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ヒヤリハットとは、「事故やケガには至らなかったものの、あと一歩でそうなりかけた危険な出来事」を指します。ヒヤリハットが発生した際は、ヒヤリハット報告書を書くと同時に原因と対策を考えることで、重大な事故を未然防止します。
本記事では、業界別のヒヤリハット事例や報告書の書き方、具体的な対策例を解説します。
目次
- 1 ヒヤリハットとは?原因やハインリッヒの法則
- 2 ヒヤリハットの業界別事例集
- 3 ヒヤリハットは「報告」が重要!報告書の項目や例文も紹介
- 4 ヒヤリハット報告書を書く上で注意したいポイント
- 5 ヒヤリハット報告書のテンプレートと活用のコツ
- 6 ヒヤリハットの発生/報告後に必要な5つの対策
- 7 ヒヤリハットを有効活用して「組織の安全意識」を高める方法
- 8 「tebiki現場教育」による安全教育で事故を未然防止!
- 9 動画マニュアルをヒヤリハット対策に活用している事例
- 10 ヒヤリハット報告が少ない・定着しない3つの理由
- 11 ヒヤリハットの報告を増やすには?
- 12 ヒヤリハット報告を効率化するワークフローシステム
- 13 ヒヤリハットに関するQ&A
- 14 まとめ
ヒヤリハットとは?原因やハインリッヒの法則
ヒヤリハットの意味や語源は?
「ヒヤリハット」とは、仕事中や日常生活で危険だと感じた出来事のことです。ヒヤリハットの語源は「ヒヤリとしたこと」「ハッとしたこと」といった言葉です。
職場でのヒヤリハットは、重大な事故やケガといった労働災害にもつながるため注意が必要です。ただ「危なかった」で終わらせるのではなく、なぜ起きたのか?対策を考えることが重要です。
ヒヤリハットの原因
ヒヤリハットの原因としては様々なものが考えられますが、代表的なものが下記の3つです。
ヒューマンエラー
ヒューマンエラーは作業者の不注意や判断ミス、知識や経験の不足などによって発生します。
たとえば、作業手順の見落としや確認不足、慣れによる油断などが典型的な例です。また、疲労やストレス、作業中の集中力の欠如もヒューマンエラーを引き起こす要因となります。
こうしたエラーが積み重なると、ヒヤリハットなど重大な事故につながるリスクが高まるため、ヒューマンエラーの根本的な原因を分析し、対策を講じることが必要です。ま
注意点として、ここでケアレスミスを責めたり、「しっかりしろ」などの精神論に走るのは本質的な改善につながらず、応急処置的な対策で再発防止することが難しいです。ヒューマンエラーによるヒヤリハット/事故を再発防止するためには、発生の真因を特定したうえで適切な対策を講じることが必要です。
ヒヤリハットや事故の真因を明らかにするときには「なぜなぜ分析」が効果的です。発生した事象に対して、なぜ起きたのか?を繰り返していくことで真因に辿りつくことができます。
一方で、なぜ?を繰り返すと、仕組みではなく人を責めてしまうことがあるため注意が必要です。このような誤った方法ではなく、「正しいなぜなぜ分析の進め方」はトヨタ社内で講師も担当していた、専門家による無料の解説動画を以下のリンクをクリックしてご覧ください。
>>「トヨタで学んだ『なぜなぜ分析』ヒューマンエラーに対するトヨタの考え方」の解説動画を見てみる
5Sの不徹底
現場で「5S」が浸透していないことも、ヒヤリハットを招く原因の1つです。5Sとは、「整理・整頓・清潔・清掃・躾(しつけ)」の頭文字を総称したもので、習慣化することが作業効率や安全性の向上につながります。
この5Sが浸透していない場合、作業環境が乱れて不要な物が散乱したり、必要な道具が見つからないなど、作業に支障をきたすことが多くなります。
▼5Sの不徹底によるヒヤリハットの例▼
- 足元にコードがあり、つまずきそうになった
- 床が汚れて滑りやすくなっている
- 作業場が散らかり、刃物といった危険な工具があることに気づかない
この支障がやがてヒヤリハットや労働災害に発展するため、5Sを日常的に実践し、全員がその重要性を理解し習慣化することが、ヒヤリハットを防ぎ安全で効率的な職場環境を維持するための基本となります。
5Sは安全な職場環境のために欠かせない活動ですが、「実施して終わり」ではなく、5S活動のサイクルを継続して現場改善につなげることではじめて効果のある取り組みだといえます。
しかし、継続的な活動は中々難しいもの。そこで、数々の企業で5S改革を行ってきた専門家による「5S活動定着のコツ」「実際に活動する際の注意点」を解説した動画をご用意いたしました。本記事と併せてお役立てください。
>>「生産性を高める5S活動の正しい運用」について動画で学ぶ(無料)
システムや制度の欠陥
システムや制度の欠陥も、現場にありがちな課題です。
不十分な手順書や不明確なマニュアル、適切に機能していない安全装置などがその典型例です。たとえば、作業手順が複雑で理解しにくかったり、現場の実態に即していないと、作業者は独自の判断で行動し、結果としてエラーやヒヤリハットが発生しやすくなります。
また、コミュニケーションの不備や意思疎通の不足もシステムや制度の欠陥の一部です。上層部からの指示や報告の仕組みが不十分な場合、作業者がリスクを見逃したり、必要な情報が現場に伝わらないことがあります。このような欠陥が改善されないと、ヒヤリハットは蓄積し、やがてインシデントや重大な事故に発展する可能性が高まります。
システムや制度を改善し、現場に合った手順を標準化し、安全装置のメンテナンスを定期的に行うこと、そして適切なコミュニケーションの確保が、ヒューマンエラーやヒヤリハットの発生を防ぐために不可欠です。
これは、仕組みが要因で起きてしまったヒヤリハットを示しており、見方を変えれば制度を見直す良いきっかけだといえます。
ここで挙げたものは、ヒヤリハットの原因としてよくみられる例に過ぎません。ケースによって、異なる原因であることも十二分にあり得ます。ヒヤリハットの原因は決めつけずに、深堀をして考えることが大切です。
『事故に至っていないヒヤリハットに対して、ここまで対策を講じる必要があるのか?』と感じるかもしれませんが、将来的な労働災害など重大事故の予防のためには欠かせません。その理由について、ここからは「ハインリッヒの法則」を交えて解説します。
ヒヤリハット対策の重要性がわかる「ハインリッヒの法則」とは?
ヒヤリハット対策がなぜ重要な役割を持つのかは、ハインリッヒの法則を理解することで解釈ができます。
ハインリッヒの法則とは、アメリカの損害保険会社に勤めていたハーバート・ウィリアム・ハインリッヒ氏が提唱した概念で、「1件の重大事故が発生する裏には、29件の軽微な事故と300件の事故寸前の出来事が存在する」というものです。
300件の事故寸前の出来事がヒヤリハットに該当し、ヒヤリハットの頻度が多ければ多いほど、軽微な事故やケガ、重大な労働災害が発生する可能性が高まります。実際に、1:29:300という数字も安全衛生関連の文脈ではよく用いられます。
ヒヤリハットは、発生した300件の事故寸前の気付きを共有・対策することで、事故が起こることを未然防止できます。そのため、ヒヤリハットの原因深堀や対策は、現場の全従業員を安全に守るために必要不可欠な取り組みであり、現場社員だけでなく経営者層や現場責任者も取り組むべき課題です。
実際に、ハインリッヒが提唱した「産業安全の原理」の中でも、以下のように言及されています。
- 経営者は災害を防止するうえで最もよい機会と能力を持っているため、責任を負うべき
- 監督者または職長は産業災害防止の中心人物であり、監督技術を作業者の作業管理に適用することは、災害防止の成功の鍵といえる
参照元:発掘調査におけるハインリッヒのドミノ理論—愛知県埋蔵文化財センターの事例から—
つまり、ヒヤリハットを軽視せず、経営者や現場責任者が主体的に関わることで、効果的な安全対策が実現されるのです。これにより、事故を未然予防できるでしょう。
ここまで、ヒヤリハットの意味や原因など、基礎的な知識をおさらいしました。次章では、業界ごとに考えられるヒヤリハット事例についてご紹介します。ハインリッヒの法則を更に詳しく知りたい方は、以下の記事をクリックしてご覧ください。
関連記事:ハインリッヒの法則とは?事故予防の取り組み例をかんたんに解説!
ヒヤリハットの業界別事例集
ヒヤリハットの内容は業界・業種によって千差万別です。ここでは厚生労働省「職場のあんぜんサイト」内で紹介されている以下のヒヤリハット事例を抜粋してご紹介いたします。
製造業の事例
「ベルトコンベアの清掃中、手が巻き込まれそうになった」
(厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」より引用)
この事例は、ベルトコンベアを停止させず清掃作業をしていたことが原因です。機械に挟まれたり巻き込まれたりした場合、体の一部を失う・死亡してしまうといった労働災害になるケースが少なくありません。
機械の清掃・点検作業などを行う際は確実に停止していることを確認の上、周囲の人にも絶対に機械を動かさないようコミュニケーションを行うことが必要です。
食品製造業の場合では、「食パンをスライスしていた際、指が刃に接触しそうになった」といった事例があります。
(厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」より引用)
この場合、本来は押し板を使用してスライスすべきだったところ、慣れから手で押していたことが原因です。経験がある、慣れているからと手順を省略するのではなく、ルール通りに押し板を使用してスライサーを利用すべきです。
「製造現場におけるヒヤリハット事例を、より多く確認したい」という方は、工場内におけるヒヤリハット事例に着目した以下の記事も併せてご覧ください。
関連記事:工場のヒヤリハット事例21件を解説!事故対策につなげる方法もご紹介
建設業の事例
「暗い場所で写真撮影をしようと後ろへ下がった際、階段に気がつかず転落しそうになった」
(厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」より引用)
この場合、暗い場所で作業を行ったこと、後方確認ができていなかったことが原因です。しっかりと懐中電灯やライトなどを準備してから行うこと、後方へ歩行する際は必ず確認してから行うことなどが対策として考えられます。
他にも、以下のような「ダンプトラックの運転中に人を轢きそうになった」という事例も考えられます。
(厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」より引用)
この場合、狭く後方視界が悪い環境下で大型車をバック運転していたにも関わらず、誘導者を配置していなかったことが原因です。ヒューマンエラーは「自分1人が気を付けていれば大丈夫」という思い込みからも発生するため、自分の意識の範囲外で事故やトラブルが発生しそうな際は、サポートしてくれる従業員を配置することも重要です。
小売業の事例
「カッターでダンボールを切断している際、足を切りそうになった」
(厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」より引用)
この場合、カット作業の体勢が原因です。カッターの刃と身体の距離を離すこと、慌てず余裕を持ってカット作業を行うこと、防刃手袋を着用するなど安全に配慮することが対策として考えられます。
他にも、以下のような「灯油の配送中にポリタンクを2缶同時に持ち上げようとした際、腰を捻った」という事例も考えられます。
(厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」より引用)
この場合、「早く配達を終えてしまいたい」「これぐらい持ち上げられるだろう」といった心理から、自らの限界を超えた動きをしてしまったことが原因として挙げられます。
そのため、作業者には適切な作業手順を教育し、無理をしないことの重要性を伝える必要があります。
なお、厚生労働省によると、「満18歳以上の男子労働者が人力のみにより取り扱う物の重量は、体重の概ね40%以下であることが望ましい」と述べられています。「女性労働者の場合は、更に男性が取り扱うことのできる重量の60%程度」までとされるため、この数値を目安とするとよいでしょう。
介護業界の事例
「起床介助で車いすへ移乗する際に、無理な体勢で抱えたため肋骨を痛めそうになった」
(厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」より引用)
この場合、無理な体勢で介助を一人で行ったことが原因です。体への負荷が少ない体勢で抱える、または複数人で介助を行うといった対策が考えられます。
似たような事例として、「2名の介護職員で被介助者を車いすへ移乗しようとした際、一方の介護職員が腰を痛めた」ということが挙げられます。
(厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」より引用)
介護業では被介助者を複数人の従業員がケアすることも少なくありません。そのため、「無理のかかる体制での介護作業は行わない」ということを組織全体に浸透させる必要があります。
組織全体に効率よく質の高い教育を行う方法については、後述する『「tebiki現場教育」による安全教育で事故を未然防止!』でも詳しく解説します。
商業の事例
「床に飛び散った天ぷら油で足を滑らせて転倒した」
(厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」より引用)
一見危険がなさそうに見える商業にも、重大な事故に繋がりかねないヒヤリハットが潜んでいます。本事例では、職場環境の清掃を怠り、事故を誘発しかねない状態であったことが原因です。
そのため、職場の安全を維持する「5S活動」の実施を通し、整理整頓の行き届いた環境を維持することで事故を未然防止できるといえるでしょう。5S活動については、後述する『5S活動を徹底する』で詳しくご紹介します。
他にも、以下のような「エレベーターに走り込んできたお客様とぶつかりそうになった」という事例も考えられます。
(厚生労働省「ヒヤリ・ハット事例」より引用)
商業はお客様と直に接する機会が多いことから、予期せぬヒヤリハットが発生することも多いでしょう。そのため、常日頃から「事故が起こるかもしれない」という危険意識をもち、十二分に注意を払うことが事故の未然防止に効果的です。
このように、ヒヤリハットは業界を問わず発生する共通の課題であるといえます。
一方で、ヒヤリハットは「重大な事故の前触れ」とされ、適切に報告・対処することで事故やトラブルを未然防止する重要な要素です。
次章からは、ヒヤリハットを事故の未然防止に役立てる「報告やコツ」について解説します。
ヒヤリハットは「報告」が重要!報告書の項目や例文も紹介
ヒヤリハットは事故に繋がりかねない重大な出来事である一方で、「こんなことがあると事故に繋がりかねない、早急に対策せねば」という気づきを与えてくれる大事なポイントです。
そのため、ヒヤリハットが発生した際は速やかに報告して共有し、具体的な対策に向けて動くことで労働災害や事故を未然に防ぐことが求められます。
後述する『ヒヤリハット報告書のテンプレートと活用のコツ』では、すぐに使える報告書のテンプレートや効果のある運用のコツについても解説するため、併せてご覧ください。
ヒヤリハット報告が重要な3つの理由
ヒヤリハットを社内に報告することが重要である理由として、下記3点が挙げられます。
- 知識の共有と浸透
- 言語化による危険の具体化・明確化
- 危険を意識する習慣の定着
知識の共有と浸透
1つ目の理由は知識の共有と浸透のためです。ヒヤリハット報告を行うことで、現場で実際に起こった危険な状況や失敗事例が組織内に共有されます。これにより、特定の従業員だけでなく全体で知識を共有し、同じミスやリスクを避けるための対策について考えることができます。
例として、自分の経験したヒヤリハットを報告することで、他のメンバーも「この作業は気をつけよう」「そんな危険が潜んでいたのか」と気づきを得るきっかけとなります。
また、ヒヤリハット報告の共有により各従業員の経験に基づく知識が蓄積され、社内全体での安全意識が向上しすることもメリットです。特に製造業など危険が潜む現場では、こうした報告を通じて得られる知識が次の事故を防ぐために不可欠です。
加えて、1人ではヒヤリハット対策が思い浮かばなかったとしても、報告による情報共有が元で他の従業員や部署から有益なアイデアや解決策が集まることや、複数の視点からヒヤリハットの状況を分析することで、個人では気づかないリスクや根本的な問題点を明確にすることも期待できます。
言語化による危険の具体化・明確化
2つ目に、言語化による危険の具体化・明確化が挙げられます。もし、ヒヤリハットを報告するというプロセスがなければ、危険な出来事に遭遇しても「おっと、危なかった」と個人的かつ一時的な注意や注目だけで終わってしまい、ヒヤリハットが組織に共有されず見過ごされます。
しかし、報告する必要があるとなれば、「危険の原因は何なのか」「他に似たような危険が潜んでいる場所はないか」という部分まで深掘りすることが求められるため、ヒヤリハットを根本から対策できるアプローチが考えられ、組織に共有されます。
また、人に状況を説明するためには自分自身がしっかりと理解していなくてはならないため、より具体的に事象を分析することに繋がります。
ヒヤリハットを報告する際、単に事象を述べるのではなく、どのような行動や条件が危険を引き起こしたのかを言語化することで、潜在的なリスクが具体的に明らかになります。言語化することで、危険が曖昧なまま残るのではなく、具体的にどの場面で問題が発生し得るのかが明確化され、対策が取りやすくなるでしょう。
危険を意識する習慣の定着
3つ目の理由として、危険を意識する習慣ができることが挙げられます。ヒヤリハット報告を日常的に行うことで、危険を意識する姿勢が従業員に根付きます。報告すること自体が危険を発見し、その予防に努める意識を高めるトレーニングとなります。
例として、ヒヤリハットを報告するというプロセスがあることで、普段から「何か危険が潜んでいそうなところは無いか」「あまり気にしたことは無かったがあの部分、実は危険じゃないか」といったことを日常的に考える従業員が増えると推測されます。
これにより、現場全体で危険に対する警戒心が強まり、安全文化が確立されます。結果として、潜在的な危険が未然に防がれる可能性が高まり、事故や怪我の発生を抑えることができるのです。
このように、ヒヤリハットを報告することで従業員の安全意識が高まり、普段から事故が発生しにくい環境に一歩近づくでしょう。
一方で、一時的な安全意識の向上にならないよう、ヒヤリハット報告が継続的に行われる必要があります。
ヒヤリハット報告を継続させ、安全意識をキープするコツについては、後述する『ヒヤリハット報告が少ない・定着しない3つの理由』の他、以下の専門家による解説動画がヒントになるでしょう。
報告は「ヒヤリハット報告書」で行う
ヒヤリハットの報告には、ヒヤリハット報告書と呼ばれる文書を使用するケースが多いです。いつ・どこで・何があったかを記録に残すことで、原因や対策を考えて同様の事象を未然防止するきっかけとなります。また文書を社内共有することで、従業員の安全に対する意識醸成にもつながります。
このような目的から、報告はヒヤリハット報告書で行うことが一般的です。情報共有が目的の1つであるため、作成後は一定期間保管をすることがよいでしょう。例として、ある医療機関では報告後、1年間は保管すると定めているようなケースもあります。
ヒヤリハット報告書の項目や例文
ヒヤリハット報告書の項目について、明確な決まりはありません。ヒヤリハット報告書の項目は、日時、報告者名、発生場所、ヒヤリハットの概要/分類/原因/対策に分けられます。
業界業種によっては、絵や図なども書き加えられる項目があると、より状況が伝わりやすい報告書になります。
そのため、職場によって意見を出し合い項目をカスタマイズしていくとよいでしょう。ゼロから作成するのは工数がかかるため、ベースとして以下の項目例/フォーマットをご活用ください。
また、ヒヤリハットの例文として、ヒヤリハットの概要/分類/原因/対策に分けて紹介します。
ヒヤリハットの概要
ヒヤリハットの概要は、誰が見ても分かるよう詳細に記入しましょう。例として、「令和6年2月2日14時に〇〇棟の〇階で作業者(転倒者)が階段が濡れている状態で手すりを使わず、降りた際に足を滑らせ転倒しそうになった」というように、主観を入れず事実だけをシンプルに記載します。
ヒヤリハットの分類
ヒヤリハットの分類は、今回の概要から転倒にあたるでしょう。
他にも、挟まれ・巻き込まれや感電、転落などが挙げられます。
ヒヤリハット原因
ヒヤリハットの概要から、なぜ階段で転倒したのか原因を記入します。例として、階段が濡れており、手すりを使わずに降りてしまった、作業靴は滑り止め機能が付いていなかったといったことがあるでしょう。
ヒヤリハットの対策
ヒヤリハットの原因から対策案を記入します。例として、作業後に移動する際は清掃する、階段を降りる際は手すりを使う、滑り止め機能がある作業靴を使用するなどが挙げられます。
ヒヤリハット報告書を書く上で注意したいポイント
ヒヤリハットの原因特定や対策、社内共有を適切に行うには、報告書の書き方が重要といっても過言ではありません。ここでは、書くときに意識したい注意点やポイントを6つご紹介します。
事象が発生したらすぐ作成する
人の記憶というのは思っている以上に長続きしません。報告書を書くまでに時間が空いてしまうと、具体的な内容を書くことが難しくなり、分析や情報共有につながる報告書にならないでしょう。
実際に、記憶のメカニズムに「エビングハウスの忘却曲線」と呼ばれるものがあります。
人の記憶は1時間後にはおよそ50%、1日経過するとおよそ70%忘れてしまうという提唱です。ここから、報告書を作成する時間が遅くなるほど詳細な内容を盛り込めなくなることが分かります。
そのため、ヒヤリハットがあった際はすぐに報告書を作成する、もしくは重要な事項をメモなどに残し、のちに思い出せる状態にすることが望ましいです。
客観的な視点で書く
報告書を書く時には、自身の印象など主観的な内容ではなく、事実を正確に伝える客観的な視点を意識することが大切です。ヒヤリハットの原因を分析し適切な対策を講じるには、客観的な事実に基づくことが必要です。
そのため、基本的には客観的な視点で書きつつ、主観的な情報を記載する際は「〜と思う」といったように、主観的な推察であることが分かる表現にするとよいでしょう。
また、主観的な表現を避けるために、具体的な数値や事実を使って説明することが重要です。
例えば、「作業エリアが狭くて作業しにくかった」という表現ではなく、「作業エリアの幅が50cmで、通常必要とされる1mに満たなかったため、作業時に体勢を崩しやすくなった」といった具合に、具体的な数値や事象を示すことで、客観的な根拠を持った報告書となります。
5W1Hを意識して書く
前述したポイントの「客観的な視点で書く」を実践するには、5W1Hを意識することが効果的です。
5W1Hとは、「Who(誰が)」「What(何が)」「When(いつ)」「Where(どこで)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」の要素を指し、この要素を報告書に含めることで事実が網羅的に記述され、報告書を読む側も正確に状況を理解しやすくなります。
▼5W1Hの例▼
When(いつ) | 例:2月3日の16時ごろ |
Where(どこで) | 例:トラックの荷台で |
Who(誰が) | 例:荷卸し担当の〇〇が |
What(何を) | 例:荷卸し作業中にバランスを崩して転倒しそうになった |
Why(なぜ起きた) | 例:重い荷物を一人で持とうとした、荷台作業の危険性を教育していなかった |
How(どうした) | 例:荷台の端に捕まってバランスを保った |
このように整理することで、客観的な事実を端的に分かりやすく書くことができます。
現場で用いられる通称や専門用語を多用しない
ヒヤリハット報告書は、安全教育の教材として他部署や新人教育などあらゆる場面で見られることが考えられます。そのため、現場の知識がない従業員も見ている可能性があり、特定の現場で用いられている通称や専門用語で作成すると、内容が伝わらない報告書となってしまいます。
作成するときは、専門用語や略語を避け、現場に入りたての新人社員が見ても分かるような言葉で書くことを意識しましょう。
もしどうしても専門用語を使う必要がある場合は、その用語の意味や背景を簡潔に説明するなど、初めて報告書を読む人にもわかりやすく工夫することが求められます。
例えば、現場で使われる特有の略称や機械の名前が登場する場合、それが具体的にどのような機能を持つものか、何の作業に関係するものかを記載することで、読者が状況を正確に理解できるようにします。
原因を考察する
ヒヤリハットがあった作業箇所から事故が起きないよう、ヒヤリハットが発生した原因を特定することが重要です。例えば、作業者の不注意や作業手順の不遵守、機械の故障があるように、直接的・間接的な原因を考察し、報告書に記入しましょう。
再発防止に役立てるためには、この原因分析がカギを握っているといっても過言ではありません。原因を考察するには、「なぜ?」を繰り返す「なぜなぜ分析」を活用し、問題の真因を特定するような動きも効果的です。
一方で、既になぜなぜ分析を取り入れていても、「なぜなぜ分析を正しく進められているか分からない…」「なぜなぜ分析を行っていても、効果が薄い…」という方もいらっしゃると思います。
そこで現場改善ラボでは、トヨタ社内で正社員に向けてなぜなぜ分析を教えていた伊藤 正光氏による、「正しいなぜなぜ分析のエッセンス」を以下よりご覧いただけます。本記事と併せ、是非ご活用ください。
対策・改善策は具体的に提示する
報告書には、ヒヤリハットがあった作業から事故が起きないよう、再発防止のための対策・改善策も必要です。
例えば、作業手順通りに作業ができないのであれば、マニュアルや作業手順書に正しい手順の記載をすることは勿論のこと、作業手順を伝える手段についても従来のものから見直しが必要になるでしょう。
さらに、対策や改善策を提案する際には、実行可能性や効果の具体性を意識することが重要です。例えば、単に「作業手順を見直す」といった曖昧な表現ではなく、「作業手順書の○○箇所を変更し、作業前の5分間ミーティングで全員に周知徹底する」といった具体的なアクションを明示することで、現場での実行が容易になります。
また、改善策の効果を確認するために、定期的な振り返りや進捗のチェックを行うことも提案に含めるとよいでしょう。例えば、「改善策導入後、1か月後に作業者からフィードバックを集め、さらなる改善点があれば追加対応を検討する」など、PDCAサイクルを意識した対応を記載することで、再発防止策がより実効性を持つものになります。
ヒヤリハット報告を通じて考えられた対策や注意すべきポイントを分かりやすく伝えるには、「マニュアルの動画化」がおすすめです。文章や図面ではなかなか伝えづらい複雑な内容や危険なポイントについても、動画であれば映像で見たままに分かりやすく伝えることができます。
マニュアルを動画化するメリットについては、後述する『「動画マニュアル」で危険を可視化し感受性を高める』のほか、以下の資料もご覧ください。動画マニュアルの有効性について、マンガでわかりやすくお伝えします。
ヒヤリハット報告書のテンプレートと活用のコツ
ヒヤリハット報告書を迅速かつ効率的に作成するには、テンプレートの活用がおすすめです。報告書のテンプレートとしては、厚生労働省(北九州東労働基準監督署)が公表しているこちらのものがおすすめです。
発生したヒヤリハットの詳細のほか、管理者による分析や対策、さらにリスクの見積もり評価が記載できる項目も記載されているため、ヒヤリハットが発生した原因や具体的な対策といった情報を、組織内で効率よく共有できるでしょう。
一方で、テンプレートを使えば手間なく報告書を作成できますが汎用的な内容であることも多いため、自社に合ったテンプレートを作成したい方もいるでしょう。また紙による報告書には以下のような課題が存在しているケースも少なくありません。
- 必要な情報にすぐアクセスできない
- 文章による報告だけでは内容がわかりづらく、伝わりにくい
- 紙による報告書だけでは共有に手間がかかる
- 報告書の内容を従業員に周知し、安全教育と紐づけることが難しい
そのため、ヒヤリハット報告書を効果的に運用するには「動画マニュアルと併用して活用すること」がおすすめです。
例として、製造業において事故を誘発しかねない誤った業務手順をNG例として動画マニュアル化したものをお見せします。
▼ロール台車の扱い方(株式会社イセ食品様提供)▼
上記のような動画マニュアルと報告書を併用して活用することで、「このような危険が現場に潜んでおり、このような対策が効果的だ」ということを現場に負担なく伝えられ、従業員の安全意識の醸成に役立ちます。ほかにも動画化のメリットについて、『「動画マニュアル」で危険を可視化し感受性を高める』にて後述します。
他にも、動画マニュアルのメリットや活用事例についてまとめた、こちらのハンドブックもご覧ください。
次章からは、ヒヤリハットの発生・報告後に行うべき具体的な対策についてご紹介します。
ヒヤリハットの発生/報告後に必要な5つの対策
ここまで、ヒヤリハットの報告について重要性や報告書の内容を解説してきました。報告後のステップは、発生したヒヤリハットの対策を考え、労働災害などの事故を未然防止することです。
ここでは、効果的な対策を5つご紹介します。
ヒヤリハット報告会を定期的に開催する
まず1つ目は「ヒヤリハットの報告会を定期的に開催すること」です。
定期的に報告するというルーティーンができることで、日頃から危険な業務に対する危険予知能力を鍛えることができます。
他のメンバーの意見や実際に起きたヒヤリハットを聞くことで、ヒヤリハットや労働災害を未然防止することに繋がります。
しかし、定期的に開催するうちに「もうヒヤリハットのネタがない…」となることも。ヒヤリハット報告をネタ切れさせないコツは、後述する『ヒヤリハットの報告を増やすには?』で詳しくご紹介します。
5S活動を徹底する
5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を徹底することで、作業環境を整備し、ヒヤリハットにつながる潜在的なリスクを取り除くことが可能です。具体的には、定期的な整理整頓活動や清掃当番の導入などが有効です。
まず、整理整頓を徹底することで、作業者の動線が確保され、つまずきや転倒のリスクを減らせます。また、清掃を徹底することで不要なものを排除し、火災や機械の故障による事故を防ぐことができます。
さらに、しつけを徹底して清潔な状態を維持することで、作業者全員が安全意識を持って行動するようになります。これにより、作業環境の整備と安全意識の向上が相まって、ヒヤリハットの発生を効果的に防ぐことができます。
5S活動の各要素や具体的な進め方について知りたい方は、こちらの別記事や、数々の企業で5S改革を行った経歴を持つ講師による以下のウェビナー動画をご覧ください。
安全教育を行う
ヒヤリハット事例を用いた安全教育を実施することで、従業員は作業手順を遵守する重要性を理解し、安全に作業する能力が向上します。たとえば、新人の入社時やヒヤリハット発生時に事例を用いた安全研修を行うことで、安全な作業習慣を定着させることができます。
さらに、ディスカッションやシミュレーショントレーニングを行うことで、作業者の安全意識が高まり、問題解決能力を養うことができます。これにより、作業者は実際の状況で適切な対応ができるようになります。
安全教育が不足していると、同じミスが繰り返され、結果として重大な怪我や事故が発生するリスクが高まります。したがって、定期的な安全教育を実施し、継続的に安全意識と対処能力を向上させることが重要です。
安全教育は実施が法律で定められた重要な取り組みです。安全教育の種類や具体的な教育内容、成功事例について知りたい方は、こちらの別記事や、労働安全コンサルタントによる以下のウェビナー動画もご覧ください。
KYT(危険予知トレーニング)を実施する
ヒヤリハットを活用した対策案を考えるには、KYT(危険予知トレーニング)の実施も効果的です。KYTは作業中に潜在する危険を事前に察知し、事故を未然に防ぐための訓練です。KYTを実施することで、作業者は現場でのリスクを把握し、適切な対策を講じる能力を高めることができます。
具体的には、月ごとのヒヤリハット事例をもとに、製造現場の危険箇所やその回避方法を全員で検討することが有効です。作業者全員でディスカッションを行い、KYTの成果を工場内の掲示板にまとめることで、日常業務の中で自然とリスク意識が高まります。これにより、安全な作業習慣を身につけることが可能です。
一方で、KYTが不十分であったり実施されていない場合、作業者は現場のリスクを十分に認識できず、ヒヤリハットに気づかずが重大な事故に発展するリスクが高まります。たとえば、機械の清掃時に発生したヒヤリハットがKYTで共有されなかった場合、他の作業者が同じ状況に直面してもリスクを察知できず、手や指が機械に巻き込まれて重傷を負う可能性があります。
KYT(危険予知トレーニング)の進め方や例題を知りたい方は、こちらの別記事や、安全衛生コンサルタントによる以下のウェビナー動画もご覧ください。
マニュアル/作業手順書を整備する
現場で発生したヒヤリハット報告を収集し、その内容をもとにマニュアルや作業手順書を作成・見直すことで、重大な事故を防止できる可能性が高まります。
たとえば、作業者が機械の操作ミスによるヒヤリハットを報告した場合、その報告内容をもとに機械操作の手順書の注意点やチェックリストを改訂します。その後、改訂された手順書を作業者全員に共有し、内容が確実に伝わるようにすることで、操作ミスによる事故を防止できます。
一方で、ヒヤリハット報告をもとに作業手順が整備されていない場合、作業者は不完全な手順に従うことになり、怪我や事故につながるリスクが高まるため十分な注意が必要です。
効果的なマニュアルや作業手順書の整備に関しては、後述する『「tebiki現場教育」による安全教育で事故を未然防止!」』や、以下のガイドブックでも詳しくご紹介しています。是非ご覧ください。
ヒヤリハットを有効活用して「組織の安全意識」を高める方法
ヒヤリハットは、事故に至らなかったものの「ヒヤッと・ハッとした」出来事です。このような、たまたま事故につながらなかった出来事を現場で共有/周知することが、安全トラブルや労働災害の未然防止につながります。
本章では、発生したヒヤリハットを活用して組織の安全意識を高める活動に役立てる方法をご紹介します。
安全意識の向上に必要なこと
さまざまな現場の安全対策を支援してきた私たちTebikiは、安全意識を高めて安全文化が根付いている組織には、以下の特徴があると考えています。
- 危険感受性が高い
- 現場の危険が可視化/記録されている
危険感受性が高い
危険感受性とは「何が危険か、どうなると危険な状態になるのかを直観的に把握し、危害の程度・発生確率を敏感に感じ取る能力」です。(参照元:厚生労働省)この能力があることで、職場における潜在的な危険要因を早期に察知し、事故や災害につながるような不安全行動や判断をしないようになります。
危険感受性が低い組織の場合、現場の危険を従業員自身が察知できずに不安全な行動や判断をし、事故につながりやすいでしょう。そこで、発生したヒヤリハットを共有/報告する仕組みを整えることで、何が危険だったのかを知る機会が設けられます。
似たような場面に遭遇した場合、『あの報告で見た場面と似ているな』と直感的に危険な状態を把握しやすくなり、危険感受性が高いを保つことができます。このように危険感受性を高めるには、次にご紹介する「現場に潜む危険が可視化/記録されている」必要があります。
現場の危険が可視化/記録されている
危険感受性を高めるには、危険な場面をイメージできる状態が必要です。そのため、現場における危険な作業やエリアなどが可視化されていたり、過去に起きた安全トラブルの記録が閲覧できる状態が理想です。
このような情報を得る手段としては、作業手順書やヒヤリハット報告書などが一般的です。
一方で、上記のような文書は文字や写真といった二次元的な形式が多いです。工場のようなヒト/モノ/機械など、三次元的な動きがある環境において、危険な動作などを知る形式としては適していません。
そこで、手順書やヒヤリハットの報告/共有に動画マニュアルを活用することで、視覚的に分かりやすく伝えることが可能です。
ここからは、動画マニュアルを活用した安全意識の向上、安全文化を醸成する方法や活用事例をご紹介します。
「動画マニュアル」で危険を可視化し感受性を高める
従業員の危険感受性を高め、現場の危険を可視化するには、動画マニュアルを活用した教育がおすすめです。
動画マニュアルによる教育とは、作業手順や安全対策、製品の取り扱い方法などを動画形式でまとめ、社員教育に活用する方法です。従来の紙ベースのマニュアルとは異なり、視覚と音声を通じて具体的な手順や注意点を伝えられるため、社内に潜む危険やリスクを可視化しやすいというメリットがあります。
例として、以下の動画マニュアルサンプルをご紹介します。
▼ロール台車の扱い方(株式会社イセ食品様提供)▼
ロール台車の扱い方について動画で解説することで操作方法が視覚的に理解できるほか、事故のリスクが視覚的に伝わることでヒヤリハットをイメージできるようになり、危険感受性が向上することがうかがえます。
また、動画はいつでも繰り返し視聴できるため、社員は自分のペースで学習や復習ができ、現場でのスキルを効率的に習得できます。
さらに、動画マニュアルはヒヤリハット事例を用いた教育にも有効です。例として、発生したヒヤリハットを動画で再現し、マニュアルに落とし込むことで誤った作業方法と正しい手順を解説することや、ヒヤリハットの内容や原因、対策を1つの動画マニュアルに盛り込み、全部署に展開することが考えられます。
このように動画マニュアルを活用することで、ヒヤリハットを紙ベースの報告書よりもわかりやすく、かつ簡単に全従業員に伝えることができ、従業員の危険感受性を高め、現場の危険を可視化することが実現します。
動画マニュアルと聞くと『作成が大変では?』と感じるかもしれませんが、誰でもかんたんに動画マニュアルを作成できるツールが、かんたん動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」です。
次章以降では、tebiki現場教育の機能など概要や、動画マニュアルをヒヤリハット対策に活用している事例をご紹介します。
「tebiki現場教育」による安全教育で事故を未然防止!
かんたん動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」は、製造業や物流業、建設業などの現場産業を中心に、活用されている教育改善を目的としたツールです。
現場産業のノウハウ/スキルである「動き」を、映像で視覚的に分かりやすく伝えることで、どのような動作が危険なのか?安全な作業手順は何か?を分かりやすく伝えることが可能です。
▼動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」紹介動画▼
ここからは、tebiki現場教育の主な特徴や機能についてご紹介します。
誰でも動画の編集がかんたん
tebikiはマニュアル作成に必要な機能を厳選したシンプルな設計のため、パソコン操作が苦手な方でも、使い始めたその日から動画マニュアルの作成が行えます。さらに、編集に時間がかかる字幕追加を自動で行う機能も搭載!
動画マニュアルの内製化に取り組んでいたある工場では、「1時間かかっていた動画作成が、tebikiによって5分になった」という嬉しい声もいただいています。
多言語対応のため外国人従業員教育にも
tebikiの自動翻訳機能を使用すれば、ボタン1つで100か国語以上の自動翻訳が行えます。日本語がわからない外国人従業員でも母国語で教育が受けられるので、ヒヤリハット対策の重要性をしっかり理解した上で作業を進められるでしょう。
tebikiの自動翻訳機能と動画による説明を活用することで、紙ベースのマニュアルや作業手順書では伝えきれなかった細かいニュアンスや作業手順が外国人労働者にも正しく伝達が可能です。
これにより、作業手順の遵守や標準化が促進され、ヒヤリハットや労働災害を未然に防ぐ体制が整備されるでしょう。
まだある!tebikiに搭載されている機能一覧
tebikiには、動画マニュアルの教育を効率化する機能がたくさん搭載されています。その中の一部をご紹介します。
テスト機能 | テストをオリジナルで作成。単一選択式/複数選択式/記述式と回答形式が選べます。作成時に正解となる回答を入力できるため、自動採点も可能です。 |
レポート機能 | ユーザーごとのマニュアル視聴状況などが可視化できる機能。アクセスされているマニュアルのランキングもわかるため、従業員がどの項目を理解していないのかも確認可能! |
タスク機能 | 「〇日までに画面操作マニュアルを閲覧してください」というようなマニュアルの閲覧指示を、指定のユーザーに送ります。 |
スキル管理機能 | 従業員のスキル取得状況を可視化して、正確に把握できる機能。作ったマニュアルと評価を連携でき、効果的な教育を行うことも可能です。 |
tebiki現場教育を活用することで、ヒヤリハット共有/安全教育を目的とした動画マニュアルの作成だけでなく、外国人従業員に対する教育効率化、教育内容の理解度可視化など、安全意識の定着度合いを確認することが可能です。
各機能の具体的な解説、プランなどのより詳細なツール概要は、以下の画像をクリックして参考資料をご覧ください。実際に、tebikiを活用している事例も知りたい方は次章をご覧ください。
動画マニュアルをヒヤリハット対策に活用している事例
ここからは、実際にヒヤリハット対策をはじめとする安全意識向上のために、動画マニュアルを活用している企業事例を3社ご紹介します。
今回ご紹介する内容は、いずれもかんたん動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」を活用しています。
株式会社ロジパルエクスプレス
物流サービスを提供している株式会社ロジパルエクスプレスは、正確な情報が伝わりにくい紙マニュアルによって、安全や品質に影響を与えてしまっていることを問題視していました。実際に、台車から荷物が落ちるといったヒヤリハットが起きてしまっていたそうです。
そこで、さまざまな動画マニュアル作成ツールを検討したうえで、圧倒的に操作性がよかったtebikiを導入。
導入後、動画を見ておいてもらうだけでも安全品質意識を担保できていると実感いただきました。さらに、感じていただけた効果としては、品質の向上。実際にロジパルエクスプレスのお客様からも「品質が上がっている」と評価をいただいたそうです。
また、紙マニュアルと比べて、作成工数と承認までの期間が大幅に削減できたという効果も実感いただいています。株式会社ロジパルエクスプレスの導入事例をより詳細に知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
インタビュー記事:動画で全拠点の安全品質意識の向上と業務ノウハウの可視化を達成
御幸毛織株式会社
御幸毛織株式会社は、1921年設立の繊維メーカーです。長年にわたる経験と技術の蓄積を基に、高級スーツ生地を中心とした製品を提供しており、業界内での信頼と評判を確立しています。
同社では、製造工程における専門的な知識や技能の継承が難しく、新入社員や若手社員が熟練の技術を効率的に習得することが困難という課題を抱えていました。また従業員教育を一部の社員に依存しており、教育の質がばらつくことで、作業ミスや漏れなどのヒヤリハットが発生することも課題視していました。
そこで御幸毛織株式会社は、課題解決のために動画マニュアル「tebiki」を導入しました。
tebikiを活用することで、ベテラン社員の熟練した技術や知識を動画で記録し、新入社員や若手社員に効果的に伝えることが可能に。特に、現場の事故によるトラブルや被害を視覚的に理解できる、“べからず動画”を作成し、潜在的に潜む危険性を動画で再現し訴えることでヒヤリハットの削減や現場の安全教育を促進されています。
結果として、属人的な教育方法から脱却し、標準化された教育内容を全従業員に提供できるようになりました。御幸毛織株式会社の導入事例をより詳細に知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
インタビュー記事:明治時代創業の繊維会社が挑む技術伝承!ITテクノロジーを駆使して伝統芸を若手へ伝達
大同工業株式会社
大同工業株式会社は、オートバイや自動車、産業機械、福祉機器など幅広い事業を展開するグローバル企業です。
現場では新人教育をOJTで行っていたものの、技術や手順が我流化していました。結果として、教え方のバラつきによるヒヤリハットが発生しており、早急な対策が求められる状況でした。特に、試験手順の小さな違いが原因で、ヒヤリハットや評価結果のエラーが発生する問題を課題視していたとのこと。
そこで、動画マニュアルtebikiを導入し、部署内全員で試験手順を再標準化することで、ヒヤリハットや評価エラーの削減を実現しました。tebikiは視覚的に手順を確認できるため、言葉だけでは伝わりにくい「コツ」や「ポイント」も効果的に伝えることが可能です。
結果として、業務の標準化が進み、教育工数も大幅に削減されました。
大同工業株式会社の安田氏は、tebikiの導入によって、部署内での試験中のヒヤリハットや評価エラーが削減できたと実感しているとのことです。また、tebikiの動画マニュアルは、海外の拠点での現地スタッフの教育にも活用することが考えられ、グローバルな展開にも対応できると紹介されています。
大同工業株式会社の導入事例をより詳細に知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
インタビュー記事:製造業の技術部門の業務を動画で標準化。教育工数を8割削減し、業務の効率化・最適化も実現。
今回ご紹介した内容以外にも、『より多くの動画マニュアル活用事例を知りたい!』という方には、さまざまな現場の動画マニュアルをtebiki現場教育によって整備している事例集をご用意しています。以下の画像をクリックするとご覧いただけますので、ぜひご活用ください。
ヒヤリハット報告が少ない・定着しない3つの理由
ヒヤリハットの報告が少ない・定着しない理由として、以下の3つを紹介します。
「報告するまでもない」と判断して報告しない
ヒヤリハットが発生したとしても、作業者は「報告するまでもない」と判断して報告しないことがあります。その理由として、「ヒヤリハットを起こすのは自分だけだ」と思い込んでしまうからです。
しかし、一度発生したヒヤリハットについて、他の作業者も同じ経験をしてしまうかもしれないため、「私がここで危険を断ち切る」という強い思いで報告するようにしましょう。
報告することで罰やネガティブな反応に不安を抱いている
ヒヤリハット報告をすることで、周囲の負担が増えないかとネガティブに考える方は少なくないでしょう。しかし、ヒヤリハット報告は他の作業者が事故に遭う機会を解消しているため、メリットしかない取り組みなのです。
ヒヤリハット報告が根づいていない職場であれば、周囲を巻き込みヒヤリハット報告を積極的に行っていきましょう。
報告書の作成が面倒で後回しになっている
現場作業が忙しく、報告書の作成が後回しになっている職場は多いでしょう。重大な事故に至らず、ヒヤリハットで済んだのであれば、報告を放置せず優先的に取り組むべきです。
現場作業が忙しく報告書を作成する時間がないのであれば、同僚や上司に時間を作ってもらうよう相談し、報告書を完成させましょう。
ヒヤリハットの報告を増やすには?
ヒヤリハットの報告を定着させるためのポイントは3つあります。ヒヤリハットの報告が定着しない場合、これらのポイントのいずれかが守られていない場合が多いです。
「報告した場合のメリット」を仕組みとして取り入れる
1つ目のポイントとして、「報告した場合のメリット」を仕組みとして取り入れることが挙げられます。具体的には「ヒヤリハットを報告した社員には褒賞を用意する」、「表彰を行う」、「評価にプラスを付けると明言する」などが考えられます。
「ヒヤリハット報告書を作れるゆとり」を設ける
2つ目のポイントとしては「ヒヤリハット報告書を作れるゆとり」を設けることが挙げられます。ヒヤリハット報告書の作成には、時間や手間がかかります。そのため、普段から業務に追われている従業員に「ヒヤリハットを報告しろ」とだけ投げかけても効果は薄いです。
ヒヤリハット報告書には時間などのリソースがかかることを管理職が認識し、活動に時間を割くことができるようなゆとりを生み出してあげる必要があります。
犯人探しをしたり、対策を行う人を無理に決めつけない
3つ目のポイントとしては「犯人探しをしたり、対策を行う人を無理に決めつけない」ことです。
ヒヤリハット報告によって危険が見つかった際に、「こうなっているのは〜さんのせいである」の様に犯人探しをしてその人を責めることは意味がありません。雰囲気が悪くなり仕事のパフォーマンスが低下するだけでなく、最悪の場合はパワハラや離職のきっかけとも捉えられかねません。
また、「対策は〜さんが行うこと」の様に無理やり押し付けることは得策ではないと心得ましょう。無理やり押し付けられた本人は、進捗を報告するために「形だけ」の対策になることが多いです。1人に負担を押し付けず全員で対応していく必要があります。
「報告をすると対応を押し付けられるので報告しないでおこう」という思考になってしまわない様、避けるのが賢明です。
ヒヤリハット報告を効率化するワークフローシステム
現場からのヒヤリハット報告を絶やさないようにするには、「ワークフローシステムの導入」も一つの手です。
ワークフローシステムとは、業務プロセスを自動化し、効率的に管理・運営するためのシステムです。通常、組織内で行われる一連の作業や手続き(ワークフロー)を定義し、特定のルールや順序に従って、タスクや情報を適切な担当者に配信・管理することを支援します。これにより、業務の進捗状況が可視化され、効率的なタスク管理が可能になります。
ワークフローシステムをヒヤリハット報告に導入することで、報告プロセスの効率化と情報共有の強化を通じて、ヒヤリハットの迅速な報告と対策をサポートできるでしょう。
まず、報告が自動化されるため、従業員はヒヤリハットが発生した時点ですぐに報告でき、適切な担当者に自動的に情報が届きます。これにより、報告が遅れることがなくなり、迅速に対応できます。
さらに、誰がどの段階で対応しているかが一目で分かるため、報告や対応が滞ることがなくなります。承認プロセスも自動化されるので、対策が早く進みます。また、すべての報告がシステムに記録されるため、過去の事例を簡単に見返して分析でき、再発防止に役立てることができます。
このような仕組みについて、動画マニュアルtebikiでは「タスクの閲覧指示」機能を使ってヒヤリハット報告を効率化することができます。
具体的には、作成したマニュアルの閲覧指示を特定の従業員や組織ごとに行えるほか、閲覧後に従業員が「できるボタン」をクリックすることで、視聴状況を可視化できます。
さらに、閲覧した内容に基づいて「テスト機能」でテストを作成し受講指示を行うことで、知識が本当に定着したかどうかも確認ができます。
動画マニュアルtebikiの機能詳細をさらに詳しく知りたい方は、以下のハンドブックもご覧ください。
ヒヤリハットに関するQ&A
ヒヤリハットの身近な事例は?
ヒヤリハットの身近な事例は、以下の4点があります。
- ペットボトルのキャップを締めておらず、衝撃で机から転落しそうになった
- 流し台でお湯を捨てる際、水滴がはねて火傷しそうになった
- 蛍光灯の取り換え中に感電しそうになった
- 床に物があることで足に引っかかり転びそうになった
上記のように、日常生活でもヒヤリハットは存在しているため、対策していくことで重大な事故に繋がらないでしょう。
ヒヤリハットを書く基準は?
ヒヤリハットを書く基準は「事故」なのか「ヒヤリハット事案」なのかの最大の判断基準は、それが「起こってしまった」か「未然に防ぐことができた」かにあります。
具体的には、もし作業者が転倒してしまったのであれば、怪我等の有無や軽重に拘わらず、それは転倒という事故が「起こってしまった」ため、「事故」となります。
ヒヤリハットの規模が大きい・小さいに関わらず、危険を除去しておくことが重要です。
まとめ
本記事では、ヒヤリハットの意味や業界別のケースといった基礎情報から、ヒヤリハット報告書の重要性と書き方、対策方法をご紹介しました。
適切に報告を行う環境を整えることで、最適なヒヤリハット対策を講じることができます。代表的な対策例や、動画を活用した実際の企業事例をご紹介した通り、対策の手法は多数あります。
現場にマッチした対策を行い、事故のない労働環境を作り上げていきましょう。