製造業では毎年多くの労働災害が発生しており、現場での安全教育が求められています。どこの現場でも安全教育を行っているかと思いますが、「しっかり教育できているか不安」とお思いの方も少なくないでしょう。
そこで、本記事では、製造業に多い労働災害のランキングを発表! 発生数が多い労働災害を知ることで、重点的に対策を打てるようになるでしょう。また、労働災害の具体的な対策や事例などもご紹介します。
現場改善ラボでは、専門家解説による「労働災害を防ぐための安全教育の方法」を動画でも無料で公開しています。動画で安全教育についてわかりやすく学びたいという方は、以下からぜひご視聴ください。
目次
製造業で多い労働災害ランキング
厚生労働省が発表する令和5年の労働災害発生状況によると、製造業で多い労働災害ランキングは以下の通りになりました。
- 1位:はさまれ・巻き込まれ
- 2位:転倒
- 3位:動作の反動・無理な動作
- 4位:墜落・転落
- 5位:切れ・こすれ
5位以降は、交通事故 / 激突などが多いという結果になりました。以下では、発生が多かった5件の労働災害の死傷者件数や原因などをピックアップしてご紹介します。
1位:はさまれ・巻き込まれ(6,377件)
挟まれ・巻き込まれは機械による事故が最も多く、原因は操作ミスや機械の管理不良です。多くの製造業場では、機械を日常的に使用しており、安全対策の不備が理由として考えられます。
2位:転倒(5,823件)
製造現場での転倒事故は、滑りやすい床面や作業中の障害物が原因であることが多いです。
製造現場は多くの材料や機械を扱うため、床面の状態が変わりやすく、障害物が発生しやすい環境です。そのため、障害物による転倒事故が発生しやすいと言えるでしょう。
3位:動作の反動・無理な動作(3,191件)
体の無理な動きや重い物の持ち運びが原因による労働災害です。製造業では重労働や反復作業が多く、身体に負担がかかるため、死傷の原因となります。
4位:墜落・転落(2,870件)
製造業では高所作業が必要な場合もあり、安全対策が不十分だと墜落・転落事故につながります。高所作業には特別な注意と安全設備が必要であり、注意不足になると墜落・転落のリスクが高まります。
5位:切れ・こすれ(2,327件)
刃物や機械の切削部による怪我が主な内訳です。製造現場では鋭利な道具や機械が常用され、取り扱いには細心の注意が必要と言えます。
これらの労働災害は、死亡災害になるほど重大な事故に発展する可能性があります。製造業者の方は、現場で正しい安全教育を行って、安全意識を向上させましょう。現場改善ラボでは、高い安全意識が継続する教育方法を動画で無料公開しています。以下のバナーから視聴し、労働災害防止にお役立てください。
統計から紐解く製造業の労働災害
労働災害の統計は、職場の安全性を考慮する上で重要と言えます。ここでは、製造業における労働災害の数字として厚生労働省のデータをもとに、労働災害の発生件数の推移や労働災害が発生しやすい時期を解説します。
労働災害の発生件数推移
参考元:厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課「令和5年 労働災害発生状況」
上記のグラフは、厚生労働省が発表している労働災害による死亡者数のグラフです。令和4年(2022年)には774人であった死亡者数は、令和5年(2023年)には755人まで減少しました。
製造業だけに焦点を当ててみても、労働災害による死亡者数は年々減少傾向にあると読み取れます。しかし、休業4日以上の死傷者数のグラフを見ると実態は異なります。
参考元:厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課「令和5年 労働災害発生状況」
全産業で見てみると、死傷者数は1年で+3,016人(+2.3%)。製造業にだけに焦点を当ててみても、+500人(+1.9%)と増加傾向にあります。
つまり、製造業の労働災害における死亡者数は減少しているものの死傷者数は減少傾向になく、ほとんど改善されていないといえるでしょう。
労働災害が多い月
1月 | 14 件 |
2月 | 12 件 |
3月 | 12 件 |
4月 | 14 件 |
5月 | 9 件 |
6月 | 12 件 |
7月 | 10 件 |
8月 | 11 件 |
9月 | 17 件 |
10月 | 4 件 |
11月 | 9 件 |
12月 | 14 件 |
合計 | 138 |
引用元:厚生労働省「労働災害発生状況」
上記の表は、厚生労働省が発表している令和5年の「製造業における月別の死亡災害件数」のデータです。令和5年では、9月の死亡災害が17件と最も多い月となっています。
9月は、夏季休暇明けである場合が多いです。そのため、休暇明けによって体のリズムが整っていないことで、安全意識が低下し、労働災害を起こしてしまっていることが考えられます。
また、夏の暑さから少しずつ涼しくなる9月ですが、近年はまだまだ暑さが残っており、体調を崩しやすい時期です。集中力の低下 / 体力の消耗などが起きて、労働災害が多発してしまっているのでしょう。
安全意識の再教育 / 気候を考慮した体調管理を行って、労働災害対策を行う必要があります。労働対策の方法は、『製造業における労働災害対策』で後述します。
死亡事故を含む労働災害の有名な事例
『製造業で多い労働災害ランキング』でご紹介した通り、製造業では、挟まれ・巻き込まれや転落などの労働災害が多発しています。ここでは、死亡事故を含む、転落や安全装置の未設置による挟まれ・巻き込まれの有名な事故事例をご紹介します。
転落による死亡事故
埼玉県の飲食チェーン店の工場で発生したこの事故では、清掃作業中の従業員が貯水槽に転落し死亡しました。
労働基準監督署によれば、同工場では転落を防止するための措置が取られていなかったそうです。そのため、会社と現場責任者が、労働安全衛生法違反の疑いで書類送検されました。
本事例から、製造業における転落防止対策の重要性が浮き彫りになります。特に高所作業や開放されたエリアで作業を行う際は、柵の設置や安全ハーネスを使用するなどの安全対策を講じる必要があります。転落事故を未然に防ぐためには、従業員に対する適切な安全教育の実施と、作業環境の安全確保が不可欠です。
参考元:男性死亡…松屋フーズ工場で窒息、廃油入れた槽に落ちて 責任者を書類送検 男性はふた開けて清掃中だった
機械挟まれによる重傷事故
平成30年11月に静岡県の紙加工品製造業者で発生したこの事故では、労働者が型打ち機でプラスチックシートを打ち抜いている際に、右腕を機械に挟まれてしまい、肘から下を切断する重傷を負いました。
機械には、物の検出機能を持つ光電センサーが装備されていました。しかし、作業効率を重視して安全機能を意図的に無効にしていたため、労働災害発生時には安全機能が無効化されていたそうです。
安全装置の設置は、労働者の身体的安全を確保するための必須措置です。特に、機械操作に伴う危険性が高い作業では、適切な安全装置の設置と正常な作動が必須になります。事例のような事故を防ぐためには、安全装置の設置だけでなく、常に機能を確認して必要に応じてメンテナンスを行うことが必要です。
参考元:労働者が右肘から下を切断 安全装置無効にした製造業者を送検 島田労基署
定期的なメンテナンスが重要だとわかっていながらも、メンテナンスには熟練のノウハウが必要になるため、属人化してしまっている……という現状ではございませんか? そのような方は、以下から専門家が解説する属人化解消の方法を動画をぜひご覧ください。
製造業における労働災害対策
前章の『死亡事故を含む労働災害の有名な事例』では痛ましい事故の事例を2つ紹介しましたが、「どのようにして労働災害を防ぐのか?」という疑問を抱く方も多いはずです。そんな疑問に応えるために、以下5つの労働災害対策方法を紹介します。
リスクアセスメントの実施
リスクアセスメントとは、事前に潜在的な危険やリスクを特定し対策を講じることで、事故の発生確率を大幅に低減できる手法です。
リスクアセスメントを通じて労働災害の要因を事前に特定することで、適切なメンテナンス計画の策定 / 操作手順の見直しを行い、労働災害の未然防止につながります。
現場改善ラボでは、元労働基準監督署署長の村木氏によるリスクアセスメント術を動画で無料配信しています。正しい進め方をわかりやすく解説しているので、ぜひご覧ください。記事で読みたい方は、別記事『リスクアセスメントの目的とは?実施に向けた進め方のポイントや企業事例も解説』がおすすめです。
KY活動の実施
KY活動とは、「危険(Kiken)予知(Yochi)活動」の略称で、従業員自身が日常の業務中に潜在的な危険を予知 / 共有することで、チーム全体の安全意識が高まる活動です。
例えば、製造ラインで作業中に発見された小さな異常や不具合をKY活動を通じて共有することで、大きな事故に発展する前に対処することが可能になります。
KY活動について詳しく知りたい方は、別記事『KY活動(危険予知活動)とは?進め方や記入例文を解説【エクセルテンプレ有】』か、以下の専門家が解説する無料動画をご覧ください。
メンタルヘルス対策を導入
ストレスや過労が原因の精神的な健康問題は、作業ミスや注意力の低下を引き起こし、物理的な事故につながる可能性があります。そのため、メンタルヘルス対策の導入は労働災害防止策として重要です。
高い生産性を求められる製造業では、「業務を遂行する」という精神的な負担が大きいため、従業員のメンタルヘルスのサポートは、安全な職場環境を維持する上で不可欠です。具体的なメンタルヘルス対策としては、以下の通りです。
- 心理カウンセラーや産業医による相談窓口の設置
- ストレスチェックの実施
- ワークライフバランスの推進 など
フェイルセーフ/フールプルーフの仕組みを整える
フェイルセーフとは、システムに異常が生じても、安全に停止できるように設計する機能や仕組みのことを指します。たとえば、フェイルセーフとして緊急停止ボタンを設置すれば、異常時に即座に運転を停止でき、作業者を危険から守れます。
フールプルーフとは、作業者の誤った使用方法を防止するための設計思想を指します。これにより、ヒューマンエラーによる労働災害を防ぐことが可能です。たとえば、刃がついている機械を操作する際、保護カバーが閉じられていないと作動しないように設計することで、切れ・こすれといった怪我を防げます。
▼フェイルセーフ/フールプルーフの例▼
フェイルセーフ | ・なんらかの異常が生じた際に緊急停止する ・異常により停止した機械を、急に再起動させないようにする ・重量オーバーの際にブザーが鳴る |
フールプルーフ | ・開口部から、加工物や工具等は入るが、手は危険領域に届かない ・機械のスイッチを切った後の惰性運動を検知して、危険がある間はガードが開かない ・鍵の利用により一方を施錠しないと、他方が解放されない |
フェイルセーフとフールプルーフについて詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
関連記事:フェイルセーフとは?フールプルーフとの違い、安全性を確保するための考え方を解説!
関連記事:フールプルーフとはどういう設計?品質不良/ヒューマンエラーを未然防止する考え方、使用例を解説
安全教育の実施
安全教育とは、労働者に対して安全衛生の知識や技術を伝えるための教育です。
前述の『フェイルセーフ/フールプルーフの仕組みを整える』は労働災害防止に効果的ですが、いくら設計や設備を整えても、従業員による危険な行動があった場合、労働災害を100%防ぐことは難しくなります。そのため、従業員には安全教育を実施し、ヒューマンエラーや誤った行動の危険性を周知させましょう。
安全教育は、労働者の安全と健康を確保し、災害を防ぐとともに生産性の向上や業績の安定を図ることを目的としています。特に製造現場では、機械や設備の取り扱いに関する安全教育が重要であり、事故のリスクを低減し、作業の効率を向上させることが可能です。
安全教育を通じ、現場での不安全行動をなくして労働災害対策を行いたい方は、具体的に解説しているこちらの記事か、専門家が解説する「効果的な安全教育の進め方」の解説動画を以下よりご覧ください。実際の取り組み事例もご紹介するため、自社工場での取り組みに活かせるはずです。
安全意識を高め労働災害を防ぐには動画マニュアルが有効
従業員の安全意識向上に動画マニュアルが効果的な理由
製造現場は、多様な機械と工程を含む複雑な環境であり、正確な知識と技術が求められます。
それゆえ、製造業では「作業手順や安全対策の理解が不可欠」。その理解を深めるために、効果的なのが動画マニュアルです。
多くの企業で行われている紙のマニュアルでの教育 / 座学 / OJTと比べて、動画マニュアルは以下のようなメリットがあります。
- リアルな状況を再現でき、視覚的な理解を向上させる
- 統一された情報により、教え方のバラつきや解釈の違いを防げる
- 教育時間やコストを大幅に削減できる
- 視覚と聴覚の両方を刺激するため、情報が記憶に残りやすい など
上記のようなメリットから、動画マニュアルの導入を検討している企業は多いです。しかし、「編集が難しそう」という理由から導入を先送りする企業も……。そこでおすすめなのが、次でご紹介する動画マニュアル作成ツールtebikiです。
動画マニュアルの活用は「tebiki」がおすすめ
動画マニュアル作成ツールtebikiは、動画マニュアルが誰でも簡単に作れるツールとなっており、OJT教育やマニュアルの工数削減が可能となります。
▼動画マニュアル作成ツール「tebiki」紹介動画▼
tebikiに搭載されている主な機能は、以下の通り。
- 動画音声の認識による、自動字幕生成機能
- 100ヶ国語への自動翻訳機能
- オリジナルテストの作成 / 自動採点機能
- マニュアルの閲覧状況が可視化できるレポート機能
- 従業員のスキルを管理できるスキルマップ機能 など
これにより、教育工数 / マニュアル作成工数を大幅に削減しながらも、効果的な従業員教育を実現している企業が多数。次の章では、tebikiを導入している企業事例をご紹介します。
tebikiについてより詳しく知りたい方は、以下のサービス説明資料をご覧ください。機能面だけではなく、安心の導入サポート体制についても詳細にご紹介しています。
動画マニュアル「tebiki」を導入して教育改善した事例
tebikiを安全教育で活用した事例を3社紹介します。より多くの導入事例を知りたい方は、製造業でのtebiki活用事例をまとめた以下の資料をご覧ください。
大同工業株式会社
大同工業株式会社は、1900年代初めに自転車チェーンの製造会社として設立し、現在はオートバイや自動車、産業機械、福祉機器などの製造を手がけるグローバル企業です。
tebiki導入前に抱えていた課題と、導入による効果は以下の通り。
抱えていた課題 | tebiki導入による効果 |
・新人教育やマニュアル作成に膨大な工数がかかっている ・指導者の違いによる教育内容のバラつき ・手順の細かい違いによるエラーの発生 | ・教育工数を80%削減 ・業務標準化を実現 ・品質評価に関わるヒヤリハットを8割削減 |
現在では、開発現場で扱う測定機器や分析機器、試験手順をはじめ、業務標準化、技能伝承、新入社員研修、現場OJTに至るまで幅広いシーンでtebikiをご活用いただいています。
大同工業株式会社の導入事例を詳しく読みたい方は、以下の記事からご覧ください。
インタビュー記事:製造業の技術部門の業務を動画で標準化。教育工数を8割削減し、業務の効率化・最適化も実現。
株式会社メトロール
工作機械や産業用ロボット向けのセンサの製造・販売をしている株式会社メトロール。tebiki導入前に抱えていた課題と、導入による効果は以下の通りです。
抱えていた課題 | tebiki導入による効果 |
・教育者による指導内容のバラつき ・特定業務の属人化・文書や口頭での教育のみだと具体的な作業イメージを持ってもらえない ・マニュアル作成に1ページあたり1時間もかかる | ・新人教育のための時間を半分以上削減 ・マニュアル作成にかかる時間が1/4以下まで削減 ・マニュアルを現場にへ配備する手間も削減 ・多能工に向けた教育がスムーズに |
現在は、消耗品の入れ替え業務や製造装置のパネル操作をメインに動画マニュアルを作成しているそう。今後は、製造装置の組み立て工程などのより多くの動画マニュアルを作成する予定とのことです。
株式会社メトロールの導入事例を詳しく読みたい方は、以下の記事からご覧ください。
インタビュー記事:世界で200社以上の装置メーカーに採用されているセンサの製造工程でtebikiを活用し、新人教育と多能工化を推進
御幸毛織株式会社
1905年に創業し、オーダースーツ事業 / ユニフォーム事業など、紡績・縫製・販売まで一貫して服飾に携わっている御幸毛織株式会社。同社ではtebikiを、業務ノウハウの可視化 / 業務標準化 / 新人教育として活用いただいています。
tebiki導入前に抱えていた課題と、導入による効果は以下の通り。
抱えていた課題 | tebiki導入による効果 |
・高度な技術の伝承 ・職人技術の属人化 ・せっかく作ったマニュアルの形骸化 | ・マニュアル作成工数を4割削減 ・細かいニュアンスが伝わり、技術伝承の促進 ・属人的な業務の減少 |
“やってみなはれ”の精神で、できるところから着手して、着実に業務ノウハウを会社全体に展開している同社。今後は、ヒヤリハットの削減や現場の安全教育を進めることに注力したいと考えているそうです。
御幸毛織株式会社の導入事例を詳しく読みたい方は、以下の記事からご覧ください。
インタビュー記事:明治時代創業の繊維会社が挑む技術伝承!ITテクノロジーを駆使して伝統芸を若手へ伝達
tebikiで労働災害を無くそう【まとめ】
製造業で多い労災ランキングや、死亡事故を含む工場での有名な事故事例などをご紹介しました。労働災害の発生は、経済的損失 / 企業イメージの悪化などのデメリットが発生します。何より従業員の大切な命を守るために、徹底した安全教育を行いましょう。
安全教育の効果を高めるための手段として、動画マニュアルtebikiの導入がおすすめです。tebikiでは、動画マニュアルの作成による業務標準化が行えるだけではなく、自動翻訳による外国人教育 / 習熟度把握ができるテストの作成など幅広いシーンで活用できます。
tebikiについて「もっと知りたい!」と思っていただけたら、以下のサービス説明資料をご覧ください。tebikiの便利な機能やずっと無料で続くサポート体制をご紹介しています。