不良率とは、製造過程で生じる不良品の割合を示す指標です。この記事をご覧の方は「不良率を下げるための計算方法や定義に関する情報を知りたい」「不良率を改善して、コスト削減につなげたい」「不良率の削減や品質改善のための具体的な方法や手法について知りたい」といった悩みを抱えている方も多いと思います。
そこでこの記事では、不良率の基本的な定義やPPM(Parts Per Million)の計算方法、不良率が高いと判断される基準、不良品が発生する原因と分析方法について解説します。
現場改善をするにあたって、不良率は避けて通れない問題です。この記事では、さらに深堀して具体的に不良率を改善するための有効な動画マニュアルの導入方法も紹介します。不良率を改善し、顧客満足度の向上や、コスト削減を目指す指針としてこの記事が参考になれば幸いです。
不良の種類として品質不良があり、発生原因の一つにヒューマンエラーがあります。
現場改善ラボでは、ヒューマンエラーの発生メカニズムと除去する方法について解説している動画も無料でご覧いただけますので、本記事と併せてご覧ください。
目次
不良率とは?歩留まりとの違い
不良率を聞いたことがある方も多いと思いますが「具体的に定義を説明せよ」と言われると困る方は多いのではないでしょうか。
人や機械、材料などによる不良を把握し改善することで不良率を下げることが可能です。ここでは不良率の定義と歩留まりとの違いについて解説します。
不良率とは?
不良率とは、生産された製品の総数に対する不良品の数の割合を示します。
不良率が高いと生産コストの増加、顧客満足度の低下、さらにはブランドイメージにも悪影響を及ぼす可能性があります。
たとえば、自動車の製造業であれば1,000台の車を生産した場合、10台が不良品であれば不良率は1%となります。例に示した通り、不良率は生産効率や品質管理の水準を測る基準となります。
不良率が高ければ生産された製品の中で不良品が多いということです。不良品は通常、修理または廃棄が必要となってしまうため、生産コストの増加につながります。
また、不良品が市場に出回ると顧客満足度の低下につながり、リピート購入や口コミによる新規顧客獲得が減少する可能性もあります。
さらに不良品が多く品質が低いことを認知されると、消費者はそのブランドの製品を避けるようになり、ブランドイメージに影響を与えることもあります。特にSNSやレビューサイトでの悪評が拡散すると、その影響は一気に広がる可能性があるため注意が必要です。
不良率と歩留まりの違い
歩留まりは「投入した原料から実際に得られた生産量」を指すのに対して、不良率は「生産量に対する不良品の割合」を指します。
たとえば、スマートフォンの製造業で100個の部品を使って90個の製品が完成した場合、歩留まりは90%です。しかし、その90個の製品のうち5個が不良品であれば、不良率は5/90、すなわち約5.6%となります。
つまり、歩留まりは生産効率に関わる数値であり、不良率は品質に関わる数値です。不良率と歩留まりはそれぞれ異なる改善策や管理手法が求められ、製造業では両方をバランスよく管理することが求められます。
歩留まりの詳細をさらに知りたい方は下記の記事を参考にしてみてください。
PPMとは?不良率の計算方法
PPMは不良率を表す単位を指します。ここではPPMの定義と計算方法について解説していきます。
製品の不良率であるPPMとは?
PPMとは「Parts Per Million」の略称であり、製品100万個あたりの不良品の数を表す単位を指します。PPMはわずかな品質の変動も大きな影響を及ぼす可能性があることから、大量生産される製造現場に重要で、微細な不良率でも明確に表現する必要があります。
PPMを用いることで、1/1,000,000単位まで品質を数値化でき、高精度の品質管理が可能になるため、非常に高い精度で品質を管理することができるでしょう。また、PPMを用いて微細な不良率を早期に発見することで、修正コストやリコールコストの削減が可能です。品質を管理することで、顧客に対して一貫した高品質の製品を提供でき、顧客満足度の向上につながるでしょう。
たとえば、半導体製造業では製品の不良が出ないように管理されています。半導体製造業のように、1PPM(100万個あたり1個の不良品)の品質レベルを維持することで顧客満足度の向上が期待できます。
PPMの計算方法
PPMは先述の通り製品100万個あたりの不良品の数を表す単位であるため、不良率に100万をかけ合わせた数式で計算できます。
不良率(PPM)= ( 不良品の数 / 製品の総数 )×106
たとえば、1000個の製品を生産し20個が不良品だった場合、不良率(PPM)は以下のように計算されます。
不良率(PPM)=( 20 / 1000) × 106 =20,000 PPM
またPPMではありませんが、不良率をパーセントで求める場合の計算もあり、活用することで製品ごとの不良率を比較し、改善点を洗い出すこともできるでしょう。
不良率=(20 / 1000)×102=2.0[%]
製造業における不良率の目安とは?
製造業において不良率は非常に重要な指標ですが、業種や製品、生産規模によって許容される不良率は異なります。
一般的な目安としてよく用いられるのが「3シグマ」や「6シグマ」です。3シグマは、1000個の製品を製造した場合、不良製品が3つ未満で発生する割合(99.7%)を指します。一方で、6シグマはさらに厳格で、100万個の製品に3個の不良品が発生する割合(99.9997%)を目指します。
たとえば、自動車部品の製造業では自動車の安全性と直結する部品が多いため、6シグマレベルが目標とされます。プラスチック製の玩具などは、6シグマまで求められることは少なく、3シグマ程度が一般的です。
「不良率0%を目指す」というのは理想ですが現実的には厳しく、0%を目指すあまり、作業者が過度に緊張し、不良品を発生させてしまう可能性もあります。そのため、現場の状況に応じて現実的な目標を設定し、不良品を出さないように日々改善のPDCAを回すことが重要です。
6シグマ(シックスシグマ)に関する、より詳細な解説は以下の記事をご覧ください。
関連記事:シックスシグマ(6σ)とは?経営/品質管理で必要な概念をわかりやすく解説!
不良品が発生する原因と分析方法とは?
不良品が発生する原因と分析方法の2つを解説します。
- なぜ不良品が発生するのか?
- 不良品が発生する原因を分析
なぜ不良品が発生するのか?
不良品が発生する原因は多岐にわたりますが、要因として5M + 1Eがあげられます。
5Mとは人(Man)、機械・設備(Machine)、方法(Method)、原料、材料(Material)、測定、検査(Measurement)で、1Eとは環境(Environment)です。
これらの製造プロセスが不適切であれば不良品が生まれやすくなります。
たとえば、電子部品製造では微細な部品が多く、人(Man)のミス(ヒューマンエラー)による不良品が発生する可能性が高いと言えるでしょう。また、機械(Machine)が古く精度が落ちている場合も不良品が出やすくなります。
ヒューマンエラーがなぜ発生するのか?その発生要因を知ったうえで、問題を明らかにする分析方法から再発防止の仕組みづくりまで、下記セミナーではヒューマンエラー対策を網羅的に解説します。
不良品が発生する原因を分析
不良品が発生したら、その原因の発見と早急な措置が必要になります。
しかし、不良品の発生は単純なミスだけでなく、複数の要素が絡み合って不良品が生まれる場合もあるため、不良品が発生する原因を特定するためには、特性要因図やQC7つ道具、ロジックツリー解析などのツールを用いた分析が必要です。
たとえば、自動車部品製造において一つの部品が不良だった場合、原因を特定するためには「4M(Man、Machine、Material、Method)+I(Information)」のカテゴリを用いた特性要因図分析が有効です。
特性要因図分析の結果、人(Man)が関与している場合、作業員のスキルや注意力が問題かもしれません。機械(Machine)が関与している場合、設備の老朽化やメンテナンス不足が原因かもしれません。
また、材料(Material)に異常がある場合、供給元のなんらかの不備が原因にあるかもしれません。方法(Method)が問題であれば、作業手順の見直しやそもそものやり方の変更が必要です。
このように不良に関わる要素を体系的に整理することで事前に対策を打つことができます。
原因を特定するための4M分析方法や特性要因図の書き方について、詳細を知りたい方は下記の記事を参考にしてみてください。
関連記事:【図解あり】4M分析とは?問題整理や変更管理での分析方法を解説!
不良品を出さないための防止策
製造業では、品質不良によって生産コストが増加し、顧客満足度の低下が起きるため、品質不良が起きない仕組み作りをすることが必要です。
不良品を出さないための最初のステップは、明確なルールと基準を設定することです。たとえば、品質管理マニュアルを作成し、製造プロセスでの各ステップにおいて何が求められるかを明確にします。明確な基準がないと、作業者が何をすべきかわからず、ミスが起きやすくなります。
また、品質不良を防ぐための体制を整える必要があります。定期的な点検や維持管理を行うことも重要です。
さらに、高度な分析能力を持つIoTやAIなどの先進技術を導入することで、人間が見落としやすい問題点を早期に発見できるため、人的ミスの削減を減らし、品質向上が期待できるでしょう。先進技術は高度な分析能力を持ち、人間が見落としやすい問題点を早期に発見できます。
品質不良問題の原因として「ヒューマンエラー」があります。人間の集中力・注意力には限界があり、どんなに気を付けていても慣れや疲労、錯覚などでヒューマンエラーは発生します。そこでおすすめなのが、中小企業診断士の今澤 尚久氏のセミナーの動画です。「どのようにしてヒューマンエラーを少なくするのか?」「不良率を下げるためにできることは何か?」といったことを詳細に解説した動画です。ぜひこの機会に動画に申し込んでみませんか?
動画マニュアル導入により不良率を低減した企業事例
ここでは、動画マニュアル導入により不良率を低減した企業事例として、児玉化学工業株式会社の事例を紹介します。
動画マニュアルとは?
動画マニュアルとは、作業手順や安全指導、異常処置などを動画で視覚的に示す教材のことです。特徴として、紙のマニュアルや口頭での指導に比べて動画のほうが直感的に理解しやすく、多言語対応も容易である点があげられます。
動画マニュアルの導入は、視覚的な情報提供が実現でき、従業員が作業手順を迅速かつ正確に理解できることから、製造業において品質向上と効率化を実現する強力な手段です。特に多言語環境や新人教育において、動画マニュアルは有効でしょう。
児玉化学工業株式会社の事例
児玉化学工業株式会社は、動画マニュアルツール「tebiki」を導入して、9割の品質不良を削減した企業です。tebikiは、手順書やマニュアル作成の工数を大幅に削減し、さらに多言語対応も可能です。
児玉化学工業株式会社は外国人従業員が多く、日本語がわからない人もいます。紙のマニュアルでは外国人従業員に作業手順を正確に伝えることが困難でしたが、tebikiの導入により動画マニュアルは外国語にも翻訳できるため、外国人の多い現場でも作業手順を正確に伝えることができるようになりました。
また、教育のバラつきや情報の少ない作業手順書から、新人が作業すると製品の不良が出てしまう問題も、動画マニュアルtebikiの導入により改善され、製品の品質が向上しました。より詳細な児玉化学工業株式会社の事例は、以下のインタビュー動画もご覧ください。
▼tebiki導入事例:児玉化学工業株式会社▼
児玉化学工業株式会社の事例のように、動画マニュアルは製造業にとって多くのメリットがあります。特に、品質向上や効率化を目指す現場改善担当者にとって、動画マニュアルのtebikiは価値あるものと言えるでしょう。
tebikiに関してより詳細な情報が知りたいという方は、以下よりサービス資料をご覧ください。
不良率を改善し、現場改善をしよう!【まとめ】
この記事では、不良率と歩留まりの違いから始め、PPMという製品の不良率を計算する方法、製造業における不良率の目安、不良品が発生する原因と分析方法、そして不良率を低減するための防止策について解説しました。
不良率は製品の品質を数値で表す一方、歩留まりは生産効率を示します。両者は密接に関連しているが、目的とする改善点が異なるため、正しく理解することが重要です。
PPM(Parts Per Million)は製品100万個あたりの不良品の数を示す指標で、大量生産において微細な不良率を明確に把握するために用います。
また、一般的な不良率の目安を知ることで、自社の品質が業界標準に対してどの程度なのかを評価できるでしょう。
さらに、 不良品が発生する原因をしっかりと分析し、それに対する対策を講じることが不良率を低減するために重要であり、不良品を出さないためのルール作りや体制つくり、先進技術の導入などのアプローチが必要になります。。
児玉化学工業株式会社のように動画マニュアルを導入することで、作業手順の標準化が進み不良率が9割も削減される事例もあるので、体制作りは特に大切であると言えます。