詳細なデータをリアルタイムで手間なく収取できるほか、設備の状態を常時監視できることで、異常を早期に発見することが可能になります。ソフトウェア
データの収集や分析を行うためには、統計分析ツールやBI(ビジネスインテリジェンス)ツールといったソフトウェアが必要になります。ソフトウェアは収集したデータを分析、可視化するツールであり、データを単に収集するだけではなく、意味のある形で分析し、結果を理解するために重要な役割を果たすといえます。
たとえば、統計分析ツールを使うことで大量のデータから傾向や変化を読み取り、意思決定に必要な洞察を得られるでしょう。
サーバー
大量のデータを保存・処理するには、高性能なサーバーが必要です。
サーバーはデータの保存、管理、処理を行うためのハードウェアであり、製造業では大量のデータが生成されるため、データを安全かつ効率的に保存し、必要に応じて迅速にアクセスするには強力なサーバーが求められます。
たとえば、リアルタイムでデータ分析を行う場合やビッグデータを扱う場合には、処理能力やメモリが十分に確保されたサーバーを用意する必要があります。
アプリケーション
収集したデータを効果的に活用するには、特定の業務やプロセスに最適化されたアプリケーションを使うことが重要です。
アプリケーションはデータの収集、分析、可視化を行う場として機能するツールであり、アプリケーションがあることで現場の作業員や管理者がデータに基づいた意思決定を迅速に行えるようになり、データ活用が効率的に進むでしょう。
たとえば、顧客情報を管理するためのアプリケーション(CRM)を活用することで、データの入力や分析が簡単に行えるようになります。
必要なデータを収集する
収集するデータの量と質を適切に管理することで、分析の精度を高め、より効果的な洞察を得られます。
たとえば、生産効率を向上させたい場合は機械の稼働率や原材料の使用量、製品ロスの割合などを収集することが重要です。
収集したデータをもとに現状を正確に把握し、具体的な改善策に役立てましょう。
適切なデータ分析を行う
収集したデータから価値のある情報を取り出し、具体的な改善策に落とし込むためには、適切なデータ分析を行うことが重要です。たとえば、製品の不良率を減少させたい場合は、影響する要因を特定するための回帰分析を使う必要があります。
データにあった分析を行うことでデータから有用な情報を読み取ることができ、具体的な改善策の提案や信頼性の高い意思決定につながるでしょう。
現場で効果検証を行いさらなる改善に努める
データ分析で洞察を得られたのちは、その情報をもとに改善と効果検証を繰り返す必要があります。
たとえば、新しい生産プロセスを導入した場合、生産量や作業時間などの指標を用いて、予測された効果が得られているかを検証します。1か月間の試験運用を行い、KPI(待ち時間、生産量、不良率)を測定により明確な効果が確認された場合、他のラインにも導入するといったことが考えられます。
効果が確認できない場合はデータを再分析し、原因を究明することで、効果的な改善策を立案できます。
製造業におけるデータ分析の進め方については、以下の専門家によるウェビナー動画をご覧ください。指標とすべきデータの種類や収集方法、実際にデータ分析を行う実践的な方法を実際の事例をもとに解説しているため、データ分析をこれから始める方や基礎情報をおさえたい方に最適の内容となっております。
製造業のデータ活用事例3選
製造業でデータを活用している企業事例として、「製造業DX取組事例集」より以下の3つを抜粋し紹介します。
- オムロン
- ダイキン
- 三菱電機
オムロン
制御機器やヘルスケア製品を開発する「オムロン株式会社」では、製造機器の動作を分析して、異常の発生を予測しています。
自社開発した「生産管理」「品質管理」「設備効率」「エネルギー」の4つの切り口の現場データを活用できるシステムである「i-BELT」を活用することで、数十項目にもおよぶ製造データを常時収集して機器の故障を予測し、パーツ交換やメンテナンスを効率的に行えるようになりました。
他にも、「i-BELT」の活用により生産現場データを活用してリードタイムの短縮や歩留まり向上、稼働ロス低減、エネルギー効率向上などを実現しています。
ダイキン
空調機や化学製品を開発する「ダイキン工業株式会社」では、IoTを活用して製造現場のデータを見える化し、生産計画を最適化しています。
具体的な手段として、工場内の設備をネットワークに接続し、情報収集の標準化を進めるための情報基盤である「工場IoTプラットフォーム」を構築することで生産データをリアルタイムで可視化・分析することに成功し、結果として生産計画を最適化しロスを抑えることが実現しています。
他にも、人や物の動きがデジタル化されたことや、工場の生産シミュレーションなどを通じて生産に関する精密な予測が可能になりました。
三菱電機
家電から産業用電気機器、人工衛星まで多岐にわたる製品のメーカーである「三菱電機株式会社」では、工場内で生産データとITを連携させる「e-F@ctory」という取り組みを通し、工場内に蓄積されたデータを盛んに活用しています。
具体的には工場設備IoTを活用して製造現場から情報を収集し処理することにより、リアルタイムにデータを分析・活用することを実現しています。
この取り組みにより、エンジニアリングチェーンとサプライチェーンの領域を横断した分析が可能になり、ものづくり全体としての生産性向上やコスト改善へ向けた動きができるようになりました。
製造業のデータ活用を推進するITツール3選
製造業で効率よくデータ活用を進めるためには、以下のITツールを使うのがおすすめです。
- BI(ビジネスインテリジェンス)ツール
- PDP(プロダクトデータプラットフォーム)
- 電子帳票
BI(ビジネスインテリジェンス)ツール
BI(ビジネスインテリジェンス)ツールとは、データを収集、分析、可視化し、意思決定を支援するためのソフトウェアです。BIツールは大量のデータから必要な情報を効率よく抽出し、データ活用による改善を行うために使用されます。
BIツールを使うメリットとして、データベース、スプレッドシート、クラウドサービスなど、さまざまなデータソースからデータを収集し、統合できる点や、抽出したデータをツール上でグラフ、チャート、ダッシュボードといった形で可視化できる点が挙げられます。
PDP(プロダクトデータプラットフォーム)
PDP(プロダクトデータプラットフォーム)とは、製品に関する情報を一元管理するITツールです。
製品仕様・設計データ・製造プロセスなどのデータを1箇所に集約することで、製品開発の各工程で必要な情報が迅速に閲覧できるため、短期間で製品を開発できるようになります。
また、製品のデータを分析することで品質管理やコスト削減を効率化し、製品の品質を向上させることも可能です。
電子帳票
電子帳票とは、製造業の各種記録をデジタル化するITツールのことです。
品質管理記録や作業報告書書、安全チェックリストなどの紙で運用されている重要な帳票類を電子化することで、記入ミスといったヒューマンエラーの防止、Excelへの転記~分析工数が削減できるなど、従来の紙の帳票に比べて多くの利便性や効率性が向上するといえます。
次章からは、帳票の電子化が製造現場のデータ活用に効果的である理由について詳しくご紹介します。
電子帳票が製造業のデータ活用において効果的な3つの理由
電子帳票が製造業のデータ活用で効果的な理由は以下の3つです。
- 記録を標準化し、適切なデータを収集できる
- 製造現場に取り入れやすい
- データの分析がしやすい
『より詳しく帳票を電子化するメリットを知りたい』という方は、以下の記事もご覧ください。
関連記事:帳票の電子化にはどんなメリットがある?導入実現に向けた進め方やツールも解説
記録を標準化し、適切なデータを収集できる
製造業でデータ活用を行うには、毎日のように行っている「記録」の標準化が欠かせません。
その背景には、活用できるデータの条件である「正確性」「完全性」「一貫性」があります。これはそれぞれ「現場に即した正確なデータであること」「不備や欠けのないデータであること」「形式や記録方法が一貫しているデータであること」を指しています。
この条件が1つでも欠けてしまうと、データの品質が保証されず正確な分析と意思決定が実現できないといえます。
しかし、紙の帳票による記録では手作業で記載するためミスや書き漏れが生じるリスクがあるほか、フォーマットや記録方法が統一されないことでデータにばらつきが発生する恐れがあります。
一方で、電子化された帳票であればあらかじめ定められたフォーマットに従って入力するだけで記録活動が標準化され、「正確性」「完全性」「一貫性」を備えたデータを蓄積できます。
仮に誤った記録が記入された場合、アラートを出すことで記録者に確認を促すアプローチも可能です。
製造現場に取り入れやすい
データを収集するためにIoT機器やセンサーなど、設備を新しく導入するにはかなりの手間とコストがかかります。一方で電子帳票なら「紙帳票による運用」の部分にアプローチするだけなので、比較的簡単に導入できます。
また、設備を設置するといった高額な投資や大規模なインフラ整備の必要がない場合が多く、導入直後から運用が開始できます。
データの収集・分析がしやすい
紙の帳票ではデータを取り込むために手作業でExcelに入力する必要があり、多くの時間と労力を要します。また、データ分析をするには分析用のExcelファイルに転記する必要があり、さらに多くの手間がかかります。
しかし、電子帳簿を使用すると入力されたデータが自動的にデータベースに保存されるため、迅速にデータ分析を行うことが可能です。また、記録したデータを簡単に出力することも可能なため、データ分析の際に役立つでしょう。
電子帳票を導入するまでの具体的な段取りや選定のポイントについては、こちらの別記事や以下の「はじめての現場帳票デジタル化ガイド」を是非ご覧ください。
実態調査から紐解く「帳票デジタル化の失敗パターン」など、導入前に知っておきたい重要項目が満載です。
電子帳票の作成〜運用までを簡単に行える「tebiki現場分析」とは?
電子帳票を活用しデータ活用を進めたい方は、現場にうれしい機能が複数搭載されたデジタル帳票ツールである「tebiki現場分析」を使うのがおすすめです。
tebiki現場分析のメリット
tebiki現場分析を活用するメリットは、以下の3つです。
- 記録、承認が簡単にできる
- リアルタイムで異常値に気づける
- データ分析が行える
記録、承認が簡単にできる
tebiki現場分析はタブレット端末上で直感的に操作できるデザインになっているため、ITスキルに自信がない現場社員でも簡単に利用可能です。また、Excelのように複雑な計算式やマクロが必要ないため、すぐに使いこなせます。
他にも、使用頻度の高い帳票を一番上に表示する「帳票ピンどめ」機能や毎回の記録で共通する内容の入力を省略できる「定時記録」機能があるため、毎日行う記録の工数を削減できます。
加えて管理者に便利な機能として、1記録ずつの承認のほか自分が承認者となっている記録を一括して選択し、承認できる「一括承認」機能も備えているため、何十枚もの帳票に日々ハンコが必要だった紙の帳票と異なり、承認の工数も削減することができます。
これにより、膨大な量のデータでも速やかに記録と承認が行えるため、データ活用に必要な情報を工数を減らしながら効率よく収集することが実現します。
リアルタイムで異常値に気づける
tebiki現場分析には「正常値設定」機能が備わっています。
記録項目ごとに正常値の基準を設定しておくことで、正常値から外れる記録を異常値として検出し、即座にアラートメールを発信することが可能です。そのため、場所や時間を問わず異常をリアルタイムで察知し、迅速に業務指示を出すことやデータの分析による原因究明ができるようになります。
データ分析が行える
取得したデータはクラウド上に一元管理されているため、簡単に可視化・分析できます。そのため、生産に関するデータをもとに製造プロセスの改善や設備の異常予防などを行うことが可能です。
また、tebiki現場分析内でデータを簡単にグラフ化することも可能なため、面倒な分析用Exceファイルへの転記や複雑な知識やPCスキルを必要とせず、適切な分析を手間なくお超えるでしょう。l
本記事で紹介したtebiki現場分析の機能紹介や導入サポート体制について、詳しくまとめた資料を以下にご用意いたしました。「データ活用をしてみたいがどこから手を付けるべきかわからない…」「そもそもの記録体制に問題があり、解決したい…」とお考えの方は是非ご参考ください。
まとめ
この記事では、製造業でのデータ活用のメリットや進め方を解説しました。製造に関するデータを活用することで、生産性の向上や故障予測が可能になります。そのため、データ活用を推進したい方は自社の課題を明確にし、課題解決に必要なツールを導入してみましょう。
低リスクかつ効果的なデータ活用を行いたい方は「tebiki現場分析」の導入がおすすめです。IoT機器やセンサーを導入することなく、データ活用を進められるため、短期間で業務改善を行えます。
ITスキルに自信がない現場社員や新入社員でもすぐに使いこなせるので、電子帳簿に興味がある方はぜひ詳細をご覧ください。