かんたん動画マニュアル・スキルマップ作成ツール「tebiki」を展開する、現場改善ラボ編集部です。
スキルマップとは、従業員のスキルを可視化し、教育計画や人材配置を最適化するためのツールです。
本記事ではスキルマップの作成方法、現場における運用のコツを解説します。すぐに使えるテンプレートや、作成/教育に役立つツールも紹介しますので、是非ご覧ください。
目次
スキルマップとは?目的やメリット
ではまずスキルマップとは何かを詳しく見ていきましょう。
スキルマップとは
スキルマップとは、従業員のスキルや能力を数値や記号で定量化し可視化したものです。スキルマップの活用によって、「誰に」「何が」「どれくらい」できるのかが、一覧形式でパッと確認できるのです。
以下は、「現場教育システムtebiki」で作成したスキルマップの作成例です。
国内ではスキルマップの他に力量表や力量管理表と呼ばれ、海外ではスキルマトリックス(Skills Matrix)と呼ばれています。スキルとは技能や技術力がイメージされますが、その他に業務の管理能力や業務を遂行するために必要な能力などが含まれます。
スキルマップを作成する目的
スキルマップを作成する目的は、組織全体のパフォーマンスを向上させるためです。
スキルマップで「誰に」「何が」「どのくらい」できるのかがはっきりすれば、それを基に最適な人材配置が可能になります。これにより、組織が持っているすべての人材の力を最大限引き出すことが可能になるのです。
スキルマップを作成するメリット
上述で解説した目的をさらに具体的なメリットに分解して見ていきましょう。以下の5つのメリットがあります。
従業員への教育品質が向上する
スキルマップを導入することで、従業員ひとりひとりのスキルが明確に可視化されます。
スキルの可視化によって教育計画を立てやすくなり、個々の成長段階に応じた適切な指導が可能となります。たとえば、ある従業員の現在のスキルレベルがわかれば、「次はこのスキルを習得するためにこの研修を受けてみないか?」と具体的なステップを示せるでしょう。
従業員にとっても、現在の自分の立ち位置や不足しているスキルが明確になっているため、モチベーションが向上しスキルアップに対する取り組みが積極的になるというメリットがあります。従来は目標が明確でないために成長の方向性が見えにくく、育成の効果が薄かったということも考えられます、スキルマップの導入により問題が解消されるでしょう。
効率的な多能工化が実現する
多能工化とは、従業員が複数の技能を身につけ、様々な作業やタスクを柔軟にこなすことができるようにする人材育成戦略です。
スキルマップを活用すれば組織全体のスキル分布が可視化されるので、多能工化を進める上で「どのスキルを優先的に補充したら良いか」がパッとわかります。
逆に、スキル分布が見えないまま多能工化を進めてしまうと、補充する必要性の少ないスキルを育成してしまう可能性が高まります。
多能工化を促進するためのスキルマップ活用方法は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:多能工化を推進するスキルマップの活用法とは?作成・運用におけるポイントや事例について紹介!
保有スキルが可視化され、公正な人事評価/モチベーション向上が実現する
スキルマップを活用することで、従業員のスキルや能力が客観的に評価されるようになります。
従来の評価方法では年齢や勤続年数、評価者の主観に基づく評価が多く、評価基準が不透明な場合もありました。しかし、スキルマップを導入することで評価の根拠が明確になり、公正な人事評価が可能となります。
たとえば、スキルマップで過去と現在のスキルを比較することで、具体的な成長を可視化できるため、管理職からの評価も容易になります。従業員にとっても、納得感のある評価を受けられるため、評価に対する信頼やモチベーションが高まるでしょう。
業務品質を標準化できる
スキルマップを利用してスキルを明確に定義することで、各スキルの水準が明確になります。
たとえば「このスキルレベル=この作業ができる状態」といった基準を設定することで、業務の品質を一定の水準に保つことが可能です。従来は個々の従業員のスキルにムラがあることで品質にばらつきが生じることがありましたが、スキルマップを導入することで全体の業務品質が標準化され、効率的な運用が可能になります。
関連記事:業務品質を向上させる7つの視点とは?具体的な手順や成功事例も紹介
人材配置や採用計画に活用できる
スキルマップを活用することで、適切な人材配置が可能になります。適切な配置により、各従業員の能力やポテンシャルを最大限に発揮させることが可能です。
また、スキルマップによって、組織が今必要としているスキルが明白になるので、採用計画が練りやすくなります。たとえば「このラインには5人の作業者が必要だが、現在は3人しかいないので、あと2人採用しよう」といった具合です。
スキルマップの活用が特に効果的な業界/職種
前章でスキルマップのメリットをご紹介しましたが、スキルマップの効果がとくに出やすい業界/業種が存在します。
それが、以下の4つです。
- 製造業
- 建設業
- 営業
- エンジニア
製造業
製造業では、各工程において求められる技能や知識が明確です。スキルマップを活用することで、作業者の技術レベルを可視化し、必要なスキルを明示することができます。
これにより、教育・訓練の計画が立てやすくなり、効率的な人材育成が可能になります。また、業務の標準化にも寄与し、品質管理や生産性向上に繋がります。
また、近年製造業において人手不足が深刻化しており、限られたリソースの中でスキルを効果的に活用することが求められています。スキルマップは、こうした状況において、新しい人材を迅速に戦力化し、業務を円滑に進めるための重要なツールとなります。
建設業
建設業は、多岐にわたる専門技能を必要とするため、スキルマップの活用が非常に重要です。職人や技術者の技能を一覧化することで、プロジェクトに適した人材の配置が容易になります。
さらに、スキルマップに基づく教育プログラムを実施することで、新しい技術や規制に対応できる人材の育成が促進され、業界全体のスキルアップにも貢献します。
営業
営業は顧客対応、商品知識、交渉力など、多くのスキルが求められる職種であるため、営業でもスキルマップは非常に有用です。
スキルマップを用いることで、営業チームの個々の強みや弱みを把握し、パーソナライズされた訓練を実施できます。これにより、営業成績の向上やチームのパフォーマンス向上に寄与します。
エンジニア
技術の進化が速く、常に新しいスキルが求められるエンジニアの世界でも、スキルマップは効果を発揮しやすいです。スキルマップを活用すれば、専門分野や技術の習得状況を管理しやすくなります。
また、技術者のスキルの適切な評価やキャリアパスの設計が可能になり、組織内での人材の最適配置が実現します。
【無料DL可能】スキルマップのExcelテンプレート
Excelで開けるスキルマップのテンプレートを製造業とそれ以外の業界で、それぞれご用意しました。
スキルマップの作り方をこの後の章で解説するので、ぜひお手元にテンプレートをご用意しながら読み進めてみてください。
製造業向けテンプレート(項目例付き)
こちらは、製造業の方に向けてご用意したスキルマップのテンプレートです。また、本テンプレートは、スキルマップと教育訓練計画表がセットになっているため、カリキュラムの作成にも役立ちます。
以下のフォームに必要項目を入力すれば、無料でダウンロードできます。
製造業以外の業界/職種向けテンプレート(厚生労働省発行)
製造業以外の業界、営業や人事、労務、マーケティングなどの職種別に使えるテンプレートは、厚生労働省が発行しているページをご紹介します。
▼製造業以外の業界/職種の方はこちらをクリック
キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード|厚生労働省
【ステップ別に解説!】スキルマップの作り方
ここでは、スキルマップの作成方法を段階別に解説します。
- 教育計画のゴールを設定する
- スキルマップの作成者/評価者を決める
- 具体的なスキルを洗い出し、スキルの各項目を定める
- スキルの評価基準を決める
- スキルマップを実際に作成する
- スキルマップを現場で活用し、修正する
教育計画のゴールを設定する
スキルマップの作成においてまず重要なのは、教育計画のゴールを明確に設定することです。
スキルマップはあくまで従業員のスキル向上や教育をサポートするツールであり、作成自体がゴールではありません。目的を曖昧にしたままスキルマップを作成すると、教育計画が中途半端なものになり、実際の効果を得ることが難しくなります。
そのため、スキルマップを人事評価の一環として使用する場合、業務遂行能力を正確に評価できる項目を設定する必要があります。同様に、従業員のキャリアアップや育成を目的とする場合、現在の能力だけでなく、ポテンシャルや適性も考慮する必要があります。
スキルマップの作成者/評価者を決める
スキルマップの効果を最大化するには、誰がその作成と評価を担当するのかを明確に決めることが重要です。
誰がスキルマップの作成や評価を担当するかを明確にすることで、責任の所在がはっきりし、スキルマップの正確性や活用度が高まります。他にも、担当者が一貫してスキルマップを評価することで、評価基準のばらつきを防ぎ、公平かつ客観的な評価が可能というメリットもあります。
作成者を選ぶにあたり、現場の業務内容や従業員のスキルをよく理解している経験豊富な管理職がおすすめです。また評価者も同様に、現場の実情を把握している人物が望ましいでしょう。
具体的には現場のリーダーやチームリーダーがスキルマップの初期評価を行い、その後、人事部門や経営層が最終的な評価を行う体制が理想的です。複数の視点を取り入れることで、より正確で公平な評価が可能となります。また関連する部署間での情報共有を徹底することで、スキルマップの透明性と信頼性を高められます。
具体的なスキルを洗い出し、スキルの各項目を定める
教育計画のゴールや各担当者を設定したのちは、具体的なスキルを洗い出しましょう。スキルの洗い出しでは業務の内容と量を調査し、それに直接または間接的にかかわるスキルを整理します。
厚生労働省の「職業能力評価基準の構成」などを参考に、具体的な項目を洗い出しましょう。
業務内容からスキルを洗い出し、整理する
業務の内容と量を詳細に調査し、それに直接または間接的にかかわるスキルを洗い出すことはスキルマップ作成において重要です。この段階では厚生労働省の「職業能力評価基準の構成」を参考にしながら、能力ユニット、能力細目、職務遂行のための基準、必要な知識を体系的に整理します。
▼職業能力評価基準の構成一覧▼
【引用元:厚生労働省「職業能力評価基準の構成」】
まず、「能力ユニット」を洗い出しましょう。
能力ユニットは、業務を効果的かつ効率的に遂行するために必要な職業能力を活動単位でまとめたものです。能力ユニットには「共通能力ユニット」と「選択能力ユニット」の2つがあります。
<共通能力ユニット>
すべての職務に共通する基本的なスキルを指します。例として「コミュニケーション能力」や「問題解決能力」などが挙げられます。どの部署でも求められる基礎的な能力です。
<選択能力ユニット>
特定の職務や業務に特化したスキルを指します。たとえば製造業の「機械操作技術」や「品質管理能力」などです。業務の専門性に応じて設定されます。
スキルの洗い出し方法として、主に以下の方法が考えられます。
<担当部門や責任者へのヒアリング>
実際の仕事の流れを把握するため、現場での業務内容を詳細に聞き取ります。主な業務だけでなく、関連する業務も含まれます。
<業務フローの確認>
業務フローやマニュアルを確認し、日々の作業手順を洗い出します。必要なスキルを具体的に特定します。
スキルの整理:洗い出したスキルを「能力ユニット」と「能力細目」に分類します。それぞれに「職務遂行のための基準」と「必要な知識」を設定し、以下の表のように整理します。
▼表形式によるスキルの整理例▼
能力ユニット | 能力細目 | 職務遂行のための基準 | 必要な知識 |
---|---|---|---|
コミュニケーション能力 | 意見の交換 | チーム内で意見交換を積極的に行う | 効果的な伝え方 |
機械操作技術 | 操作手順の遵守 | 機械操作手順を正確に守る | 機械の基本構造と操作方法 |
問題解決能力 | トラブルシューティング | 迅速かつ的確に問題を解決する | 問題発生時の対処法 |
共通能力ユニットと選択能力ユニットを明確に分けることで、基礎的な能力と専門的な能力の両方をバランス良く育成することが可能です。
スキルの評価基準を決める
スキルの洗い出しが完了した後は、スキルの評価基準を設定します。
評価基準を設定する際には、スキルのレベル感を明確にし、どの役職に相当するかを決める必要があります。厚生労働省の「レベル区分の目安」に沿って、各スキルの難易度や重要度を分類しましょう。
評価基準の目安として、スキルのレベルを4段階に分けて考えることがおすすめです。
レベル1は「担当者として定例的業務を確実に遂行する能力」、レベル2は「チームの中心メンバーとして業務を遂行する能力」、レベル3は「中小規模組織の責任者として業務を遂行する能力」、レベル4は「大規模組織の責任者として企業利益を先導する能力」といった内容が考えられます。具体的な基準を設けることで、公正かつ客観的な評価が可能となります。
▼レベル区分の目安例▼
【引用元:厚生労働省「職業能力評価基準の構成」】
スキルマップを実際に作成する
洗い出したスキルをいよいよ実際の表に落とし込みましょう。
スキルマップの作成には、無料のツールであればExcelが適しています。Excelを使用することでスキル項目の追加や修正が紙で作成したスキルマップよりも容易になり、データの管理や分析もスムーズに行えます。
また、スキルマップと並行して教育訓練計画表を用意することで、スキルの習得状況と教育訓練の進捗を同時に管理可能です。
たとえば、生産管理部門のスキルマップでは、各従業員のスキルレベルを4段階評価で表を作成し、必要な教育訓練を計画表に落とし込むことで、体系的な教育が可能となります。このように、Excelを活用したスキルマップの作成は、管理と運用の効率化につながるでしょう。
現場改善ラボでは、「今すぐ使えるテンプレートが欲しい!」という方に向け、スキルマップと教育訓練計画表がセットになったExcelテンプレートをご用意しています。前述の『【無料】スキルマップのテンプレート』でダウンロード可能ですので、是非ご活用ください。
>>スキルマップのテンプレートを無料で入手する
スキルマップを現場で活用し、修正する
完成したスキルマップは現場で実際に使用し、フィードバックをもとに修正を繰り返すことが重要です。
初期段階ではテスト運用として限られたグループや部門でスキルマップを適用し、効果を観察します。現場の従業員からの意見を集め、スキルマップの改善点を洗い出し、修正を行いましょう。
たとえば、製造ラインのスキルマップをテスト運用した際、現場から「評価基準が厳しすぎる」や「特定のスキルが過小評価されている」といったフィードバックを受けることもあるでしょう。そのような場合、フィードバックを反映して評価基準を再設定します。継続的な改善プロセスにより、スキルマップの実用性と効果を最大化することが可能です。
ここまでスキルマップを作成する流れをステップ別にご紹介してきました。
一方で、スキルマップは作って終わりではなく、「どのようにして活用するか」で教育の改善が左右されます。次章では、人材育成を改善に導くスキルマップの作成/運用のコツをご紹介しましょう。
スキルマップ作成・運用のコツ2選
スキルマップ作成・運用のコツとして、以下の2つが挙げられます。
- スモールスタートを心がける
- 運用・管理についてマニュアルを作成する
スモールスタートを心がける
スキルマップを作成する際は、スモールスタートを心がけることが重要です。初めから完璧なスキルマップを作成しようとすると、膨大な作業量に圧倒され、工数や気力に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、最初は大まかな項目から洗い出し、必要に応じて詳細を詰めていく方針をとることで、効率的かつスムーズにスキルマップの作成を進めることが可能です。
たとえば、製造ラインのオペレーターのスキルマップを作成する場合、最初は「機械操作」「品質チェック」「安全管理」といった大まかな項目から始め、それぞれの項目を具体的なスキルに細分化していきます。
さらに、実際に現場で使用する段階でもスモールスタートを心がけましょう。まずは試験運用から始め、フィードバックをもとに修正を加えながら徐々に組織全体に広めることが効果的です。
運用・管理についてマニュアルを作成する
スキルマップの運用にあたっては、明確なマニュアルの作成が欠かせません。
マニュアルがないとスキルマップの運用・管理が主観的になり、客観的な評価ができない可能性があるので注意が必要です。スキルマップの目的、使い方、評価基準をしっかりと記載したマニュアルを作成することで、評価の一貫性および正確性を保つことができ、すべての従業員を同じ基準で評価することが可能です。
たとえば、スキルマップを使用して人事評価を行う場合、評価基準が明確に定義されていることで評価者の主観が入り込む余地が減り、公平な評価が実現します。
またスキルマップは継続的に利用することでスキルの変化を確認できるため、一度利用するだけでは効果を十分に得ることはできません。そのため、作成後の運用計画も事前に決めておきましょう。たとえば、毎月末の振り返りの際に記入してもらう、半期に一度全メンバーに記入を依頼するなど、定期的な見直しと更新を行うことが重要です。
スキルマップの運用マニュアルを作成するうえで、おすすめなツールについては後述する『スキルマップと連動した動画マニュアルなら「tebiki」』でもご紹介します。
意味がない?スキルマップの効果を最大限引き出すには
スキルマップが「意味ない」と言われる理由
「スキルマップは作っても意味がない」という意見もありますが、それはスキルマップを作成する目的が間違っているからです。
確かにスキルマップを活用すれば、従業員のスキルは可視化されますが、あくまでそれは手段であり、最終的な目的は冒頭でも解説したとおり、「組織全体のパフォーマンス向上」でした。
「スキルマップは意味がない」と言っている方は、従業員のスキルの可視化を目的に設定してしまっているのです。
正しい目的を設定すれば「スキルマップを作成するだけで終わり」といったことにはならず、そこから改善を生み出していくことができ、大きな効果を得られるでしょう。
効果を最大限発揮するためには、「教育体制の整備」が必要
スキルマップによって組織のスキル分布が可視化されたら、それに基づいて教育計画を実行していく必要があります。
そこで、大切なのが「教育体制の整備」です。具体的には、以下の2点が挙げられます。
- 教育コンテンツを整備する
- カリキュラムを整備する
教育コンテンツを整備する
教育体制を改善するには、教育コンテンツの整備が必要です。
実際に教える内容をマニュアル化することで、OJTに頼らず、効率的に教育を進められます。OJTには現場の忙しさや教育者のスキルに依存するというデメリットがありますが、マニュアルを整備することで、誰でも同じ基準で教育を行うことが可能です。
たとえば、新人研修の内容として「安全管理の基本」「品質チェックの手順」「機械操作のポイント」といった具体的なマニュアルを作成することで、新人がスムーズに業務を習得できます。またマニュアル化された教育コンテンツは、必要に応じて更新が容易であり、常に最新の情報をもとに教育を行えます。
現場で活用されるマニュアルを作成するには、いくつか重要なコツが存在しています。数多くの現場教育を支援してきた講師による、マニュアル整備のコツを解説した動画を以下の画像から視聴可能ですので、本記事と併せてご覧ください。
カリキュラムを整備する
教育コンテンツの整備と同様に、教育カリキュラムの整備も重要です。
体系的な教育を進めるためには、教育訓練計画表を用意することをおすすめします。教育訓練計画表を活用することで、スキルマップと照らし合わせながら教育訓練を進められ、計画的なスキル向上が期待できます。
たとえば、製造ラインのオペレーター向けに「基礎研修」「応用研修」「定期フォロー」といった段階的なカリキュラムを設定し、それぞれの段階で達成すべきスキル項目を明確にすることで、教育の効果を最大化できます。また教育訓練計画表には、具体的な研修内容やスケジュール、評価方法を記載することで、教育の進捗をひと目で把握でき、効率的な管理が可能となります。
なお、『【無料】スキルマップのテンプレート』で先述したスキルマップテンプレートには、教育訓練計画表も含まれているため、テンプレートを活用することで一貫した教育体制を整えることが可能です。
スキルマップの効果を底上げするなら「動画マニュアル」
スキルマップをより効果的に活用するには、動画マニュアルを併用することが有効です。
動画マニュアルは、スキルを可視化し、教育訓練を効率的に行うための強力なツールです。特に製造業では、業務の具体的な手順や注意点を動画で示すことで、文字だけでは伝わりにくいニュアンスや動きを正確に伝えられます。
スキルマップ×動画マニュアルのメリット
動画マニュアルとは業務の手順やスキルを動画で記録し、教育に活用するためのツールです。
スキルマップで足りないスキルを可視化し、スキルを獲得するための教育を動画で行うことで、OJTや座学などに頼らず、一定のスキル習得が可能となります。動画教育には以下のようなメリットがあります。
まず視覚と聴覚を活用することで、文字だけのマニュアルよりも内容が理解しやすくなります。たとえば、機械操作の手順を文章や図面ではなく動画で示すことで、細かな動きやポイントを具体的に伝えられます。
また何度も繰り返し視聴できるため、一度で理解できなかった内容も繰り返し学習することで確実に身につけることが可能です。
さらに、動画マニュアルはOJTの代替手段としても有効です。OJTでは教える側のスキルや時間に依存するため、教育の質にばらつきが生じることがありますが、動画マニュアルを利用することで、誰でも同じ内容を一貫して学習できるようになります。
加えて、OJTを動画に置き換えることで教育係の負担を減らすことも可能なため、現場を圧迫せずに高水準な教育を遂行することが実現します。
動画マニュアルによる教育効果や、事例についてさらに知りたい方は以下の画像から詳細な資料をご覧ください。
スキルマップと連動した動画マニュアルなら「tebiki」
スキルマップと動画マニュアルを連動させるツールとしては、「tebiki」が特におすすめです。
「tebiki」はスキルマップと動画マニュアルをシームレスに連携させることが可能です。ここではtebikiの概要と、利用するメリットについて解説します。
tebikiとは?
「tebiki」は、現場の教育を簡単に行える動画マニュアル作成ツールです。
スマートフォンによる撮影から動画マニュアルを簡単に作成できるほか、音声認識による自動字幕生成機能や、100カ国以上の言語に対応した自動翻訳機能を備えています。
たとえば、製造ラインの新しい機械操作手順をスマートフォンやタブレットで撮影し、動画に自動字幕をつけることで、操作手順を視覚的に理解できます。字幕は自動的に生成されるため、特別な編集スキルは必要ありません。また外国人従業員向けには自動翻訳機能を活用することで、言語の壁を越えて教育を行うことが可能です。
さらに、tebikiにはマニュアル視聴状況を可視化できる機能や、テストを作成し出題できる機能が搭載されています。これにより、教育訓練の効果を確認することが実現するため、「マニュアル/スキルマップを作成したのにスキルが身につかない…」という状況を回避できます。
tebikiでスキルマップを作成するメリット
tebikiは動画マニュアルだけでなく、スキルマップを作成できる機能も備えています。
tebikiを使ってスキルマップを作成することで、教育計画とカリキュラムを一元管理し、スキルの習得状況をリアルタイムで把握することが可能です。
スキルマップをExcelで管理している場合、現場教育のアクションがスキルマップに紐づかず、バラバラに運用されることが多いという課題があります。しかし、tebikiではスキルマップと動画マニュアルがシームレスに連携します。
たとえば、あるスキルが不足していると判明した場合、そのスキルに対応する動画マニュアルをすぐに視聴できるように設定することで、教育と評価が一体化します。またISO資格の取得を目的とした年1回の更新だけでなく、日常的にスキルマップを活用することで、スキルの習得状況や教育の効果を継続的に監視・改善できます。
本記事でご紹介したtebikiの詳細な資料は、以下の画像から無料でダウンロード可能です。
「スキルマップが簡単に作成できるツールを知りたい」「効果のある現場教育の方法について知りたい」とお考えの方は、是非ご参考ください。
スキルマップに関するQ&A
スキルマップに関するQ&Aとして、以下を解説します。
- スキルマップが作成できるツールはある?
- 業界ごとの項目例はどこで確認できる?
- デメリットはないの?
- ISO9001との関係は?
- スキルマップを日本で最初に活用したのはトヨタ自動車?
- トヨタはどうスキルマップを活用している?
スキルマップが作成できるツールはある?
スキルマップを作成できるツールはExcelをはじめ多数ありますが、多くは有料です。有料ツールは機能が豊富で便利ですが、使用には注意が必要です。
たとえば、操作が複雑、コストが高いなどの問題点があります。そのため、まずは無料のテンプレートをおすすめします。さらに、高性能なツールを使用したい場合には、「tebiki」のような簡単に使えるツールの活用がおすすめです。
本記事でご紹介した、tebikiの資料は無料でダウンロード可能です。是非この機会に以下の画像から詳細をご覧ください。
業界ごとの項目例はどこで確認できる?
スキルマップの項目例は業界ごとに異なります。
前述の「製造業以外の業界/職種向けテンプレート(厚生労働省発行)」のテンプレートに記載されていると思われるので、そちらをご参照ください。
デメリットはないの?
スキルマップの一番のデメリットはやはり、その作成に時間が取られてしまうことです。組織の業務を全て理解し、細分化してスキルマップに落とし込む必要があるので工数がかかります。
また、定期的な更新が必要なのもデメリットでしょう。更新するのを忘れ、スキルがすでに習得されているのに、スキルマップ上には反映されていないといった状態になると、スキルマップが機能しなくなります。
ISO9001との関係は?
製造業に従事している方なら知っている方も多い「ISO9001」ですが、スキルマップと関係があるので、簡単に触れておきましょう。
ISO9001は、品質マネジメントシステムの国際規格であり、顧客満足の向上やプロセスの効率化を目指します。
ISO9001の要求事項7.2「力量」を参照すると、ISO9001を取得するためには、「作業員が力量を身に着けるための訓練と文書化された記録が必要である」という内容が書かれてあります。
この”文書化された記録”として、スキルマップが活用できるのです。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
関連記事:【ISO9001】力量管理とは?手順やスキルマップの作成方法も解説!
スキルマップを日本で最初に活用したのはトヨタ自動車?トヨタ生産方式との関係は?
明白な根拠はありませんが、日本の製造業におけるスキルマップ活用の先駆者は、トヨタ自動車であるという説が強いです。
トヨタ生産方式(TPS)はQCD(Quality=品質、Cost=コスト、Delivery=納期)の最適化を目的に、トヨタ自動車によって発案された生産方式で、「人材の適材適所」が重要な要素です。スキルマップを用いることで、各従業員のスキルを把握し、適切な配置やトレーニングを行うことで、生産性の向上と不良品の削減を目指していたと推測されます。
また、トヨタは多能工の育成に力を入れてきました。これは、従業員が複数の役割やスキルを習得することで、柔軟な生産体制を構築するための戦略です。スキルマップを活用することで、各従業員がどのスキルを持っているか、どのスキルを習得すべきかを可視化し、多能工の育成を効率的に進めることができたと考えられます。
トヨタはどうスキルマップを活用してる?
現状、トヨタのスキルマップ活用術について公開されている文献は少ないようです。弊社が詳しく調べた中で見つけられた、数少ないトヨタのスキルマップ活用に関する文献をご紹介します。
システム技術者の人材育成における活用
トヨタの”システム技術者の人材育成”におけるスキルマップ活用術は、「日本のものづくり産業にもたらすETSSの意義と国際標準化への道を考える」という文献に記載されています。
文献によると、トヨタではスキルマップと密接に関係しているETSSを活用して、従業員のスキルを管理しているようです。
ETSSとは、ITエンジニア業界で使われる言葉で、 組込みソフトウェアの技術者・開発者不足に陥っている日本において、国際競争力を高めていくために設定された技術者や開発者の人材育成・活用に有用なスキルを測定する指標のことです。少し定義が長いので簡単に解説すると、ETSSとは「組込みソフトウェアの開発スキルを測定する指標のこと」で企業や個人が自らのスキルを把握したり研修の際に指標として活用されています。
トヨタは、ETSSで設定されている指標に対して、どのようなスキルが必要かを細かく分類します。そして、グループ単位で技術者個人のスキルを得点形式にして、スキルマップを作成したことでスキルの可視化ができ、あるグループはここのスキルが弱いというようなことが一目でわかるようになりました。
ETSSやスキルマップを導入する前のトヨタは、勘と経験とコツで教育を行っていましたが、ETSSやスキルマップを導入することによって、技術者を客観的に理解することに成功しました。トヨタ自動車の活用事例はスキルマップを導入した好事例と言えるでしょう。
農業における活用
トヨタのとある企画で、「トヨタ生産方式を農業に応用して生産性を高めよう」というのがありましたが、その際にもスキルマップが活用されたようです。
各自のできる作業、できない作業を見える化。知ったかぶりで間違った作業を次の人に教えることがなくなった。複数の作業ができるよう向上心を掻き立て人財育成。
さらに人ごとの負荷を平準化、作業の滞留リスクも減らせた。
余談になりますが、トヨタの採用ページやトヨタイムズを参照すると、トヨタではスキルマップのことを「能力マップ」と呼んでいるようです。
スキルマップを活用して現場改善に取り組もう【まとめ】
この記事では、スキルマップの作り方をステップごとに解説しました。
まず教育計画のゴールを設定し、スキルマップの作成者と評価者を決めます。その後具体的なスキルを洗い出し、各項目を定め、評価基準を設定しましょう。スキルマップを作成し、現場で活用しながら修正していきます。
次に、スキルマップ作成と運用のコツとして、スモールスタートを心がけること、運用・管理のためのマニュアルを作成すること、スキルマップを「作って終わりにしない」こと、教育体制を改善することが重要です。教育コンテンツの整備やカリキュラムの整備が求められます。
またスキルマップと動画マニュアルを連動させることで、その効果がさらに高まります。「tebiki」などのツールを利用すると、スキルマップと動画マニュアルがシームレスに連動し、教育と評価が一体化するでしょう。
スキルマップの目的についても解説しました。スキルマップは従業員のスキルを可視化し、個々の成長やチームの強化を図るためのツールです。スキルマップの導入により、人材育成の質が向上し、公正な人事評価が実現し、業務品質が標準化され、適切な人材配置や採用計画が可能となります。
スキルマップに関するQ&Aでは、スキルマップが作成できるツールや、スキルマップが特に効果的な業界について触れました。
この記事で紹介したtebikiの資料は無料でダウンロード可能です。是非この機会にチェックしてみてください。