製造業では、顧客満足度を向上させるために、高品質の製品・サービスを作り続けることが重要です。しかし、品質を作りこむためには何をすればよいのか、と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では品質の作りこみについて解説します。品質を作りこむための仕組み化に欠かせない視点や、成功事例なども紹介するので、品質を向上させたいと考えている方は最後までご覧ください。
他にも現場改善ラボでは、品質を作りこむうえでボトルネックになりがちな「属人化」を解消する実践的な手法について、技術・技能伝承コンサルタントが詳細に解説した動画をご用意しております。
標準化を進め、品質を高めたいとお考えの方は是非ご参考ください。
目次
品質の作りこみとは?
品質の作りこみとは、設計段階から製造工程までの各段階で、品質を向上させるための取り組みを行うことを指します。設計や企画などの初期段階から品質を意識することで、最終的な製品・サービスの品質を高められます。
品質のバラつきをおさえ、高い品質を維持する活動である「品質管理」についても以下の記事で詳しく解説しているため、併せてご覧ください。
関連記事:品質管理の基本を解説!目的や品質保証との違い、主な手法は?
不良品を発生させない仕組み作り
高品質な製品・サービスを生み出すためには、不良品を未然に防ぐための仕組み作りが不可欠です。
製造後に不良品が発生すると、問題を修正するために膨大な時間とコストが必要になります。そのため、製品開発の初期段階から品質管理を徹底し、不良品をできるだけ減らすような対策を講じることが重要です。
たとえば、自動車製造を行う際にエンジンや安全装置といった重要な部品に対して、製造前に厳格な品質基準を設けることが効果的です。これにより、製造を開始する前に品質の問題点を最小限に抑え、最終製品の品質を向上させられます。
品質向上との違い
品質の作りこみと品質向上は、取り組み方が異なります。品質の作りこみとは、製品やサービスの設計段階から品質を考慮し、不良を減らすための取り組みのことです。
一方で品質向上とは、すでに市場に出ている製品やサービスに対し、フィードバックや改善活動を通じて品質を向上させる取り組みのことです。
そのため、品質の作りこみは「最初から不良を減らす」ことに焦点を当て、品質向上は「既存のものをより良くする」ことに焦点を当てているという違いがあります。
品質の作りこみを理解するためには、以下2つの考え方を理解しておく必要があります。
- ねらいの品質
- できばえの品質
ねらいの品質
ねらいの品質とは、目標となる品質のことを指します。
顧客の要望や市場のニーズに基づき、製品・サービスの設計段階で設定される品質のため、「設計品質」と称されることもあります。
できばえの品質
できばえの品質とは、実際に製造を行い、どの程度「ねらいの品質」に達しているかを示す品質指標のことです。この指標によって、設計・企画段階で定められた品質目標が、実際の製品・サービスでどの程度実現されているかを評価できます。
不良品の発生を抑えるには「ねらいの品質」を明確に設定し、製造プロセスで「できばえの品質」がその目標に達しているかを徹底的に検証することが不可欠です。
品質を作りこむうえで重要な3つの視点とは?トヨタ社の事例も紹介
品質を作りこむためには、以下3つの視点を理解しておくことが重要です。
- 源流管理
- 自工程完結
- 不良ゼロ
源流管理
源流管理とは、製品やサービスの源流段階(設計や生産など)から、品質を作りこんで不良品を削減する方法です。
品質を作りこむには、源流管理の視点を持っておくことが重要です。たとえば、自動車メーカーではエンジンの故障率を下げるために、材料選定や製造プロセスなどの段階から厳しい基準を設けることで品質を考慮しています。
他にも、源流管理では製品やサービスの品質を根本から改善・維持するために問題の発生源を把握し、予防策を講じることも重要視されています。
例として、不良品が発生する原因を製造工程の開始から終了まで洗い出し、原料のばらつきに問題があることを発見したうえで基準値を引き上げるといった対策が考えられます。
自工程完結
自工程完結とは、各工程で発生するミスを最小限に抑えることで最終製品の品質を高めるという考え方です。この視点を持つことで、製品の品質を根本から改善することが可能になります。
自工程完結は、徹底的にムダを排除することで有名なトヨタ生産方式から生まれた考えで、実際にトヨタ自動車ではこの自工程完結の考え方に従って、各工程で発生した不備について徹底的に議論を交わしています。
これにより、問題の根本となる原因の特定・修正が可能になり、高品質な製品を市場に提供し続けることができています。
現場改善ラボでは、トヨタ社が自工程完結を進めている様子や目指すべき姿について、発案者である元トヨタ自動車株式会社の副社長である佐々木 眞一氏が紹介する記事を以下にご用意しております。是非ご参考ください。
関連記事:自工程完結を発案したトヨタ元副社長が語る『品質経営の歴史と課題』【IMPROVE開催レポート】
不良ゼロ
不良ゼロとは、文字通り製造工程で不良品を一切出さないことを目指す考え方のことです。
この考え方は品質を追及するものづくりを行う企業にとって欠かせない視点ですが、不良の発生には複雑な要因が絡み合っていることも多く、不良ゼロを実現することは簡単ではありません。
そのため、不良品が発生しない設備構築や、改善活動を実施できる人材の育成を行い、不良ゼロに限りなく近づけていくことが重要になります。
不良ゼロに限りなく近づけていくには、品質問題のボトルネックとなる要因を特定することも欠かせません。品質問題の原因を特定する手法として有名な「QC7つ道具」について、以下の記事及び動画で詳細な解説がご覧いただけます。
関連記事:QC7つ道具とは?業務実例から具体的な使い方を解説【練習問題付き】
品質を作りこむ工程を仕組化する4つの方法
品質の作りこみを実現するには、一時的な対策ではなく「仕組化による根本的な解決」が求められます。
ここでは、品質を作りこむ工程を仕組化する方法として以下の4つを解説します。
- 変化点管理を行う
- チェックリストを作成する
- 品質教育を行う
- 作業手順書やマニュアルを整備する
変化点管理を行う
変化点管理とは、製造工程における変化を正確に把握しコントロールすることで品質の不具合・異常を防ぐ手法のことです。品質を作りこむ工程を仕組み化するためには、変化点管理を行うことが重要です。
たとえば、自動車部品の製造を行う際に使用する部品の材料を変更することで製品の品質に影響を及ぼすことがあります。
しかし、変化点管理を正しく行うと、この材料変更が他工程・最終製品にどのような影響を及ぼしたのかを特定し、適切に対処できるため材料変更による不良品の発生が広がることを防止できます。
詳細な変化点管理の進め方や手法について知りたい方は、以下の記事をご参考ください。
関連記事:品質を担保する変化点管理の進め方は?可視化に必要な要素も解説
チェックリストを作成する
品質を作りこむためには、チェックリストを作成することが重要です。
特に、要件定義など上流工程の段階でチェックリストを利用することで、製品やサービスの品質を効率よく向上させられます。要件定義での見落としや誤解が生じると、その後の工程での修正が必要になり、品質低下や開発コスト増加につながってしまいます。
そのため、チェックリストを活用し要件定義の段階で必要なすべての要件を確認することで、最終製品の品質を底上げできるような体制を整えましょう。
品質教育を行う
品質を向上させるためには、適切な品質教育を行うことが欠かせません。
具体的には、製造現場の社員や、品質管理を行う管理職への品質教育が重要です。製造過程に関わるすべての社員が品質の知識を持つことで、組織全体として品質向上に取り組めるようになります。
品質教育で教えるべき内容や実際の企業における取り組み事例について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
関連記事:品質教育では何を教える?教育の進め方や成功事例も解説
作業手順書やマニュアルを整備する
品質を作りこむためには、作業手順書やマニュアルを整備することも重要です。
作業手順書やマニュアルを活用し、作業内容や品質基準を明確にすることで品質のばらつきを最小限に抑えられます。
たとえば、製造業の組み立てラインで作業者ごとに異なる組み立て方をしていた場合は完成品の品質にばらつきが生じるリスクが高まりますが、作業手順書やマニュアルを整備することで全員が同じ手順や水準で作業ができるようになり、業務のムラが解消され品質が向上することが期待できます。
そのため、すべての作業者が同じ手順で同じ製品を製造できるように、作業手順書やマニュアルを作成しておくことが大切です。
マニュアルの整備方法を知りたい方は、こちらのセミナーもご覧ください。100社の現場教育を支援するプロが、伝わるマニュアルの作り方やマニュアル整備の効果的なプロセスについて詳しく解説します。
【成功事例】品質の作りこみを実践している現場
品質を作りこむには、実際に品質の作りこみにむけた取り組みを実施し、成功している会社の手法を参考にすることが近道です。
ここでは品質の作りこみを実践している現場の例を2つ紹介します。
- 「教育道場」の実践
- 「品質不良ゼロ」に向けたアプローチ
「教育道場」の実践
工作機械や産業機械の製造・販売を行っている新日本工機株式会社では「教育道場」と呼ばれる、独自の育成プログラムを実施しています。教育道場は、設計技術者に現場作業を体験してもらう取り組みのことです。
この取り組みを始めたことで、設計技術者が現場目線を持った適切な設計が行えるようになるだけでなく、中堅社員も教育道場がきっかけで正しい作業手順を見直すようになり、結果として教育内容の標準化が実現したことで設計品質が向上しました。
教育道場の詳細な取り組みや現場改善を進めるポイントについて知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
関連記事:ものづくりで不可欠な『人の力』を引き出す新日本工機の教育改善
「品質不良ゼロ」に向けたアプローチ
自動車や住宅設備のプラスチック製品の製造・販売を行っている児玉化学工業株式会社では、品質不良ゼロに向けた取り組みを実施しています。
具体的には、「品質工場には『人の質』が欠かせない」という考えのもと、新人や異動で職種が変わる社員を対象に品質と現場の基礎を勉強し直す研修を行っています。
新入社員や移動したての社員は、ミスや品質のばらつきが生じやすい「初めて・変更・久しぶり(3H)」の状況にあることから、基礎固めが非常に重要です。実際に、この取り組みを始めてから8年で、品質が60〜65%向上しました。
児玉化学工業株式会社の取り組みや『品質不良ゼロ』に向けたアプローチについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
関連記事:品質とは”人の質”『不良ゼロ』を目指す児玉化学工業の現場改善
品質の作りこみを仕組化するには動画マニュアルが最適
品質の作りこみを組織化するには、動画マニュアルを活用し、教育に組み込むことがおすすめです。
動画マニュアルによる教育の標準化とは
品質を作りこむには、従業員教育を充実させることが重要です。従業員教育ではOJTや社内研修を行うことが多い一方で、担当者によって教育のムラが生じてしまうという問題があります。
そのため、教育の品質を高めるためには「動画マニュアル」を活用するのがおすすめです。動画マニュアルとは、従来の紙マニュアルでは文章で説明していたような動作を動画で説明し示すことで、理解度を格段に上げられるマニュアルのことです。
動画マニュアルでは、毎回同じ教材を使って教育を行うため、担当者が変わっても同じ教育を行うことが可能です。そのため、教える内容や教え方のばらつきが解消され、教育が標準化されるというメリットがあります。
他にも、現場の技術者しか教えられないような複雑な作業も動画を使って教えられるため、教育担当者の社員に負担をかけずに新人教育を行えるというメリットもあります。
現場教育の改善には「tebiki」がおすすめ
現場教育を改善したい方は、動画マニュアル「tebiki」を活用するのがおすすめです。
動画マニュアルtebikiとは?
動画マニュアル「tebiki」は、動画マニュアルを簡単に作成できるクラウドサービスです。紙のマニュアルでは伝わりにくいカン・コツを動画で可視化できるため、作業効率や作業品質を大幅に向上させられます。
動画マニュアルtebikiのメリット
「tebiki」を使う最大のメリットは「効率よく動画マニュアルを作成できること」です。OJTで教えている内容を、スマートフォンで撮影するだけで動画マニュアルが作成できるため、マニュアル作成担当者に大きな負荷がかかりません。
また、組織レポート機能により「誰が」「どのマニュアルを」「どのくらい閲覧したか」といった習熟度を可視化することができ、マニュアルの内容をテストとして出題できるテスト機能も備えているため、「作成したものの誰もマニュアルを見てくれない」「本当にマニュアルの内容を理解できているかがわからない」という事態を回避できます。
他にも、動画マニュアルtebikiには自動翻訳機能やタスク機能など、現場の課題を解決する様々な機能が備わっています。
tebikiの機能詳細や導入サポート体制については、以下のボタンから資料をダウンロードできますので、「従業員教育を効率的に行いたい」「作業品質のばらつきをなくし標準化を進めたい」とお考えの方は是非ご参考ください。
動画マニュアルtebikiの導入で品質の作りこみに成功した事例
動画マニュアル「tebiki」を導入することで、品質の作りこみに成功した事例を2つ紹介します。
- 理研ビタミン株式会社
- イセ食品株式会社
理研ビタミン株式会社
理研ビタミン株式会社は、調味料や加工食品などに含まれる乳化剤を製造する企業です。
同社では、紙マニュアルだと業務手順がうまく伝えられず、業務のばらつきが生まれるという問題を抱えていました。たとえば、品質保証部門の分析手順書に「よくふり混ぜる」と記載されていた場合、縦方向に振る人もいれば、小刻みに振る人もいました。
その結果、業務品質にもばらつきが生じ、正しい手順や技術が伝承されないという課題が顕在化していました。そこで、動画マニュアル「tebiki」を導入し、動画マニュアルで業務手順を視覚的に伝えることで、業務のばらつきを大幅に減少することに成功しています。
理研ビタミン株式会社がtebikiを導入して得られた効果や、動画マニュアル定着のコツについては以下のインタビュー記事でも詳しく紹介しています。是非ご覧ください。
関連記事:品質保証部門と製造部門がONEチームで取り組んだ業務標準化と技術伝承
イセ食品株式会社
イセ食品株式会社は、鶏卵の販売・製造を行う企業です。
同社では、工場の立ち上げや応援に伴い異動が発生すると、業務や作業をいちから覚え直す必要があり、業務の標準化や統一が進んでいないという課題がありました。他にも、紙のマニュアルや研修では外国人の社員に細かい内容が上手く伝わらず、正しい作業手順が順守されていないという問題を抱えていました。
この問題を解決するために、動画マニュアル「tebiki」を導入し、3ヶ月で200本程度の動画マニュアルを作成し、座学教育の一部をtebikiに置き換えることで、社内の業務を統一化できるようになりました。また、tebikiの導入により外国人も含め従業員の研修内容における理解度が向上し、従業員は異動してもすぐ新しい職場に適応できる体制が進んだことで企業全体の業務効率や品質が大幅に向上しました。
イセ食品株式会社がtebikiを導入して得られた効果や、現場が感じるtebiki導入のメリットについては以下のインタビュー記事でも詳しく紹介しています。是非ご覧ください。
関連記事:導入3ヶ月で動画200本作成。製造現場の作業標準化と多能工化を推進しています。
【まとめ】動画マニュアルの活用で品質の作りこみを実現しよう
この記事では、品質の作りこみについて解説しました。
製品・サービスの不良を最小限まで抑えることで、顧客満足度を向上させられるため、できるだけ早く品質を作りこむことが重要です。ぜひ、この記事で紹介した方法を活用して、自社製品の品質を向上させてみてください。
もし、マニュアルを改善して品質を向上させたいと考えている方は、動画マニュアル「tebiki」を活用してみてください。OJTで教えている様子をスマートフォンで撮影するだけで動画マニュアルが作れるため、短時間で業務効率・製品の品質を向上させられます。
動画マニュアル導入を検討している方は、ぜひ以下の資料で機能や導入事例をチェックしてみてください。