製造現場で事故が起こると、従業員の怪我や死だけでは済まず、企業の信頼にも大きな影響を及ぼします。特に製造業では機械の操作ミスや安全教育の不足、作業環境の欠陥などの原因から事故が発生しやすい状況にあるといえるでしょう。
この記事では、製造業における労働災害の現状と要因を整理し、製造現場における代表的な安全対策の取り組み例や、製造現場の安全に有効な優良事例を6つご紹介します。
目次
製造業における労働災害の発生状況や事故の種類
製造業では他の業種と比べても労働災害の件数が多いという特徴があります。
まずは製造業の労働災害発生状況や、具体的にどのような事故が発生しているのか代表的な種類について確認していきましょう。
製造業における労働災害の発生件数
▼労働災害による業種別死傷者数▼
【引用元:厚生労働省「令和5年労働災害発生状況の分析等」】
厚生労働省のデータによると、令和5年における製造業の労働災害による死傷者数は27,194人で、建設業や物流業、小売業といった、他の業界と比較しても倍近くの労働災害による死傷者が発生しています。
このデータからも、製造業は他業界と比較して労働災害が発生しやすく、安全対策の取り組みがとても重要であるということが理解できます。
次に、製造業の労働災害で具体的にどのような事故が発生しているのか、代表的な種類を見ていきましょう。
製造業で頻発する事故の種類
厚生労働省によると、令和5年において製造業の死傷事故は以下の5種類が頻発しています。
▼製造業における死傷災害の種類と件数▼
【厚生労働省「令和5年労働災害発生状況の分析等」を参考に弊社作成】
とくに、「はさまれ・巻き込まれ(6,377件)」「転倒(5,823件)」による労働災害が、製造現場で多く発生している状況です。それぞれどのような事故が該当するのか?具体的な例は、別記事「製造業に多い労働災害ランキング!死亡事故事例や対策方法を解説」をご覧ください。
このような事故の要因は、大きく「物的要因」と「人的要因」の2つに分けられます。次章では、労働災害の発生原因について、これら2つに焦点を当てて解説していきます。
製造現場では、どれだけ物理的な安全対策を講じたとしても、『従業員の安全意識』が薄い状態では人的要因による事故が引き起こされます。そのため、従業員の安全意識を形骸化させない安全教育の実施が不可欠です。
現場改善ラボでは、労働安全コンサルタントによる「安全意識を形骸化させない安全教育の取り組み」について、1時間弱の解説動画を無料でご覧いただけます。ぜひこの機会に、以下のリンクをクリックして安全対策のヒントにご活用ください。
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製造業の労働災害発生要因は「物的」「人的」に分けられる
労働安全衛生法の第一章第二条では、労働災害を次のように説明しています。
労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡することをいう。
【引用元:労働安全衛生法】
この説明を踏まえると、労働災害のような事故は「設備や材料といった物的要因」と「不安全な行動といった人的要因」によって引き起こされているといえるでしょう。
ここからは物的要因と人的要因で、それぞれどのような場面が挙げられるのかご紹介していきます。
物的要因
物的要因には、機械の不備や作業環境の欠陥などが含まれます。物的要因は、直接的な事故を引き起こし、従業員の安全を脅かす可能性があるため注意が必要です。
大きく以下の2つが物的要因に該当するでしょう。
- 機械の不備
- 作業環境の欠陥
機械の不備
製造業では多くの機械が使用されており、機械のメンテナンスが適切に行われていない場合は予期せぬ故障や操作ミスによる事故が発生しやすくなります。
たとえば、製造工場においてプレス機械の安全装置が不適切に機能していない場合、作業員が機械に挟まれる重大な事故につながる可能性があります。機械の不備による事故を防ぐためには、定期的な機械の点検とメンテナンスといった設備保全が不可欠です。
関連記事:設備保全の目的とは?課題やあるべき姿、IoT化について解説
作業環境の欠陥
作業環境の欠陥もまた、製造業での事故を引き起こす重要な物的要因です。
作業環境が整備されていない場合、作業員は転倒や転落などの事故に遭遇しやすくなり、有害な物質の露出や騒音や振動などによる健康被害のリスクも高まります。
たとえば、化学工場において適切な換気設備が設置されていない場合、作業員は有害な化学物質が放出される危険性があります。例のような環境下では、作業員の健康と安全を守るために作業環境の改善が急務です。事故を未然に防ぐためには、リスクアセスメントの実施が必要です。
関連記事:リスクアセスメントの目的とは?実施に向けた進め方のポイントや企業事例も解説
人的要因
人的要因には作業者の不注意や安全対策への教育不足、コミュニケーション不足があります。主に以下のケースが人的要因に該当します。
- 作業者の不注意
- 安全教育の不足
- コミュニケーション不足
3つの要因は事故の直接的な原因となり得るだけでなく、物的要因と相互作用して事故のリスクを高めることもあるので注意が必要です。
作業者の不注意
日常の作業中は瞬間的な注意力の散漫が発生しやすく、機械操作ミスや安全装置の無視につながるため、作業者の不注意は製造現場での事故発生の原因の1つです。
例として、組立ラインでの作業中に一瞬の不注意で手を機械に挟まれる事故が発生することも考えられるでしょう。このような不注意によるポカミスは、大小さまざまな事故を引き起こす恐れがあるため注意が必要です。
関連記事:【ポカミスとは?】なくすための改善ステップと対策例、事例を解説!
安全教育の不足
作業者が安全に関する適切な知識や技能を持たずに作業を行うことで、自身や他の作業者の安全を脅かす行動を取る可能性があります。
化学物質を扱う工場の例では、適切な保護具の着用方法や化学物質の取り扱い方に関する教育が不足していると、有害物質の放出などの事故のリスクが高まります。
安全教育の実施は、労働安全衛生法で一部義務付けられているほか、従業員の安全意識底上げのために定期的な実施が必要です。
関連記事:【製造業の安全教育】効果的な手段やネタの探し方、参考資料をご紹介!
コミュニケーション不足
コミュニケーション不足も、製造現場での事故の人的要因の1つです。
作業指示の不明確さや作業者間、作業者と管理者間の情報共有の欠如が、誤解や誤った作業手順の実施につながります。
例えば機械のメンテナンス作業中に、作業の進行状況や安全確保のための措置についての情報が適切に共有されていない場合、不慮の事故が発生する可能性があります。
ここまで、製造業で労働災害といった事故が発生してしまう要因について解説してきました。次章からは、製造現場における具体的な安全対策や、安全対策に関する取り組み事例についてご紹介していきます。
製造現場における安全対策取り組み例10選
前章では、労働災害のような事故は「物的要因」と「人的要因」に分けられると解説しました。本章では、具体的な安全対策の取り組み例について、物的要因と人的要因に分けて計10個を解説していきます。
安全対策を目的とした取り組み例は、以下の記事内容もご活用いただけますので併せてご覧ください。
関連記事:労働災害を発生させない8つの対策とは?企業の取り組み事例や標語の作り方も紹介
「物的要因」に対する取り組み例
設備保全を欠かさず行う
設備保全とは、機械や設備の定期的な点検やメンテナンスを行い、常に最適な状態に保つことです。
設備保全により、機械の突然の故障による作業の中断や故障が原因で発生する事故を防ぐことが可能です。定期的に設備保全を行うことで、不具合箇所の発見や重大なトラブル発生の未然防止につながるため、事故の物的要因を取り除く方法として有効です。
設備保全を実施する際、よく直面する課題が「スキルの属人化」です。
高度な設備であるほど、保全活動にもスキルが求められ、設備保全ができる従業員が限られてしまうというケースがあります。設備保全の属人化を解消する方法については、専門家による以下の解説動画をご覧ください。
フェイルセーフに沿った設備や工程を取り入れる
フェイルセーフとは、機械設備に故障やエラーが発生した時にも安全に停止する仕組みや設計のことです。
いくら機械設備の保全活動を行ったとしても、完全に故障やエラーをゼロにすることはできません。メンテナンスでは予見できなかった不具合発生時、フェイルセールによって安全に動き続けるもしくは停止させることで、従業員の安全を物理的に守ることができます。
フェイルセーフの仕組みについては、以下の記事をご覧ください。
関連記事:フェイルセーフとは?フールプルーフとの違い、安全性を確保するための考え方を解説!
5S活動を徹底させる
5Sとは、整理/整頓/清掃/清潔/躾(しつけ)の頭文字を取ったもので、職場環境の改善や維持を目的とした活動のことです。
5S活動を徹底できると、職場に潜んでいる危険源を取り除くことにもつながり、安全トラブルの未然防止として効果的な対策となります。また安全対策だけに限らず、業務のムリムダムラの排除にもつながり、作業手順や生産性の効率化も期待できます。
一方で、「5S活動の徹底」というのは一長一短ではありません。
職場における5S活動の重要性や活動を浸透させるための方法については、別記事「業務改善につなげる「5S活動」の進め方!目的や事例、アイデアも解説」か、専門家による1時間弱の解説動画を以下よりご覧ください。
リスクアセスメントの実施
リスクアセスメントとは、製造現場に潜む危険性や有害性を調査し、低減/除去する一連の手法のことです。
リスクアセスメントを実施することで、現場に潜むリスクを可視化と共有ができるようになります。結果的に、従業員の安全意識を高めることができ、現場で事故が発生するリスクを抑制する効果が期待できます。
一般的にはチェックシートや評価表を用いて進めるものの、決まったフォーマットや進め方があるわけではないので『実際に安全向上につながる手法が分からない』というケースもあるでしょう。現場改善ラボでは、元労基署署長による「リスクアセスメントの進め方」の解説動画を公開しています。以下のバナーよりご覧ください。
「人的要因」に対する取り組み例
労働災害を疑似体験させる
人的要因に対する対策として、最も理想的なのは「現場の危険性を把握し、安全の重要性を理解している」状態です。危険性を把握する手段として有効な方法が、労働災害を疑似的に体感することです。
霧島酒造株式会社では、労働災害を疑似体験する施設として「安全研修センター」を設置しています。VR装置を含む6機の安全体感装置を用いて、生産・工事現場で起こり得る労働災害の危険要素をチェックし、現実のような臨場感で実際に起こった事故を体感できます。(参照元:霧島酒造株式会社)
上記の事例のように整えるハードルは高いものの、どのような動作をするとどんな危険につながるかイメージさせる手段として「動画マニュアル」を活用すると、より少ない工数や負担で理解ができるようになります。
動画マニュアルを活用するメリットや効果は、後ほど【製造業における安全対策の悩みには「動画マニュアル」の活用も有効】で詳しくご紹介しています。
フールプルーフ化されている仕組みや設計を取り入れる
フールプルーフとは、人が作業ミスをしても事故につながらないような仕組み、そもそもミスをさせないような設計にすることを指します。
ヒューマンエラーやポカミスのような人的ミスは、完全にゼロにすることは難しいです。人に対する安全教育は欠かせないものの、ミスをしても問題が起きない仕組みを整えることで、人的要因に対応できている状態になります。
フールプルーフ化については、以下の記事でより詳しく解説していますので、本記事と併せてご覧ください。
関連記事:フールプルーフとはどういう設計?品質不良/ヒューマンエラーを未然防止する考え方、使用例を解説
KYT(危険予知トレーニング)を実施する
KYT(危険予知トレーニング)とは、現場や作業内に存在する危険源と起こりうる事故を予測/改善する訓練のことです。
とくに新入社員の場合、実際の作業現場に対する理解は乏しい状態です。その状態でいきなり現場に出た場合、何が危険か?という嗅覚が整っておらず、事故が発生する可能性が各段に上がります。
このようなヒヤリハットや労働災害を予防する手段として、危険予知トレーニングの実施は効果的です。KYTに関する具体的な解説は、別記事「【例題/解答付】KYTとは?効果的なトレーニング方法も解説」か、専門家による以下の解説動画をご覧ください。
ヒヤリハットを記録して共有する
ヒヤリハットの記録とは、事故に至らなかったが危険を感じた状況や、少しの違いで事故になり得た場面を記録することを指します。
実際に起きた出来事と対策例を全社的に共有することで、ヒヤリハットに直面していない従業員も該当場面で『危なそう…』と予測できるようになります。結果的にヒヤリハットの再発や労働災害の発生の防止につながる効果的な手段となります。
ヒヤリハットの取り組みについては、別記事「ヒヤリハットとは?報告書の例文や業界別の事例、対処法について紹介」か、労働安全コンサルタントである専門家による以下の解説動画をご覧ください。
ホウ・レン・ソウを徹底する
ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)の徹底は、職場でのコミュニケーションを活性化させ、情報共有を促進することにより安全管理の強化につながります。
作業現場で発生する問題や危険を迅速に共有し適切な対応を行うことで、事故やトラブルを未然に防ぐことが可能になるからです。例えば、機械の異常を早期に報告して連絡を通じて関係者全員が認識を共有し、必要に応じて相談を行うことで迅速な対策が可能です。
作業手順書を整備する
作業手順書には、作業の流れや安全対策や注意点などが詳細に記載されています。作業者が正しい手順で作業を行うことを保証するためにも、作業手順書の整備は安全で効率的な作業を実現するために不可欠です。
化学工場での薬品取扱いや自動車製造ラインでの組立作業などの正確な作業手順の順守は、事故防止だけでなく製品品質の向上にも影響すると考えられます。作業手順書を常に最新の状態に保ち、作業者が容易に理解できる形で整備することが重要です。
正しく理解される作業手順書を整備する方法は、図解を交えてわかりやすく解説している以下のガイドブックをご活用ください。次章からは、製造現場の事故を防止するヒントになり得る安全対策事例について、厚生労働省が取り上げている優良事例を中心にご紹介します。
製造現場の事故防止に役立つ!安全対策の6つの事例
自社の安全対策を推進するためには、「既に他の現場で取り組まれている事例」を参考にすることが近道です。
本章では、製造現場の事故防止のヒントに役立つ取り組み事例について、他業界/他業種の好事例も交えて6つご紹介しましょう。
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社では、「人づくり」「作業/仕事づくり」「場/環境づくり」を3本柱に安全衛生活動を推進しています。従業員が自然に安全な行動を取るために、トップダウンと1人ひとりに向き合うことをポイントに、以下のような活動を行っています。
- 全社安全現地現物活動
- 安全伝承館
- 安全コンテンツの動画化
- VRを活用した危険体験によるKY能力向上 など
過去に実際に発生した労働災害など、再現動画を整備することによって、視覚的に危険な動作を伝えて予防している好事例の1つです。
▼参照先▼
・中央労働災害防止協会「製造業安全対策官民協議会」
・厚生労働省「安全衛生優良企業の取組事例 トヨタ自動車株式会社」
三周全工業株式会社
三周全工業株式会社では、系列会社と情報共有を綿密に行い「実効性のあるリスクアセスメント実施」により、無災害を継続している好事例があります。
製造現場の各工程や作業手順において、それぞれの危険源と危険な作業、どのような作業手順のときにトラブルが発生するか詳細に洗い出しを行っています。そのほかにも、メンタルヘルスケアの取り組みを推進しているなど、あらゆる労働災害を防止する活動に取り組んでいます。
▼参照先▼
厚生労働省「安全衛生優良企業の取組事例 三周全工業株式会社」
ニッポン高度紙工業株式会社
ニッポン高度紙工業株式会社では、事故やトラブルは3H(初めて/変更/久しぶり)の作業時に多いと捉え、3Hの活動に焦点を当てて事故を未然防止する取り組みを推進しています。
3Hに加え、製造現場を構成する4M(ヒト/機械/材料/方法)の要素を交えた「3H思考体系」を整備し、起こりうる危険の洗い出しからKYTやリスクアセスメントの実施を行っています。
そのほか、ヒヤリハットや被災事例を全社共有ファイルとして整えて、展開する取り組みも推進しています。
▼参照先▼
厚生労働省「安全衛生優良企業の取組事例 ニッポン高度紙工業株式会社」
東京オリンピック/パラリンピックの大会施設工事現場
製造業の安全対策のヒントとして、東京オリンピック/パラリンピックの大会施設工事現場で取り組まれていた安全対策を一部ご紹介します。
大会設備の建設現場では、従事者の経験や能力、立場によってきめ細かい安全教育を実施していました。新たに入構した新規入場者に対する教育時に、保有する資格や現状の健康状態を確認し、スキルや身体の状態に合わせて役割を明確化していました。
また、以下のような取り組みを通じ、建設現場の労働災害防止に取り組んでいました。
- 経験の浅い作業員に対する、機械や工具を扱う作業の安全衛生教育の実施
- 工事の進捗に合わせて、参考となる災害事例集の読み合わせ会を開催
- 新人の作業員は色別のビブス着用による見える化で、重点的な声掛けの実施
- 安全衛生協議会で安全ポイントビデオを視聴
業界は異なるものの、製造現場と同様に危険が多く潜む建設現場の取り組みも安全対策のヒントになるでしょう。
▼参照先
厚生労働省「第8回 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会大会施設工事安全衛生対策協議会」
社会福祉法人 蓬愛会
外国人労働者が増えつつある介護の現場の取り組みも、同様に外国人を多く抱える製造現場の参考になるでしょう。社会福祉法人 蓬愛会では、外国人従業員が従事する全施設で危険源の可視化に取り組み、外国人従業員のゼロ災を実現しています。
- 従業員の母国語を使用した安全衛生教育の実施
- マンガなどイラストを用いた基礎的な安全衛生研修の実施
- 母国語入りのピクトグラムを用いた張り紙
- 職員同士による「Aない声かけ運動」
外国人従業員を抱えるケースが少なくない製造業においても、外国人のゼロ災を実現した好事例として安全対策の参考になるでしょう。
ASKUL LOGISTICS株式会社
全国30拠点以上の物流現場を抱えるASKUL LOGISTICS株式会社では、動画マニュアルを活用した安全教育を実施し、教育内容のバラつきを仕組み化で改善することを実現しています。前述の社会福祉法人 蓬愛会の事例とともに、厚生労働省が運営する「SAFEコンソーシアム」の令和5年度受賞事例に選ばれた事例です。
日々発生する新人に対する安全教育や、多様化する人材(外国人、障がいを抱える方)が増える中で、分かりやすく理解できる教材の整備を目的に、動画マニュアルを活用しています。安全教育に動画マニュアルを活用したことで、以下のような効果を同社では感じています。
- 各拠点の好事例共有につながり、全社的な安全管理レベル向上
- 新人への教育工数を削減しつつも、教育品質は向上
- 自動翻訳機能により、外国人従業員への教育品質も向上
製造業でも、各拠点ごとの情報共有や新人教育/外国人教育の効率化や改善は課題になりやすく、安全対策のヒントになる事例といえるでしょう。同社が安全教育に使用する動画マニュアルは、かんたん動画マニュアル作成ツール「tebiki」を活用して作成されています。
▼動画マニュアル活用事例:ASKUL LOGISTICS株式会社▼
(ASKUL LOGISTICS株式会社のインタビュー記事より抜粋)
ASKUL LOGISTICS株式会社や、トヨタ自動車株式会社の取り組み事例でご紹介したように、製造現場の安全対策に動画を活用することは効果的な手段の1つとなるでしょう。
次章からは、安全対策に動画マニュアルを活用するメリットや効果を解説します。今回ご紹介した「tebiki」の具体的な機能やプランは、以下の資料で詳しくご紹介しているので、こちらもご覧ください。
製造業における安全対策の悩みには「動画マニュアル」の活用も有効
ここまで、製造現場で労働災害が発生する要因は「物的要因」と「人的要因」に分けられるとお話しました。人的要因を排除するためには、徹底的な教育や訓練の繰り返しで不安全行動を取らせない必要があります。
安全対策に必要な教育や訓練に動画マニュアルを活用することで、教育訓練の工数を減らしつつも従業員の安全意識定着が期待できます。
本章では、安全対策に動画マニュアルが有効な理由について解説していきます。
安全対策に動画マニュアルが有効な理由
製造業の安全対策に動画マニュアルが有効な理由は、危険な動作を視覚的に疑似体験でき、正しい動作も目から分かりやすく理解できるからです。前述の安全対策事例の中でも、VR等で労働災害を疑似的に体験させるという内容がありましたが、動画マニュアルでも同様の効果を得ることが可能です。
VRの場合、高価な360度カメラが必要であること、編集の難易度が大きく上がることを踏まえると、まずはスマートフォンでも撮影できる動画マニュアルで整備する方がハードルは低いでしょう。
製造業のような人/モノ/機械の動きが伴う現場では、手順書や文書マニュアルのような文字情報、OJTや研修のような口頭による情報伝達では、動作を分かりやすく理解することは難しいです。正しい手順を正しい内容で繰り返し何度も伝えられるという点で、教育訓練の効率化と教育品質の向上を同時に実現できる動画マニュアルは安全対策での活用に効果的でしょう。
動画と聞くと『編集が難しそう…』と感じるかもしれませんが、動画編集未経験者でもかんたんに動画マニュアルを作成できるツールとして、製造業を中心にさまざまな現場で導入されているのが「tebiki」です。
ここからは、tebikiの機能概要や実際の活用事例をご紹介します。
安全対策の一環で活用事例が多い「動画マニュアルtebiki」とは?
かんたん動画マニュアル作成ツール「tebiki」は、製造業で多く導入されている現場の教育課題を改善するクラウドサービスです。
動きが伴う作業のカンコツやポイントを視覚的に分かりやすく伝え、安全教育だけに限らず業務標準化や新人教育の効率化、技術伝承、外国人従業員の教育など、現場の教育課題を解決する手段として活用されています。
製造業の安全対策で活用する場合、とくに有効なtebikiの機能を抜粋してご紹介します。
- 動画の自動字幕機能で騒音下でも理解できる
- 100カ国語以上の字幕翻訳機能で従業員の母国語で学べる
- 閲覧状況やテスト機能で習熟度の可視化ができる
動画の自動字幕機能で騒音下でも理解できる
tebikiで動画マニュアルを編集した場合、動画の音声が自動で字幕化されます。
製造現場の場合、閲覧環境によっては機械設備等の騒音が大きい場所があります。騒音下で字幕がない動画マニュアルを閲覧しても「音」という情報が取得しにくいですが、字幕の文字起こし機能により動画の内容を補完することができます。
一方で、製造業の場合、外国人の従業員を多く抱えているケースは珍しくありません。『日本語の字幕だと理解されない』という懸念は、tebikiの字幕の自動翻訳機能によって解消が可能です。
100カ国語以上の字幕翻訳機能で従業員の母国語で学べる
tebikiは、日本語の字幕を100ヵ国以上の言語に変換できる自動翻訳機能を搭載しています。
製造現場で外国人従業員が働いている場合、翻訳機能により母国語で作業の危険ポイントやコツを学ぶことが可能です。従来の安全教育で必要だったマニュアルの多言語化や、翻訳者の依頼といった手間やコストも省けるため、より少ない労力で安全教育の体制を整備できる点もおすすめです。
安全教育で最も大切なことは、従業員が作業の危険性や安全第一の大切さを理解していることです。習熟度は、閲覧状況やテスト機能によって可視化することが可能です。
閲覧状況やテスト機能で習熟度の可視化ができる
tebikiでは、いつ誰がどのマニュアルを見たのか?管理者が一目でわかる機能があります。
そのため、製造現場での新人教育や研修の際にtebikiを利用することで、安全教育の進捗状況を把握することが可能です。また、テストの作成機能も用意しているため、自社の安全教育の内容に沿った設問を作成し、マニュアルのコースに組み込むことで、理解度を定量的に計ることもできます。
一部のご利用プランでは、スキルマップ作成機能も搭載しています。安全というトピックスにおいて、自社の現場で必要な項目の理解度がどれほど進んでいるか?個人ごとに進捗状況を把握する使い方も可能です。
今回は、製造業の安全教育で有効なtebikiの機能をメインにご紹介しました。他の機能やプランの詳細を知りたいという方は、以下よりtebikiの参考資料をご覧ください。
動画マニュアルで安全対策を行っている事例
tebikiを用いて、動画マニュアルを安全対策に活用している事例として、樹脂製品の製造を行っているトーヨーケム株式会社の事例をご紹介します。
同社では、新人教育やOJTの効率化や教育内容の標準化、熟練者の技術伝承を目的に動画マニュアルを活用しています。以前は社員教育をOJTや紙マニュアルに頼っていたため、以下のような課題を抱えていました。
- 人によって教え方や内容がバラバラ
- 教える人が業務ノウハウを言語化できず伝わらない
- 教え方の丁寧さにムラがあった
- 文字では表現が難しい業務のマニュアル作成が負担
このような課題によって、新人の業務習熟度にもバラつきを生じさせ、不安全行動など安全トラブルにつながるのではないかと考えていました。
そこで動画マニュアル「tebiki」を活用したことで、マニュアル作成工数が紙の1/2に、OJTに割いていた時間も2/3に削減することを実現しています。新人の声としても『自立的な学習ができ、動画を見返すだけで業務の振り返りができる』という声が挙がっています。
トーヨーケム株式会社の具体的な取り組み事例を知りたい方は、インタビュー記事「新人からベテランまで700名を超える組織教育のグローバルスタンダードを目指す」をご覧ください。
製造業における動画マニュアル活用事例を、より多く知りたいという方は以下のガイドブックも併せてご活用ください。
製造業での労働災害事例
製造業では労働災害が発生しやすいことは厚生労働省のデータからもわかりますが、実際にどのような労働災害の事例があるのか気になるところです。そこで、以下の5つの事例を紹介します。
- 作業中、加熱電気に挟まれ死亡
- 機械に巻き込まれ手首を損傷
- フォークリフトがポールにぶつかり転倒
- 発電機の性能検査中に感電し死亡
- ベルトコンベアの修理中に墜落
製造業で発生している労働災害の種類や事例について、以下の記事ではより詳しく解説しているので本記事と併せてご覧ください。
関連記事:製造業に多い労働災害ランキング!死亡事故事例や対策方法を解説
作業中、加熱電気に挟まれ死亡
(引用元:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」)
加熱機械の調整作業中に電源を切らずに作業を行った結果、機械に挟まれて死亡する事故が発生した事例があります。
機械の可動部分に安全にアクセスするための適切な手順が講じられておらず、作業者が危険を認識していなかったために発生した事故です。事例から機械の電源を切る、適切なロックアウト・タグアウト手順を実施することの重要性が浮き彫りになります。
機械に巻き込まれ手首を損傷
(引用元:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」)
調味料製造業での事故事例では、チョッパー(大豆をすり潰す機械)の詰まりを解消しようとした作業者が、運転を停止しないまま手を機械に差し入れ、スクリューフィーダーに巻き込まれて手首を切断しました。
事例からは機械の運転を停止し、エネルギー源を遮断すること、そして安全教育の徹底がいかに重要かがわかります。
フォークリフトがポールにぶつかり転倒
(引用元:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」)
金属製品製造業での事故事例では、フォークリフトがポールに激突し横転する事故が発生しました。
フォークリフトの運転中に適切な通路が確保されておらず、作業者が高速で運転していたため発生した事故です。この事例ではフォークリフトの安全運転規則の確立と順守、作業環境の安全性の向上が重要だとわかります。
発電機の性能検査中に感電し死亡
(引用元:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」)
重電機製造業での事故事例では、発電機の性能検査中に作業者が感電死しました。
特別高圧の電源がかかった状態での作業が行われ、感電防止のための対策が講じられていなかったために発生した事故です。電気作業における安全対策の徹底、特に高圧電源の取り扱いにおける安全教育と作業計画の重要性がわかります。
ベルトコンベアの修理中に墜落
(引用元:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」)
金属精錬業でベルトコンベアの修理作業中に作業者が墜落し死亡した事例があります。
高所での作業において適切な墜落防止措置が講じられておらず、作業者が禁止されている作業を行ったため事故が発生しました。事例から、高所作業の際の安全対策の徹底、作業基準の周知徹底の必要性が浮き彫りになります。
工場の安全ルールを遵守させるには?
ここまでご紹介してきたような労働災害を防ぐために、工場ではさまざまな「ルール」が定められています。指差呼称や構内の導線、作業手順、使用設備や道具の使用や保管方法など…挙げると膨大な数がありますが、安全第一である工場において安全ルールを守ることは最も大切なことの1つです。
一方で管理者視点では、『安全ルールの不遵守が目立ち守られていない』というケースも珍しくありません。安全ルールを不遵守してしまう背景には、主に以下のような場合が考えられます。
- そもそもルールを知らなかった
- ルールのことは1度学んでいたが忘れてしまった
- 急用の対応があり、早く作業をこなそうとしてしまった
- 業務に慣れてきて、効率化しようと独自に手順を省略してしまった
これらは全て、安全ルールという「製造現場の標準」が伝わっていないことで引き起こされている問題です。
「ルールを知らなかった」というのは安全教育の仕組みに関する問題ではあるものの、それ以外は従業員の安全意識が低下していることで引き起こされています。そのため、安全ルールを遵守させるためには、安全意識を形骸化させないための標準化を進めることが不可欠です。
安全意識を形骸化させないために定期的な安全教育の実施はもちろんのこと、作業前にマニュアルや手順書を一度確認する仕組み、工場内で自然と安全標語が目に入るようにするなど、地道な取り組みが必要です。
現場改善ラボでは、「安全意識を形骸化させない安全教育の進め方」について、労働安全コンサルタントである専門家による1時間弱の解説動画を無料でご覧いただけます。ぜひこの機会に、以下のバナーをクリックしてご活用ください。
製造業の安全対策にはtebikiを活用してみよう【まとめ】
製造業における労働災害は転倒や挟まれ・巻き込まれ、墜落・転落、切れ・こすれ、感電といった事故が頻発しています。これらは機械の不備や作業環境の欠陥や作業者の不注意、安全対策への教育不足、コミュニケーション不足といった物的・人的要因に起因しています。
労働災害に対処するためには労働災害を疑似体験させることや5Sの徹底、KYTの実施、ヒヤリハットの記録、設備保全、ホウ・レン・ソウの徹底、作業手順書の整備といった安全対策をおすすめします。
特に作業手順書の作成は業務品質の標準化と事故防止に有効であり、テンプレートの活用や動画での作成が効果的です。動画マニュアルのtebikiは、製造業における安全対策の悩みを抱えている企業におすすめのツールです。
tebikiは誰でも簡単に作成でき、100カ国以上の言語に翻訳可能で動画アップロード本数が無制限であるほか、従業員の習熟度を100%にできるというメリットがあります。
この記事で紹介したtebikiの資料は無料でダウンロード可能です。ぜひ安全対策のためにtebikiの資料を無料でダウンロードしてみませんか?