現場改善ラボ 記事一覧 お役立ち情報 QCDSとは?実例から学ぶQCDS改善の手法

製造業ではQCDという言葉はとても重要な意味を持ちます。近年では、そのQCDにSを追加した「QCDS」も重要視されるようになりました。

この記事では、QCDSとはそもそも何かについて解説するほか、QC7つ道具や4Mとの違い、QCDSの改善手法などを紹介します。QCDSを改善させたい方はぜひ参考にしてください。

その中でも特に「QCD」の部分は、原材料やエネルギー価格の高騰、原料の在庫確保難など、モノづくりの現場で受けている社会課題によって、最終的に製造品の納期にも打撃を受けています。このような状況下でも利益を生み出すためにQCDの最適化が重要です。

QCDSとは?

QCDSとは、品質(Quality)・コスト(Cost)・納期(Delivery)・サービス(Servise)を意味するものです。

製造業はモノを作り販売することで利益を生み出します。何も考えずただモノを作っていただけでは、利益を確保することは難しく、顧客にも満足してもらえない可能性があります。そのため、生産活動や製品を評価する指標が必要であり、そこで登場するのがQCDSです。

品質(Quality)は、顧客が求める製品の基準のことです。企業は顧客が求める基準をつねにクリアすることを求められます。開発や設計段階で要求を満たした製品の仕様を決定し、生産現場では良品と不良品の基準を明確にして不良品を流さないようにします。

コスト(Cost)は、製品の原価のことです。具体的には仕入れにかかる原材料費や人件費、資材費、光熱費、外注費などが原価に相当します。売上から原価を引いたものが利益に当たり、企業としては利益を最大化するために原価をできるだけ抑えたいところです。

納期(Delivery)は、顧客が求める納品期日のことです。基本的に納期に遅れることは許されません。顧客が指定する期日までに納品できなければ、失注につながる恐れもあります。したがって、納期を守るように緻密な生産計画が求められます。

サービス(Servise)は、顧客へのサービスやサポートのことです。近年の製造業ではサービス化が進んでおり、製品価値よりも顧客の体験価値をどれだけ向上できるかがカギになっています。そのため、製品を販売したあとのアフターサービスやソリューションを提供することが重要です。

以上をまとめたQCDSを適切に評価することが生産活動の最適化になり、ひいては顧客満足度の向上につながります。

QCDSのそれぞれの関係性

QCDSは一つ一つの要素だけを追い求めず、全体のバランスを考えなければなりません。なぜなら、品質・コスト・納期・サービスは互いに影響を与えており、トレードオフの関係にあるからです。

たとえば、品質を高めようと高価な材料を選定すれば、その分だけコストは跳ね上がります。反対に、コストを抑えようと安価な材料を選定すれば、製品の耐久性などは下がり品質に影響を及ぼしかねません。

また、短納期に応えようと在庫を多く持ってしまうと利益を圧迫し、反対に在庫を極端に少なくすると今度は急な納期に応えられなくなります。まさに「あちらを立てればこちらが立たぬ」という状態です。

QCDSは互いのバランスを調整しながら評価することが大切です。それぞれの目標値やKPIなどを定めて管理するとよいでしょう。

QCDからの派生語

QCDSはQCDの派生語です。QCDにサービスが追加され、QCDSとなりました。特に製造業や建設業ではサービスではなく、安全(Safety)を表すこともあります。

QCDの派生語はQCDSだけではありません。柔軟性(Flexibility)を加えたQCDFや、やる気(Moral)と安全(Safety)を加えたQCDSM、環境(Environment)と安全(Safety)を加えたQCDSEなどがあります。

QC7つ道具や4Mとの違い

製造業では、QCDSのほかに「QC7つ道具」や「4M」という言葉もよく聞かれます。それでは両者の違いは何でしょうか。

簡単にいえば、QCDSは企業が目指すべき目的であり、「QC7つ道具」や「4M」はその目的を果たすためのフレームワークです。QCDSを改善するために、具体的にどうすればよいかを示したものが「QC7つ道具」や「4M」となります。

「QC7つ道具」は、以下の7つの分析手法を指し、主に生産ラインにおける品質を管理するために使われる手法です。

  • パレート図
  • 特性要因図
  • グラフ
  • ヒストグラム
  • 散布図
  • 管理図
  • チェックシート

「4M」も品質管理に使われるもので、人(Man)・機械(Machine)・原材料(Material)・手法(Method)で構成されます。手法とは現場で使われる作業手順などを指すものです。4Mが変わるタイミングは品質に影響を及ぼすため、生産現場ではこの4つを変化点として特に注意を払うことが必要です。

このように、QCDSは「QC7つ道具」や「4M」という視点から改善されます。この2つの視点については、以下の記事でそれぞれ解説しています。

Q/C/D/Sの改善手法

「QC7つ道具」や「4M」もQCDSを改善するための手段として使われますが、全体に対して効果のある改善手法としては何があるでしょうか。

さまざまな手法が挙げられますが、代表的なものとしては生産管理システムの導入が挙げられます。生産管理システムは企業の経営資源であるヒト・カネ・モノを管理し、モノと情報の流れを一致させるものです。生産管理をエクセルだけに頼って経営資源や情報がうまく管理できていないと、QCDSの向上は果たせません。

しかし、生産管理システムを導入すればどうでしょうか。適切な生産計画を立てることができ、工程の進捗状況も正確に把握していれば、遅滞なく生産を進められます。これは品質の向上や納期を守ることにつながるでしょう。

生産管理システムでは原価管理を行う機能もあります。一つ一つの製品について標準となる原価を設定して、実際に製造した結果である実績原価と標準原価を比較して管理すればコストの上昇を抑えられます。

さらに在庫管理もシステム上で行えるため、顧客の短納期にも応えられるほか、アフターパーツの在庫量を適正化することで、サービス面での向上も期待できるでしょう。

Qの改善手法

品質の改善手法としては、先ほど取り上げたQC7つ道具が有名です。生産工程で異常が発生していないかを確認するには、ヒストグラムや管理図の作成が有効です。これにより異常が認められれば、特性要因図を使って異常が発生している要因は何かを紐解いていきます。

また、散布図を使って異常の原因をデータとして客観的に見つけることもできます。すぐに原因を見つけられない場合もありますが、工程に異常がないかをつねにチェックする体制が品質向上に欠かせません。

そのために毎日の不良品の数を示した管理図を作り、極端に不良が発生していないかを監視すれば、いち早くトラブルを察知できます。

Cの改善手法

製品原価の大部分は、設計や開発の段階で決まるとされています。生産現場でコスト管理をすることも大切ですが、それよりも上流の設計の段階でコスト削減をすることが先決です。

設計でのコスト削減としては、部品や材料の見直しがあります。たとえば、他の製品でも使っている共通部品を増やすことで、管理する部品点数が少なくなり、在庫にかかるコストが削減できます。さらに、一つの部品を大量に発注することで、部品調達にかかる費用も低減できるでしょう。

生産現場でできるコスト削減と言えば、代表的なものは不良品を少なくすることです。不良品の削減は先に取り上げた品質改善にもつながるため、QC7つ道具や4Mといった視点から改善を図ります。

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Dの改善手法

納期の改善にもさまざまな手法があります。顧客の納期に応えるもっとも簡単な手法としては、在庫を持っておくことです。在庫さえ持っておけば、顧客からいつ注文が来ても対応できます。しかし、いつ来るか分からない注文のために在庫を大量に持っておくことは、コストの増大につながります。

そのため、在庫を適正に保つことも大切です。手法としては、在庫を繰り返し生産する見込み生産品と受注生産品を分けることです。注文が来てから作り始める受注生産品は、在庫を極力持たないようにします。一方、頻繫に注文が来るような見込み生産品は、ある程度在庫を抱えていてもいずれ無くなる可能性が大きいため、あらかじめ在庫として用意しておくのです。

納期短縮には、リードタイム短縮という手法もあります。製造リードタイムとは、生産に着手してから出荷までにかかる時間です。この製品リードタイムを短縮することは納期短縮のカギです。製造リードタイムは実際の生産にかかる時間よりも、次工程に移るまでの待ち時間や移動にかかる時間が多くを占めます。

製造リードタイムの短縮には、工程間の待ち時間をできるだけ少なくしたり、工程間の場所を近づけて移動を減らしたりなどの方法があります。

Sの改善手法

サービス改善には人材育成が効果的です。機械メーカーや建機メーカーが商品を納品後、客先でトラブルが発生した場合に、人材育成がしっかりとされていれば迅速な対応ができます。人材育成にはマニュアルを作成することが欠かせませんが、近年では動画を活用するほか、ARなどで遠隔支援を行うこともあります。

IoTを活用した改善も注目されている手法の一つです。機械に稼働状況を把握できるようなセンサーを取り付け、インターネット経由で負荷や劣化具合といったデータを収集します。故障の予兆を察知することで、故障が起きる前に部品交換ができます。設備故障によるダウンタイムを削減することで、顧客満足につながるわけです。


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Q/C/D/Sの改善の実例

QCDSの改善の実例としては、QC7つ道具を活用したものがあります。

不良品を完全にゼロにすることはなかなかできず、どの工程でも何かしらの不良が発生します。不良率削減に取り組む場合、現状がよく理解できていないと何から手を付ければよいか分かりません。ある自動車部品を製造する工場では、塗装工程で多くの不良が発生していました。

しかし、不良が発生する原因が色ムラやホコリ、キズなど多岐にわたるため、不良品を削減しようにもまずどの不良要因から対処すればよいか分からなかったのです。

そこで登場するのがパレート図です。パレート図で不良品が発生する原因が多いものから順に並べてグラフ化します。実際に塗装工程においてパレート図を活用したところ、不良要因の中でも色ムラとホコリが不良品全体の70%以上を占めていることが分かりました。シンプルに捉えるとこの2つの不良要因に対処するだけで、不良品は70%削減できるわけです。

現場でホコリの原因を追求すると、塗装前のホコリ除去になるエアー吹きの時間が短いことに気づきます。対応策として、エアー吹きの時間を長めに設定したところ、ホコリが原因の不良が大幅に減り、全体としての不良品も削減できました。

対処すべき課題が見つかったことで、塗装工程の不良品が減り、品質向上やコスト削減につながった例です。

まとめ

本記事ではQCDSの改善手法を中心に解説しました。QCDSは各要素を別々に突き詰めるのではなく、互いに影響を与えていることを意識して、全体のバランスを見ながら改善することが大切です。

改善手法としては、ここで取り上げたQC7つ道具や4Mといった着眼点から見直すと効果を挙げられるでしょう。本記事が皆さまのQCDSの向上につながれば幸いです。

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